かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』
2007年 01月 11日 |
フランキー・ワイルドの世界を体感すべし。
クールな演出とサウンド、ハイテンションでオトナな笑いと温かな感動。

イビサ島の人気クラブで活躍したカリスマDJフランキー・ワイルドの物語。



いかにもインタビューに答えるような調子でフランキー・ワイルドについてを語る業界関係者。そんな予告を観た時、てっきりこれはドキュメンタリーなんだと思っていた。ところがそうじゃなくて、それ風につくったフィクションなのね。いや、監督によると、ドキュメンタリーのフェイクじゃなくて、ニセの伝記映画なんだって。ドキュメンタリーだと思って、フランキー・ワイルドのことなんて知らないしーって、見過ごすところだった。なんだー!劇場体感できてよかった、ゴキゲン・ムービー。
初めは、ウディ・アレンの『カメレオンマン』や『ギター弾きの恋』を思い出したけど、飄々コミカルなアレン節とは違って、DJのドラマはガンガンとハイテンションに進むのだ。

ミュージシャンの伝記ものならば数多く観たけれど、DJの物語っていうのは初めて。それも伝記的に描かれるフィクションのDJだなんて。ミュージシャンの物語は音楽が楽しめるのがポイントだけど、その生涯は2時間にまとめられちゃうと、レイ・チャールズもコール・ポーターもボビー・ダーリンもジョニー・キャッシュも似たりよったりの山あり谷あり人生という印象しか残っていなかったりして。結局、映画はフィクションなんだから、実在しない人物の生涯を自由に描いた方がおもしろいんだよね。DJモノなら、特定のアーティストの音楽だけに縛られずに、多彩な音楽を盛り込めるしね。なんだ、ナイスなアイディアじゃない。

レイになりきったジェイミー・フォックスやジョニー・キャッシュになりきったホアキン・フェニックスはもちろん素晴しいけど、真似演技の必要のないオリジナル・キャラのDJフランキー・ワイルドを体現したポール・ケイが最高に魅力的。絶好調時代はそりゃーもうケーハクにノリノリで。『サンキュー・スモーキング』のアーロンを思い出すようなサクサクとテンポのよい小気味よさがある。あちらはヘリクツによって知的に笑いをもたらせてくれたけど、こちらはあっけらかんとしたお下劣ネタで勢いよく笑わせてくれる。R-15ならではの面白さ。不謹慎な小ネタも陽気にいけばとことん楽しい。飲みっぷりも気持ちいいー。着ぐるみ風アナグマの襲来シーンもラブリー。
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メリハリのある語り口と、聴かせるサウンドとフランキーキャラの魅力にすっかり引き込まれた頃にDJが聴力を失っていくという悲劇を受け止めなくちゃならないのがツラい。愛する職業が身体の健康を損なうというのがやるせない。誰だってそれを失うことは辛いに違いないけど、あれほどの栄光を浴びた才能あるアーティストがその仕事に必須の聴力を失う絶望感ははかりしれないよね。ああ、だから、彼が読唇術を習得しようと思い立ったことは嬉しかった。飲んだくれな共通点でペネロペ先生と意気投合してよかったね。そして、『Touch the Sound』 で描かれていたように、音は耳という器官以外からでも感じることができるものなのだ。フラメンコのリズムをその熱い振動を、フランキーが感じ取った瞬間には感動。

そして、スーパーDJがよりパワーアップして復活。と、そんなふうに逆境を乗り越える再生の物語で幕を閉じたなら、それほどにステキだとは思わなかっただろう。挫折から這い上がり、聴覚障害を持ちながらもこんなイカしたサウンドを生み出すことができるヒーローDJフランキー・ワイルドで商売を目論む奴らが現れるという展開が今日的でよかった。大衆はいつだってそんなヒーローが大好きで、障害も悲劇も商売に利用できるものはとことん利用するのがこの世界。そんな世の中と業界に飲み込まれることのなかったフランキー・ワイルドは最高。やっぱり伝説の男。毒々しくも愉快痛快で、後味はビーチ・ボーイズテイストの爽やかさ。

何かを失ったことによって、何かを発見できるから人間は素晴しい。

フランキー・ワイルドの素晴らしき世界 It's All Gone Pete Tong
2004 イギリス・カナダ  公式サイト
監督.脚本 マイケル・ドース
音楽 グラハム・マッセイ
出演 ポール・ケイ、ベアトリス・バタルダ、マイク・ウィルモット、デイヴ・ローレンス
特別出演 ピート・トン、ポール・ヴァン・ダイク、カール・コックス、ティエスト、サラ・メイン、ロル・ハモンド
 (渋谷シネ・アミューズ)
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by CaeRu_noix | 2007-01-11 23:56 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(10)
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Commented by シャーロット at 2007-01-12 19:13 x
こばは。えーっと、見てくださりありがとうですー。そうなの、あんまり見てる方がいらっしゃらないのでつまんないよーというところでした。
フランキーのお下劣ぶりはどうにも憎めないのよね。
イエスの格好してプールにライドしたり、クマと戦ったり(またそういうアイディアも面白いなあと。)すごく笑えたりもしたけど、やっぱり聴覚全てを失うシーンは結構衝撃的で私もどん底気分に。なんかちょっとでも聞こえるかもしれないとのた打ち回ってるところなんて、その気持ちもよくわかっちゃったりして、かなり映画に入り込んじゃいました。
その後も展開もラストもよかったですよね~!
ここでの子供達もすごく可愛くって、フランキーも可愛くって。ぷぷぷ
皆さまにスルーしないで見て欲しい作品ですー。
静寂になって音を感じるなんて…でもすばらしき世界にいられるなら幸せですね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-13 11:10
シャーロット さん♪
つまんないよーというのも確かにありますが、こんなにおもしろくってステキな映画なのにみんな観ないなんてもったいないよーって思った次第。私自身も初めはあまり興味がわかなかったから、あまり注目されないのもわかるんだけど、もったいないなー。今日からは、午後の上映2回ほどは『NANA2』に変わってしまうらしいっす。トロント映画祭(だっけ?)で評判だったのも納得の魅力的なオトナエンタメなのにー。
遊びのきいた演出もめちゃ好みでしたわ。夢とか妄想、幻覚、観念の映像化って大好きなんですけど、アナグマちゃんはとにかくユーモラスでしたよね。軽薄に笑えていたのが一転、聴力を失ってしまうところはつらかったですよね。目が見えなくなることも、音が聞こえなくなることも、歩けなくなることも、誰にだってショックなのでしょうけど、とりわけその器官が命そのものである人には並大抵ではないことに違いありません。
視力や聴力を失うというお涙頂戴映画にありがちな題材をこんなふうに構成したことがとてもよいと思いました。再生の瞬間も感動的だったし、最後の選択もべらぼうにステキでしたよねー。多くのみなさんに観ていただきたーい。
Commented by マダムS at 2007-01-14 01:01 x
実は「愛されるために~」の後に、これを観ようと渋谷までいったんですよ! 
ですがが、、「愛~」があまりにも良かったため、余韻に浸りたくてこれをキャンセルして帰ってしまったの。。 えー!今日から上映回数減っちゃうのーっ!? ショック・・。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-14 11:54
マダムS さん♪
あら、そうだったんですかー。いやいや、「愛される~」の余韻に浸りたいっていうのはわかります。順序が逆だったらよかったんですけどね。
でも、こちらも素晴しい作品ですよー。ちょっとお下劣ハイテンションなので、マダムの好みに合うかどうかはわからない部分もありますが、楽しくて感動いたします。
うう、上映回数減りました。どうか、13:10の回を観てくださーい。
Commented by mmamesu at 2007-01-22 17:06
できるならば、この作品が地方でも公開されることを祈って…。

豆酢です。かえるさん、拙宅の記事をTBさせていただきました。コメントありがとうございました。素晴らしい作品なんですが、やっぱり大きなスクリーンで体感したい。小さな画面では魅力も半減してしまいますもの。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-23 13:08
豆酢 さん♪
ご訪問ありがとうございます。よろしくお願いします。
充実した内容の素晴らしい記事をTBしていただけて嬉しいです。
そうですねー。これは劇場で体感してこその映画ですよねー。スピーカーから伝わる振動が気持ちいいんです。各地で公開されて、多くの人に体感していただきたいですー
Commented by acine at 2007-02-14 11:27
CaeRuさん こんにちは! コメント&TBありがとうございました。
そうそう!私もこれ、ホントの話だろう・・・と思って見てたけど、あとで
見たら、まったくのノンフィクション・・・。でもよく出来てました。
私は実は期待してたので、意外とあらら?な展開もあったけど、
全体的には、CaeRuさんも書かれてる通り、毒気の効いたテンション高い
お話でなかなか面白かったです。耳が聞こえなくなってからの方が、豊かな
世界を味わえてたような気がしました。でも、あの音にまみれてたら、そりゃ
耳も悪くなりますわな・・・と思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-15 12:40
acine さん♪
そうなんですよ。途中まですっかりだまされていました。
何でもかんでもドキュメンタリー風にすればいいってもんじゃないんですが、この業界、この職業の男の人生を描くのにピッタリの遊びのきいた演出だったと思いますー。
あらら?な展開がありましたかー。私は観る前は、わりと真面目なヒューマンドラマなのかと思っていたので、ブラックなふざけっぷりがまず予想外で面白く。そして、ふざけているなーと思っていたら、ググッと感動させられて。
人気DJ時代はあまりにも不健全でしたから、聴こえなくなってからの方が豊かな人生になったんじゃないかと思えますよね。
身体に支障を来すのも当然と思えてしまう大音響でしたね・・・。
Commented by myums at 2007-05-13 21:27
TBさせてもらいました!
ちょっと話がトントン拍子に進みすぎな感じもしましたが、クラブミュージック大好きな私には、たまらない映画でしたぁ。インタビューに答えてたDJたちは本物のBIG NAMEたちです。思わず、「うぉー!」って吼えちゃいました(^∇^) 個人的には、感動よりも笑いがいっぱいの映画だと思いました!
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-14 12:31
myums さん♪
テンポのよさが気持ちいい映画だったので私はトントン拍子がよかったと思いますー。
myums さんは登場する本物のDJさんたちをご存知だったんですねー。そんなにBIG NAMEなんですかー。ご存知の人にとっては、そこも楽しみどころの一つだったのでしょうね。
そうそう、オバカだったりブラックだったり、笑いにあふれた楽しい映画でした。
そして、ちょい愚かだった主人公が大切なことに気づく物語っていうのは、私はえらく感動してしまうんですよ。正攻法のお涙頂戴ものより、笑いに包んだドラマの方が感動するんです。しない人はしないのかな。
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