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『マリー・アントワネットに別れをつげて』 Les adieux à la reine ブノワ・ジャコ
2013年 01月 23日 |
新作洋画2012年鑑賞作のマイ・ベスト5。
TOHOシネマズフリーパスポートの恩恵にあやかって二度観た。素晴らしい。年末年始にこんなに華やか雅やかなでせつないフランス映画をありがとう。



フランス革命のはじまり、バスティーユ陥落の時。1789年7月14日から4日間が王妃マリー・アントワネットの朗読係シドニー・ラボルドの視点で描かれる。2002年にフェミナ賞を受賞したシャンタル・トマの「王妃に別れをつげて」が原作。Farewell, My Queen 

マリー・アントワネットの物語は数あるけれど、侍女の視点から舞台裏が描かれるというのは何とも興味深くて刺激的。私が二度訪れたヴェルサイユ宮殿は過去形の観光スポットでしかなかったのに、その場所にその時代を生きる人々がざわめいていることに心浮き立つ。ソフィア・コッポラ版の『マリー・アントワネット』も大好きだからこそ、あのポップさとは正反対の真実味とフランス本国ならではの気品ある静謐さをもつ本作に惚れぼれするのだった。激動の歴史の1ページが新たなる角度からドラマチックに蘇り、燃え尽きる。

ダイアン・クルーガーの整った美しさは気高く完璧で、そんな王妃を敬い憧れる若い侍女がいるという状況にすんなりと引き込まれる。フランス映画業界では一目置く家柄のお嬢様でありセレブな人気女優のレア・セドゥなのに、見事に身分の低い侍女になりきっていた。彼女は王妃に執心し、スクリーンの此方側にいる私たちは、王妃を待たせてはいけないと急いで駆け出すその朗読係のひたむきな瞳に心を奪われる。なんと、原作の主人公の朗読係は中年であり、その出来事を20年後に回想するかたちで物語られているという。その役が20代の弾けるレア・セドゥに与えられ、若きシドニーがドレスの裾を翻しながら息を切らして宮殿内を駆け回ることに。それが他ならない映像化の美点、それが映画。

ハリウッド映画の出演も多いレア・セドゥだけど、アメリカ映画ではそのよさをちゃんと活かせない登用が多々見られて、クリストフ・オノレの『美しいひと』で彼女に出会った私はしばしば不服だった。それが久しぶりに(『幻の薔薇』『美しき棘』以来)ようやく彼女のためにあるような役で、レア・セドゥの陰りと躍動を、艶っぽさとあどけなさを大いに見つめることができて嬉しかった。ポリニャック夫人にヴィルジニー・ルドワイヤンというのがまた絶妙で。この微妙な三角関係のスキャンダラスなスリルにドキリとさせられる。

気分屋の王妃とまっすぐで多感な少女、揺れ動く感情がひしめき合う宮殿の一角。きらびやかでゴージャスな装飾と衣装に美しい女優とビジュアルの豪華さだけで目は満足なのに、そこに彼女たちの思いが交錯し、巧みに繊細に内面描写が重なっていくからたまらない。クライマックス、王妃がシドニーに着替えを命じ、彼女がみずみずしい肢体を見せるシーンは格別。王妃への熱い思いは一方通行のものであったという失望と恥辱に動揺する猶予すらないまま、王妃の愛する人の身代わりにという残酷な指令が下される。シドニーの心は複雑にかき乱されるのと同時に、命じられて裸になるというエロティックで痛々しくも美しい場面が、わずかなやり取りの中で展開されるから息を呑む。

激動の歴史の一幕においても、女たちはそれぞれに愚かで、それぞれに強く情熱的で誇り高い。ブノワ・ジャコはきめ細やかに美しく時に冷酷に女性を描くことに長けているなとしみじみと感心するのだった。女のサガををあぶり出しつつも、それを傍観するのでもなく、冷笑するのでもなく、悲劇に直面する女たちに寄り添っているようで。シドニーの彼女たちの劇的な4日間に魅了されずにはいられないのだ。ラストの走る馬車から身を乗り出して、爽やかな風を生をかみしめるシドニーの姿も、せつなさとはうらはらに躍動していてその表情が心に刻まれる。史実に埋もれていた一人の無名女性の物語がなんて鮮やかに映画に息吹いたのだろう。



オフィシャル・サイト   allcinema

インタビュー/dacapo/magazineworld.jp   インタビュー/NIKKEI

ブノワ・ジャコはマルグリット・デュラスの『ナタリー・グランジェ』の助監督がスタートだったのか。地続きのものはあるかも。


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シドニー:レア・セドゥー
マリー・アントワネット:ダイアン・クルーガー
ポリニャック夫人:ヴィルジニー・ルドワイヤン
ルイ16世:グザヴィエ・ヴォーヴォワ
カンパン夫人:ノエミ・ルボフスキー

監督.脚本: ブノワ・ジャコ Benoît Jacquot
脚本:ジル・トーラン
製作: ジャン=ピエール・ゲラン、クリスティーナ・ラーセン、ペドロ・ウリオル
撮影: ロマン・ウィンディング
音楽: ブリュノ・クーレ
美術:カーチャ・ヴィシュコフ
衣装:クリスティアン・ガスク
ヴァレリ・ランシュ
編集:リュック・バルニエ

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by CaeRu_noix | 2013-01-23 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(0)
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