かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『恋人たちの失われた革命』
2007年 01月 14日 |
刹那の美しさ。

1968年5月、パリ。兵役を拒絶した二十歳の詩人フランソワは、彫刻家を目指す美しい女性リリーと出会う。



パリの五月革命という言葉には胸がときめいてしまう。それは不謹慎なことかもしれないけど。『ドリーマーズ』のラストの喧騒を思い出す。同時代を生きていない私には、それは映画の中の美しい記憶。

年末年始にシネマヴェーラにロメール作品などを観に行った時、二本立てついでにゴダール作品も観た。そんなわけで、パリ60年代感覚が心の中で俄に盛り上がっていたこともあって。五月革命という言葉はそのまま、Nouvelle Vague につながり、甘美な陶酔感をもたらす。

そのイメージは幻想ではなく、澄んだ美しい映像がそこにあった。こんなにも美しいモノクローム映像は久しぶりに見た気がする。『愛の世紀』以来?夜に浮かぶ光があまりにも美しい。日本語字幕の読みにくさも気にせずにすむほど、その詩的な映像美にため息をつくばかり。
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そして、絵になる恋人たち。カラーならブロンドも輝くのだろうけど、モノクロならばブルネットの髪がステキなんだよな。白いシャツが似合う。シャツにジーンズにコートというシンプルなコーディネートも、長い髪にスラリと長身のリリーが着こなすと何だかとてもカッコよくて、舗道を歩く姿に見とれてしまう。

『ドリーマーズ』や『ママン』でのちょっと屈折しているような頽廃的で危険な香りのする役柄のイメージのあったルイ・ガレルも、今回はわりと普通の青年という感じ。観客の自分が父親フィリップの目線で彼を見つめてしまうからなのか、ごく自然にフランソワのことを見守り応援していた。2人のきらめく出逢い、目映い恋に、無条件でそのときめきに共感してしまうのだ。

「この瞬間を絶対に忘れないで」
この瞬間が最高に素晴しい時であることを彼女は知っている。それに終わりが訪れることを彼女は知っている。とても甘いのだけど同時にほろ苦さも感じさせる印象的な台詞。そう言った時の彼女の真剣な眼差し、その姿をとらえたショットも脳裏に焼き付いた。

リリー役のクロティルド・エスムはチャーミングだけど、ちょっと違うんだよなって初めは思っていたはずなのに、私は、彫りの深い美青年ルイ・ガレルのフランソワよりも、結局のところリリーの印象が鮮烈だったことに後になって気づいた。映画は2人の男女を映し出したものであっても、作り手のフィリップ・ガレル自身は主人公フランソワそのものでもあるのだから、フランソワの記憶に刻まれたリリーの姿ばかりが心に残り続けるというのもおそらく自然。

でも、フランソワのいない場面、テーブルで女友達に彼との新しい恋のことを語る姿にもキュンと心うたれた。他愛もない語らいの中、カメラ目線で「ベルナルド・ベルトルッチ」と言ったその時にもう、フランソワと共に彼女に夢中になってしまったのかも。

瞼が閉じそうになった時間もあったし、いくらなんでも180分もかけなくていいんじゃないかとも思うし、そんなに面白い映画だったわけでもないんだけど、でもやっぱりその"刹那の美しさ"を思い出すたびにせつなくもときめいてしまうような・・・。リアルタイムで楽しむ映画ではなくて、思い出として愛おしむフィルムなのかもしれない。

モーリス・ガレルの陽気な手品も忘れがたいな。『キングス&クイーン』では、娘に辛辣な手紙を遺したあの父も、孫には優しいんだなーって、関係ないけど。そうじゃなくて、息子と父親を撮るという三世代の構図がとても微笑ましくもあったりして。

この美しい映像を撮ったのは、ウィリアム・ルプシャンスキー。イオセリアーニ作品を撮っている人じゃない。そして、これもその映像に魅せられてしまった記憶に新しい『Mの物語』も。そして、生物ドキュメンタリーの『グレート・ビギン』 もやたらに映像がクリアで美しかった印象が強く、それは高性能のカメラによるものなのかと思っていたけど、そのアート性は撮影監督の技術とセンスも肝だったのだな。

ルイ・ガレルの以降の出演作がまた興味深いの。ロマン・デュリスと兄弟を演じているという「Dans Paris」!それから、去年のカンヌ映画祭で上映された短編作品で、マチュー・アマルリックと共演のフランソワ・オゾン監督作品、「Un lever de rideau」!非常に観たい。

日仏には行けなかったけど、フィリップ・ガレル作品もまたちゃんと観たいです。

恋人たちの失われた革命 Les Amants Réguliers
2005 フランス 公式サイト
監督 フィリップ・ガレル
撮影 ウィリアム・ルプシャンスキー
音楽 ジャン=クロード・ヴァニエ
劇中曲 ニコ 「Vegas」 、キンクス 「This Time Tomorrow」
出演 ルイ・ガレル、クロティルド・エスム、モーリス・ガレル
 (東京都写真美術館)
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by CaeRu_noix | 2007-01-14 11:56 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(14)
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Tracked from flicks revie.. at 2007-01-15 08:59
タイトル : 『恋人たちの失われた革命』
 1968年、五月革命のパリを舞台に詩人を志すフランソワと彫刻家を志すリリーのつかの間の恋の物語。 ... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2007-01-15 22:50
タイトル : 恋人たちの失われた革命
1968年5月、パリ。二十歳の詩人フランソワは兵役を拒絶し街へ出てゆく。そこには、機動隊と激しい闘争を繰り広げる、彼と同じく失うものはない若者たちが大勢いた。ある日、フランソワは彫刻家を目指す美しい女性リリーと出会う。二人は一瞬にして恋に落ちる。(公式サイトより) モノクローム作品というだけでどこか芸術性を感じる先入感が出来てしまうのだけど、やはりシーンの一つ一つが感性を刺激してくる。意外に音楽が少なく映像はものすごく淡々としていて起伏が少なく写実的というか。 この時代背景は…この頃生まれたばかり...... more
Tracked from 週末映画! at 2007-01-15 23:39
タイトル : 恋人たちの失われた革命
期待値: 38%  パリを舞台にした白黒映画。 2005年ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞(監督賞)... more
Tracked from working titl.. at 2007-01-30 22:41
タイトル : 恋人たちの失われた革命
恋人たちの失われた革命  (2005) フィリップ・ガレル監督  配給:ビターズ・エンド  白と黒の激しすぎるコントラスト。  フィリップ・ガレル監督がモノクロで描く、68年パリの革命と挫折。  時は1968年、パリ。兵役を拒否した20歳の詩人フランソワは5月革命の暴動に参加する。しかし革命はあっけなく頓挫。アヘンを吸いながら、ただ夢を語る日々を過ごすフランソワの前に、彫刻家を目指す美しい女性リリーが現れる…。    上映時間を確かめずに観た(いつも確認を忘れる)。観終わって確認...... more
Tracked from 狐の穴にて at 2007-02-15 19:39
タイトル : 『恋人たちの失われた革命』
モノクロームの映像は、メランコリックな陶酔感に満ちていた。 1968年5月、パリ。五月革命。二十歳の詩人フランソワは兵役を拒絶し、機動隊と闘争を繰り広げる若者たちの行動に加わる。ある日、フランソワは... more
Tracked from CHEAP THRILL at 2007-04-06 20:54
タイトル : 真・映画日記『恋人たちの失われた革命』
1月3日(水) 午前中はとにかくだらだらと過ごす。 正月休みらしくていい。 箱根駅伝を見て暇を潰す。 普段はマラソンとか駅伝なんか見ないのに、 これはなんとなく見る。 優勝争いもいいが シード権争いや襷繰り上げの攻防(あんまり遅すぎると前の走者の襷をもらわずにスタートすることがある)なんかがおもしろい。 12時半から外出。 日比谷線で日記を更新。 午後2時10分、恵比寿に着く。 今年一本目の新作映画は『恋人たちの失われた革命』である。 フランス映画。 1月2日から東京...... more
Tracked from 複数にして単数の映画日記 at 2007-04-30 18:40
タイトル : 恋人たちの失われた革命 Les Amants Regul..
 ガレルはまるで息をするように映画を撮る。確かゴダールがそういっていた。「白と黒の恋人たち」に続くガレルの新作には、記憶の中のあの時代の空気をそのまま呼吸するような、光と影に満ちた空間が拡がっている。当時の時代感覚を声高に主張するのではない... more
Commented by mako at 2007-01-15 16:03 x
こんにちは
>思い出として愛おしむフィルムなのかもしれない。
そんな感じしますー。あの頃僕らは若かった、みたいな。なんて自分が書くとおフランスよりもなんだか神田川のかほりがしてきそうなのは窓の下に神田川を眺めつつカキコしているからでしょうか…
。やですね、わたしってば。
そうか、ガレルさん3世代同居映画のお父さんはどこかでーと思ったらそっか『キングス&クイーン』のお父さんだったのですね。こちらではあの枯れ具合がなんか好きでした。
Commented by シャーロット at 2007-01-15 22:49 x
ぼんそわ~。
そう、瞼が何度も閉じちゃって足腰がちょみっと辛くてもぞもぞしたりしちゃったのだけど、やっぱりあのモノクロームにはまいりました!刹那的な美しさってぴったり!
映像がよければそれでよしと出来てしまうなあ。ダンスしてるシーンの音楽も懐かしさがあってピアノもズシーンとくる重さが良かったし。
makoさんじゃないけど「あの素晴らしいー愛をもーいちーどー」とか歌っちゃう。のは・・・私だけだろう。笑
ルイ・ガレルの待機作品私も興味あります。いつごろ見れるのかしら…ワクワク♪
Commented by たかこ at 2007-01-16 00:39 x
初めの革命のシーン、眠くなりました。わたしには革命って眠いものなんだろうな。経験も興味もないというか。
で、出てきた若者たちは革命に挫折というか、興味は芸術や恋に移っちゃってるみたいで。
わたしが革命未経験でも分かち合えた気がしたのは、そのシーンでちゃんと(?)眠くなって、そんでその後の彼らにすごく共感というか仲間意識感じたからではないか…などと思いました。
わたしも革命の眠さまで肯定する不謹慎者だー
Commented by ロイ from 週末映画! at 2007-01-16 08:14 x
コメントありがとうございました。

天使マークに変更しました。

白黒映画のせいで、字幕がよく見えないと書いていた方もいましたけど、予告編で見た限りでは大丈夫だったような気がしました。
字幕が読めないのは厳しいかもしれないです。

また、よろしくお願いします。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-16 12:37
mako さん♪
美しい思い出ですよねー。その当時のゴダールやガレルたちの姿を見てみたいというか、その時のパリの喧騒を経験してみたかったと思ってしまうほど・・・。日本の69年には憧れたりしないんですけれど・・・。んー、パリだとなにやらオサレなんですけど、こちらでいったら神田川の世界になっちゃいますよね。しみったれー。神田川をセーヌ川だと思って眺めてください。なんで、男の方が長風呂なんだっ! なんでてぬぐいがあえて赤なんだ!
そうそう、モーリス・ガレルじいさんの存在感は素晴らしいです。『キングス&クイーン』では冥界からのメッセージ?がはまり過ぎてました。今回は愛嬌がありながら、釘付けになる枯れ具合でしたねー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-16 12:51
シャーロット さん♪
モノクロ映像の睡魔パワーってすごいですよね。そういう体調だったわけでもないのに、どんどん眠くなーる。
私はガレルの 『秘密の子供』をレンタルして観た時、最初の十数分で寝入ってしまい、二度借りたのに最後まで観ることができていません。
眠いのだけども、それほどに徹底した雰囲気なのがやっぱり魅力なのですよねー。美しかったです。ウットリ。
「あの素晴らしいー愛をもーいちーどー」な合唱曲はこの映画のトーンには合いませーん。が、ある意味、「神田川」は合うかも・・・。ピアノ独奏で。
ルイ・ガレルのは残念ながら待機作品などではないですよ。フランスで製作されている映画のほんの一握りしか日本では公開されませんもの・・・。でも、ロマン・デュリスとの共演作は来てくれる可能性はありますよね。かもーん。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-16 12:55
たかこ さん♪
革命とは? パリの五月って本当は、革命でさえないんですよね。
機動隊に向かうシーンなども長かったですよね。勇ましく戦うばかりじゃなくて、様子を見ながら待機する時間が長くて、なんだか大変だなーと思いました。根気がいりますのね。結局は虚しく終わってしまったとしても、そういう熱意は素晴らしいなと、自分のことだけ考えて遊んでばかりの学生時代を送った私は思いますぅ。
五月革命が核にあったことなんてすっかり忘れてしまいそうなほど、芸術や恋に対する彼らの姿ばかりが印象的ですよね。そんなわけで、青春・恋物語として堪能させていただきました。革命は夢心地。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-16 13:00
ロイ さん♪
わざわざありがとうございます。
私の場合、「美しい」といえる映画は、「おもしろい」映画よりもお気に入りだったりします。○か×かのどちらかというと、私の場合は3分の2は○かもしれません。

白地に白ぬきなので、字幕は見にくかったのは事実ですが、左側に座っていた私は、読めないというほどではありませんでしたよ。それよりも、一瞬瞼が閉じてしまって、読めなかった字幕はあったかもしれません・・・。

また、よろしくお願いします。
Commented by sabaha at 2007-01-30 22:48
こんばんは。
私はこの作品、かなりきちゃいました。何がどう「きた」んだと聞かれると自分でもよくわかりませんが。ヌーベルバーグを見倒していたら、また違うのかもしれませんが…でも、どちらにしても、これは2005年の作品なんですよね。だからこそ、「失われた」革命、というその記憶へのオマージュというか、ノスタルジーというか、そういうものを感じるのかもしれませんね。いつにもまして、うまくいえませんが、私はすごく好きな映画でした。
「Un lever de rideau」観たいです。またBOXセットのみとか、やめてほしいです(DVD買わない派なので)。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-01 10:45
わかばさん♪
きちゃいましたかー、それはよかったです。私にとってもかなりのお気に入り作品となりましたが、キタァーっていう感じではなかったです。やっぱりなーという想定範囲内の感銘だったというか。冷静にウットリ。
いわゆるヌーヴェルヴァーグ作品とはまた異質な感触ですよね。いわゆるヌーヴェルヴァーグ作品にしたって、多様なものがあるし。関係はあるのかもしれないし、ないかもしれない。私にとっては、ゴダールの後継者的な存在であることは勝手にウットリポイントでしたが。
そうなんです。その頃に作られた映画ではなくて、2005年につくられた69年舞台のものだからいいんですよね。同時代を知っているわけでもないくせに、ノスタルジーと青春の喪失感にときめいてしまうんですー。
「Un lever de rideau」は一般公開してほしー。オゾンなら、DVDスルーでもレンタルに並んでくれそうではあるが。
Commented by いわい at 2007-02-15 19:53 x
こんばんはー。
観ている時は、冒頭の革命シーンの長さがつらかったりしたのですが、それが当事者感覚な雰囲気なのだと後から思いました。
熱が失われる予感みたいなのが、よいのです。
面白いかと言われると微妙なのですが、こういう作品は好き!です。
それにしても、モノクロームの映像をたっぷりと魅せてくれる映画でした。
そして、挿入されたサブタイトルが素敵でした。ああいう格好良い雰囲気に弱いのです。
公式サイトのストーリー紹介で書かれているかと思ったのですけど、無し。
わたしも、「Un lever de rideau」観たいです。

Commented by CaeRu_noix at 2007-02-16 11:47
いわい さん♪
デモのシークエンスなどは長かったですよねぇ。そうそう、きっとそれが当事者感覚に違いありません。熱いイメージのものであった革命が実はひんやり・・・。どこにゴールがあるのかわからないのにそれを目指して走らなくちゃいけないのはやるせないです。デモ行進の時って、何て言っているのでしょう? 『マリー・アントワネット』にて民衆がつめかけた際のシュプレヒコールの響きが五月革命っぽくてときめいてしまいました。(笑) ホントは逆だけど・・・。
モノクローム映像の美しさはオールタイムのベスト5入りかな。
挿入されたサブタイトルっていうのは憶えてないかも・・・。というか原題にはサブタイトルがあるんですか?それは知りたいですー。
Un lever de rideau 観たいですよねー。
Commented by beat+half at 2007-04-30 19:16 x
おくればせながら、ぼんそわ
お久しぶりでおじゃまします。「複数にして単数の映画日記」beat+halfです。たしかに眠いときがありますね、ガレルは。本作も結局二度観ましたよ。「秘密の子供」私も二度借りてまだ観きっていません(トホホ)。でもなぜか惹かれるのですね。あの時代やニコの歌声など、本作は見所いっぱいでした。モーリス・ガレルの件、レヴューでは触れられずじまいでしたが、やはりキングス&クイーンを思います。あれ、まだ生きてたっけ? なんて思ったりして。きっと140歳までご存命になるでしょう。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-01 13:12
beat+half さん♪
こまんたれヴー。二度もご覧になりましたか。
ガレル作品は数えるほどしか観ていないんですが、眠くなる度はかなり高いです。家で観る「秘密の子供」は麻酔。でも、眠りの世界に吸い込まれてしまうような独特の雰囲気をもった美しいモノクロ映像はこの上なく魅力的ですよねぇ。68~70年頃を描いた映画というのはずいぶんと多いけれど、後の世代から見ても、やっぱりとても興味深くて惹かれる時代ですよね。こちらのモーリス・ガレルじいさんは優しくコミカルでしたよねぇ。モノクロでじいさんを映し出すと、この世のものとは思えない味わいを放ってくれるような・・・。まだまだ活躍してほしいですよね。ガレル一家三代でまた映画をつくってほしいー
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