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『偽りなき者』 JAGTEN
2013年 03月 27日 |
デンマーク映画は高水準。トマス・ヴィンターベアもいいね。

デンマークの小さな町。離婚と失業を乗り越えて幼稚園に就職したルーカスは、園児クララの何気ない嘘によって・・・。




マッツ・ミケルセンにスクリーンで出会ったのは、同じル・シネマで公開されたスサンネ・ビア監督作『しあわせな孤独』でのことだった。その後、OO7の冷酷な悪役としてその存在を世界に知らしめた国際俳優マッツだけど、私にとってはずっとあの優しいニルスがマッツなんだよね。奇をてらったキャラに扮するのでもなく、コスプレするでもなく、現代を生きる普通のデンマーク人役という等身大マッツにルシネマで再会できたことが嬉しい。そんな思いがあってもなくても、マッツファンはもちろんおそらく誰しもが、マッツ扮する主人公の身におきたことに胸を痛め、憤りを覚え、どうすべきかと模索し、そんなヒトとコミュニティのあり様に思考を巡らしながら、物語にのめり込まずにはいられないだろう。

子どもたちと全力で遊ぶ人気者の素敵なマッツ先生、いやルーカスが、その好かれっぷりがアダともなり、よりにもよって幼き教え子にあらぬ行為をはたらく変質者の濡れ衣をきせられる。マッツのようなカッコイイ男を大人の女が放っておきはしないから、幼女にそんな欲望を抱く余地がありえないんだよと私たちは言いたくなる。幼女好きのヘンタイロリコンといったら、もっとでっぷりとしたキモヲタのはずで、ルーカスのように息子もいて友達もいる普通に健やかアクティヴに暮らしている男が、そんなことするわけがないじゃないと呟く。と、この役にマッツが扮するのは現実味がないと思える自分の偏見は何のその、こういうことは誰にでも起こりうると思わざるを得ない、切実にリアリティのある場面展開で事は悪い方へ転がっていった。マッツだからありえないよりも、誰にでも起こりうる中、マッツだからこそ不憫でより同情してしまうというふうに。

クララのあの曖昧な一言だけであれよあれよという間に変質者の一丁上がり。そんなバカな・・・とマッツの味方である観客の私は思うけど、かよわき幼児を危険から守ることに一心のあまり、小さな疑いから悪者を作り出してしまいかねない人の心理も理解できる。園長は判断が軽率過ぎるし、友人たちはもっと彼を信じるべきじゃないのかとは思うのだけど、子どもを守るべくヘンタイの悪者を糾弾するという正義感は、ムラ社会ではいとも簡単に強い流れになってしまうものなのだろう。証拠不十分で有罪にはならなくても、仕事を失い、周囲の人に白い目で見られて罵倒されることになるなんて本当に悪夢だ。不運すぎるけれど、ありえなくはない落とし穴、非情な現実にゾッとしながら心は釘付け。

理不尽さに怒りを覚えたり、こういう時はどうすることが最良の方策なのかと冷静に思考したりしつつ、ルーカスの息子マルクスもがその苦しみを背負うのを目の当りにした時は、もうただ感情がかき乱された。そんな父親思いの息子の存在に救われるのと同時に、マルクスの登場によって辛さも増幅してしまう。物語の筋書きとして実にうまいと感心するよりも涙に暮れるばかり。真実に目を向けることもできない、隣人を信じることもできない人々が教会に集い祈りを捧げるなんてお笑いぐさだよね。無実の人間が他に解決の道はないと町を出たり、最悪の場合は自殺でもしかねない、別の犯罪をおかしかねない状況に追い込まれてしまうなんて、あまりにも恐ろしい。スリル満点で見ごたえのある、味わい深いマッツムラ物語。癒えない傷もある。

(3/16 キノフィルムズ)@Bunkamuraル・シネマ


THE HUNT



出演
マッツ・ミケルセン(Lucas)
トマス・ボー・ラーセン(Theo)
アニカ・ビタコプ(Klara)
ラセ・フォーゲルストラム(Marcus)
スーセ・ウォルド(Grethe)
ラース・ランゼ(Bruun)

監督 トマス・ヴィンターベア
脚本 トマス・ヴィンターベア 、トビアス・リンホルム
製作 モーテン・カウフマン 、シーセ・グラウム・ヨルゲンセン
撮影 シャルロッテ・ブルース・クリステンセ ン
音楽ニコライ・イーグルンド
編集 ヤヌス・ビレスコフ=ヤンセン
字幕 松浦美奈




しあわせな孤独
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by CaeRu_noix | 2013-03-27 09:16 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by ぺろんぱ at 2013-04-04 20:46 x
こんばんは。

のめり込みました、私も。
そして、そうですね、癒えない傷はある、のですね。

人との関わりは時として非常に危険になり得る、残念なことですが。
つらいというより怖い映画でした。



Commented by CaeRu_noix at 2013-04-15 23:30
ぺろんぱさん♪
またしてもまたしても、コメントがあったらメールでお知らせがくるようにすることもないまま、気づくのが大変遅くなってごめんなさい。本当にもう・・・。

のめり込みましたよねー。胃の辺りがキリキリしながら目が離せませんでしたー。
この状況はもう、人間不信で絶望して、病気になってしまうか自殺するかという域ですよね。
100%元通りにはならない、傷はのこるだろうなっていう・・・。
悪人、犯罪者を責め立てるというある種正義の方向で行われたことがこんなに非道なものとなるというのが恐ろしいです。
ゾッとする怖さでした。

マッツ出演作ロイヤル・アフェアもまもなく公開ですねー。

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