かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『胡同(フートン)のひまわり』
2006年 08月 31日 |
その時その時わかりあうことは難しいけれど、時代を生き抜いてあふれる思いもある。

父と息子の葛藤を中心とした北京のとある一家の30年。



胡同(フートン)のこと、知りませんでした。すみません。てっきり、地名か人名かと思っていました。「胡同」は北京の「路地」「横丁」のこと。路地好きな私にはたまらない空間。中国映画の家族を描いた感動ものは見飽きていたので、本作にもさほどひかれなかったのだけど、そんな胡同にスポットをあてているとわかり、劇場鑑賞してよかったと思いました。

「四合院」という建築様式の石造りの平屋が中庭を囲むように東西南北に建てられていて味わいのある風景となっている。住民の生活の場であった「胡同」は、北京の再開発のために90年代以降は徐々に取り壊されているそうだ。趣のある古い路地と建物が、近代的な新しいものに取って代わられようとする様が、父と息子を取り巻く中国の時代の移り変わりを象徴するようで感慨深い。

ひまわりにちなんで名前がつけられた1967年生まれの向陽(シャンヤン)。
1976年、1987年、 1999年という三つの時代に渡り、シャンヤンの一家が描かれる。家族模様には普遍的なものもあるのだろうが、その時代その土地ならではの関係性というものもとても興味深い。文革の苦渋体験をした父と、新しい時代に育ち、急速に近代化する都市で大人になった息子の価値観のギャップやわかり合えない思いが歯がゆい。短絡的に親子の深い絆や愛情が描かれるより、なかなかうまく関係性を育めない家族の姿がむしろリアルで胸を打つものがあった。

文革の強制労働で手を痛めて画家になる夢を断念した父は、遊びに行きたいシャンヤンに絵を描く練習を強いる。息子には絵を描く才能が受け継がれているはずに違いないと、息子に夢を託す父の気持ちもわかるのだけど、自由意思を奪われて無理やりやらせたところで、子どもは反発するだけに決まっている。だけど、あくまでも頑固な父。強いられるほどに息子は反発を強め、親子の間に深い溝ができてしまうのがせつない。不協和音が止むことのないまま時は流れていくのだ。

10年、20年という時が流れても、都市の変貌ほどに、人間の性質は大きく変わりはしないのだろう。これでよかったのかと永遠に迷い続けるものかもしれない。それでも時の流れは、自らも父親になった息子が父の気持ちに歩み寄ったり、年老いていく父が心を溶かして人生を顧みる日をもたらしてくれる。
家族は、ひまわりと太陽のよう。どこに咲いていてもちゃんと照らしている。

とある一家の物語に限定されない、時代の流れを俯瞰するような視点がよかったな。

胡同のひまわり  公式サイト
向日葵 / SUNFLOWER  2005  中国
監督.脚本 チャン・ヤン
出演 スン・ハイイン、ジョアン・チェン、チャン・ファン、ガオ・グー、ワン・ハイディ

(渋谷 ル・シネマ)
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by CaeRu_noix | 2006-08-31 13:19 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(6)
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Commented by 風情♪ at 2006-09-01 11:16 x
こんにちは♪

少年期&青年期までのエピはかなり惹き込まれたんですが
向陽が大人になってからがなんかまどろっこしくてダメでした。
親父の偏執的な行動にも共感できずだったし・・・全体は悪くは
なかったんですが馴染めず仕舞いでした。 r(^^;)
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-02 12:37
風情さん♪
シャンヤンは大人になってからも何だかシャキっとしてませんでしたよね。でも、ぬくぬく自由に育った世代って、こんなものかなぁと思えました。父さんの頑固さも極端すぎるけど、厳しい時代を生きて夢を奪われた世代だから、なかなか柔軟にはなれないものじゃないかと思います。いかにも好感度の高いいい父さんといい息子の物語ではなく、なかなか気持ちが通い合わないというのがむしろリアルでよかったと思います。共感できないというのもわかりますけどね。
Commented by sabunori at 2006-09-02 18:08
かえるさん、にいはお。
シャンヤンとお父さんの関係だけだと「ガンコおやじ!」という印象だけに
なってしまうところをお父さんとラオさんの友情のエピソードも見せることで
お父さんの描き方に厚みが出たかな?という印象でした。
あの将棋シーンは意地張ってバカね、と思いつつよかったわー。
Commented by 朱雀門 at 2006-09-03 03:29 x
こんばんは、コメント・TBありがとうございました。
時代の変遷が上手く盛り込まれた作品でしたね。自分の理念を押し通そうとする父親と、それに反発する息子。両者の関係が移ろいでいく様は、中国における国家・民衆の関係を暗喩的に映し出しているのだろうか、とも思いました(深読みかも知れませんが)。
先日、チャン・イーモウ監督の『活きる』を観ましたが、この作品でも揺れ動く中国社会と家族の関係が味わい深く描かれており、好印象でした。お、左側のリストに『紅いコーリャン』がありますね。私は観ていないのですが、こちらもコン・リー主演ですね。近いうちにチェックしてみます。
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-03 23:21
sabunori さん♪
父とラオさんの友情のエピソードはよかったですよねー。簡単に赦せないけれど、断絶はしないというのが意外と現実的でしたよね。確かにそれで物語に厚みが増したかも。そうそう、素直につき合えないながらの将棋がまたよかったです。赦せなかった友人ではあったのだろうけど、晩年はフートン暮らしのご近所友達としての微妙で微笑ましい関係でした。ラオさんのサイゴは悲しかったけれど、ここで気持ちが溶け合ったようでしみじみ。
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-04 12:38
朱雀門 さん♪
中国映画というと私はチャン・イーモウ、チェン・カイコー作品あたりから入ったクチなので、こういった激動の時代を背景にした家族ドラマには、まさに中国映画の味わいを感じます。『活きる』も感動的だったんですが、劇的過ぎてちょっとお腹がいっぱいになってしまい、イーモウ作品の中ではさほど気に入ってはいなかったりします。本作は、それほどに劇的ではないのだけど、さりげなく時代の移り変わりが家族模様と呼応するように描かれていたのがよかったです。イーモウ作品はほのぼの庶民ものもすごくいいんですが、『紅いコーリャン』のような鮮烈なものがやっぱり代表作なんじゃないかな。コン・リーといえばイーモウですよ。2人が別れてから?はコン・リーは他の監督作品に出たり、ハリウッド進出したりしましたが、また久しぶりにイーモウ作品に出演するらしいです。マイアミ・バイスのコン・リーもちょっと楽しみ。
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