かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『最強のふたり』 Intouchables
2012年 09月 09日 |
タブーだらけで建前が重んじられる国に住む私たちにはふたりの笑顔がとてもまぶしいよ。爽快バディムービー。



本国フランスでは歴代興収記録第3位という大ヒット作となり、ハリウッドがリメイク権も獲得。去年の東京国際映画祭上映時にはチケット取ってなくて、評判のよさにそのことを悔やんだのもつかの間、とんとん拍子に配給がついて万々歳。一般公開まではずいぶん待たされた気もするけれど、セプテンバーという最適なシーズンに封切られたのは嬉しい。売れ筋商品ばかりを追求するマーケティングのギャガのことは、さほどよく思っていない売れ線外アート映画支持者の私だけど、このたびはやり手のギャガさんが配給してくれたからこそ、有名俳優がでているわけじゃないフランス映画を大々的に公開して、大ヒットスタートを決めることができたのだと感謝。そして、フランスの公開日より一足早く、東京国際映画祭のコンペティションにこの映画をもってきた関係者の方々、矢田部さんはさすがだね。

スラム出身の黒人青年が障害者のお金持ちを介護だなんて、丸々作りもののヒューマンドラマならば、いかにもな狙いすぎの設定だとしらけてしまいかねないけど、これが実話に基づいているというのだから驚いてしまう。こんな出逢いと育まれる関係性が存在するこの世界は案外とステキじゃないか。・・・という思いも実は鑑賞後のもので、前情報を入れない派の私は実話ベースだとは知らずに本編を観ていたのだけど、これが全面的なフィクションだとしても、何だかんだいって心を動かされていたということ。さわやかなよい映画だね。途中まで引っかかったのは、結局のところお金がなくちゃ元も子もないのかなと思わされてしまうあたり。同じ障害をもった貧乏人の物語はいったいどんなものになるのだろうかと考えずにはいられなくて。大富豪さんだから、安心安全、豊かで優雅な生活がそれでも成り立つという前提あってこそ生まれたあたたかなドラマなのだと思えて、少し斜めから見てしまったり。

いや、しかし、それはお金で買えるものじゃなし。職務そのものにおいて有能な介護士を雇うことはいくらでも可能であれ、フィリップ×ドリスの最強コンビ結成は、偶然と気まぐれの運命のいたずら的きらめく邂逅ではないか。世の中にあふれる偽善者たちにうんざりしたとしても、さすがにドリスのような非礼で非常識な素人に体の不自由な自分のすべての世話をまかせるなんて決断は普通ならなかなかできないもの。それが逆に、身体的不自由さの境地にあるからこそ、フィリップは一般的常識、価値基準にとらわれない人選をするに至ったのだろうし。健康なリッチマン時代にはおそらく交友を持つ機会はなかったはずの階層のドリスと、このようなかたちでフランクにつき合うことになるなんて。障害をかかえて幾多の苦悩と困難があったに違いないけど、同情されることに嫌気がさしたフィリップは、「健常者用」なんていうドリスのブラックユーモア大放言を一緒に笑い飛ばしていた。

当事者としては同情なんてまっぴらという気持ちはよくわかるけど、接する相手はやはりどうしたって何かと気遣い配慮をしてしまうものでしょうとも思う。だけど、本人が快く受け止められないのなら何のための気遣いかということになる。自らの意思で体を動かすことができない雇い主の目の前で、その身体性を活かしてドリスは、思いきり伸びやかに軽やかに踊ってみせる。それを不謹慎じゃないかと感じるのはむしろ偽善的。踊ることのできない相棒の分も合わせて、彼なりの音楽との最良の付き合い方を表現してくれたのだ。バッハ、ヴィヴァルディVSアース・ウィンド&ファイアーの音楽対決シーンは最高に楽しかった。孤独なままであったら、障害の原因となったパラグライダーには近寄る気はなかったかもしれないのに、新しい相棒ドリスに空の気持ちよさを体験させてあげたいとその体で飛んでみたり。車イスはかつてないほどにハイスピードで駆けていた。美徳と思い込んでいたマナーやら過剰ないたわりをいったんオフにして、ドリスのように率直に接してみたらひらける世界もあるかもしれないね。



(2012/09/01 GAGA)

allcinema

監督.脚本 エリック・トレダノ /オリヴィエ・ナカシュ
撮影  マチュー・ヴァドピエ
音楽  ルドヴィコ・エイナウディ
編集  ドリアン・リガル=アンス
出演
フランソワ・クリュゼ(Philippe)
オマール・シー(Driss)
アンヌ・ル・ニ(Yvonne)
オドレイ・フルーロ(Magalie)
クロティルド・モレ(Marcelle)
グレゴア・オスターマン(Antoine)



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