かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ハッスル&フロウ』
2006年 08月 29日 |
エキサイティングなラップシーン。
こんなアメリカン・ドリームもあり。



アメリカ、メンフィスの裏通り。売春の客引きをして暮らすDジェイが、ラッパーとしてデビューするという一度あきらめた夢にもう一度かける。

ブルースの発祥の地でもあり、プレスリーやジョニー・キャッシュが移り住んだ音楽産業の盛んなメンフィス。そこではいつくものサクセス・ストーリーが生まれたのだろうが、それ以上に多くの破れた夢があったのだろう。才能や実力があっても、チャンスに恵まれることがなければ、チャンスを活かすことができなければ、成功なんてあり得ない。苦虫を噛み潰し、裏通りでくすぶっているしかない。

そして、アメリカ映画の主人公になれるのは、やっぱり這い上がって一握りのサクセスを掴み取った男なのだ。焦燥感にかられながらも、このままで終わるものかと突き進む男Dジェイをテレンス・ハワードがエネルギッシュに体現してアカデミー賞にノミネート。暑苦しさを感じるほどに、ギラギラとしたDジェイを熱演。吹き替えなしのラップシーンもすごい。

もっともエキサイティングだったのは、そんなデモ・テープのレコーディング・シーン。言葉を入れ替えて、よりリズミカルになった瞬間。試行錯誤を重ねながら、シャグのコーラスを取り入れて、それが見事にきまった時の歓びったらない。Dの躍進よりもむしろ、売春婦として自己表現なんてものとは無縁の生活をしてきたシャグのその歌が、デモ・テープ曲の完成度を高めたことには感動があった。それから、ラストのラジオ放送されたその時の達成感も格別。Dジェイには嫌な思いをさせられたこともあるノラなのに、そこまで売り込んだ彼女の心意気にはやられた。自分達の作りあげたモノが、ラジオから流れてくるって、サイコーに気持ちいいんだろうな。

ハッスルとは売春斡旋の裏稼業のことで、フロウはラップのこと。淀みなきラップ、FLOWを止めるなという台詞が印象的。流れにのったらそのまま、それを止めたらダメなんだ。止めたら淀んでしまうだけ。音楽で成功したいという夢を持つものは数多にいるだろうけど、ハッスルという仕事で底辺の暮らしをするDのような男にとっては、そのサクセスは極上のものなんだろう。だから、その貪欲さやパワーもハンパじゃないわけで、壊れて爆発する時もまた激しいのだけど・・・。それもまた見どころ。再起に成功した男の物語なのに、エンディングを迎えるのは、スタジオやステージではないっていうところがまたいいじゃない。

ポン引きってばヒドイです。斡旋するだけなのに何でそんなに威張りくさっているの?オメーも体を売って稼げばって思ってしまうほどに、売春婦達に同情したくなりました。そういう部分からもDの成功は嬉しいかな。ドライな斡旋人がシャグに本物の気持ちを抱いてくれたことにも感無量。

ハッスル&フロウ 公式サイト
HUSTLE & FLOW  2005  アメリカ
監督.脚本  クレイグ・ブリュワー
出演 テレンス・ハワード、アンソニー・アンダーソン、タリン・マニング、タラジ・P・ヘンソン、D.J.クオールズ、ルダクリス

(新宿 テアトルタイムズスクエア)

アメリカの音楽雑誌「BLENDER」のロックンロール映画ベスト100
(2005/10)
1. 「スパイナル・タップ」(84)
2. 「サタデー・ナイト・フィーバー」(77)
3. 「メタリカ:真実の瞬間」(04)
4. 「プリンス/パープル・レイン」(84)
5. 「あの頃ペニー・レインと」(00)
6. 「ブルース・ブラザース」(80)
7. 「24アワー・パーティ・ピープル」(02)
8. 「DIG!」(04)
9. 「ラスト・ワルツ」(78)
10. 「サウスパーク/無修正映画版」(99)
11. 「シド・アンド・ナンシー」(86)
12. 「バッド・チューニング」(93)
13. 「ドント・ルック・バック」(67)
14. 「8 Mile」(02)
15. 「イン・ベッド・ウィズ・マドンナ」(91)
16. 「スクール・オブ・ロック」(03)
17. 「Hard Core Logo」(96)
18. 「ナッシュビル」(75)
19. 「グリース」(78)
20. 「イギリスから来た男」(99)
21. 「ハッスル&フロウ」(05)
22. 「ハイ・フィデリティ」(00)
23. 「キッズ・アー・オールライト」(79)
24. 「パフォーマンス」(70)
25. 「New York Doll」(05)
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by CaeRu_noix | 2006-08-29 12:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(8)
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Commented by 隣の評論家 at 2006-08-29 20:30 x
かえるさん、こんちわー。観て来たのですねぇ!
ヒップ・ホップとか、実は全然わからないのですが。この作品のサントラCDを早くから購入しておったので、思い入れは結構強いんざます。
作品の中で一番最初に仕上がる曲 『Whoop That Trick』などは、立ち上がって一緒に拳を振るいたい衝動をグッと堪えました。(えっ?)
かえるさんも挙げている、シャグのコーラスを取り入れて見事に曲が完成したシーンなどは。シャグにも負けないくらいの感動が込み上げてきました(すごっ)。
>Dジェイには嫌な思いをさせられたこともあるノラなのに、そこまで売り込んだ彼女の心意気にはやられた。
シーンで言うと僅かな映像でしたけど、私も印象深かったです。
何だかレイトショーだなんて少し勿体ない気がしています。この作品の存在すら知らない人もいるくらいですもん。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-30 00:31
隣の評論家 さん♪
おー、サントラ聴き込んでましたかぁ。すばらしい。
私もはやりのHIPHOPだとかは全然わかりませんけど、そのラインの音楽は好みなんですー。ブルース、ソウル、ジャズ、そして、ヒップホップ♪
"Whoop That Trick"って言ってたのね!そう、あそこは一緒に叫びたいかも。実際にやったら、周りの人がビックリしちゃうでしょうけどー・・・。
わたし的にはDは時折ムカつくヤローだったんですけど、シャグやノラのことが心配でならなかったので、彼女たちの笑顔のシーンは本当に感動いっぱいでした。シャグという名前から、アリス・ウォーカー「カラー・パープル」を思い出してしまったりして。ノラが換気扇を止めるところが好きでしたー。
これはテアトル系なら、渋谷シネセゾンあたりで昼間やってもいいですよね。ヒップホップ映画を観るのは夜遊び系の輩というヨミでレイトなんでしょうかね?
Commented by mar_cinema at 2006-08-30 03:02
かえるさん、こんばんは。
D、最低だよな・・・って思いつつも、観てました(笑)
まぁ、協力している人へ気持ちがちゃんと向けられた後半には、
最低から、最高の奴に変わってしまったんですが・・・
個人的には、友達の奥さんへのちょっとした気遣いが、ポイントでした。

この作品、本当に単館&レイトショーは、もったいない作品だと思います。
Commented by 睦月 at 2006-08-30 20:56 x
こんばんわ!TB&コメントありがとうございます!
Dジェイのような横暴で身勝手な男・・・なんだか久々に見たような気がします(笑)それでも、そのそばで彼を支える女性たちの存在が、気の毒でありながらもとても強く頼もしかったです。

やっぱ音楽映画はいいですね。
ステージ上でもなんでもない、しがない小さな家の一室でのレコーディングシーンでも、すごく心がアツくなりましたよ!ラップって結構難しいはずなんだけれど・・・テレンス、ナイスな歌声とパフォーマンス!!レイト上映はもったいない作品です。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-30 23:40
mar さん♪
Dは酷いヤツでしたよねー。自分の成功のことばっかりなんだもん。が、そのへんに苛立つのは、この映画の正しい味わい方ではないよなと思い、周りの人たちの心意気に免じて、大目に見ることにしましたけれど。後半は一応、感謝の気持ちを示していましたもんね。そうそう、あの奥さんにもちゃんと気遣いを見せるところがさすがでした。
Commented by CaeRu_noix at 2006-08-31 12:44
睦月 さん♪
音楽映画の主人公は、女にだらしがなくて粗暴と相場がきまっていますが、Dジェイタイプはなんか懐かしい感じでしたよね・・。時代設定はいつだったんでしょうぅ。腹が立ちつつも、主人公が優等生ないいヤツじゃないところに面白みがあるんですよね。そうそう、彼を取り巻き支える女達の存在がやっぱりポイントでした。
音楽映画はいいっす。物語のあらすじがパターン通りであろうが、大いなる興奮をもたらしてくれるますよね。レコーディングシーンは温かくもエキサイティングな見どころでした。やっぱり彼らはもともとリズム感と音楽センスにあふれているんでしょうか。俳優テレンス・ハワードの板についたラッパーぶりには驚きましたよね。ホントに、レイトショーじゃもったいないー
Commented by sally at 2006-09-15 01:08 x
かえるさん、こんばんわ♪
なんか、分かっちゃいるけどのせられる展開なんですよね、こういうの。
私もシャグのコーラスのエピソード、好きでしたー。
完成した音を聴いた瞬間の彼女の表情が忘れられません。ラストもこの曲でしたよね♪チェーンあげたりして、良い娘でした。
現実は、Dの立場で成功することって非常に難しいと思うんですけど、まぁ映画ですから、希望が見えないとカタルシスが得られないですしね。
でも刑期中でラジオで流れてるのを知る、っていうのがちょっとさりげない感じで良かったです。
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-15 12:56
sally さん♪
音楽映画は心踊りますよね。わかっちゃいるストーリーも楽しいー。
シャグがコーラスに加わるシーンはとてもよかったですよねー。そうそう、彼女の喜びあふれる表情がまた感動的でした。女達が虐げられ軽い扱いをされるだけだったら、ちょっといただけなかったかもしれませんが、ちゃんとポイントがおさえられていてナイスでした。シャグのような優しい女性が、売春するしか生活の術がなかったという状況は悲しいけれど、ささやかな自己実現ができて何より。
サクセスはお約束として、刑務所に入っちゃうラストは意外でよかったです。そんな場所でラジオで自分の曲を聴くっていうのも気がきいてますよねー
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