かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『単騎、千里を走る』
2006年 02月 16日 |
高倉健に泣かされる。素朴な人情に感動。

漁師の高田は、長年の確執を抱えたまま病に倒れてしまった息子・健一のため、仮面劇を撮影するために中国大陸奥地への旅を決意する。



「単騎、千里を走る。」というタイトルは、「三国志」に由来する中国の仮面劇の演目からとられている。

高倉健の映画を映画館で観るのは初めて。
寺島しのぶはチャン・イーモウの好みじゃないよなぁって思ったけど、日本編は別口だったのね。納得。
始まりはまるでTVドラマ風味だったので不安になった。息子が不治の病で余命幾ばくもないなんてお涙頂戴路線な設定にしてもね・・・。
いや、ところが、チャン・イーモウの素朴な人情物語はやっぱり泣けるー。

イーモウ映画にしては映像にあまり見どころがなかったのは残念だったけど、物語にはハマれた。だって、ロード・ムービーなんだもん。旅する物語なんだもん。「愛より強い旅」高倉健バージョンじゃないか。ハラハラドキドキ異文化体験。ミャンマー国境に近い雲南省麗江市までいい日旅立ち。ため息が出るほどの映像美はなかったものの、世界遺産にも登録されている麗江古城の街並みは素晴らしかった。

高倉健らしさというものはよくわからないけれど、こういうまっしぐらな父さんには心を動かされてしまう。VIDEOを見て、自分が中国へ行こうというのは唐突だけど、そういう発想はよくわかる。息子には会いたくないと言われてしまい、自分にできることはそれだと思い立ったらもう止まらないもの。不安を感じるヒマもなく突き進むその姿にせつない気持ちにさせられて涙。

李加民の演じる仮面劇を撮影することが旅の唯一の目的だったはずなのに。それはスムーズには行かず、旅の計画はドンドンずれていく。漁村でずっと同じ日常を繰り返してきたに違いない男がこんな異文化体験をしてくれることは感慨深い。言葉の通じない異国の地で予想外の事態に遭遇してもあきらめない高田さん。ハラハラしつつも、肝が据わった彼のまっすぐさに何度も胸をうたれる。同時通訳のシーンもおもしろく、案内役の彼らの親切心にも温かな気持ちになった。困難だらけだけど、なんてステキな旅なんだろう。

息子との確執を抱えてきた男が、李加民親子のために一肌脱ぐことになるという運びもオツ。自分の息子とは長い間心を通わせていなかった父が、李加民の息子ヤンヤンを抱きしめて朝を迎えるなんて。ヤンヤンの素朴な笑顔にはかなわない。カメラのフラッシュとホイッスルで合図を送る船乗りの知恵には感心。そして、デジカメの本来の働きを発揮した刑務所での写真披露のシーンは感動いっぱい。その場にいた受刑者たちそれぞれが感動している様子もとらえる所が心憎い。

読売新聞、毎日新聞の評には物語が中途半端で物足りないとあったけれど、直球ヒューマン・ドラマとは違うこのずらし方がいいんじゃない。目的や物事の意義は常に軌道修正されていくのが人生だもの。当初の旅の目的であった仮面劇の撮影は実は重要ではなかったという展開がおもしろい。かつてのチャン・イーモウ作品に通じるエッセンス。そして、その旅は決して徒労だったわけではなく、李加民親子にも高田親子にも温かなものをもたらしてくれた。大らかな大陸で父と息子、日本人と中国人の心の交流にひたすら感動。まごころは伝わるものなんだなー。

単騎、千里を走る  公式サイト
千里走単騎 2005 中国/日本
監督 張芸謀/降旗康男
脚本 ヅォウ・ジンジー
出演 高倉健、寺島しのぶ、リー・ジャーミン、ジャン・ウェン
22本目
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by CaeRu_noix | 2006-02-16 23:18 | CINEMAレヴュー | Trackback(13) | Comments(4)
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Tracked from サーカスな日々 at 2006-06-24 21:35
タイトル : NO.156「単騎、千里を走る。」(中国/チャン・イーモ..
チャン・イーモウは憧れの健さんを通じて、 自分の青春時代(原点)に還ることができた。 高倉健。1931年生まれ。銀幕デビューは1956年。すなわち、俳優歴50周年を迎えたことになる。出演した作品は200本を超える。 邦画がプログラムピクチャーとして、毎月のように各社が新作を送り出していた頃、高倉健は、少ない年でも年間8本、多い年は年間13本もの映画に出演している。とんでもない数である。70年代初頭でも、僕は映画館から襟を立て肩をいからせて街にでてきて「ひとり健さん気分」を味わったものである。それで...... more
Commented by sabunori at 2006-02-25 22:48
かえるさん、こんにちは。
TBさせていただきました。
いやいや・・・チェン・カイコー監督は本当に素人役者を探すのがうまいですね。
健さんがケータイやデジカメを使いこなす姿に「う~~む」とうなりつつも
それらの便利さを知った上で顔と顔をつき合わすことによって生まれる
コミュニケーションの大切さが伝わってくる作品でした。
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-26 00:53
sabunori さん♪
ふっふっふ。作風もかぶっているし、混同してしまいがちですよねぇ。
チェン・カイコーと! あ、プロミスを観に行かなくちゃー。
チャン・イーモウ映画に出てくる田舎の素朴な人々はすばらしいですよね。
漁師という職業の先入観を裏切って、カメラを使いこなしていましたよね。
昔ながらの人情やふれ合いの素晴らしさをうたっていながらも、イマドキの通信機器、デジタル製品を否定するのではなくて、それらをもコミュニケーションツールとしてうまく使っているというのがすごいですよね。それでいて、やっぱり実体験と直接のふれ合いから生まれる温かなもので感動させてくれるんですよね。見事です。
Commented by sabunori at 2006-02-27 05:51
どっひゃー!
私としたことが!
最近弱いんですよ、ヒトの名前が・・・。(自分では正しく書いているつもり)
「トシ」でしょうか!?認めたくないが。
「プロミス」早く観てください~~。
Commented by CaeRu_noix at 2006-02-28 11:19
sabunori さん♪
ノープロブレム。この2人はマジでややこしいですー。
もとはチャン・イーモウがチェン・カイコー作品で撮影監督だったんですよね?でも、最近の多様なジャンルへの挑戦はイーモウの後をカイコーが追っかけているように感じたりもして・・・。
「プロミス」は近いうちに観ますー。
私も外国人の人名を覚えるのはかなり不得意です。好きな監督の名前はがんばって覚えるようにしていますが。空で言えない人名は多し・・・。
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