かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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スクリーンでヴィスコンティ 『ルートヴィヒ』、『イノセント』
2006年 11月 03日 |
1日遅れてしまった・・・
ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)生誕100年!
ちょうど100年前の1906年11月2日、ルキノ・ヴィスコンティはイタリアの貴族家庭に生まれたのですね。
そして、2006年秋、絢爛豪華なヴィスコンティ作品を劇場鑑賞する幸せに恵まれました。
『山猫』は2年前に観ることができたので、このたびは他の2作品を。



『ルートヴィヒ /完全復元版』 1972

ルードウィヒだと思っていたら、ルートヴィヒだった。いや、80年公開の184分バージョン"神々の黄昏"の時は 「ルードウィヒ」だったのだけど、240分の完全復元版では、正しいドイツ語発音に近い「ルートヴィヒ」になったらしい。
『地獄に堕ちた勇者ども』、『ベニスに死す』に続く、「ドイツ三部作」の3作目。

第4代バイエルン国王 ルートヴィヒ2世(Ludwig II. 1845-86年)のことはほとんど知りませんでした。エリザベートにこんなイトコがいたとはー。観光で訪れたノイシュヴァンシュタイン城はこのルートヴィヒ2世が建てたものだったのか。「トリスタン」の話をする作曲家ワーグナーの登場シーンも興味深く。総合芸術、バンザイ。

4時間という膨大な上映時間だけれど、こんなにも美しい世界がヴィスコンティの意向に沿って復元されたことには感謝感激。アクションシーンの多いハリウッド映画の3時間ものを観るのが苦痛な私も、美の巨匠が創り出した美しくもデカダンスな世界を眺めるのは飽きません。ウットリ耽溺。この時代の室内装飾や衣装のデザイン、質感が素晴らしくて、それを妥協なく再現してくれたことに感嘆。今の映画界ではこういうタイプの作品に莫大な製作費がかけられるということはないですもんね。

そして、ヘルムート・バーガーがとてもハマり役で苦渋に満ちた表情がそれはもうステキでした。芸術を愛し、国費を使って城を建てまくる王様なんて、下々の人間から見たら、迷惑この上ないことなのだろうけど、とことんルートヴィヒ2世の日々の姿を見せられると、彼も苦悩しているんだよと心寄り添ってしまう。王の座で優雅な暮らしをしているからといって満ち足りているわけではなくて。頽廃の美に圧倒されながら、やるせない思いをかみしめる。


『イノセント /完全復元・無修正版』 1975

完全復元されるばかりでなく無修正って?と思ったのだけど、観てみてなるほど!このシーンやこのシーンにはボカシがかかっていたのだろうなぁと納得。エロさ炸裂の見事な無修正版!美の巨匠はエロスというものもよーくわかっていらっしゃる。清楚で貞淑な妻というのはむしろこんなにもエロティックなのだなぁ。左半身付随の上、右足を骨折というボロボロの体で撮った作品だとは信じられない。驚異的な執念の遺作。

『山猫』や『ルートヴィヒ』は映像に圧倒されて、その雰囲気に酔いしれたという楽しみ方が主だったのに対し、こちらは男と女のドラマが面白くて釘付けになってしまいました。トゥリオはあまりにも身勝手な男なんだけど、そこにある人間の愚かさには真実味があるのです。妻を蔑ろにして浮気をしておきながら、嫉妬心によって初めて妻に心奪われるなんて。そして、嫉妬の相手が死しても、苦悩から逃れられないという容赦ない残酷さ。感傷に浸る間もない悲劇的な展開は圧巻。一貫した美学で描かれたショッキングなほどに見ごたえのある愛憎劇でした。

満喫。
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by CaeRu_noix | 2006-11-03 23:55 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(11)
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Commented by マダムS at 2006-11-04 08:45 x
スクリーン鑑賞おめでとうゴザイマス♪
うわ~ルートヴィヒのお城へ行かれたんですね? 彼の数々のお宝を以前TVで観たことがあるんですが、映画は途中挫折してました(笑)いずれ必ずリベンジするわっ!
「イノセント」のこのシーンやあのシーンは、TV放映だと絶対モザイク入りになるんでしょうなぁ・・「眺めのいい部屋」の無修正版って何故?って思ってたら、劇場で納得したのと同じでした(爆) あの妻は確かにとって~もエロティックでした最初から・・それに気が付かないなんて!(笑) 
どこまでも身勝手な男というか、子供なんですね自分が。
彼が妻を持った経験があるのかどうかわかりませんが、子供への仕打ちはショックでした。
Commented by マダムS at 2006-11-04 08:46 x
あ、下から二行目の”彼”とは ヴィスコンティ監督のことです(^^;)
Commented by charlotte at 2006-11-04 22:07 x
こばはー。
ルートウィヒだったのですか・・・。
かなりオタクな方だったようで。王様じゃなかったらそんなにたいしたことじゃないと思いますけど。。。でもお城をたくさん作ってくれたのは感謝すべきです。美術はさすが妥協なき貴族の世界そのままという感じが素敵でした。また心理描写なども私はツボでしたので4時間という長さでも難なく見れたほうかもしれません。
イノセントはいつか絶対見ますー。必ず無修正版で。笑

Commented by marion at 2006-11-04 22:49 x
ルードウィヒ/ルートヴィヒ問題、ずっと私の記憶違いだったんだと処理してたんですが、『神々の黄昏』(←これが初見)のときはルードウィヒだったのですね!長年のもやもやが晴れました。ありがとう!!
今回ルードウィヒは見直すことが出来ず残念でしたが、ヘルムート様にヤラれたご様子のかえるさんのご様子に・・・やっぱり私と趣味かぶってる??とニマニマしてしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2006-11-05 16:08
マダムS さん♪
はーい。大画面で観られてよかったですー。
ドイツの観光旅行といえば、ノイシュバンシュタイン城は基本なんですが、それがこの時代にそんなふうに建てられたものだとは全然わかっていなかたったんですよ。今さら感無量。山奥?にひっそりたたずむ美しいお城でした。いつかリベンジがんばってください。
TV放映などの場合、男性の部位にモザイクがかかるのは当然なんですが、『イノセント』のあの妻の美しい全裸の肢体などはどうなんでしょう。部位がどうのではなくて、みなぎるエロスは放送してもOK?ワイセツではなくてゲイジュツなんですけどいかに?!
トゥリオの行為は衝撃的でしたよね。彼に『灯台守の恋』を見せてあげたいと思いました。そこは原作どおりなんでしょうかね?でも、最後の選択は原作とは違うらしいですね。見ごたえのある愛憎劇でしたー。
ヴィスコンティの経歴には結婚という文字は見かけませんね。
Commented by CaeRu_noix at 2006-11-05 23:20
charlotte さん♪
違います。w ルートウィヒではなく、ルードヴィヒでもなく、ルードウィヒがルートヴィヒになったそうです。紛らわしいー。
こういうのはオタク?仕事と趣味を区分けできていれば問題ないと思うんですけど、やっぱり公務の関係者から見たら、こいつは不適格だってことになるんでしょね。時代、国勢によっては、こういう人でも君臨したかもしれないけれど。お城づくりもその当時は無駄遣いに他ならなかったんでしょうけど、今となってはそんな王様がいたこともステキねと無責任なことを思ってしまいますねー。白鳥城ばんざい。ヘルムート様の演技もすばらしく、その心情に寄り添ってしまいましたよね。私も長くてもOKでした。パイレーツオブカリビーの方がよほど苦痛だった。
イノセントの官能愛憎劇場もぜひー
Commented by CaeRu_noix at 2006-11-05 23:25
marion さん♪
晴れてよかった、 ルードウィヒ/ルートヴィヒ問題。私はカタカナ苦手なんで、よく憶え間違いはするんですよねー。だから、これも勘違いかなと思いつつ、いや、でも、確かに前は「ルード」だったよなーと訝しく思っていたのです。解決。
ヘルムート様はホントにステキでしたわー。やはりシュミがかぶっていますかー。ふっふっふ。『家族の肖像』も観てみなくちゃです。そして、marionさんのベスト3作品でもある『イノセント』も堪能ー。若かりし頃にこれを観てベストに入れてしまえるのってすばらしいです。
Commented by marion at 2006-11-05 23:54 x
たびたびすみません。ちゃいますちゃいます。ハタチの頃ベスト3に入れてたのは「ルードウィヒ」。で、「山猫」にも思い入れはあれど、現在はヴィスコンティのベストは「イノセント」だと思う、といった趣旨のことを申していたと思います~~。
Commented by CaeRu_noix at 2006-11-06 12:46
marion さん♪
わー、失礼しました。「『イノセンス』じゃなくて、『イノセント』」という言葉が記憶に残っていて、ハタチのBEST3にそれが入るんだと思ってしまいました。すみませんー。にしても、ハタチで 『ルードウィヒ』 が挙がるのもやっぱりかっこいいです。私、ハタチの頃には、ヴィスコンティの名前も知らなかったと思いますー。そんな未熟なわたし的には、オトナになった今でも、『イノセント』より『ルードウィヒ』 が上かなー。『山猫』のアロン・ドロン様もステキでしたー。
Commented by リーチェン at 2006-12-01 15:11 x
かえるさん、一足お先に劇場でご鑑賞ですね!
大阪では再来週ぐらいからはじまりますよ~
『イノセント』はみたいけれど日程が合わなさそうなので、今回は『山猫』狙いです(笑)

最近ビスコンティの映画を立て続けに見ていますが、なかなか人間描写がシビアで面白い。もの凄い結末が待ち受けているところは、ややキム・ギドク風(あそこまでサプライズじゃないけれど、笑)。貴族の末裔だけあるその美術や衣装も本当に見事。イタリア~さすがルネサンスであれだけの芸術が栄えた国だけあります!
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-02 11:42
リーチェンさん♪
ヴィスコンティ映画祭も続いて大阪で始まるのですねー。こういったスクリーンで観るべき名作を上映してくれるのは嬉しいですよね。
私もまずは『山猫』でした。舞踏会のシーンにはうっとりでした。あんど、軽快なアロン・ドロンも忘れがたいっ
ヴィスコンティ作品はまだまだ観ていないものも多いんですが、印象としては確かに人間描写がシビアですよね。描き出す人間の愚かさにリアリティがあります。そんな手厳しさも含めて魅力的なのですが。キム・ギドグの紡ぐ物語は、(本質はとらえているものの)表現はファンタジーなので、同次元の世界というカンジではないけれど、それに負けない辛らつさがあるかもしれませんねー。
とにかく見ごたえ満点で、生誕100年バンザイですー。
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