かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『ニュー・ワールド』
2006年 05月 15日 |
水が美しい。木々が美しい。失ってしまったものたちを思う。

イギリスの冒険家ジョン・スミスとネイティブ・アメリカンの少女ポカホンタスの実話をもとにした物語。
17世紀初頭、イギリスからやって来た人々は先住民族が住む新大陸アメリカのヴァージニアに入植。



船がアメリカの港に到着するシーンは映画で何度も観ているけれど、先住民族側の視点で陸に近づいてくる船を眺めるのは初めてかもしれない。大きな船に驚きと恐れを抱き、自分たちの住む土地が侵されていくのだという悲しみの予感。そんなふうに、イギリス人の開拓者側からのみでなく、先住民族たちに接近して寄り添って撮られるこの新大陸物語には初っぱなから惹かれてしまった。ジョン・スミスの心の声として発せられる思いに共感。所有の概念もない先住民族の純真さに心打たれる文明人の思い。野性への憧憬。文明を手にした我々は大切な何かを失っていると21世紀を目にした私はスミス以上にせつなさを覚える。

そのような思いは、ニコラス・ローグの『WALKABOUT 美しき冒険旅行』を観た時に受けた感銘に似ているかもしれない。そして、その感慨はその時の方が大きく深いものだった。自然描写の美しさにしても、WALKABOUTの映像の方がグッと惹かれるものがあった気がする。
大自然の美しい風景映像が大好きな私は、マリック監督が紡いだ映像詩の世界を大いに満喫した。だけど、美しい映像があふれる映画は他にもあるので、その点だけでいうならば、WALKABOUTの方がよかったなぁとか、ソクーロフの『ファザー、サン』や『孤独な声』みたいな色調とカメラワークでとらえる風景の方がもっとウットリしたよなぁとか余計なことをも考えてしまい、陶酔一歩手前だったかな。

アレキサンダーの金髪がいただけなかったコリン・ファレルも今回はとてもいい。17世紀の英国紳士なクリスチャン・ベイルもなんてステキなんでしょう。ポカホンタスちゃん役は15歳の少女だなんて驚きだし。さすが寡作の名匠作品だけあって、わき役陣も存在感がある。多くは語られていないのに、表情一つでグッときてしまう名演技の数々。そんなわけで、節々で心揺さぶられながら、この物語を興味深く見守った。

だけど、ラブストーリーパートそのものにはそんなにときめかず。文明人が無邪気なポカホンタスに惹かれる気持ちはよくわかるけど、2人の男が少女に強い恋愛感情を抱いたというのはしっくりこなかった。好みの問題?実話というなら逆らえないけど・・・。それと、スミスとポカホンタスの物語だと思って見ていたのに、スミスは後半どっかへ行っちゃったから、戸惑ってしまった。最初から、ポカホンタスに感情移入していれば違和感はなかったのだろうけど、スミス視点で見ていた私は拍子抜け。こういう話だったとは・・・。

大自然の描写ばかりでなく、イギリスの宮廷や庭園の完璧な美しさに感嘆。『リバティーン』をマリック監督が撮ってくれたらよかったなぁなんてことを思ってみたり。クリスチャン・ベイルはすごくステキなんだけど、ロルフは優しい紳士なんだけど、若きポカちゃんを妻にして、英国に連れ帰るというのには違和感。いや、実話だったら、仕方ないんだけど。せつなさを感じる前に引っかかってしまった。と、そんなふうに物語には全面的にはノレなかったかも。映像世界に対する感銘と悦びも断片的だったかな。かなり好み系の作品でありながら、ど真ん中にはハマらず。

ポカちゃんストーリーへの共鳴度はともかく、感慨深い新大陸の文明社会の始まりの物語でした。破壊してはいけなーい。この神々しいほどに美しい自然をスクリーンで堪能できたのは幸せ。

ニュー・ワールド  公式サイト
THE NEW WORLD 2005 アメリカ
監督.脚本 テレンス・マリック
撮影 エマニュエル・ルベツキ
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 コリン・ファレル、クオリアンカ・キルヒャー、クリストファー・プラマー、クリスチャン・ベール、デヴィッド・シューリス
.
[PR]
by CaeRu_noix | 2006-05-15 01:05 | CINEMAレヴュー | Trackback(8) | Comments(12)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/3093791
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from I am invinci.. at 2006-05-15 06:02
タイトル : ニュー・ワールド
The New World 公開中なので控えめに イギリスから黄金を求め新世界を開拓しに来たニューポート船長(クリストファー・プラマー)一行は、ネイティブ・アメリカンの住む地にたどり着いた。 食料が底をついていた彼らは、反逆罪で裁かれるはずだったスミス(コリン・ファレ..... more
Tracked from JUNeK-CINEMA.. at 2006-05-15 07:55
タイトル : ニューワールド
ずいぶん前に見たのですが、やっと感想をアップにする気になりました。 始まったばかりの頃に六本木のバージンシネマで見たけれど、小さいスクリーンでしかやってなくて、ちょっとがっかり。 はじめにお断りいたしますが、jesterはコリン・ファレルは昔全然だめでした。 ..... more
Tracked from キマグレなヒトリゴト at 2006-05-15 12:41
タイトル : 『ニューワールド』 映像の美しさとハの字眉毛。
ライトなんかを使わずに自然光を取り入れた作品 なんだそうで、確かに優しいリアルな光だったような 気がします(言われたからそう思う?)。 水だとか木々の間から差し込む光だとか、 だんだん暗くなっていく空とかきれいだったなー。 浅瀬へ進む川の終わりも何だかとてもキ..... more
Tracked from 映画通の部屋 at 2006-05-15 21:29
タイトル : ニュー・ワールド
「ニュー・ワールド」 THE NEW WORLD/製作:2005年、アメリカ 1... more
Tracked from It's a Wonde.. at 2006-05-16 07:28
タイトル : ニュー・ワールド
伝説の監督テレンス・マリック7年振りの新作。 そしてイギリス人のアメリカ入植時の伝説である ポカホンタスとスミス将校の物語を映画化。 前作「シン・レッド・ライン」は3時間を越える作品。 自然描写が綺麗だったという印象が強く残っていて、 そんなに長...... more
Tracked from travelyuu とら.. at 2006-05-16 19:41
タイトル : ニュー・ワールド THE NEW WORLD
コリン・ファレル、クオリアンカ・キルヒャー、 クリスチャン・ベイル、クリストファー・プラマー主演 1607年アメリカ大陸の東海岸、ヴァージニア アメリカ先住民の王ポウハタンを中心とした民族が住んでいました ポウハタンの娘聡明で快活なポカホンタスも豊かな大自然を恵みを受け 家族達と一緒に平和な生活をしていました 英国から開拓を行う為クリストファーを隊長とする入植隊がやってきます その中に元兵士スミスもいて どうやら隊の規律を破ってしまったようで 処刑される寸前でしたが クリストファー隊長が許...... more
Tracked from 狐の穴にて at 2006-06-05 19:20
タイトル : 『ニュー・ワールド』
さざ波、川のせせらぎ、風のそよぎ、鳥のさえずり。自然が作り出す 音に心地よく包まれる。川面に光が反射し、木々の葉が光に透け、草原が揺れる。自然が作り出す美しい情景に魅入られる。 ... more
Tracked from いつか深夜特急に乗って at 2006-08-01 05:52
タイトル : ニュー・ワールド
「ニュー・ワールド」★★★★ (名劇2)2005年アメリカ ... more
Commented by 哀生龍 at 2006-05-15 06:10 x
>実話というなら逆らえないけど・・・
あははは・・・
哀生龍もポカホンタスが何故あんなに愛されたのか、どうもピンとこなかったのですが、“実話”だからアレコレ言わずに受け入れないと先に進めない、基本設定ですからねぇ(苦笑)

>大自然の描写ばかりでなく、イギリスの宮廷や庭園の完璧な美しさ
ありのままの美しさと人工的な美しさ。 未開の世界の素晴らしさと文明社会の素晴らしさ。 ポカホンタスにとっての新世界と、イギリス人たちにとっての新世界。
色んな対比によってそれぞれの良さを感じ、“文明社会”が一番素晴らしい世界と言う訳でもないし押し付けるようなものでもない、と改めて感じちゃいました。
Commented by jester at 2006-05-15 07:54 x
こんにちは。
わたしは『映像はきれいね』と思いつつ、音楽がひっかかってしまい、(モーツアルトのしつこい使い方にさめてしまった)やっぱりつぼることができませんでした。

>2人の男が少女に強い恋愛感情を抱いたというのはしっくりこなかった。

そうそう、私はポカちゃんがスミスに惹かれる気持ちもよく分からなかったです。コリンファンの人からは「恋に落ちるのに理由は要らない」って怒られましたが・・・・
私も感想を書いたので、TBさせていただきました。
Commented by minori at 2006-05-15 12:40 x
こんにちわ~。
いつもよりうるさくないコリンちゃんはよかったですが
やっぱり眉毛は気になりました。そして絶対クリスチャンだろうな、
というしょうもない感想を抱きましたよ(笑)
映像はキレイでした。WALKABOUTもよかったですが
またちょっと違うアングルもあったり(木漏れ日を見上げるシーンは
好きです)楽しめました。ストーリー云々より景色でしたね。
TBしまーす。
Commented by CaeRu_noix at 2006-05-15 12:42
哀生龍 さん♪
ピンとこないですよねぇぇ。彼女が魅力的なのはわかるし、抱きしめたいとか守ってあげたいとかいう思いもわかるのだけど。彼女のためを思ってあえて姿を消すという深刻さや、結婚を申し込んで母国に連れて行くという覚悟はどうもしっくりきませんでしたー。
私はこの物語を知らなかったので、てっきり舞台はアメリカ大陸オンリーだと思っていたから、イギリス庭園の美しさには予想外の感銘がありました。ポカちゃんにとっての文明社会である新世界も描かれているなんて。
観る前は、(“文明社会”が一番素晴らしいどころではなく、逆に)文明批判的なテーマを感じさせる内容なのかなぁと思ったんですが、そういう強い姿勢でもなくて、遠くからこの地球と人間達の営みを眺めているという感じでしたよね。
Commented by CaeRu_noix at 2006-05-15 12:43
jester さん♪
重厚な交響曲よりも軽やかなピアノ曲の方が好みの私は、音楽の使い方は概ねよかったのですが、ちょっとしつこい使い方ではありましたよねー。ウザイと思ってしまうのもわかりますー。(私は大作映画の感動を盛り上げる壮大な音楽が苦手)
私も個人的にはコリン・ファレルに恋には落ちないですー。でも、17世紀初頭の先住民の10代の首長の娘の気持ちなって、まるで想像もつかないので、洋服を着た文明人に惹かれてしまうことはありえるかなぁととりあえず思えました。でも、痛いほどにその気持ちに共感するにはほど遠く・・・
Commented by CaeRu_noix at 2006-05-15 13:48
minori ちゃん♪
眉毛は仕方ありませんー。w この時代の冒険家が整った細眉だったら怖いし。髪が長めなのも意外といいかも。とりあえず金髪のズラをかぶらなければ許せます。しかし、もっちろん選びたいのはクリベーですとも。日本人女性はクリベーがいいっていう人の方が多そうよね。そういう点では、心持ちミスキャスティングなのかしらん。
WALKABOUTは原生林だし、全然風景は違うんですけどね。原住民との出会いつながりで思い出しちゃいました。
美しい景色はもちろん楽しみましたが、マリックワールドですから、ただ目でそれを楽しむというばかりでなく、精霊のささやきやガイアの鼓動に感動したり、そこにあるマリックの深遠な哲学、彼の世界観にうたれたりしたかったのですが、目先の恋物語に引っかかってそこにまで到達できなかったのでありました。
Commented by 隣の評論家 at 2006-05-15 21:36 x
かえるさん、こんにちわ。
アタクシが見た時は、レディースデイの夜の丸の内だったのに、とんでもないくらいガラガラだったんですよー。かえるさんの時はどうでしたかー。
そうは言っても。大自然大好きなアタクシにとっては、癒されまくりの素敵な作品でしたぁ。
>アレキサンダーの金髪がいただけなかったコリン・ファレルも今回はとてもいい。
ふふふ。金髪似合ってなかったですわねー。今回のコリンは、抑えた感じで新しい一面が見れたと思いました。アタクシの周りでは嫌われまくってますけど、プライベートは置いといて、俳優さんとしてはいい仕事してくれてると思っておりまする。(何だかいつも少数意見でございます)
Commented by kazupon at 2006-05-16 07:32 x
かえるさん、テレンス・マリック監督は映像詩人なんて言われてますけど
今回はひょっとしたらエンタメ路線の映画にしようと思ってたんじゃないか?という気がしました、、でもどうやってもあぁなってしまうというか。。
好きなんですけど(笑)
ポカホンタスはジョンというより知らない世界に惚れたのかなと
思いました。でイギリスに行って、ジョンに再会して初めてそれに
気付いてロルフに対する愛を認識したというか。。あのラスト
結構好きなんです。クリスチャン・ベール良かったですね。
Commented by CaeRu_noix at 2006-05-17 17:11
隣の評論家 さん♪
拡大上映系作品はシネコンのレイトショーで観ることの多い私なんですが、公開後3週間もたっていましたから、そりゃーもうガラガラでしたよ。一列を独り占め。でも、私はすいている映画館が好きなので、それはそれでOKです。内容的には、単館上映でもおかしくないようなものじゃないですかね。それがメジャー路線で上映されちゃったら、こんなにすいていてもまぁ仕方ないかなと思いますー。私も大自然を美しく映しだした映画は大好きなので堪能しましたよー。
コリン・ファレルはルックス的には好みじゃないし、好きでもないけど、俳優としては私もかっていますとも。「ジャスティス」や「マイノリティ・リポート」の頃から、主役に負けない演技力を見せてくれていましたよねぇ。金髪に比べたら全然いいっすよ。「ダブリン上等」もすげーハマり役でしたわ。
Commented by CaeRu_noix at 2006-05-18 00:52
kazupon さん♪
エンタメにしたかったのもしれませんねぇ。初っぱなの先住民のコミカルな動きを見た時は、ちょっぴり娯楽系の香りがしました。でも、やっぱりやっぱりなんですね。美しいからいいんですけどね。ちょっと意図がつかみきれなかったような感じです。
そうですね。ジョンは未知なる世界の象徴なのかもしれませんね。私はそっちの方の気持ちはわりとしっくりきたんですよ。(でも、2人の男がポカちゃんにゾッコンになるのが腑に落ちなかったんです。ひがみかしら?)ジョンと再会して、ロルフへの思いがわき上がるというシーンはよかったですね。恋愛映画の王道。恋や野性のものに近くて、愛は文明的なものに近いとか?そういえば、テレンス・マリックは「ベアーズ・キス」の脚本にも名を連ねていたんですよね。結構ロマンチックな恋愛観をもっているのかなぁ。
Commented by いわい at 2006-06-05 19:20 x
こんにちはー。
物語部分にはのれないなーと思いつつ、音楽と映像にやられてしまいました。
何かサブリミナルなものでもいれているのか?と思ってしまうくらいに、ジワジワと。
スミスがポカホンタスに惹かれる気持ちはわかったけれど、ロルフはなぜなのかは、わたしにもよくわかりませんでした。
『ベアーズ・キス』にテレンス・マリック連ねていましたか。全然忘れていましたー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-06 12:46
いわい さん♪
映像と音楽は美しすぎましたよねぇ。物語にのれなくても、うっとりの連続でした。
テレンス・マリック監督は自分でもカメラをもって撮影するらしいですね。3分の1くらいは自身で撮ったとか。そんなこだわりがこの美しい映像をつくりあげるんだなぁと・・・。ただ、私が美しいと思うのは、断片的であって、この世界に陶酔とまではいかなかったんですよねぇ。ソクーロフの撮る森の方が私好みだったりしました。
どういうつてで『ベアーズ・キス』を書くことになったのかが謎ですが、野生への思いには通じるものがあるような気がします。実に興味深い人ですよねぇ。
<< ニュージーランド映画祭で 『リ... PageTop 『夜よ、こんにちは』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon