かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ダウン・イン・ザ・バレー』
2006年 01月 17日 |
意外な展開がおもしろかった。ラスト・カウボーイの物語。

ロサンゼルス郊外の住宅地、サンフェルナンド・バレー。父と弟ロニーと暮らす17歳の少女トーブはある日、ガソリンスタンドでカウボーイ気取りの風変わりな店員ハーレンと出会う。



ポスターや予告の印象から、さわやか癒し系ラブストーリーなのかと思っていた。だったら観に行かなくてもいいかなぁと思いつつ、ロードムービー風なところには惹かれて・・・。

トーブがハーレンと出逢って恋が始まる。これが全くわからなかった。
どこの馬の骨かもわからないカウボーイハットをかぶった妙な男に17歳のきれいな少女が惹かれていくことがピンとこなかった。ハリウッドの実力派俳優エドワード・ノートンというならともかく、このハーレンという男は初対面の少女と海に行きたいために仕事を辞めちゃう行きあたりばったり男で、好みの問題かもしれないけど見た目も魅力的じゃなくて。最初から違和感を感じたので、2人のラブストーリーには全然のれず・・・。

ところが、これは決してラブストーリーではなかった。
正直いって最初から、ハーレンの笑顔がちょっと気持ち悪く感じ、胡散臭い男だよなーって思った。ノートンは普通の男性として恋愛する役なんて似合わないんだよねーって思ってみたり。それはてっきり映画の意図と反した私の違和感なんだと思っていた。ところが徐々に、私の第一印象はあながち的はずれでなかったことがわかってくる。私の直感もなかなかのものじゃないと悦に入ったけれど、いや、私の感覚が鋭いわけじゃなくて、さりげなく胡散臭さを匂わせたノートンの演技がやっぱり素晴らしいってことだよね。事実、ハーリンが1人西部劇ごっこをした時の表情はゾッとするほどに怪しさがかいま見えて本領発揮。怪しく複雑なキャラクターを見事に演じていた。考えてみたら、ノートンが普通のドラマの普通の青年役をやるはずはないよね。予想外の方向にドラマが進んでいったことで俄然おもしろくなる。ハラハラな展開。

おもしろいという表現はふさわしくない悲劇なのだけど。現実・社会と折り合いがつけられずに、常軌を逸脱した行動をとってしまう人はいるだろうというリアリティが味わい深さをもたせる。悲しい男ではあるけれど同情の余地はほとんどない。13歳の少年を危険にさらし、17歳の少女を傷つける大人は赦せない。恋人が血を流しているのに助けるより自己防衛に走ってしまうのではもう救いようがないよね。なぜ、いつからこんな人間になってしまったのだろう・・・。

ノートンのうまさはもちろんデヴィッド・モースの存在感もカルキンブラザーズの末っ子ローリーくんのナイーブさもよい。キャラクター設定と演技の素晴らしさによって、それぞれの立場・役回りの登場人物達の衝突と絡みが物語のハラドキ感を高めてくれた。とにかく、デリケートなロニーを傷つけないでくれよーという思いが物語にノレたポイント。ロニーが最後までハーレンの言うことを聞いていたのがせつない。

デヴィッド・モースといえば、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の悲劇の発端事件を思い出したけど、これもやっぱり銃の悲劇の物語。そして、トリアー脚本の『ディア・ウェンディ』とも通じる一つのテーマである。銃を所持するから、撃ってしまいたくなり、最初の1発の発砲で取り返しのつかない悲劇が起きる。もちろん最初は人を傷つけるつもりで銃を手にしたわけではないのだけれど。

トーブが回復したことは何よりだけど、この家族が受けた衝撃は並々ならないものだよね。トラウマにならないとよいのだけれど。とりあえずそれまで以上に父が娘の行動に対して厳しくなることが目に見えてしまう。悲しいけれどその経験は、他人を信用しないことや銃を用いてでも確実に防衛をすることを促してしまうのかもしれない。

重い場面でもカントリー調音楽は心地よく響き続ける。アメリカ社会的には負け犬で、ハリウッド映画なら悪者の位置づけの男を、同情させるわけでもなく、完全に敵対視するわけでもなくこんなふうに物語るというのが何とも不思議な感覚。

ダウン・イン・ザ・バレー 公式サイト
DOWN IN THE VALLEY  2005 アメリカ
監督.脚本  デヴィッド・ジェイコブソン
出演 エドワード・ノートン、エヴァン・レイチェル・ウッド、デヴィッド・モース、ローリー・カルキン

(渋谷 シネマライズ) 5本目
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by CaeRu_noix | 2006-01-17 23:18 | CINEMAレヴュー | Trackback(16) | Comments(8)
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Commented by culty at 2006-01-18 22:49 x
TBとコメントありがとうございます。
今回のノートンはよかったですね。

無意識の行動が先に出てしまうほど怖いものはないと思いました。
ガソリンスタンドで逆ナンパ?
私はこれはあまりに急展開だなと思って見ていました。

またよろしくお願いします。
Commented by 隣の評論家 at 2006-01-19 00:12 x
かえるさん、TBありがとうございました。
本作は、いい意味で裏切られる作品だと思いました。かえるさんのおっしゃるように、ノートン君が胡散臭さを小出しにしていて絶妙だったと思います。私は、相当カルキンブラザーズの末っ子ロリーくんに感情移入してました。繊細な雰囲気が良く出ていたと思いましたよ。
Commented by CaeRu_noix at 2006-01-20 00:00
culty さん♪
ノートンはいつもイイ演技を見せてくれますが、
今回は初めての!インディペンデント作品ということで、
脚本を気に入り出演だけでなく、製作もうけおっただけありました。
恋の始まりがやけに速攻だなぁという違和感はありましたよね。
結局、それは物語の導入に過ぎなかったので後で腑に落ちました。
こちらこそ、またよろしくお願いします。
Commented by CaeRu_noix at 2006-01-20 00:06
隣の評論家 さん♪
アブナイ男を演じさせたらカンペキですよね、ノートンは。
笑顔がさわやかじゃなかったわけが後でわかってその絶妙さに脱帽。
私も一番感情移入したのはロリーくんだったかも。ナイーブ少年を見事に体現していましたよね。カルキンブラザーズはやっぱりすごい。
とにかくロリーのことが一番心配だったし、父の心配も娘の気持ちもわかるから、いちいちハラハラさせられましたー。
Commented by Puff at 2006-01-20 00:23 x
こんばんは♪
TB、コメントをありがとうございました。
何だか不思議な感覚のする映画でしたねー・・・
これは、エドワード・ノートンの演技力あってこそ、と言っても良いかもです。
>さりげなく胡散臭さを匂わせたノートンの演技
そう、意図的にですね、、一見カッコイイように見せて、でも、何処か不安定な、危うさを見せてましたね。
だんだんとその何処かおかしい?症状が出て来たその怖さったら!!
デヴィッド・モースがまたまた渋く光ってましたね。
無骨だけれど根底には優しさがある、そんな役柄がピッタリです。ウフッ♪
Commented by CaeRu_noix at 2006-01-21 01:46
Puff さん♪
不思議でしたよねぇ。
それが斬新でおもしろかったのでよし。
こんな微妙な役柄を演じきれる俳優はなかなかいないですよね。
気まずさを取り繕う時の軽薄な開き直り方だとかサイコーでした。
まったくもってエドワード・ノートンの演技力によるところが大きいです。
ノートンだけではなく、家族3人もみんなすばらしかったですよね。
デヴィッド・モースを父親にするキャスティングは見事。
そうそう、「無骨で根は優しい男」は最適です!

あ、上のコメント、ローリー・カルキンくんの演じたロニーをロリーって書いてました・・・。
Commented by toe at 2006-01-26 00:46 x
こんにちは。

ノートン良かったですね~。
私、ノートン大好きなので、それだけで満足だったりします(ーー;)
が、さすがノートンですね。
普通の恋愛映画は撮りません(^^;)
日陰のアメリカ人にあえてスポットライトを当てたのが、よかったです。
Commented by CaeRu_noix at 2006-01-27 09:58
toe さん♪
ノートンはやっぱりさすがですね。
私はファンではないので、途中までは笑顔がビミョウだなぁとか声が好きじゃないなーとか思っていたんですが・・・。(^^; 気がつけば、物語に引き込まれていました。意外と現実にいそうなタイプに見えちゃうところがすごいです。
日陰アメリカ人でもあり、アメリカを象徴しているような側面もあり、興味深いキャラクターでしたね。
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