かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ
2006年 08月 30日 |
Never Let Me Go /土屋政雄 訳

よみごたえのある端正な作品。せつなさに胸が痛んで、ため息。

31歳となったキャシー・Hの一人称で語られる回想の物語。
ヘールシャムという施設での出来事に始まって、親友のルースやトミーとの交流を中心に、これまでの日々についてが語られる。



キャシーやルースやトミーの施設生活を追いながら、そこに潜んでいるらしい複雑な事情に心奪われる。なぜ、施設で、保護官なのか。なぜ、産めないのか。マダムが私たちを怖がってさえいるらしい。キャシーたちは何者なのかという謎に心をつかまれ、それが解った時にはやるせない気持ちでいっぱいになった。こんな人生を強いられた彼女たちに比べたら、私たちはなんて幸福なんだろう。

キャシーの語り口があまりにも冷静で落ち着き払った説明口調であるためか、他の一人称語りの小説に比べて、主人公に感情移入・同化しづらくもあった。けれど逆に、その抑制のきいたトーンで、達観するかのようにその運命を静かに受け止めている様がよりいっそう行き場のない悲しみと虚しさをもたらす。

医学、生命科学における生命倫理という枠組みの中で客観的に考えるより何より、文学が誘う虚構の世界は深遠で尊い。
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by CaeRu_noix | 2006-08-30 11:19 | Art.Stage.Book | Trackback | Comments(2)
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Commented by きょろ at 2006-09-04 06:50 x
かえるさん、お久しぶりです。
この本、以前新聞の書評を読み、読みたい本リストに入れているのですが、まだ読めていません。やはり、とても、良さそうですね。
映画も沢山観られて、ブログも書かれて、読書も。。。かえるさんって、すごいなー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-04 12:48
きょろさん♪
夏の間はいろいろ大変だったようですね。
落ち着いたら、骨休めしつつ、読書の秋などを堪能してくださーい。
これは評判がよかったので、すぐさま借りてみましたが、読み応えありましたよ。
きょろさんが家族や人のために尽くしている時間を、私は自分の趣味にあてているだけなので少しもすごくはないんですけどね・・・。むしろ人間失格。両生類ー。読書量は大して多くはないですよ。電車に乗っている時に読むくらいなので。オススメ本があったら、教えてくださいねー。
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