かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ドッグ・デイズ』
2006年 06月 06日 |
神経を逆撫でする強烈な映像とエピソード。
安らぎを与えない張りつめた空気感とそこにかいま見えるリアリティが秀逸。

ウィーン郊外の住宅地に住む人々の1年中で最も熱い数日間を描く。



強烈な映像があると、すごいことになっていると、先に観た人たちが言葉にしていたのだけど、ああ本当に、ボカシなしでこういうのアリなんだーとのけぞってしまうショットが登場。R-18指定なのは当然のことながら、こういう禁断ショットにはそうそうお目にかかれない。官能を追求してのセクシャルなシーンというのではもちろんなく、おぞましさにあ然としてしまう。この人たちは役者なのだろうか、こういう撮影をしてどのくらいギャラをもらえるのだろうか・・・。

そんなえげつないスワッピングショットはとても挑発的なのだけど、挑発のためだけにあえて差し込まれたものというのでもなく、彼らのすさんだ日常を象徴するかのようにインパクトを残す。そして、次々と不快感を呼ぶ憂鬱なエピソードが登場。ヨーロッパの夏は湿度が高くないはずなのに、ジメジメとまとわりつき、フラストレーションが最高潮になっていく。"ドッグ・デイズ"とはおおいぬ座のシリウスが天頂に輝く1年中で最も暑い日々のことらしい。そんなジリジリとした暑さの中の不穏な空気感の描写が見事。普通とは言い難い特異な日常の風景もやけにリアルに感じられるのがすごい。

郊外の人々の病んだ日常というと、ソロンズの『ハピネス』や『アメリカン・ビューティ』を思い出したのだけど、アメリカ映画はもっとブラック・ユーモアとして笑えるものになっているのが常。コメディとしても描くことのできそうな状況をとことんドライに神経にさわるような見せ方をしてくれるのがヨーロッパ映画。容赦ない性と暴力の応酬。ハネケやトリアーやノエの作品を連想しつつも、どれとも違うタッチかなぁと思う。それらの作品で免疫のついている私は、それほどに激しく嫌悪感や不快感は感じずおもしろく見ることができた。恐ろしく奇妙だけど惹きつけられて止まない群像劇。

といっても、年下の恋人を持つ女教師が恋人ヴィケールとその友人ラッキーにしつこく乱暴な嫌がらせをされるところとその後に銃を持ったラッキーがヴィケールに謝らせるシークエンスなどにはさすがに参った・・。その場面の被害者は共感してしまうタイプではないのに、傍観はできず、脅される立場側の緊迫したハラドキ嫌悪感を共有し追いつめられてしまうのだ。魅力的な登場人物なんていないに等しいし、彼らと自分に共通点があるなんて思いたくもないのに、その世界にどっぷりとハマらずにはいられない手腕に脱帽。

序盤からとりわけ心をつかまれてしまったのはヒッチハイク好きのアナ。ベストテン・シリーズは最高だ。アナの車中での神経逆撫でしまくりのトークは最高だ。最高なんだけど楽しく笑えるわけではなくて、最悪にいたたまれない気持ちにもなる。アナのようにいつも同じ服装をして、徘徊をしている女性を思い出したりして。これは虚構の出来事と割り切れないから痛い。全ての強烈なエピソードも極端だけど、誰もがそんな行動をとってしまいかねないという現実味を孕んでいる。豊かな現代人のリアルな病巣が見えるから突き放させずに痛い。

病んでいるんだけど、その孤独感や愛への飢餓感が見えてくるからせつなくもある。空っぽのプールでのスカッシュシーンにはやられたし。最後にアナが門の自動点灯で無邪気に戯れているシーンにもウルっときてしまう。愛犬が殺された時に「人間は恐ろしい」とつぶやく老人。愛犬が殺された時くらいしか人間を恐ろしいと思わないというのが滑稽に思えてしまったり。哀しくて滑稽な人間たちがこんなふうに生きているんだな。

ドッグ・デイズ 公式サイト
HUNDSTAGE /DOG DAYS 2001 オーストリア
監督.脚本 ウルリヒ・ザイドル
出演 マリア・ホーフステッター、ゲオルク・フリードリヒ
(渋谷シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2006-06-06 07:46 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(10)
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Commented by chocolate at 2006-06-06 09:33 x
かえるさん

なんか昨日からストーカーのごとく書き込み続けてます。(笑)

私もこれ見ました。
しょっぱなSEXクラブっていうの?
あそこのシーンはウゲ・・・って。
そうそう、私も「この人たちって役者?素人??」って思いました。
あの奥様と絡んでた男の人、下半身すごいことになってたし。
↑ひわいですいません。(笑)

アナの不快なベスト10、
仮に自分の車にアナを乗せたとしたら最初は楽しいかもしれないけど、
やっぱり途中で絶えられなくなって降りてもらうだろうな~

アナが自動灯で遊んでるシーンはしんみりしちゃいましたね。
なんかとても・・・
Commented by 哀生龍 at 2006-06-06 23:01 x
明日「ダック・シーズン」を見に行くので、ついでに「ドッグ・デイズ」も見ようと思っていたのですが、“ついで”なんて軽い気持ちで見たら大怪我をするところでした。
強烈な痛さが、後になってラストで効いて来る作品のようですね。
レンタルになってから、体調の良い時に見ることにしました(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-08 00:44
chocolate さん♪
ふふふ。それほどに共通項がたくさんあるってことですねー。
何クラブっていうんでしょうね?クラブなの?(笑) サロン? 
かのシーンはいろんな意味でビックリでしたよねー。
これが美しいボディの若い男女のからみだったらまた印象も違っただろうし。人数が少なかったらどうかとか、いくらか服を着ていればとか、2人ずつならとか、、、、。そんな容赦もなく、見事なウゲシーンでした~。
下半身がすごいことになっていましたっけ?(笑)
このchocolate さんのコメントを読んで、好奇心をそそられ観に行く人が増えるかも?
アナの対応は難しいですよね。笑ってすませたいところですが、やっぱりムカつきますよね。もちろん、おろします。バッグを勝手にさわるのはやめてくれー。
見ていて不快なアナなんだけど、やっぱり最後は可哀想になりました。でも、最後は楽しげに遊んでいたから、せつないながらもジーンとしてみたり・・。不思議な映画でしたー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-08 00:47
哀生龍 さん♪
問題作っつー感じなので、気軽に見る系ではないですねー。
不快に感じる人もいると思うので不用意にオススメはしませんー。
話の種に見るのもいいと思いますが、楽しい映画ではありませんー。
とりあえず、ダッグ・シーズンのみを楽しむのがベターかな。
Commented by Ken at 2006-06-08 21:32 x
かえるさん、こんにちは!
この映画、裸がやたら出てきましたがどれもこれもグロテスクで。
だけど、普通の人間って多かれ少なかれ不恰好なんですよね。そういう意味で、やけにリアルに感じられた作品でした。
どこを切っても不愉快な作品でしたが、だけど魅力的と言わざるをえない、そんな作品。
Commented by ふぇあるーざ at 2006-06-08 22:26 x
観てる時には不快感とかそこまで感じなかったんですけど、観終えて「この人たちより自分はずっとマシ」とか思った瞬間のわたし自身に嫌悪感を覚えちゃいました。(苦笑)
アナの神経逆撫でバナシ、その声のトーンも効果ありでしたね。
わたしも最後のシーンは涙が出そうでした。
そして夜が明ければまたヒッチハイクしますよ、このコは。

Commented by CaeRu_noix at 2006-06-09 00:29
Kenさん♪
裸は映画ではよく見かけますけど、なんていうかこんな年齢層のこんな体型の人たちのでっぷりした裸をたくさん見せられるものはなかなかないですよね。ハッキリ言ってグロテスクでしたー。でも、そうですよね。こういう映像で見る機会がないだけであって、それこそがリアルな姿ですよね。
不快なショットも映画の魅力になってしまっていましたよね。かなり奇抜ですが、おもしろくて手応えのあった作品でしたー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-09 00:37
ふぇあるーざさん♪
ご覧になったのね。ダメダメ。これはRー25指定ものでっす。
でも、ふぇあるーざさんは内面が大人なので特別に許可。
偉いです。マシと思った自分に嫌悪感を抱くなんて!
世の中には多くの人たちが、映画の中の愚かなる人たちを見下げている中・・・。
具体的にここまで病んだ行動はしていない自分はやっぱりマシだと思ってしまうかもしれません。でも私の場合、見終えた時は他人事として眺めるよりも、誰もが同じようになり得る可能性を大いに感じたから、マシと思うよりも、一緒にやるせなくなったような・・・。
アナの早口高音がまた神経にさわりましたよね。
うん。きっと、またヒッチハイクを続けるでしょう。そして、また・・・。
Commented by いわい at 2006-06-21 00:11 x
こんにちはー。
いやいや、ホントに湿度を感じました。R−25指定ものですよね。
自分は違うかもしれないけれど、近くにはいそうなリアリティーがありました。
普通に裸を撮ったら、グロテスクなものかもしれませんね。裸を美しく撮るのって、難しいのかもしれないと思ったりもしました。
わたしも、不快感も感じつつ、面白く観てしまいましたー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-26 12:35
いわい さん♪
湿度を感じましたよね。ジリジリと暑くて不快な夏でした。
プラハとブダペストの旅の途中で寄ったウィーンにはこういうイメージはなかったけど、さすがのハネケの国。モーレツで奇妙なのにリアルに感じられてしまうな日常でしたよね。普段、映画や芸術作品やメディアで目にする裸はどちらかといえば美しくとられているものが多いですよね。中年の一般人の赤裸々な姿といったら、むしろこういうのが標準に近いんでしょうね・・・。そんな味わいも含め、おもしろい映画でしたよね。
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