かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『セプテンバー・テープ』
2006年 10月 20日 |
2006年10月には直接的には大しておもしろい作品ではなかったけど、考察するおもしろさはあったかな。

アメリカ人ドキュメンタリー映画監督が911テロ後の2002年に渡航禁止中のアフガニスタンに渡って取材をした8本のテープに映っていたもの。



ドキュメンタリーのようなフィクション。ドキュメンタリー映画として紹介している雑誌記事もあり、そうだと思って観に来た人がいたら戸惑うだろう。フィクションだと知って観に来ていても、描かれているものの何をどう受け止めればいいのかよくわからなかった・・・。渡航禁止のアフガニスタンで撮影したそのビデオ・テープの8時間分はアメリカ国防総省に押収されてしまったそうで、その8時間分に映っていたものが暴かれるというなら、もっと興味深い映像となったと思うけれど。

2002年に撮影した直後にその映像が公開されていたら、衝撃度は高かったかもしれない。製作されたのが2004年で、日本で公開されるのが今年2006年では遅すぎる。『華氏911』と同じ頃に観ることができたのならもう少し面白みがあったかもしれない。『シリアナ』のような映画が公開された後では、それほど訴えかける何かを感じる映画ではなかった。

渡航したドキュメンタリー映画のスタッフは消息を絶ち、ビデオテープだけがアフガン国境で発見されたというドラマチックな導入部分も当然フィクション。通常のドラマであれば、発見されたテープに映っていたものは一体何かと展開するプロットは効果的なはずだが、本作では虚構性が増すだけとだと思えた。むしろ、架空のドキュメタリー映画監督の姿よりも、こういった危険な渡航をしてまで撮影を実行した実物の映画監督自身の思いを劇中で聞いてみたかった。

それほどの新たなる衝撃はないながらも、ドキュメンタリーの要素も多く、臨場感のあるスリリングな映像はハラハラと見ごたえがあった。フィクションだとわかっていても、危険と背中合わせの冒険劇には緊張させられる。アメリカ人のラーソンは、通訳ワリの再三の忠告を聞かずにしょっちゅう危険なことを試みるので、観ていて傍ら痛いという気持ちが止まず。フィクションの中でもアメリカ人はいかにもアメリカ人・・・。目的のあるアナタはそれでいいと思うけど、現地の通訳を危険に巻き込むことを躊躇しない姿勢が腹立たしい。

この主人公ラーソンは一体何のためにこんな危険を冒すのかという疑問が終始つきまとった。それほどに愛する妻がいるなら、命がけで危ない撮影をすることなんてないんじゃないかと思っていた。危険覚悟で真実を伝える仕事に従事する人には敬意を払うけれど、この場合はそこまでの使命感すらないように思えたから・・・。そして、最後に、ラーソンの妻の声を聴いて、物語的には納得・・・。

自らの命をかけることを厭わなかったラーソンの心情は物語上は理解できた。しかし、この物語の作るために、実際に危険なアフガニスタンへ渡ったこの映画の監督クリスチャン・ジョンストン自身は、そのような境遇ではないだろうから、その動機・目的には共感しきれない。無事に帰って来られたからよかったものの、真実を追求したいという好奇心のために渡航禁止の国へ行って危険を冒す必要はないと思える。真実の報道をしてくれる人は必要だけれど、このような形でなくてもよかったんじゃないかと思う。
と撮った後で言っても仕方ないので、これが間接的でも何かの問題解決に繋がることを望みましょう。マイケル・ムーアやスパイク・リーのように問題追及に取り組む映画製作者がいてくれることが意義深いように、これにもまた何らかの価値はあるはず・・・。

ジャンル的には比較するにふさわしくはないけれど、アフガンの現状を映し出したマフマルバフの『カンダハール』や『午後の五時』の世界に心揺さぶられたことを思い出す。社会派作品にも多様な視点があるものだ。本作には真実が含まれているとはいえ、ドキュメンタリー映画監督ですらハリウッド映画ばりに冒険をしてしまうアメリカンな部分に私は冷めてしまったのかもしれない。

SEPTEMBER TAPES 2004 公式サイト
監督.脚本 クリスチャン・ジョンストン
出演 ジョージ・カリル、ワリ・ラザクィ
 (シアターN渋谷)
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by CaeRu_noix | 2006-10-20 01:40 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 映画通の部屋 at 2006-10-22 12:02
タイトル : セプテンバー・テープ
「セプテンバー・テープ」 SEPTEMBER TAPE/製作:2004年、アメリ... more
Commented by 隣の評論家 at 2006-10-22 12:06 x
かえるさん、こんにちわん。
私は、この作品はドキュメンタリーだと思い込んでいたので、かなり混乱しましたよー。
>社会派作品にも多様な視点があるものだ。
つまりは、こういう事なんでしょうね。
ラスト、ラーソンが行動に出た理由は、物語上は納得できたのですが。少々強引な気もするという心の声もあり。
色々と考えさせられるという点では、とても意味のある作品だと思います。比較するのも変な話ですが、私は『ユナイテッド93』を見た時ほどの衝撃はありませんでした。
Commented by CaeRu_noix at 2006-10-23 14:50
隣の評論家 さん♪
アフガニスタン国境でテープが見つかったっていうふりがまず本当の話みたいでしたよね。そういう誤解を持たせることもねらいだったんでしょうか・・・。
ラーソンの行動は馬鹿げているほどに無謀でしたよね。でも、ドキュメンタリー映画撮影が目的っていう方がもっと理不尽だったから、物語上は私はしっくりきました。大雑把なとらえ方をしたら、『太陽の傷』の主人公と同じような突き動かされ方っていうか・・・。
と、物語的にはまぁよかったんですが、現実のこの映画のスタッフ達の強引さは腑に落ちませんー。どっちサイドにも迷惑をかけている気がしました。『バッシング』の彼女と比較してみたり・・・。
『ユナイテッド93』は犠牲者を哀悼する映画なのかしら? 本作はいまいち意図不明でしたー。
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