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『ブラウン夫人のひめごと』 などジュテーム・シネマ3作
2006年 08月 27日 |
ジュテーム・シネマ・フェスティバルという名のもとで公開されたフランス映画3本。



フェスティバルと銘打っている割には、いつもガラガラだったK's cinema。
もっと宣伝したら、ルシネマやシャンテシネ系の女性たちにも楽しんでもらえるドラマだと思うのだけど・・・。

公式サイト

▼『ブラウン夫人のひめごと』

~1913年戦争で夫を亡くした未亡人マリー・コリンズ・ブラウンは、気晴らしにやって来たニースのカジノで、若き青年アントンの姿に目を奪われる。男に誘われるがまま、彼女はついに超えてはならない一線を越えてしまう。~

というあらすじ紹介を目にして、てっきり1913年のニースが舞台の未亡人と若者の恋物語だと思っていたら、その「ひめごと」はなっかなか始まらない・・・。
舞台は現代、78歳の年老いた元外交官のルイは、南仏の避暑地リビエラを訪れ、カジノでオリビアという若い女性に出会う。2001年にルイが出会ったオリビアに語る思い出話が、ルイの少年時代1936年の出来事で、その時に出会ったブラウン夫人が少年ルイに語ってくれた思い出話こそが、ひめごとである1913年の恋のお話なのね。

ひめごとの中のひめごとが回想シーンで交互に展開するという三層構造のおもしろいプロット。アイディアは素晴らしいと思うのだけど、イマヒトツそれが活きていなかった印象。現代パートは蛇足に感じられた。過去のふたつの物語で構成されていた原作のステファン・ツヴァイクの「女の二十四時間」に、現代の物語をさらに加えて映画化したらしい。監督は、「現代とつながった映画にしたかった」と語っているけれど、原作通りのプロットでいった方がよかったんじゃないかなぁ・・・。

構成の効果がそれほどでもなかったのでドラマへの感動はイマヒトツだったけどおもしろく観られる作品ではあった。1936年の夏のリビエラの映像の美しさにウットリ。テニスユニフォームやドレスのアイヴォリーの上品な色調が陽光を浴びてまばゆく映し出されていて。それから、1913年の夫人達がファッションがまたステキ。帽子からアクセサリーから、細やかな装飾が施されたゴージャスなのだけどあくまでも品のよい衣装にたびたび目を奪われてしまった。アニエス・ジャウイも存在感があり、恋のお相手ニコライ・コスター=ワルドーも噂通りにカッコよかった。青年将校の不変を表したような雨にうたれる舌を出した顔のガーゴイルショットがとても気に入った。気にいらなかったのは現代パートのオリビアのキャラクター・・・。

24 HEURES DE LA VIE D'UNE FEMME
2002 フランス
監督.脚本 ローラン・ブーニック
撮影 ジル・アンリ 美術 クリスチャン・マルティ
音楽 マイケル・ナイマン
出演 アニエス・ジャウィ 、ミシェル・セロー、ベレニス・ベジョ 、ニコライ・コスター=ワルドー、クレマン・ヴァン・デン・ベルグ


▼『この胸のときめきを』

~定職につかず女遊びが絶えない夫。そんな夫に激情しながらも離れられない妻。幼い息子を抱え、生活に苦しみながらも愛を育んでいくふたり。~

1968年、ジャックとルーの間に男の子が誕生したその日に始まり、1972年の海辺暮らし、1973年の再会が描かれる。ブノワ・マジメルが中年太りに体型を変えるまでしてダメ男を演じる。妻と子のために何度もまっとうに生きようと思うのだけど、悪事から足を洗えず、堕落した生活から這い出せない。幼い息子セザールを育てながら、不安に暮らす妻ルーの心情を思うとやるせない。不安感とせつない気持ちが募るばかりのドラマではあるけれど、その寂寥感がまたいい感じのとても好みのタッチの映画。

この映画の紹介文はどれもこれも、2人の愛の物語ということになっていたけど、私が何よりも強く受けた印象は、ルーからセザールへの母の愛の物語。夫がどんなに粗暴な振る舞いをしようとも、母の愛を受けて無邪気に笑うセザールの笑顔はこあどけなくて幸福感に満ちている。夫婦間の愛憎より何より、母に護られた息子の姿、それに一番胸をうたれた。

物語がセザールの誕生とともに始まったことを考えると、これはセザールを通しての、父と母の物語であるのかもしれない。と思ってIMBdチェックをしたら、ダミアン・オドゥール監督は68年生まれじゃないか。公式サイトのインタヴューによると、本作は、Morasseix!!! (1993)、Le Souffle (2001)に続く監督の分身3部作の最終章であるというが、分身なのは、ブノワ扮するジャックではなくて、セザールなのかな。一番描きたかったのはセザールという人物だというコメントが嬉しかったりして。

アルジェリア戦争の影などが織り込まれていたのもポイント。あらすじ的には何がどうってこのもないのだけど、説明的ではなく映像と音楽で物語られるという演出に惹かれた一作。

ERRANCE 2003 フランス
監督.脚本 ダミアン・オドゥール
出演 レティシア・カスタ、ブノワ・マジメル


▼『ありふれた愛のおはなし』

リストラされ失業中のピエールと、同じく失業中の主婦マリーはある日郊外のスーパーマーケットで出会う。互いに求職中の職活動の苦労を共有する2人は、その後もスーパーマーケットで落ち合っては、情報交換をかねたおしゃべりを楽しむようになる。

昼ドラ風味の物語。フランス映画でこんなに昼ドラっぽさを感じるものって珍しい。それが安っぽさを生んでいるというのではなくて、日本の昼ドラにほど近いような日常の空気感に傍観できない危うさを感じてしまう。大仰な身分違いの恋の物語なら、おとぎ話として見つめることができるのだけど、この現実的な格差が妙に痛々しい。
裕福なピエールと労働者階級の主婦マリーの生活ぶりは異なるものであったのだが、求職中という共通項により、交流するようになる。ピエールが失業することがなかったら、マリーのような女性と友達づきあいをすることもなかっただろうに。ピエールの視線に気づくこともなく、特売品を買い物カゴに入れることを躊躇しないマリーの姿にため息。

親しくつき合うようになっても、ピエールはどこかでマリーのことを違う世界に住む人間と見下している部分があったと思う。その彼がその壁を破って、マリーに求愛していく姿は、複雑な思いを感じつつも胸をうつ。それぞれに家庭をもち、配偶者が働いている時間に情事を重ねるというのは、後ろ暗いに違いないけど、そこを吹っ切ってしまえば、極上の幸せなヒトトキとなるのだろう。生活のためにあくせくと日常の雑事を繰り返すことと、生活から解き放たれて2人の世界を愉しむことと、どちらが本物でどちらが本当の自分なのかなんてわからない。わからないからこそ、そんな物語がとても興味深かった。

RIEN A FAIRE 1999 フランス
監督.脚本 マリオン・ヴェルヌー
出演 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、パトリック・デリゾラ、セルジ・ロペス、フローレンス・トマシン
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by CaeRu_noix | 2006-08-27 14:32 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(9)
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Tracked from working titl.. at 2006-08-27 21:58
タイトル : ブラウン夫人のひめごと
ブラウン夫人のひめごと  (2002)  ローラン・ブニーク監督  K's Cinemaで上映された「ジュテーム・シネマ・フェスティバル」の一作として公開された作品です。  どれか一本は観ようと思っていたのですが、シュテファン・ツヴァイク原作の小説をもとに作られたというこの作品を鑑賞しました。  重層的な構造がとても面白く、映像も大変美しく、素敵な作品に出会えたと思いました。    この作品は、3つの時代から成り立っています。  まずは現代の初老の男性と偶然知り合った19歳の少女。その初老...... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2006-09-01 01:40
タイトル : ブラウン夫人のひめごと
ジュテーム・シネマ・フェスティバルの2作品 最終日にまたしてもぎりぎりで鑑賞。 でも、思いのほかすごく良かったので見逃さなくてよかったー{/kaeru_fine/} まず「ブラウン夫人のひめごと」 監督はローラン・ブーニング そして個人的に特筆すべきは…音楽はマイケル・ナイマン すごく情緒溢れるスコアで表現が豊か。とても聴き入ってしまった。 南仏のリゾート地リビエラ。いくつかの束の間で淡く切ない恋。 年老いた元外交官の男の回想する、10代の頃に聞いたある夫人の秘められた恋のお話を軸に、3つの時間...... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2006-09-01 01:41
タイトル : この胸のときめきを
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Tracked from シャーロットの涙 at 2006-09-01 21:58
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ジュテーム・シネマ・フェスティバルの三作目 監督はマリオン・ヴェルヌー 1975年のヒット曲「せつない言葉」で始まる。 郊外のスーパーマーケットで失業中の男女が知り合い、恋におちていく。 失業問題が深刻・・・そういうフランスの職業事情には疎い私だけど、管理職でリストラにあっているなんて、やはり深刻な問題よね。 でもこのピエールの妻は旅行会社の重役というキャリアの持ち主で、さほど生活自体は困っていない様子。。。 ただ精神的にはかなりプレッシャーや負い目もあり、プライド的にも結構傷ついているのではない...... more
Tracked from ヨーロッパ映画を観よう! at 2006-12-21 23:59
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 「24Heures de la vie d'une femme」...aka「24 Hours in the life of a woman」2002 フランス 2006年7月渋谷で公開された際は“ブラウン夫人のひめごと”であったが、DVDになったら“秘密は誰かに話すもの”に変わっていた。渋谷で公開された時に観に行きたかったのだが...結局DVDで... タイトルはどちらでも良い...いづれにしろ、映画の中身は秘密の話なので、こういった邦題にしたかったのだろう... 原作はステファン・ツヴァイ...... more
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Commented by sabaha at 2006-08-27 22:03
こんばんは、「ブラウン夫人~」しか観ていませんが、TBさせていただきました。
私も特に、オリビアが不要に感じました。せめて78歳のルイだけなら現代パートがあるのもアリだったかもですが。
とはいえ、映像と美術がすごく好みだったのと、ニコライ・コスター=ワルドーにくらっときたので、点が甘くなってるかもです(笑)
「ウインブルドン」見ちゃいましたよ(笑)。感想はあげないかもしれませんが、ニコライ・コスター=ワルドー(どこからが苗字?)はステキでした。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-28 00:00
わかばさん♪
オリビアのおかげで名優ミシェル・セローじいさんのパートが台無しでしたよね。このプロット、脚本は返す返すも残念でした。映画に出てくる自由奔放な若い女の子キャラって結構好きな方なんですが、このオリビアにはかなりむかつきました。相手が同年代の男性やせめて中年くらいだったら赦せたかもしれないんだけど、こんな大じいさんを相手に、若い女の特権的な図々しい振る舞いをしているところが不愉快でしたー。
題材的にはすごくおもしろみのあるものだと思うし、美術面もすばらしかったんですけどね。現代パートのおかげで映画に浸るまではいかなかった私ですー。ニコ様はとにかくステキでしたけどね。でも、私は30年代のパートが一番気に入ったかな。
おお、『ウィンブルドン』鑑賞おめでとうございます。現代劇な彼というのが今はイメージできないかも。
Commented by charlotte at 2006-09-01 01:39 x
こんばんはー
眠気には勝てずフラフラです。笑
まだあり愛の記事書いてましぇん~。書いたらまたTBいただきにあがりますが、今日は他の記事を貼らせていただきます。が、この胸を…の記事ははっきり言って映画の事あまり書いてないかも。あはは
私的にはー。ジュテーム!!とメロメロな恋愛物って勝手に思っていたので、どれもビミョーに違った事が衝撃。笑
ブラウン夫人のお話は、よかったですよ。オリビアちゃんはおいといて・・・^_^;
でもこの腹の、いや、胸のときめき・・・も、あり愛もそれぞれがグッときましたです。お話はもちろんのこと俳優さん達の演技に対してだったり、映像や音楽に魅せられた感じでした。
やっぱりナイマンの音楽はいいですねぇ…
結局選べない。汗
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-01 11:58
charlotte さん♪
お疲れ様でっす。眠気に勝てずといいつつ、その日のうちにお返ししてくださるなんてさすがです。私は眠気にはすぐさま屈服してしまいますもの。食欲や睡魔にだけはとっても従順ですー。無理せず、ご自愛くださいー。
この胸~の見どころはやっぱりブノワの腹ですもんね。そこは大事ですー。ジュテームシリーズって、官能的な愛をウリにしてませんでしたっけ?実際は、それほどでもなかったですよね。それぞれに面白かったですけど、宣伝のイメージとはかなりギャップがありましたよねー。ブラウン夫人のひめごとがいっこうに始まらなかったことが衝撃だったし。フランス映画はやっぱり雰囲気が好きなんですよねー。お客はいつも少なめだったけど、近頃公開されすぎな韓流の恋愛ものなどよりもすぐれた作品たちだと思えますー。
ナイマンの音楽は常に美しく素晴らしいですとも。
Commented by charlotte at 2006-09-01 22:11 x
お気遣いありがとうございまーす。ありふれた愛のおはなし、感想書きましたです。
私もわからないです。雑事も必要だし、開放される事も必要だし・・・。
ピエールが何かをふっきったようにそれまでの想いを注ぐような愛を見せるあたりは、本音を言うととても興味深かったです。
これは欲なのか心の開放なのか。
どちらかというと後者のように見えるのが韓流とはあきらかに違う点に思えます。
あの劇場、すごくこじんまりしてていいのだけど、もっと大きい所でやってたらマダムたちでいっぱいにならんかなーと思っちゃって。。。

それにしても8月も暑さに負けずのすごい鑑賞数には頭が下がりますー。おすすめがありましたら教えてねーん♪
9月は子供たちがいなくなりやっと大人の娯楽に戻る劇場たち・・・
芸術は爆発ですな。笑
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-02 12:50
charlotte さん♪
早速仕上がりましたね。スバラシー。
彼は初めは、彼女を別世界の人間と見ていて、仕事が決まるまでの一時の関係と思っていたようなのに。それが変化していく様は興味深かったですよね。失業して、取り残されるあせりを感じたり、家族の中での立場の悪さを感じたりという息苦しい思いをしなかったら、そんなふうに愛欲に溺れることもなかっただろうに・・。でも、その思いが偽りのものだということでもなくて。心の解放感は確かにあったのでしょうね。でも、皆が働いている真昼間の情事にも特別な魅力があったのでしょう。一言では語れない状況、心理であることがおもしろかった。
韓流ものも基本的には繊細に揺れる恋物語っていうのがウリじゃなかったですっけ?ブーム以後の純愛映画はイマイチなものが多いようですが。ブーム前の韓国映画の恋愛ものは邦画などより心理描写がキメ細やかなロマンチックな良作が多かったはずなんですがー。
ジュテーム作品は題材的には韓流恋愛ドラマ好きのマダムにもウケそうな物語でしたよね。
海や山に行くこともなく、8月の鑑賞数も多めでした。
さて、大人モードな芸術の秋を楽しみましょう。ゲイジツはバクハツです♪
Commented by margot2005 at 2006-12-22 00:01
こんばんは!「ブラウン夫人〜」のニコライすってきでしたね。やはりヨーロッパ人はゴージャスでごいざいます。映画もとても素晴らしくハマりました。シアターで観たかったですわ。
Commented by とんちゃん at 2007-04-29 03:42 x
こんばんは~♪
ブラウンの~でTBしました。
DVDの邦題は「秘密は誰かに話すもの」・・・・ダサー(笑)
ニコライ・コスター=ワルドーはかっこよかったですね☆
ルイの少年期役の子も美しかったです。
何より映像とか・・・秘め事へのもっていきかたが、もったいつけられた分グっときました^^
と、いうのは全くノー・リサーチで意外な展開に釘付けになれたからかもしれません。ジャケットを観ても引いちゃって触手が動かず、全然期待してなかったからかも・・・(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-01 00:45
とんちゃん♪
DVDタイトルはちょいとださださですよねー。
いやしかし、ニコライ・コスタ=ワルドウはカッコいいです。横顔がいい。
ルイの少年時代のコも美形でしたよね。あのオフホワイトの世界では王子様のようでした。
映像というか美術面がすばらしくよかったと記憶していまする。衣装もステキだった。
私の場合は、ブラウン夫人の秘めごとというタイトルでニコライが出演していると知っていたので、なかなか肝心のところにいかないなーと思ったところもあったのだけど、実はそんなプロットが魅力だったのかもしれませんねぇー。楽しんでいただけてよかったですー
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