かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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ドイツ映画祭2006 へ行きました
2006年 07月 18日 |
7月16日(日)~20日(木) 有楽町朝日ホールにて開催中のドイツ映画祭2006へ16日と17日の2日間行ってきました。



今回の目玉はピアノ生演奏付きの<ルビッチ再発見>でしょうか。

●『陽気な監獄』 Das fidele Gefa"ngnis 1917年
オペレッタ「こうもり」を下敷きとする軽快な喜劇。日本初公開。
夫と妻の騙し合い。陽気な監獄、陽気な舞踏会、陽気な陽気な人々。

●『牡蠣の王女』 Die Austernprinzessin 1919年
大金持ちの「牡蠣の王」が、娘オッシーの結婚相手として「王子」を捜す。
大富豪の横柄で贅沢極まりない生活ぶりが圧巻のおもしろさ。

まずはアリョーシャ・ツィンマーマン氏のピアノ生演奏に感嘆。軽快に弾むサウンドが心地よくて、もうそれだけで幸せな気分。
ルビッチ初体験。無声映画の喜劇というと、チャップリン作品くらいしか観たことがなかったのだけど、笑わせながらもペーソスが感じられるチャップリン作品と違い、とことん可笑しさで突っ走っているこのルビッチ二作品。「20コマ/秒」という速度がまた絶妙で登場人物の動きをとびきりユーモラスなものに見せてくれる。とにかく楽しいドタバタ劇場。ゴージャスな舞踏会のシークエンスや、牡蠣王の豪邸の大人数の使用人の動きやら、画面いっぱいに広がる賑やかさがたまらない。牡蠣王の"のちにルビッチ自身が「あの演出で私は喜劇映画に開眼した」と語ったことで有名な、ヨーゼフが広間で待たされる場面"も納得の面白さ。待ちくたびれつつ床の模様に沿って動き回るところは最高だったもの。場面の切り替わるテンポも軽快で。ドタバタな笑いはつくづくテンポ・リズムが大事なんだよね。素晴らしい。
(「ラングとムルナウ」も観に行っておけばよかったなんて今さら思ってみたり。)


●『異国の肌』 Fremde Haut
監督: アンジェリーナ・マッカローネ
女性監督が難民問題、同性愛を中心に据えて現代ドイツの一側面を鋭く切り取る。
既婚女性との関係を人々に知られ、迫害を恐れたイラン女性ファリバは、ドイツへと逃れる。入管で止められた彼女は、自殺した同国人男性の身分証明書を使って入国をはかる。

移民難民の物語は興味深い。『愛より強く』の主人公トルコからの普通の移民でも思うような職業には就けずに苦労をしていたのに、より厳しい国イランから不法入国を試みた女性の境遇といったらそこはかとなく辛いもの。浅はかな夢を見て移民をしたわけではなく、戒律、制度の厳しいイランからのやむ終えない逃亡だからいたたまれない。女性が男性のふりをして生活をしなければいけないというのも辛すぎる。状況が特異過ぎて主人公に感情移入もしづらいし、何かを具体的に考えさせられるという方向にも行きつかないという(テーマが難しいというのではなく)受け止め方の難しい作品だった。


●『マサイの恋人』 Die weiβe Massai
監督 ヘルミーネ・フントゲブルト
コリンヌ・ホーフマンの自伝的ベストセラー小説が原作。
ボーイフレンドとケニアを訪れていたカローラは、伝統的衣装を身にまとったマサイの戦士と知り合って恋に落ちる。彼女は帰国をとりやめ、彼を捜す。

マサイ族の住む野生のケニアを拝めて嬉しい。だけど、観光客気分で暢気に大自然やマサイの暮らしを眺めてはいられない重苦しさに満たされる。あらすじを読んで、それはあり得ない!とまず思ってしまったんだけど、実話に基づいているというから驚く。どんなにビビッときたとしても、観光旅行の途中で、それほどのカルチャー・ギャップのある、理解し合えないのは当然でコミュニケーションの一つもままならない、自然の中で暮らすマサイ族の男のところに行ってしまうだなんて・・・。経験しなければわからないことはたくさんあるけど、こんな極端な状況は経験する前から目に見えているでしょう。主人公の動機にはとても共感はできないけれど、その展開には終始ハラハラ。居心地は悪いけど、興味深い面白さにあふれた異文化体験。


●『裸足の女』 Barfuss
監督:ティル・シュヴァイガー
ドイツの人気俳優ティルの初監督作のラブストーリー。
ニックは精神病院で掃除夫の仕事をしていたときに若い女性ライラの自殺未遂現場に遭遇する。ニックはそんな彼女を同行して、義父宅まで旅することになる。
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ハリウッドでも活躍中のドイツの人気俳優ティルの初監督作品。ハリウッドものは『キング・アーサー』くらいしか観ていないけど、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』、『レボリューション6』 は大好き。初監督作とは思えない仕事ぶり。なかなか映像センスもよくて、笑いにあふれた楽しいロマンス。かごの鳥が世界を知る物語っていうのはやっぱりステキ。ティルの無骨な風貌からは想像もできない(気恥ずかしさ紙一重の)胸キュン・ロマンチックにあふれた物語。


●『ワイルド・ブルー・ヨンダー』 The Wild Blue Yonder
監督: ヴェルナー・ヘルツォーク
ヴェネチア国際映画祭国際批評家連盟賞
<SFファンタジー> 新たなる惑星を求めて無重力で宇宙旅行。

これはこんな会場じゃなくて、もっと音響のいい大スクリーンで観たかった。心地よい宇宙体験。ドキュメンタリー番組でありそうな映像世界も、弦楽器の音色が印象的な音楽を合わせて、ファンタジックな物語運びの中で独特の構成で展開されると、すっかりその無重力気分に浸れてしまう。あの理論はよくわからなかったけど、ブタを飼い始めたことが自然破壊につながったなんて説には納得してみたり。何よりも先にショッピング・モール!だし。超退屈な映画という覚悟もしていたのだけど、なんとなくその世界観に惹かれ、意外とツボにハマり楽しかった。


と私が鑑賞したのはルビッチ2作品+4作品。
テーマ、演出ともにバラエティに富んだドイツ映画たちを満喫。

『素粒子』、『黒い雲』 は一般公開されたら観たーい。
公式サイト

16日は、「シャーロットの涙」の charlotteさんに、
17日は、哀生龍さん主催のティルファンのコミュのみなさんにお会いして、楽しい語らいのヒトトキをもつこともできました。盛りだくさんでハードな2日間でしたが、楽しかったです。
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by CaeRu_noix | 2006-07-18 12:53 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(12)
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Tracked from シャーロットの涙 at 2006-07-18 18:13
タイトル : ドイツ映画祭その一
ドイツ映画祭、初日・・・ まず、ピアノの生演奏つきのサイレント作品 「陽気な監獄」と「牡蠣の王女」・・・エルンスト・ルビッチ監督作品 う~ん、生ピアノで語ってくれるというのは、実にダイレクトに作品の良さが伝わってくるものだと思った。 アリョーシャ・ツィンマーマンも両作品の合間に休むだけで、ぶっ通し約一時間づつ弾くわけだから、もうお見事! コメディだから、仕草や大袈裟な表情、息をつかせぬ速い展開や意表をつく流れに終始可笑しくて笑いが止まらなかった。 「陽気な監獄」1917年・・・シュトラウス...... more
Tracked from Brilliant Da.. at 2006-07-19 12:54
タイトル : ドイツ映画祭で2本
ドイツ映画祭2006(7/16~20)で 2本の作品を見ました。 「日本におけるドイツ年」の公式企画として始まった「ドイツ映画祭」を、日本の観客の要望とドイツ映画界の期待に応えて今年も引き続き開催(公式ページより)だそうで、新作10本と短編4本からの構成と..... more
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Tracked from Editor's.. at 2006-07-31 16:04
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公開中の『愛より強く』のサントラCDを5名様にプレゼント中です。 締め切りは、なんと、今日まで! 応募フォームはこちら↓ http://clefclef.com/present/aiyori.html 『愛より強く』公式HPはこちら↓ http://www.elephant-picture.jp/aiyori/ 映画を観た方も、... more
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Commented by [M] at 2006-07-18 14:45 x
こんにちは。
私もルビッチ2本とヘルツォークに行ってきました。
ルビッチの、そしてアリョーシャ・ツィンマーマン氏の素晴らしさに関してはいくらでも賞賛したい気分ですが、今回のヘルツォークだけは最後までのれませんでした。途中で出てやろうかとすら思いました。

『素粒子』『黒い雨』は私も正式公開時に観たいと思います。
Commented by charlotte at 2006-07-18 17:37 x
こんにちは~♪
ルビッチ初体験にてファンになりました。
ツィンマーマン氏もすごく絶妙なタイミングで弾いてましたね。
生ピアノだと余計に面白さ倍増で・・・
たくさんのご鑑賞、いつも頭が下がります~
そして早速の記事にも感謝!
楽しいひと時をありがとうございました。あつかましくもお誘いしてよかったです~。って引かれてたらどうしようって結構悩んでました。苦笑
どうぞこれに懲りずに、しょうがないと諦めて(笑)お付き合いのほど、よろしくお願いします。<(_ _)>
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-18 23:46
[M] さん♪
行かれましたかー。やっぱりルビッチですよね。
素晴らしかったですよねぇ、ルビッチ映画もアリョーシャのピアノも。外国人のオジサマはスキンヘッドがどうしてカッコいいんでしょうね。ツィンマーマンって、一生憶えられませんが、彼の演奏は忘れませーん。
ヘルツォーク作品は想定範囲内でした。チョーつまらなくて眠い映画という覚悟をしていた分、私はわりと楽しめましたが、まるでノレないというのも大いにわかります。どのへんが国際批評家連盟賞なんでしょうー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-18 23:58
charlotte さん♪
私もルビッチファンになりました。喜劇に感動するっていうのは、ジャック・タチに出逢った時以来だったかも。
ピアノが映像にバッチリ合っていたのも感動的ですらありました。無声映画に演奏をつけるというのは今まではちょっと懐疑的だったんですよ。映画の作者が意図したものをその音楽が台無しにしたりしないものかなぁと・・・。でも、とりあえず、このアップテンポの喜劇については絶妙にマッチしていましたよね。素晴らしいー。
いえいえ、こちらこそ。開会式があったりして思いの外遅くなってしまって、ちょっとだけと思いつつ・・。小さなお子さんが待っているというのに、ピッチャーを注文してもよかったほどにすっかり遅くまでつき合っていただきましてー。おかげでとても楽しかったですよー。また、よろしくです♪
Commented by マダムS at 2006-07-19 12:53 x
盛りだくさんで充実した2日間で良かったですね~ 
「裸足の女」も観たかったなぁ~ ルビッチは知りませんでした。
サイレント時代の作品の貴重なものが見れて良かったですよねぇ~
音楽が重要な作品にはつくづく向きませんよねやはりあの会場は。
私は「マサイの恋人」チケット無駄にしてしまったり、頑張って見に行った2作品はイマイチで無念ですぅ~ 今回は旅行で頭も体も一杯で無理でしたこの時期。 
Commented by M. at 2006-07-19 16:24 x
こちらにもおじゃまを。
なるほどーこうして2日間のラインナップ固めてみると、すごくバラエティに富んでますよね。でもこれ続けてご覧になる体力をお持ちのかえるさん(ほか皆様)に心から感心。
ルビッチ、お楽しみ頂いたようでよかったですー。わたしは「陽気な監獄」の途中から上の方でみてたのですけれど、ツインマーマンさんの軽快な演奏は作品の雰囲気にも合っているしやっぱり大したものだなーと思いました。去年の上映の時にはバイオリンのお嬢さんも来てたんですよ。
伴奏付きのサイレント映画は何にも聞こえなくても画面から音が伝わってくるように感じることもあるし、微妙な場合もありますよねー。だけど時々NFCなんかでシーンとしている時に自分のおなかがキュルキュルなりだして、それをこらえるのに必死で画面に集中できないよりは音があった方が気楽にみられるかもなんて不純なことをたまに思ったりするのでした(笑)
Commented by とんきち at 2006-07-19 19:57 x
いろいろ観てらっしゃいますね〜。『マサイの恋人』私も見たんですが、主人公、とんでもないスーパー刹那主義者でしたよねえ、、、。
私は彼女にぷりぷり腹を立ててしまって、冷静に観られなかったようです。冒頭のモンバサの港の様子などは圧巻でした。


Commented by CaeRu_noix at 2006-07-20 10:59
マダムS さん♪
はい、盛りだくさんでした。かなり疲れちゃいましたけど、楽しかったですー。シリアス路線のものの比率が高かった中、『裸足の女』は気軽に楽しめる内容でよかったですよん。ルビッチッチッチのことは私も全然知らなかったんですけどね。スクリーンで観ることができてよかったです。生演奏付のためにお高めだったチケット代を払っても大いに満足な素晴らしさでしたよー。
本当に本当にあのホールのつくり・設備では、せっかくの映画の映像や音楽の醍醐味が充分に伝わってこなくてもったいないですー。
マダムは今回は残念でしたね。環境と体調や気分も映画の満足度を左右しますよね。或いは、本当につまらない作品だったのか・・。
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-20 11:00
M. さん♪
バラエティに富んでいました。ドイツ限定ではなく、異国がからむものが多かったりして。多様に楽しめましたー。体力的にはかなりへとへとですよ。椅子がコンフォタブルではないですし。でも、せっかく行くのだから、観られるだけ観たいと思ってしまう欲張り貧乏性な私。
ツインマーマンさんの演奏は本当にピッタリと素晴らしかったですよね。彼のレパートリーの中でもルビッチは得意と書いてありましたよね。親子演奏も聴いてみたかった。
カール・ドライヤーの『裁かれるジャンヌ』などの上映時に、演奏付とそうでないものがあったんですが、そういう思いがあったので演奏なしを観ました。音楽が悲壮感を煽るっていう感じなのは嫌だなぁと思って。でも、その手の映画を観る人は、シネコンの客なんかよりマナーがいいとはいえ、皆が皆ずっと全く音を立てないでいることは不可能なんですよね。くしゃみ咳払い、ガサガサ、シャラシャラ、コトンと音がするたびに気が散るから、全く無音なのも困りますよね。そして、自分のお腹の音は一番集中力をそぎますよねぇぇ。
Commented by CaeRu_noix at 2006-07-20 11:00
とんきち さん♪
世界の映画を追っかけます♪ おお、『マサイの恋人』をご覧になっていたのですね。私はあの主人公の行動には腹が立つ以前に、本当にそんなことしちゃうの?という疑問でいっぱいでした。彼女は賢い理知的な振る舞いをする局面もあり、決してただのバカ女じゃないみたいなのに、よくわかんなかった・・・。同日に『ピアノ・レッスン』を観て、彼女がマオリの彼のところへ行く思いや状況はすごく共感できるのに、マサイに走るのは全く不可解でした。お友達にはなってみたいけど、人生を共には歩めないってば。
Commented by いわい at 2006-08-07 23:16 x
相変わらず遅いんですが。
『マサイの恋人』観ましたー。ケニアの風景がとてもリアルで、そんなところで大胆な行動をしてしまう彼女の気持ちを考えつつ、展開にハラハラして引込まれてしまいました。
これは、実話だと知ってから見ないと、嘘でしょーって思ってしまう話だと思ってしまいました。
ルビッチも観たかったな。
昨年は、ムルナウの「ノスフェラトゥ」を観ました。アリョーシャ・ツィンマーマンのピアノと娘さんのヴァイオリン演奏付き。
無声映画は、音楽付きで上映されるものだったそうです。確かに作曲者のクレジットがありました。贅沢な娯楽だったのですね。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-08 12:43
いわい さん♪
マサイの恋人、ご覧になっていたんですねー。やはり、ケニア・フリークだから?
私も終始ハラハラさせられました。でも、なんていうか、どっぷり浸ったという感じでもなく、理性的には納得いかなくて、気持ちが宙ぶらりんジョウタイだったかも。とても面白くはみられたんですけどね。彼女って、スイスでお店をやっていたんですよね。フツーまずは帰国するだろって思いますけどね・・・。原作通り?
ムルナウ、ラングもスクリーンで観たいですー。朝日ホールの映画祭って、日程が限られているし、チケット代が高いので、なかなか行けないのだけど、激しく魅力的なプログラムでしたよね。「ノスフェラトゥ」を親子演奏付でご覧になったなんてうらやましいー。
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