かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『タブロイド』
2006年 02月 10日 |
興味深いエクアドルの社会派サスペンス

子供ばかりを狙う連続殺人犯“モンスター”を追いエクアドルにやって来たタブロイド番組の人気レポーターのマノロたちTVクルーは、被害者の子どもの葬儀を取材していた。被害者の双子の兄弟のインタビューを始めようとした時、その少年が駆けだして車にはねられてしまった。



コロンビアとエクアドルで起きた2件の連続殺人事件から着想を得ているそうだ。

エクアドルが舞台の映画というのは珍しい。
犯罪や貧困の問題が蔓延するこの国では現在、年にせいぜい3,4本の映画が撮られているだけだという。そんなエクアドル出身の監督作がサンダンス国際映画祭などで高く評価されたのだ。

運悪く交通事故を起こした男が、立て続けに子ども2人を亡くした親の怒りのままに住民からリンチを受けるシーンは残酷だった。その親のショックはわからなくもないけれど、その怒りの暴力行為を止めるどころか荷担する集団心理が恐ろしい。そんな酷い暴力シーンに圧倒されつつ、たまたま事故を起こしてリンチを受けたビニシオは哀れな男として印象づけられるのだ。

犯人はいったい誰なのか。主人公のTVクルーと共に事件の謎に迫る。
情熱と哀愁のラテン音楽がマッチして、サスペンスフルな淀んだ空気にとらわれたまま物語の行方に釘付けになってしまう。事件の展開や謎の人物との駆け引きの仕方など一つ一つは目新しくもないのだけど、飽きさせない語り口はなかなかのもの。

結局、お酒がいけなかったのかしら?と思えてしまったのはちょっと残念だけど、ハンニバル・レクター的にサイコな犯人という方向へもっていくよりはいいか・・・。

それよりもスクープを得たい一心で一線を越えた行動をとってしまう主人公のTVクルーたちを描き出したことは興味深い。堅実に仕事をすることよりも手柄を立てることを優先させてしまうという心理は、マスコミ関係者に限ったことではなく、社会で仕事に携わる者なら理解できるものだろう。しかし、そんなよこしまな気持ちで行動をしたらどうなるのか。とりわけ、このような大きな影響力をもつメディアに携わる人間が、真実を追求することを見失ってはいけない。彼らの選択によって不幸な結果を招いてしまったという皮肉な筋書きがよい。

皮肉な結果を招いたのは、番組で取り上げられてビニシオに人々の同情が集まったからであった。日本でも日常的にメディアによって、著名人や犯罪者や外国に対する国民の感情が大きく揺り動かされている。メディアのあり方についてもまた考えさせられるのであった。

タブロイド  公式サイト
CRONICAS 2004 メキシコ.エクアドル
監督.脚本  セバスチャン・コルデロ
出演 ジョン・レグイザモ、レオノール・ワトリング、ホセ・マリア・ヤズピック
(VIRGIN TOHO CINEMAS六本木ヒルズ) 19本目
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by CaeRu_noix | 2006-02-10 23:12 | CINEMAレヴュー | Trackback(16) | Comments(12)
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Tracked from 映画通の部屋 at 2006-02-14 20:09
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タイトル : 『タブロイド』レビュー/事件と報道の皮肉なあり方
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タイトル : 「タブロイド」
そんなに多く見たわけではないが、ラテン・アメリカを舞台にした映画はそれだけでインパクトがある。今の日本では、村や町のほとんどの人が下層の生活をしているという状況はまずなく想像できない。エクアドルの生活を切り取ったような映像だけでも、興味をそそられるとともに、得体の知れない怖さを感じます。 連続殺人鬼「モンスター」の被害者の葬儀の場で、被害者の弟が車にひき殺される事件が起こった。犯人は聖書の販売員ビニシオ(ダミアン・アルカザール)。彼は逃げ出そうと思った人たちにリンチにあう。ビニシオの息子、身重の...... more
Tracked from amapola at 2006-02-20 20:34
タイトル : タブロイド/クロニカス
モンスター(児童を性的虐待の末殺害)の異常心理に斬り込もうとした映画ではなく、「タブロイド」という題名どおり、メディアのもつ力の脅威と、その作りこまれた映像の完成度と表裏一体の危うさがテーマ ... more
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タイトル : タブロイド (試写会)
【映画的カリスマ指数】★★★★☆  真実の追究の果てにあるもの・・・。... more
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タイトル : 『タブロイド』〜外はねレオノール〜
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タイトル : 『タブロイド』を観ました。
TVと言うもの、メディアの力は恐ろしい。 報道する側、創る側の責任と義務。 視聴する側も全てを鵜呑みにするのではなく、疑問を持つ事の必要性。 私は“モンスター”がどうのと言うよりも、上に書いたような事を強く感じました。 観客に“問題提起”する作品です....... more
Tracked from no movie no .. at 2006-04-09 23:30
タイトル : タブロイド(04・メキシコ・エクアドル)
「ホテル・ルワンダ」プレミアムナイトの折、唯一流れた予告編がこの「タブロイド」。「『シティ・オブ・ゴッド』を凌ぐ衝撃の~」とチラシには書かれているが、スミマセン、「シティ・オブ・ゴッド」見てません。山形での上映は1週間。見終わったとたん、目を伏せてしまった・・... more
Tracked from 映画評論家人生 at 2006-04-11 06:00
タイトル : タブロイド
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Tracked from ネタバレ映画館 at 2006-04-27 09:41
タイトル : タブロイド
 人気ドキュメンタリー番組“真実の1時間”。司会者はスパイダーマンと戦ったドック・オク(アルフレッド・モリナ)だ!... more
Tracked from シネマでキッチュ at 2006-05-07 14:52
タイトル : タブロイド
「タブロイド」。 ワールド・シネマは面白いわ。 エクアドルの映画。 無色透明、無味無臭なハリウッド製サスペンス映画とは対極にある、その国固有の匂い、色、肌触り・・・ワールドシネマならではの個性にひきこまれます。 エクアドルの映画は珍しいと思ったら、エクアドルは年間3~5本しか映画がつくられていないそうなの。 それなのにとってもハイレベルな映画でびっくり。 それもそのはず製作が「天国の口、終わりの... more
Tracked from とんとん亭 at 2006-05-21 22:43
タイトル : タブロイド
「タブロイド」 2006年 メキシコ/エクアドル ★★★★ 昨日、公開されて26日(金)で打ち切りなので(そんな殺生な~~!!)慌てて観に行ってきました。 製作年度は2004年。私は 日本での公開年数を表示しています^^ いや~~ 予告でも「凄い映...... more
Tracked from 映画をささえに生きる at 2006-06-03 21:29
タイトル : タブロイド
”タブロイド”は通常、大衆向けゴシップ系新聞を指しますが、今回登場するのはテレビ局。煽情的な内容に走るマスメディアを意味してると思われます。... more
Tracked from いつか深夜特急に乗って at 2006-08-19 06:01
タイトル : タブロイド
「タブロイド」★★★★ (盛岡フォーラム1)2004年メキシ... more
Tracked from シナリオ3人娘プラス1の.. at 2006-12-16 17:02
タイトル : タブロイド
「タブロイド」というメキシコ映画をDVDで見ました。 東北新社 タブロイド マノロはタブロイド番組の超人気レポーター。取材チームであるプロデューサーのマリサとカメラマンのイバンと共に、子供ばかり狙う連続殺人犯“モンスター”をおってエクアドルにやってきま... more
Commented by 隣の評論家 at 2006-02-14 20:12 x
かえるさん、こんにちわ!TB&コメントありがとうございました。
私もエクアドル映画は、本作が初めてでした。
>大きな影響力をもつメディアに携わる人間が、真実を追求することを見失ってはいけない。
ですね!エクアドルがどうとか言う事よりも、この辺にガーンときましたです。
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-15 00:45
隣の評論家 さん♪
近頃の世の中を見るにつけこのテーマは切実ですよねぇ。
発信する側の人たちには誠実な姿勢をお願いしたいと同時に、受け取る側の私たちも賢くならなくてはなーと思いました。
隣の評論家 は社会派な作品をきわめてますね。(^^)
Commented by chatelaine at 2006-02-15 01:36
かえるさん、TB&コメントありがとうございました♪
結局お酒なのか…?
単純に酔っての犯行なのではなくて、お酒は、なにか、欲望へのスイッチとしての機能なのかも?と思いました。でも、自分でも「飲むとやばい」と自覚していたようですし…うーん。

リンチシーンは衝撃でした。おっしゃるように、集団の狂気の発露という感じで…。
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-16 12:53
chatelaine さん♪
なるほど。欲望のスイッチかー。
それは、触媒に過ぎず、彼は起こすべくして犯罪を起こしたということなんですかねぇ。いってみれば異常者の域?
普通の人が起こす突発的な犯罪については大いに理解できる私ですが、残酷な連続殺人犯の心理というのが割り切れないことが多いです。
理解できない異常者としてしまうしかないのかな・・・。
飲むとやばいという自覚があったなら、どうにかできた可能性もあったのだろうか・・・。ううむ。

前回のコメントで隣の評論家さんの敬称を略していました。すみませんー
Commented by Puff at 2006-02-16 17:22 x
ドモドモー♪
TB、コメントをどうもありがとうです。

この映画ですね、、エクアドルというアバウトなお国柄と、かえるさんが仰るように「情熱と哀愁のラテン音楽」と、そして、そこで繰り広げられるサスペンスとが一体となって、混沌とした不思議な魅力が溢れてましたね。
そしてそして、メディアのあり方をつくづくと考えさせられる映画でした。
名誉欲と倫理観に揺れ動くけれど、結局は・・・ですものね。
あの「ふぅ・・・」と言う嫌ーなラストと共に、ダブルで後味が悪くなったのでした(・・・その後味の悪さが狙いなのだけれどね、ふぅ・・・)
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-18 10:36
Puff さん♪
こういう題材の映画自体はさほど斬新でもないのに、ラテンの味付けによるものなのか個性的な面白さがありましたよねー。濃厚さがポイントかしら。
「ここは南米なのに」という台詞も笑えました。
エクアドルのメディア事情はよくわからないけれど、多様な媒体による情報が行き交っている先進国と比べて、彼らのTV番組の存在感はかなり大きなものみたいでしたよね。そんなわけで、日本の事情とはまた違うメディアの影響力の大きさが痛かったですね。(日本はいろんな媒体があるわりに、同じようにメディアに動かされがちなのがより痛いともいえるけど・・) 
Commented by borderline-kanu at 2006-02-18 12:44
あのお酒はどうなんでしょうね。酒だけのせいではないと思うけど、個人的には2面性を描いて欲しかったと思います。 カヌ
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-19 22:44
カヌさん♪
犯人の人間性は謎に包まれていましたよねぇ。
生まれつきの性分なのか何なのか、モンスターの部分にもう少し説得力がほしかったですよね。
Commented by 丞相 at 2006-02-21 00:15 x
こんばんは、TBありがとうございました。
賄賂を受け取らない刑事について、「ここは南米だぞ」というような
セリフが一番印象に残りました。こういう、なんでもありな雰囲気は、
中南米を舞台にした作品にはよくあるものですね。
メディアの送り手・受け手などの問題は、日本でも同じです。
その問題意識が良い線をついているだけに、もう少し工夫すれば、
かなりの作品になったとは思うのですが・・・。
あっさりとした展開が、あだになったのかもしれません。
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-21 17:02
丞相 さん♪
その台詞は印象的でしたよねぇ。ちょっと笑えました。
賄賂、汚職のない所なんてないのかもしれませんが、
とりわけ南米の国々はやっぱりそのへんも際立っているでしょうね。
メディアの送り手・受け手の問題はどこでも同じですよね。
でも、年に300本も映画が製作される日本ではこういったテーマの作品は少ないですよね。片や年に3,4本しか映画が作られない国でこういう現代的なテーマが取り上げられたところは評価に値するなぁと思えました。世界各国の完成度の高い作品を観てしまっている私たちから見ると”もう少し工夫すれば・・・”という思いも無きにしも非ずですが、これはこれで見ごたえがあったと思いますー。
Commented by カオリ at 2006-04-09 23:28 x
こんばんは~。本日見てきました。聖書の言葉がもっと理解できたらな・・・と思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2006-04-11 01:06
カオリ さん♪
ご覧になりましたかー。
聖書にそんなに重要な意味があったのですっけ?
信仰心があるならば、彼も自戒できなかったものかと思えたりします。
正常な状態ではないのでしょうかね? 犯人像には疑問が残るばかりでした。
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