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『明日の空の向こうに』 Jutro będzie lepiej
2013年 02月 07日 |
ポーランドと国境を接する旧ソ連某国の貧しい村。親も住む家もなく、鉄道の駅舎で身をひそめて寝泊まりし、日々を過ごしている幼い3人の少年、ヴァーシャ、ぺチャ兄弟とその友だちリャパがいた。



今はなき、シネマアンジェリカで観た『僕がいない場所』大好きだった。ポーランドのドロタ・ケンジェジャフスカ監督とそのパートナーである撮影監督アルトゥル・ラインハルトによるせつなくも美しい映像詩がふたたび。日本では岩波ホールで公開された老女が主人公の『木洩れ日の家で』がヒット作となったのだけど、本来は、子どもたちを描くことを得意としているようで、私も断然、『僕がいない場所』や本作のような、無垢な子どもたちのみずみずしさが迸るものに強く惹かれるのだった。

自分が物心つく前から、世界各国の童話にアニメーション、人間以外のいきものが主人公のものも含め、みなしごや家のない子どもが冒険をする物語に慣れ親しんできた。まったくの虚構のファンタジーも、社会の現実を反映しているものも区別なく、自分自身が幼い頃から、可哀想な子どもの苦境には同情し、その幸せを願いながら物語に触れてきたことを思い起こす。そしてたぶん、基本姿勢は変わっていない。同時に、子ども時代の純粋な思いは失いながらも、大人になって現実の世界の状況を知リ得てこその別視点と思考がうまれ、今なお、そんな子どもたちの物語に心打たれるのだ。そのように映画と向き合っている。

ひどい暮らしから抜け出したいと考えた時、正しい選択の上、最良の行動ができるかどうかは、知識と経験のある大人にだって確かなものではないというのに。10歳を頭に子ども3人だけで国境を越えようという試みは、どれほどに危険で困難なものであろう。だけど、それを推し量って躊躇したりしないのが、子どもという生きものなのだ。目的地を目指してがむしゃらに突き進んでゆく姿を、ただ祈りながら見守るしかなくて。子どもばかりだから危ないと肝を冷やす中で、時にはそれを武器にしてうまく渡る場面にも遭遇する。そんなスリリングな冒険物語にすっかりと魅せられた。

子どもらしい無邪気さが、紙一重でずる賢さと同居していることにドキリともさせられる。子どもだから同情され、優遇されることを彼ら自身が知っていて、食べるために生き延びるために、時には大人に甘えて媚びるのだ。その姿には複雑な気持ちにもなるけれど、そんな処世術を小さな頃から身に着けざるを得なかった生い立ちがいたたまれなくもなる。境遇を不憫に思いながら、逆境における健やかな強さへの感動が寄せては返す。年少6歳のペチャはとりわけかわいくてしょうがないのだけど、天使の笑顔で平気で鼻の穴をほじる様がクローズアップに。たしなめる親がいないことの寂しさと、それゆえの自由さが眩しくもあった。

かわいいピュアな子どもたちの冒険は爽快なサクセスストーリーに違いない、そうであってほしいと思う反面、安易に都合よく話をまとめられることは望まない。どっちに転ぶ可能性もありながら、気まぐれな偶然の積み重ねや、ある人のちょっとした感情の動きで運命は枝分かれしていくという、皮肉でシビアな現実がのしかかるのは物語の醍醐味。とはいえ、これまでの苦難が水の泡と化してしまうのは悲しくて。彼らの懇願する声が耳に残るのがやるせない。だけど、不思議と絶望するわけでもなくて、青く澄み渡る空はずっと続いているからだろうか、また未来は拓けるだろうと思えてくるのだ。どうか、すこやかでいてほしいなって・・・。



ケンジェジャフスカ監督作品配給のパイオニア映画シネマデスク、代表取締役丹羽氏は今作のプロデューサーにも名を連ねているとのこと。配給のみならず、製作にかかわっていたとはすばらしい。今の日本ではあまりうけないタイプの映画であろうとも、国内配給ビジネスという視野にとどまらず、遠い国で素敵な映画が作られることの手助けをしたということには嬉しくなります。同監督の94年の『カラス達(Wrony)』も近日日本公開予定ですって。

@新宿シネマカリテ (1/26 パイオニア映画シネマデスク)

監督.脚本.編集:ドロタ・ケンジェジャフスカ Dorota Kedzierzawska
撮影.編集:アルトゥル・ラインハルト

出演:
オレグ・ルィバ(ペチャ)
エウゲヌィ・ルィバ(ヴァーシャ)
アフメド・サルダロフ







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by CaeRu_noix | 2013-02-07 18:31 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(0)
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