かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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チェコ映画 『ジェラリ』
2005年 09月 10日 |
平穏に生き抜くことが難しい時代、1人の女性が体験した悲劇。
悲しみが幾度も胸に突き刺さり、人々の生き様に圧倒される壮大なドラマ。

戦時中の実話を元に書かれた小説の映画化作品。
大戦中、反ナチ運動に関与したために、名前を変えさせられ、
山の寒村に身を潜め、偽装結婚をして生き抜いた女性の物語。



1943年、ナチの占領下、大学が閉鎖されていたため医学生エリシュカは
病院の看護士をしつつ、恋人の医師と共に反ナチ運動に協力していた。
ある日、ゲシュタポの捜査が厳しくなり、恋人は亡命したと知らされる。
そして、エリシュカも名前を変えて山村で身を隠すことを指示される。
病院の患者だったヨザという男とジェラリ村で暮らすことになる。

Zelary  2003
監督 オンドジェイ・トロヤン
脚本 ペトル・ヤルホフスキー
原作 クヴィエタ・レガートヴァー著「ヨゾヴァ・ハヌレ」(Jozova Hanule)
出演 アンナ・ガイスレロヴァー、ギェルギ・ツェルハルミ、ヤロスラヴァ・アダモヴァー
2003年米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

ハンガリー映画 『コンフィデンス/信頼』もこんな始まりだった。
突然、身分を偽ることを強制され、見知らぬ男性と暮らす羽目になる。
当時は、そんな想像を絶する奇妙な事態が稀なことではなかったんだ。

戦時中でなければ、希望に満ちた日々を送っていたであろう、
恋人とも仲睦まじく、行く末はドクターとして羽ばたくはずの女子学生。
街でモダンに暮らしていた女学生が突如、山村の質素な小屋へ移り
会って間もない年の離れた男性とひっそりと暮らすというのは
途方もなく大きな戸惑いと不安を感じただろうと思うと不憫だった。
身を守ることは最優先事項なのだろうとは思うけど、若い女性が
暮らし続けるために偽装結婚までするのはどんなに苦痛だったろう。

やがて、ヨザが誠実で優しい男とわかり安心感に包まれた。
人生は何が起こるかわからないけれど、人は適応する生き物。
いつまでも片意地を張り続けずに、ヨザを受け容れたハナには
複雑な思いも感じつつ、祝福したい気持ちでいっぱいになった。
あきらめるということではない、受け容れることは必要なんだろう。
新しい生活を一歩一歩進めていくハナのたくましさに打たれた。

広大な自然に囲まれたジェラリ村の美しい風景が心を洗う。
こんなにのどかで美しい場所でならしっかりと生きる決心もできそう。
大らかな自然がそれを引き立たせるのか、助け合って生きる
村の人々の姿に、人間の底知れない力強さがひしひしと感じられて。
困難の時代でも、危険と背中合わせでも、やっぱり人は前に進む。

ハナが学んだ医療を活かして的確に処置をする場面は快い。
望まずにこの村の一員となるも、そんなふうに人を助ける役立つ
存在になってくれたことが嬉しくて、人生はステキだと思える。
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安堵もつかの間、いくつもの悲しい出来事がやって来た。
ロクデナシ男たちの欲望の軽はずみな行動が腹立たしい。
戦争の狂乱の中、銃を手にする軍兵の傲慢さが赦せない。
人々が助け合っていくつもの困難を乗り越えたというのに、
後から後から思いもよらない不遇に見舞われるのはやるせない。
終盤は涙に暮れて、心が痛かった。

なんて劇的な日々だったのだろう。
戦争が終わって本当によかったと安堵はするけれど、
終わればそれでよいとは言えないほどに失ったものは多く、
傷は深く、理不尽な思いが虚しく残る。
それでも、エンディングの廃屋での再会の場面には心から感動。
彼女たちが生き抜いたことに胸がいっぱいになった。


原作が出版されたのは2001年で著者クヴィエタ・レガートヴァーが82歳の時。
あれから半世紀、どのように彼女は生きてきたのだろう。
その経験に対する思いはどのように変化してきたのだろう。

手記を出版したヒトラーの秘書トラウドゥル・ユンゲを思い出す。
この同世代の2人はそれぞれ、逆の立ち位置で激動の時代を体験して来たのだな。
彼女たちが書き綴り伝えたかったことをしっかりと受け止めたい。

(2005チェコ映画祭/東京都写真美術館ホール)
--

というわけで、やっぱりチェコ映画はすばらしい!
今回は2本観ただけですが、どちらもとてもよかった。
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by CaeRu_noix | 2005-09-10 23:13 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(0)
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