かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『チャーミング・ガール』
2006年 10月 22日 |
等身大の女性の日常がリアルでせつない。

郵便局で働く、29歳の一人暮しの女性チョンヘの物語



タイトルが「チャーミング・ガール」ということは、主人公の女性はチャーミングとは言い難いってことかなと思うのだけど、出ずっぱりの主演キム・ジスはとても美しい。映画出演はこれが初だが、1992年にドラマデビューし、韓国ではチェ・ジウと並ぶベテランの人気女優なのだという。韓国の人気女優は、どちらかといえば童顔のかわいいタイプが多いような印象だけど、このキム・ジスは、凛としていて近づきがたいような雰囲気すらある大人っぽい美人顔。そんな風貌の彼女なら、ハツラツとしたしっかり者のキャリアウーマン役なんかが似合いそうにも見えるのだけど、この物語の中では覇気もなく、淡々と日常を送っているのだ。何が彼女をそうさせているのだろうかという興味に惹かれて、静かにチョンヘの平坦な毎日を見守る。

こういう静かな日常の物語というのは私は好きなんだけど、あまりにもメリハリがないので、広くはオススメしかねるタイプの作品。どこがどうして“第2のキム・ギドク”なんだろうと思ったら、このイ・ユンギ監督が所属するLJフィルムというのが、第2のキム・ギドクを送り出すというコンセプトで映画製作をしているかららしい。作風に通じるものがあるわけではなくて、むしろ全く逆。韓国映画は非日常的なドラマティックなものが注目を浴びている印象なので、こういう淡々と静かな日常を描いたものは珍しい気がする。濃い韓国映画に慣れていた近頃なので、何も起こらない日常をリアルにみずみずしく繊細に描いたこの物語には好感をもてた。韓国映画でツァイ・ミンリャンやジャ・ジャンクー作品のような孤独感が描かれるのは新鮮。

「昼休みはどこに行っていたの?」といちいちうるさい詮索好きの同僚やなれなれしい対応をする靴屋の店員にリアリティを感じたり。

美しいチョンヘがこんなにも心を閉ざしたように無力に暮らしているのは、何か理由があるのだろうなと感じ、徐々にそれが明らかになっていく。回想シーンに登場するデリカシーのない人たちの発言が印象的。そんな人の言葉を気にせずにいられる人も多いだろうけど、チョンヘのように深く傷ついてしまう人もいるのだよね。"出来事"がトラウマになったという描き方ではなくて、他者の行為と言葉や状況によってわき起こった一瞬の感情が長く心に影を落としているというカンジの過去の場面描写の仕方に共感を覚えた。こんな出来事がありました、だから辛いんですという説明的なものではなくて、体験した一瞬、一瞬のショックや喪失感が心に刻み込まれるという感触をとらえているのがいいなと思えた。

精神カウンセラーが書いた短編小説「チョンヘ」が原作なのだそう。複数の女性の話を組み合わせて、チョンヘという人物が作り上げられた。監督はそこにより日常性を加味してこの脚本を仕上げたという。そんな現実の女性達の姿が土台になっているからこそ生まれた等身大の主人公。傍観するならば面白い話でも何でもないと思うけれど、チョンヘに共感してしまう人にはせつなくも心に沁みるストーリー。

This Charming Girl 2005 韓国 公式サイト
監督 イ・ユンギ
原作 ウ・エリョン
出演 キム・ジス、ファン・ジョンミン、キム・ヘオク
(渋谷 シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2006-10-22 10:05 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(6)
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Tracked from まったりインドア系 at 2006-10-29 00:13
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Commented by ゆっこ at 2006-10-29 00:20 x
残念ながらチョンヘに共感できなかったので、せつなくも心に沁みるストーリーとは思えず、ひたすら「イタすぎるっ!!」と拒絶アレルギー?が起きました。
私も、あまり若くない独身女なので、あの単調で無味乾燥な暮らしぶりを克明に描き出されることで、
同族嫌悪的なものを覚えたのかもしれません(涙)。


>"出来事"がトラウマになったという描き方ではなくて、
>他者の行為と言葉や状況によってわき起こった一瞬の感情が長く心に影を落としているというカンジの過去の場面描写

かえるさんのおっしゃる通りなんでしょねー、きっと。
的確なレビューに感心しつつも、もう一度見たいか?と聞かれたら
私は「ノー!」と返事しちゃうかな(苦笑)。
Commented by CaeRu_noix at 2006-10-30 11:41
ゆっこ さん♪
同族嫌悪感というのはわかりますー。嫌悪できるというのは、ゆっこさんが健全ということなんじゃないかと思ったりします。理性的には私も、いくら辛いことがあったからといって、こんなふうになっちゃーいかん、前向きに生きるべしーと思います。なんだけど、無気力になってしまう状態もよーくわかるヘタレな私なので、そのイタさに共感してしまいました。ダメさに共感するのって、それを正当化したいためみたいであんまりいいことではないかもしれないんですけどねー。
リアルなせつなさを描いたものなら、『子猫をお願い』なんかの方が映画としてのおもしろみがあるとは思います。子猫をお願いする友達もいなくて寂しいー
Commented by 狗山椀太郎(旧・朱雀門) at 2006-12-17 02:58 x
こんばんは
性別の違いはあれど、少なからず共感できる作品でした。
過去に体験した出来事や眼にした情景が、ふと(特に理由や脈絡もなく)心に甦ってくることが私にもあるので、本作のようなカットの挟み方はすごくリアルだなと感じたのです。説明的な要素がないだけ、憂いを含んだ主人公の表情から言葉にならない哀しみや苦しさがにじみ出ているようであり、つい自分自身の抱えるつらさと重ねてしまいました。

>ツァイ・ミンリャンやジャ・ジャンクー作品のような孤独感
なるほど。私はどちらも1本しか見ていないのですが、淡々とした雰囲気はどこかしら本作とも似ているかな・・・。先月に見た『世界』は面白い視点を持った作品でした。ミンリャンの『西瓜』は、やっと来年1月に関西でも上映されるようなので楽しみです。
Commented by 丞相 at 2006-12-17 16:37 x
こんにちは、TB&コメントありがとうございました。
女性の日常をみずみずしく描いたという点では、
同じく韓国映画の『子猫をお願い』とも少しかぶっていますね。
後で振り返ると、チョンへは几帳面な性格というわけではなく、
忌まわしい過去を思い出さないため、つつましい日常を守っているのが
切なくもありました。新人監督でこれほどの作品が作られるのは、
やはり韓国映画の底力を感じずにはいられないですね。
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-18 22:45
狗山椀太郎 さん♪
共感していただけてよかったです。
なにしろ男アメリちゃんですものねー。こちらはいたずらをしないあめりん。
そうそう、映画のようなフラッシュバックは、自分の中でもしょっちゅうおこりますよね。そういった感じがよく伝わってきました。
直接的には何も語られないのだけど、彼女の孤独で無理力な毎日を見ていると、その閉ざされた心がつらくなってしまうんです。TVをボーっと眺めているんなら、映画でも観ればいいのに・・・なんて時に思いながらも概ね心寄り添いました。みんな、つらいのねーって分かち合うことが嬉しかったのに、物語のモデルはカウンセリングが必要な人だと知って少しショックでした。カウンセラーにかかってもいないのに、共感しちゃう自分は問題アリかしら?って。『やわらかい生活』に同じく・・
ジャ・ジャンクー作品やツァイ・ミンリャン作品と本作の雰囲気は似ていないと思うのですが、韓国映画で孤独感を描いたものは珍しい気がしたので、引き合いに出してみました。
ツァイ・ミンリャン作品は変態的ですがハマるとやみつきになりますよー。
ジャ・ジャンクーは『青の稲妻』がよかったです。
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-18 22:56
丞相 さん♪
猫つながり且つ等身大のリアルな女子映画としてつながりますねー。こちらの方はウツモードなので、主人公の姿をみずみずしくとらえたとは表しにくいんですが、そのリアリティはみずみずしくも感じられましたよね。本当のみずみずしい度は『子猫をお願い』が最高ですが。
そうですね。過去の体験によって彼女の心は重く閉ざされていて、何に対してもポジティブにはなれなくて。これじゃあ、いけないと自分を励ます気力さえもわき上がらない・・・。つつましい日常を守っているというよりは、意図的に生活習慣を前向きに明るくすることさえできない、とにかく無気力にとらわれてしまっていたという印象でした。日常を繰りかえすことで精一杯という・・・。
韓国映画がたくさん日本で公開されすぎて、平均点が低くなってしまっている昨今ですが、本当は韓国映画はレベルが高いですよね。ギドク組の新鋭にはがんばってほしいです。
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