かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ビッグ・リバー』
2006年 06月 16日 |
美しい風景を堪能。旅の醍醐味を満喫。それだけでいい。

バックパッカー哲平とアリとサラのアリゾナ州モニュメントバレーでの出会いと別れ。



アメリカの広大な砂漠が背景のロード・ムービー。映画館の大きなスクリーンでこれをで観ずして何を観る。この風景が大好きなんだもの。空のブルーと砂漠の色のコンビネーションがたまらなく好き。視界いっぱいに広がる果てしない空の青さにウットリ。視界を遮るものがないって最高。こんなふうに旅をしてみたーいと思うばかり。

ポスターのイメージ通りの映画だった。それは予想通りのタッチの期待通りの美しい作品だったということ。ストーリーテリングを求める人にはたぶん物足りなくて、私にはグッとくる映画。多くが説明されないことが魅力。流れゆく旅の風景にひたすら心を躍らせる。雲のショットがとても素晴らしいし。

共通点もない偶然に出逢った国の違う三人の妙な関係性。このシチュエーションにもっとすっとぼけたコミカルさをくわえたらジャームッシュ映画になりそうなんだけど、空気感は違っている。笑いやほほえましさよりも孤独感やせつなさを感じてしまう。飄々とした哲平越しにアリの思いやサラの思いに寄り添ってしまう。

彼らが今までどんなふうに生きてきたのかなんて知らない。ただ偶然に出逢って、しばしの旅の仲間となる。それだけでいい。それぞれの思いを抱えて、コミュニケーションして、ディスコミュニケーションに陥る。近寄ってみて、突き放してみたくなる。あきらめようと思ったり、がんばってみようと思ったり。流れていく。旅をする。生きる。

このあたりの風景は何度もいくつもの映画で見たけれど、どれよりもじっくりと美しい景色が映し出され続けていた気がする。アメリカ人はここまで風景にこだわらないのかもしれない。ドイツ人のヴェンダースがそうであったように、日本人監督だからこそ、この美しきアメリカの大地を追求したのかもしれない。異国人だからこそ、あこがれる情景。だから、よそからやって来た旅人目線で眺めて気持ちにフィットするのかな。

淡々と旅を続けていたかのような哲平が全力疾走する姿にはグッときた。
ドライな男のようでいて、その旅路の出会いには心揺り動かすものがあったんだよね。
アリの分も走ってつかまえろ。


- - -
私はこの映画を映像と雰囲気で感覚的にとても気に入ったのでそれで充分なのだけど、一夜明けてつい監督のコメント記事を読んでしまった。読まなきゃよかった。そういう社会派なテーマが基盤だったなんて・・・。アリが検問を受ける場面には確かにそういう意図を感じたのだけど、少しだけそういうものも混ぜておこうという程度だと思っていた。映画をつくるキッカケがそれだったなんて・・・。描きたかったのは旅や人やふれ合いや人生ではなくて、差別と偏見の現代アメリカだったというのならガックリ。

基本的には私は社会派作品は大好きだし、そういう映画をつくって何かを人々に訴えようとする映画製作者の心意気はかってしまう。ケン・ローチは尊敬するし、ウィンターボトムも応援している。ジョージ・クルーニーの素晴らしさにも気づいたし、『クラッシュ』も評価する。問題意識をもって、映画がつくられることは大歓迎。アメリカ人ではない監督がアメリカに言及して作る映画もおもしろいと思う。『ランド・オブ・プレンティ』もトリアーも支持。

でも、ごめん。この我が国出身の74年生まれの監督が、人種のるつぼアメリカの偏見の問題などを考えてほしかったと本気で言っているのは聞きたくなかった。『雪に願うこと』の主人公に感じたような傍ら痛さを覚えるというか・・・。別に説教臭い映画ではないし、そういう問題意識は大切だと思うのだけど、それが主題ですと誇らしげに言われると・・・。それをおこがましいと思ってしまったら、それこそ自分の方がおこがましいということになるけれど。そんな複雑な気持ち。

映画そのものはすごく気に入ったのに、メインテーマが社会派視点のものだとしたら、私は主題をほとんど感じ取れなかったわけだ。そのへんにうたれ、考えさせられたという人はいるのだろうか? とにかく私は読まなきゃよかった・・・。
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by CaeRu_noix | 2006-06-16 01:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(13) | Comments(12)
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Commented by charlotte at 2006-06-16 16:54 x
最近、この記事にスパムTB攻撃されてて、ちょっと公開をしてませんでした。昨日試しにまた公開したところ早速いっぱい付けられてますっ。(T_T)
ところで、テッピー、イカシテましたねー笑
オダギリ君て多くを語らずとも語れるというか、私には存在感はすこぶるGOODなんですけど。
ちょっとヴェンダースとジャームッシュごちゃまぜの感じでしたが、なかなか私も良かったなあと思いましたです。
ラストは能動的に走ったか!がんばれーって思いましたが、どうもあのミッキーマウスのようなでっかい靴はいて走るのは大変そうでした。
・・・と、冗談ばかり言ってますけど、本当はぐっときちゃって感動して劇場を後にしました!
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-17 10:52
charlotte さん♪
スパム対応たいへんですね。おかげさまでトラックバックさせていただきましたよ。ありがとうございます。
テッピー、いかしてましたよね。髪型と服装はビミョーな時もあったんだけど、サングラス顔がいかしてました。そういえば、オダジョーがこんなふうにけだるく煙草をふかすところをじっくり見たのは初めてかもしれない。乾いた感じがよかったですー。メゾンドヒミコの時の存在感には及びませんが、バックパッカーなオダジョーもよかったですね。ルックスも好みなんだけど、『血と骨』以来、演技力もかってますー。
どうしても、ヴェンダースやジャームッシュの名前がよぎってしまうんですが、まぁ真似をしている感じでもないし、オリジナルなよさもあったと思いますー。私もかなり気に入りましたよ。あの靴は確かに走るのには不向きでしたね。でも、グッとくるラストでしたよね。
Commented by contessa at 2006-06-18 23:36 x
こんばんは。TBとコメントを有難うございました。
お返事が遅くなりまして申し訳ありません。

私もこの映画は風景の撮り方、その美しさにうっとりしましたが
同時にそれがガイジンには伝わりにくい美しさ(ガイコク撮っているのに)
だということも強く強く意識しました。
監督の意図しないカタチで、民族間のカベが露呈しているか、とも思うんですが(笑)
そういう偶然はあまりいただけないですよね、確かに。
Commented by CaeRu_noix at 2006-06-19 08:44
contessa さん♪
とんでもないですー。
2月の試写会でご覧になっていたのですね。読ませていただきました。ありがとうございます。その上で一般公開でまたご覧になるなんて素晴らしい。舞台挨拶もうらやましいです。
そうかー。ガイジンにはやはり伝わりにくい美しさなんでしょうかねぇ。まぁアメリカ人にはうけなさそうです。退屈な風景なのかもしれません。日本人でも興味のない人にはつまらない映画かもしれないです。旅好き、砂漠好き、映像主義の視界の狭い日常を送る私には素晴らしい映画だったのですけれど・・・。
世評を気にせずに、こういう映画を撮りたいと思うならかまわないんですが、意図しないカタチ・・・というのはちと困りますね。テーマのわかりやすい映画というのにも一度トライしてみてほしいです。
Commented by fyamasan at 2006-07-14 00:42
こんにちわ!

僕は先に、監督の講演会でこの映画のテーマについて聞いていたので、
それを頭にいれて見ました。
その為、映画に託されたものが凄く伝わってきました。
このテーマでこのロードムービーが撮れるのは凄いことだと、
感じました。
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-15 13:30
fyamasan さん♪
そんな講演会に参加されたのですねー。その講演を聴いた方たちが映画をより深く味わえるというのはよいと思うんですけど、講演を聴かない人にはテーマが伝わってこないというのはどうなんだろう・・・という気もします。(笑) そのテーマはともかくとして、日本人にもこんなロードムービーが撮れるのはすごいと思いますー。
Commented by いわい at 2006-07-20 18:42 x
こんにちは。
美しい風景を満喫しましたー。
わたしは、社会派視点のにおわせ方に、ちょっと胡散臭さを感じてしまいました。チラリとですけどね。
撮影監督が写真家だからなのか、色がものすごーく美しかったですね。
わたしも砂漠好きなのです。アリゾナ砂漠にも行きたくなりました。
アメリカ大陸は未踏の地なのです。
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-21 11:57
いわい さん♪
美しかったですよねー。映像主義。砂漠好きとしては大満足でした。
私は社会派視点というものをほとんど感じなかったんで、胡散臭いとも思わなかったんですけど、後でそういうものを描きたかったと知って、ちょっと苦笑してしまいました。社会的なテーマで撮りたいなら、日本でやってほしいかなって。
いわいさんも砂漠好きですかー♪ヴェンダース作品でおなじみの風景や『バグダッド・カフェ』の風景なんかが大好きでして。アリゾナという響きから好きです。アフリカ大陸には複数回行っているいわいさんがアメリカを訪れていないとは意外。
Commented by カオリ at 2006-08-13 16:12 x
こんにちは~
この監督、74年生まれなんですか~私とほぼ同年代ですわ。
そんなにすごいメッセージ性があるとは思えませんでしたが、それも日常なのだろうと感じました。
何かとてつもないことが起こるわけでもないけれど、何かが静かに変わっていく・・・そんな印象です。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-13 22:40
カオリさん♪
同世代ですかー。海外では70年前後生まれの監督の活躍はたくさん見聞きしていますが、「ゆれる」の西川美和といい、日本人の映画監督もこのへんの世代が第一線に出てきているんですね。
メッセージ性があるとは私はとっとも感じなかったんですが、テイストは好きでした。静かな変化が描かれていたのでしょうかね? 乾いた印象のテッペイが最後にちょっと熱くなった変化はよかったです。
Commented by ミチ at 2007-01-19 08:56 x
こんにちは♪
TBいただきありがとうございました。
皆様から随分遅れての鑑賞になりました。
でも、映画館で見れて良かった!すっかりアリゾナの風景に入り込んで楽しんでしまいましたから。
彼の大ファンとして美味しい場面も多々ありました(笑)
彼が単身乗り込んで共演者達と出会って時間を共にしたということが、映画の役とシンクロしているのが見て取れて良かったなと思います。
地元のオダジョー祭り、あとは「パビリオン」の感想を書かなくちゃ。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-19 17:04
ミチ さん♪
ハザードに比べて、こちらは確かにそちらで上映されるまでが長かったですね。
ミチさんはDVDを購入されたのに、劇場鑑賞をするまでご覧にはならなかったんですよね。素晴らしい。でも、これはホント、スクリーンで観てナンボの美しい風景でした。
ふっふっふ、おいしいシーンもありましたね。そのへんは何度でもDVDで堪能してくださいまし。そういえば、そんなふうにオダギリンがアメリカに渡って撮影が始められたんでしたよね。怒涛のオダギリ祭り、バンザイ。ちゃんと全部そちらで公開されて何よりでしたー。
「パビリオン」は巷では不評でしたが、私は気に入っているんですよねぇ。
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