かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『Lunacy ルナシー』
2006年 12月 05日 |
悪夢慣れし過ぎたかな。

精神病院の拘束服を着せられる悪夢にうなされていたベルロは、公爵に導かれて・・・。



LUNA SEA ぢゃないよ。
チェコの鬼才、ヤン・シュヴァイクマイエルの新作だっ。

ベルロ役はパヴェル・リシュカ。チェコの俳優さんのことなんてほとんど知らないけれど、去年観た 『白痴の帰郷』 の時からこの人には注目してました。ハンサムくんというんではないんだけど、マチュー・アマルリック風味の魅力があります。(或いはフェレ) 顔立ちも似ている気がするだけでなく、精神病院からのお迎えが来るシーンは 『キングス&クイーン』 の序盤の場面にかぶっちゃったし。

最初の内臓ちっくなものがビャーっと飛び出る映像にはギョギョっとして、こんなにグロテスクなビジュアルが続くならちょっと困るなぁと思ったのだけど、その後は大丈夫でした。真っ赤な肉片もグロテスクではあるのだけど、私たちが日ごろお目にかかる食肉の姿かたちなので、それは割り切って眺めることができ、肉たちのあやしくもコミカルな動きをたびたび楽しめました。目玉はちょいと気味悪いけど。内臓系は苦手なんですが、こんなふうに生命を吹き込んでくれるとワクワク臨むことができる単純な自分。

いや、しかし、監督はホラーというけれど、神経を張りつめて見るというシロモノではなく、怪奇な世界なんだけどファンタジックなんですよね。幻想世界がそのまま、睡魔を招いてくれちゃって、朦朧としながら見てしまいました。すみません。寝入ってはいないと思うんだけど、意識はボンヤリでした。イメージフォーラムの椅子は睡魔に抗いにくいです。一瞬まぶたが閉じそうになって、肉たちが蠢く場面の明るい音楽でピャッと目覚めるってな状況。自分自身が夢か現かという狭間におかれていることは、むしろ本作にピッタリという気もするんだけど、全体像を掴んでないかもしれない私です。
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狂気に満ちた映像世界にはワクワクしたものの、それほどのインパクトはなかったかな。物語展開もわりと想定範囲内。あまり意外性はなかったような気がします。なんだそりゃ!って驚きたかった。精神病院の狂乱図というのも映画としてはわりと見慣れているような気がします。TIFFで観た『フォーギブネス』のそれは印象的でした。謎めいた奇妙な光景というのも見慣れてしまっていた感じ。ホラーであるならば、観客は主人公に一体化して、臨場感いっぱいで怪奇世界を旅する体験をしたいところだけど、そこに距離感があったというか、冷静に眺めてしまいました。

そんなわけで、拘束と自由などが描かれていたらしい主題もストーンとはこなかったかな。冒頭のシュヴァイクマイエル監督自らの解説が、私の感想・思考の自由を奪ってしまった気がしないこともないです。それに当てはめてしか考えられなくなってしまいました。

と、期待したほどの満足感が得られなかったことは否めませんが、やっぱり私は、シュヴァイクマイエルの世界観は大好きです。俳優が演じる物語よりも、マリオネットやクレイものがもっと活躍する世界の方がより好みなのかな。変な動きをもっと見たいー

SILENI LUNACY  2005 チェコ 公式サイト
監督・脚本  ヤン・シュヴァンクマイエル
美術 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー
出演  パヴェル・リシュカ、アンナ・ガイスレロヴァー、ヤン・トシースカ
(渋谷 シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2006-12-05 14:18 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(8)
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Commented by とらねこ at 2006-12-05 17:50 x
こんにちは、お久しぶりです。
パヴェロ・リシュカは、私は俗物なので、キアヌ・リーブスに見えてしまいました(笑)
精神の自由を謳うのにポーにマルキ・ド・サド、フランス革命・・・
ブラックジョークのテイストだったですねぃ。
Commented by sabaha at 2006-12-05 22:46
こんばんは。
そうか、観てる間じゅう、誰かに似てる似てると思っていたのですが、マチュー・アマルリックか…!(遅い)やっとスッキリしました(笑)
『白痴の帰郷』 (すごい邦題…と思ったら、ドストーさんが下敷きですか。先日ヴィスコンティの「白痴」録画したまま未見…)は観ていませんが、観たかったなー。パヴェロ君、気に入ってしまいました(^^)
あるジャンルを見慣れると、段々見方が厳しく?なってくる感じって、わかる気がします。私は、シュヴァンクマイエル、ほぼ初体験だったので、世界に浸る?感じで楽しめました。
他の長編も観てみようと思います(^^)
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-06 23:20
とらねこ さん♪
俗物という言葉を使う人自身は俗物ではない確率が高いです。(笑)
うーん、キアヌにはそんなに似ていないと思うんだけど、髪が長め、無精髭状態のキアヌの面影には少しかぶるかなぁ。
『クイルズの』のジェフリー・ラッシュのサド侯爵はよかったなぁなんて余計なことを考えてしまっていました。ブラックな小ネタの一つ一つは興味深かったんですけどねー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-06 23:30
わかばさん♪ (sabaha
マチュー・アマルリックに似てますよね?!
『白痴の帰郷』 の時はフェレに似ているなーと思っていたんですが、今回はマチュー似でした。いい俳優ですよねー。チェコ映画を観る機会はなかなかないですが、パヴェロくんも応援しましょー!
(「白痴」は映画化もされているようですが、ヴィスコンティのは『白夜』?)
期待する監督作品にはついつい多くを望みすぎてしまうのかもしれません。私はシュヴァンクマイエル作品にはアニメーション部分に対する感銘がメインだったので、今作はフツーの俳優ものに感じられてしまったんですよね。他の作品もぜひぜひご覧くださいー。私は『アリス』が大好きです。『ファウスト』も好き。
Commented by 隣の評論家 at 2006-12-07 20:13 x
かえるさーん、どもですー。
>拘束と自由などが描かれていたらしい主題もストーンとはこなかったかな。
そうですね。私は、とても居心地の悪い鑑賞でした。ホラーだから?うーん、よくわかりませんでしたよ。哲学を見出せなかった感じですが、監督の織り成すアニメーションは結構好きです。その内『アリス』や『オテサーネク』もチェックしたいところ。
Commented by sabaha at 2006-12-07 22:26
訂正ですう。
ヴィスコンティ監督作品で、ドストエフスキー原作のは、おっしゃるとおり「白夜」でございました。
「白痴」は、クロサワ(が有名)ですね。
フェレ…は、フェレ・マルティネスですか?(バッド教育?)ウィル・フェレル…じゃないですよね(すみません)。
でも、キアヌも大きくわけると遠くないかも。
似てる順に並べると、キアヌ→フェレ→マチュー→パヴェル君?(ムリヤリ…)
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-08 11:28
隣の評論家 さん♪
となひょーさんはやっぱりホラーはOKでも、えろぐろ寄りのものには不快感を感じちゃうのですね?私は居心地の悪さなどはなかったんだけど、意外性や斬新さをとりわけ感じなかったのであまり満足度が高くなかったのでした。いつもテーマなんて気にしないんですが、冒頭の監督の解説についつい惑わされてしまいましたー。
『アリス』や『オテサーネク』もゼヒ是非ご覧になってくださいー。アリスは大好きですー。
Commented by CaeRu_noix at 2006-12-08 11:28
わかばさん♪
やはり『白夜』でしたかぁ。未見ですが。クロサワの『白痴』も・・・。
私は、原作小説のあるものより、オリジナル脚本の映画が断然好きなんですか、忠実な映画化ではなくて、翻案というのはなかなか面白いと思えます。『白痴の帰郷』はもとがドストエフスキーだなんて微塵も感じられない楽しい現代劇でした。クロサワのはどんな感じなんでしょうー。
フェレ・マルティネスです。『白痴の帰郷』の時のパヴェルの顔は眼がギョロッとしていてフェレっぽかったんですよ。ルナシーではやせちゃったみたいで、マチュー似度が高いです。やせたから、キアヌに近づいたといえないこともないかな。
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