かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『パトリス・ルコントのDOGORA』
2006年 09月 05日 |
興味深くも心地よい体感。ルコントのセンスはやっぱり好き。

フランスの音楽家エティエンヌ・ペルションが生み出した曲「DOGORA」と、監督の弟が住む国カンボジアの2つの衝動に駆られて作られた作品。



演技や演出のないリアルなカンボジアが映し出されているという意味においてはドキュメンタリー作品といえるけれど、いわゆるドキュメンタリー映画のような構成ではなく、インタビュー場面やナレーションは一切ない。「DOGORA」という曲とともにカンボジアの映像が断続的に綴られる。パトリス・ルコントの感性によって結びついたその二つが溶け合った世界を体感するのだ。

カンボジアという国には行ったことがない。私が訪れたことのある東南アジアの国はタイ。そう、タイの街で味わった喧騒に似ている。バンコクの街でも同じだったんだけど、一台のオートバイに当然のように親子4人5人が連なって乗っているんだよね。日本だったら、法律で許されていたとしても、危ないから同じことはしないだろうな。現代の日本ではもはや見られないような、生活する人々の素朴でエネルギッシュな姿が躍動する。子ども達の無邪気な表情がスクリーンにあふれる。

パトリス・ルコントといえば、酸いも甘いも噛み分けた大人の一筋縄ではいかない感情を描くのがお得意な人。おしゃれで洗練されていて甘ったるくて都会的なイメージしかもっていなかった。そんなルコントが、カンボジアの雑踏の喧騒や生活する庶民の姿に惹かれてそれを映画にしたというのは意外だった。イメージが合わないという意外さはあったけれど、大人ロマンスが得意の都会派のルコントだからこそ、自身の日常では目にすることのないような光景の広がるカンボジアという国に惹かれたのはよくわかる。
私も海外へ出かけると、観光の見どころである建築物以上に、そこで生活する人々の姿に心を奪われて、カメラを向けずにはいられなくなることがよくあった。とりわけ発展途上国ではそんな興味が強くなり、市場に集う人々の姿、戯れる子どもたちの姿を眺めることに夢中になったもの。
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それでいて、美しい景色を切り取るアートな感性もやっぱりルコントらしくって嬉しくなってしまう。夕暮れ時の水面が光り輝く川をゆったりと小船がすすむ光景の幻想的な美しさ。一つ一つのショットがとてもアートなのだ。そんな絵になる風景が、時には静かで時には力強く迫りくる音楽と共に展開される。見事な編集の力によって、映像と音楽はピッタリと調和している。本来合うとは思えないオーケストラ演奏曲とカンボジアという国の姿が、一体となって観るものの心に訴えかけてくる。

感性が合わなかったら、面白くも何ともない映画なのかもしれないけど、私には楽しい映像詩体験でした。

DOGORA - OUVRONS LES YEUX  2004 フランス
監督 パトリス・ルコント
撮影 ジャン=マリー・ドルージュ
編集 ジョエル・アッシュ

(東京都写真美術館)
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by CaeRu_noix | 2006-09-05 10:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(6)
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フィクションでもドキュメンタリーでもなく、あるがままの音楽と映像だけの作品。 パトリス・ルコントの鼓動のような、生命の躍動感漲る音楽たち。 オーケストラの映像で始まる。 この音楽がルコントに衝撃を与え今作品を作るきっかけとなる。 人の声はいつも思うが、心に直接振動を与える。 共鳴・・・これはある振動によって離れた所のものでも、同調し得るものに働きかけそれを振動させる作用。 声は全身の細胞膜を震わせて発するもの。そして他人の細胞膜をも震わせていく。 スコアと共に人の声が容赦なく心を掴んではなさない。 ...... more
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私が好きなルコント作品は何よりも静けさ。人間の内面の激しい葛藤とは裏腹の、映像全体に流れる圧倒的な静けさ。求めてやまないものへの痛い程の思い、寂寥感、喪失感。そしてその人間たちを浮き彫りにする美しい映像。 今作はその期待とは全く逆のエネルギーを感じ...... more
Commented by Puff at 2006-09-05 22:41 x
お!レヴュー、UPされましたねー
この映画も人を選びますよね。
ワタクシが行った時は、写真がお好きそうな感じの初老のおじいさまばかりで、十数分後には何人かがコクリコクリ・・・と眠っておられました。笑

>美しい景色を切り取るアートな感性
そうですよねー・・・、一つ一つ長回しのシーンが多かったですね。
あのようにじっくりと見つめるシーンは、ある意味、とても贅沢な時間ですよね。
そうそう、オーケストラとカンボジアの国って一瞬ミスマッチのように思ええるけれど、見事に調和してましたね。
もちろん、それぞれの良さもあるけれど、それを融合させるルコント監督の演出が大きいですよね。
素晴しい時間を頂きましたです・・・・・♪
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-07 11:38
Puff さん♪
あの写真美術館で上映されるものって、他のミニシアターではかけてもらえなかったという感じのエンタメ要素の薄い作品が多いですよね。いつもお客は少なめですー。でも、映画ではなく、写真展目当ての人たちの列でホールはにぎわっていました。映画の方も写真好きな方々が多かったりするのでしょうかね。
ルコントの映像センスって、とにかく大好きなんですよねー。それが、先日観た『親密すぎるうちあけ話』では、あまり映像にウットリすることがなくて、やや残念だったんですが、本作では野外撮影がほとんどで、画的に満喫できましたー。
もっとカンボジアの風景や人々の活気に合う音楽というのはあると思うんですが、ルコントがこの曲に感銘を受け、この二つの合わせたことに異論はありませーん。美しく調和していましたよねー。
Commented by charlotte at 2006-09-07 17:15 x
はろーー。
かえるさんのレビュー、待ってましたー。
にオーケストラと映画って合わないと、くどく感じてしまいます。
音楽の使い方が変だとがっかりしちゃうのですが。
例えば盛り上げすぎーとか、音うるさいーとか。
そういうのってクラシックのオーケストラ楽曲だったりすることが多いですよね。この作品の曲たちもやや感情の高ぶりを期待するような曲ですし。
でも音楽の他にも生活音みたいな自然の音が挿入されていたから、バランス的にはグッ、ジョブ~!ですわ。笑
ツボを外れると、ホントつまらないって思う方もいるかもしれませんが、映像にはすごーくしびれてしまったのでした。
娯楽としてではなく芸術作品として鑑賞すれば私にはサイコーな映画です~。
Commented by CaeRu_noix at 2006-09-08 13:01
charlotte さん♪
そうなんですよ。私はしょちゅうハリウッド映画の重厚な交響曲などにくどさを感じています。ハラハラする場面や、感動する場面は、いつも同じようなタイプの曲があてがわれているんですもの。近頃の映画館は音響設備がいいものだから、うるさくてイライラしてしまいますぅ。そういった重厚、荘厳な音楽を聴くなら、映像とセットではなくて、それだけを生で聴きたいところです。でも、ドラマを盛り上げるための道具の一つのオーケストラ曲というんではなく、あくまでもその音楽が主役という本作は支持しますー。面白い試みだと思います。感情に訴えかけてくる音楽が、映像のイメージにもからんで、イマジネーションが湧き起こるんですよね。劇映画のようなお膳立てされた泣ける物語があるわけでもないのに、観客はそこにあるドラマを見出してしまうかのよう。観光旅行気分な娯楽要素もあったと思うし、芸術的にもお見事な作品でしたよね。
Commented by fizz♪ at 2007-03-20 02:13 x
こんにちは♪
TBさせて頂きました。
やっぱりルコントの映像は好きです♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-22 12:30
fizz さん♪
ルコントのセンスはいいですよね。
音楽にばっちりあった美しい映像に魅せられました。
アンコールワットに行きたいですー。
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