かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『アブラハム渓谷』 、 『りんご』 -BOW30映画祭- その3
2006年 08月 11日 |
ずっと観たかった作品がやっと観られました。



どこかで名作だと紹介されていたり、誰かによかったとススめられたり、観てみようと思う作品はとめどなく増えていきながらも、地道に少しずつは消化をしてきました。だけど、中にはVIDEOがレンタルされていなかったりして、ずっと繰り越され続けているタイトルもあり。そんなタイトルをこのたびのBOW30映画祭のプログラムの中に観た日にゃー小躍り。

よしださんがその映像世界に引き込まれたという『アブラハム渓谷』
現役監督最長老マノエル・デ・オリヴェイラ監督作品は観られるものは全部観たいと思っていたけど、多くは紀伊国屋書店販売のDVDでレンタルものもなく。『階段通りの人々』はDVD購入をしたのだけど、『アブラハム渓谷』と『世界の始まりへの旅』は未見のままでした。で、そんな念願の作品をこのたび劇場鑑賞できてとても満足。スクリーンいっぱいに広がったそのアブラハム渓谷は息をのむほどの絶景でした。神々しささえ感じさせる悠久の美。

陽光のそそぐ渓谷、河が美しいばかりでなく、室内の映像にもインパクトのあるものが多かったです。主人公エマに扮するレオノール・シルヴェイラの自信に満ちあふれた微笑をとらえるショット。こういうしっとり真面目な雰囲気の映画で、登場人物がほとんどカメラ目線で話すというのは新鮮でした。額縁におさまった写真と、エマが向かった鏡というフレームも印象的。ひたすら美しく、時には奇妙な配置のショットが続き、不思議な世界を堪能させてくれました。イメージは『家宝』に似ているところがあったような。

エマは快楽を求めているのではなく、男たちの欲望の対象になることこそが欲望。

エマはとんでもない浮気妻なのに、まるでそんなふうには感じさせない演出。気品あふれる美しいエマの姿をただただ見つめていたくなるのでした。それは視点が地上にないからなのかもしれません。俯瞰映像が表しているように高い位置から見据えているようでした。冷静な声のナレーションがそう感じさせたのかもしれません。オリヴェイラ監督はいつもそういう視点で、この世界と歴史を見つめているのですね。人間たちの愚かな戯れはとてもちっぽけなものに感じられてしまいます。


nさん(現こまきさん?)が大絶讃をしていた『りんご』
イラン映画のとりわけキアロスタミ支持者だったnさんに、キアロスタミよりもマフマルバフの方が今は上かもしれないと、マフマルバフ・ファミリーに生まれたいとまで言わしめたのですから。イランのソフィア・コッポラのような存在のサミラ・マフマルバフの劇場鑑賞した『午後の五時』はとても気に入っていました。そんな彼女の1作目の18歳の時の作品。。

12才の双子の少女が両親によって家に閉じこめられ一度も家の外に出たことがなかったという社会問題になった実話を映画化。子ども達の無邪気な笑顔がすばらしい。この素朴でみずみずしい作品を劇場で観られたことはとても嬉しいです。イランの子ども映画はやっぱり心に響きます。それも、ベタなパターンで子どもの可愛さや可哀想さを表現するのではなくて、ユーモアを織り込みながら、さりげなく素朴に、子ども達のキラキラした輝きを見せてくれるのです。子どもの好奇心や柔軟性はなんてステキなんだろうと大きな感銘を覚えました。

最初からこの出来事を美談として描くわけではなく、閉じこめてしまった両親も不遇であるし、福祉職員のやり方にも傲慢さがあるということを見せてくれるところがいいです。想像力豊かでどこででも遊べる子どもは閉じこめられていても案外楽しく生活できるものじゃないのかと・・。でも、次第に戸惑いながらも次々と、外の世界を楽しんでいく2人の姿を目にして、やっぱり親のエゴで子どもの可能性を制限しちゃいけないんだなと改めて思わされるのでした。実に見事です。無邪気な娘たちに手を引かれて歩いていく父の後ろ姿。そして、りんごを手にした母の姿。すばらしい。
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by CaeRu_noix | 2006-08-11 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by mar_cinema at 2006-08-12 12:00
かえるさん、こんにちは。

「アブラハム渓谷」は、DVDで鑑賞でしたが、
確かに、大画面で観たかったかも・・・

「りんご」もDVD所持ですが、
ご本人さん登場の再現ドラマで鑑賞後、びっくりしました。
(イラン映画には多いですが・・・)
頑固親父が、18歳の少女を納得して本人役で出演してしまうなんて・・・
恐るべしサミラ・マフマルバフ監督ですが、今のイラン情勢を考えると、
ちょっと心配だったりします。。。。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-13 10:12
mar さん♪
「アブラハム渓谷」はスクリーンで観られてよかったですよー。
渓谷が雄大で圧巻でしたし、暖炉やキャンドルの炎の美しさだとか映像の見ごたえが大いにありました。でも、DVDで繰り返し観られるというのもいいですよね。
私も映画を観た後で解説を読んで知ったのですが、「りんご」の出演者は俳優ではなくて、その当事者の家族たちそのものだったんですね。どおりでリアルなわけだ。芝居なんて絶対できなそうな彼らをあんなふうに素朴に映しだせたのってすごいですよねー。
マフマルバフ一家は大丈夫だと思いますけど、イラン情勢は心配ですね。
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