かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『気球クラブ、その後』
2007年 01月 15日 |
せつなくてほろ苦い青春の終わり。リアルなのにポエティック。

二郎のもとに、5年前に所属していた気球クラブのリーダーの事故の知らせが入る・・・。



2006年の日本映画myベスト1が『虹の女神』だった私は、こういう空気のせつない青春ものってとても好みなんだよね。血の匂いのする強烈な問題作で力量を見せつけている園子温監督だけど、私はむしろ、彼の描く若い世代のセンシティブな感情のリアルさの方に惹かれている。『カミュなんて知らない』みたいな演劇っぽい台詞回しの会話もおもしろいと思うけど、なつかしさでいっぱいになって共感しちゃうのはやっぱりこういうナチュラルな空気感なんだよな。

「あおいが死んじゃった」から物語の回想が始まっていく『虹の女神』のごとく、こちらは「村上さんがジコった」という知らせから始まる。村上さんは、『虹の女神』のヒロインあおいのように、主人公にとっての大切な人なんかではなくて、主人公二郎が、5年程前にほんの一ヶ月ほど所属した気球クラブのリーダー。知り合いなんだけど、別に親しかったわけでもないし、付き合いが続いていたわけでもない人。だけど、その彼女だった美津子さんには思い出があったりする。一体、どんなことがあったんだろう?って、5年前の気球クラブに興味をもちながら、思い出の青春を懐かしむのだ。

村上さんがジコったという連絡がケイタイデンワでリレーされる冒頭のシークエンスのテンポから絶妙。その会話から登場人物のキャラクタや関係性を把握することができるようになっているのは上手い。同時に、ケイタイのメモリ一つでいとも簡単に、長い間会っていなかった旧友とどんどん繋がることが可能な現代の姿が描写されている。それでいて、不幸でもおこらないと、連絡を取り合うこともない関係性。自分にも思い当たるものがあるからこそ、そんなふうに始まる物語が面白いと思った。
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そして、気球っていうのがやっぱりいいんだなー。スポ根青春ものはたくさんあるけれど、スカイスポーツというのはなかなかない。それも、熱心なのはリーダー村上さんだけで、後のメンバーはみんなで集まって騒ぐのを楽しんでいるだけのよう。そういうものだよなー。熱い友情に結ばれた仲間達ではないけれど、青春の日々を共に過ごすというのは特別なこと。村上さんをキッカケに久方ぶりに再会したみんなが5年前に戻って、無邪気に騒ぐ姿が微笑ましい。飛んでいる気球も気持ちよさそうだけど、地上の気球BARも最高。私もその中で飲みたいな。園監督の自前の気球なんだって。

気球=夢=青春時代、地上=現実=青春の終焉という対比が素晴らしい。友情も男女関係も希薄なものが多い中で、村上さんの彼女、美津子の思いはとてもせつなくて印象的。気球に夢中な村上くんが地上に降りてきてくれることを願うという気持ちはわかるな。空に浮かぶ気球に「夢」を託す男に対し、女は地に足をつけてほしい、地上の自分を見つめてほしいと思う。それをじっと待っていた美津子の気持ちが最後にせつなく響いた。そして、青春の終わりを噛みしめる二郎の思いにも心震えてしまう。

劇中で合唱される「「翳りゆく部屋」には違和感があったのに、エンドロールの畠山美由紀の歌声には、感極まって泣けてしまった。その後、3日間程 「「翳りゆく部屋」のメロディーが頭の中で鳴り響いたり。

気球クラブ、その後 2006 公式サイト
監督.脚本 園子温
出演 深水元基、川村ゆきえ、長谷川朝晴、永作博美、西山繭子、いしだ壱成、与座嘉秋
 (渋谷シネ・アミューズ)
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by CaeRu_noix | 2007-01-15 19:37 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(4)
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Commented by 隣の評論家 at 2007-01-15 21:49 x
おおお。ご覧になりましたねん。
私は、ダメではないんですけど。スラスラとレビューが書けませんでした。
『翳りゆく部屋』 決壊ダムさんが大熱唱してましたねん。出番は少な目でしたが、なかなか個性的で気になる存在感でした。
いしだ壱成も『自殺サークル』で園子温と一度組んでいるんですよね。何か、【園子温 組】が確立しつつある感じでせうかー
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-16 12:36
隣の評論家 さん♪
そうですか。私はあまり楽しめなかった裏切り犬などは書くことがそんなになかったんですけど、こちらはとてもハマれたので、いろいろ書きたいことがありましたわ。空と地、浮力や重力を詩的にとらえている感じが素晴らしいなぁとしみじみ。
そうそうそう、決壊ダムさんが出ていて嬉しかったです。彼女のしゃべりってやっぱりいいですわ。応援します。
いしだ壱成は『奇妙なサーカス』に出ていましたね。あれはなかなかの熱演でした。こちらではちょっと浮いていた気もしましたが・・・。
また「美津子」が登場したことにも注目でした。
Commented by sabunori at 2007-04-13 15:57
かえるさんにいはお。
やっと公開です。
観た後で知ったのですがすでにDVD出てるみたいですね。(ショック)
これだけベタな青春物語なのに「ケッ!」と思わせないところがスゴイ。
実は仲間の多くが村上さんが亡くなったことにそれほどショックを
受けていないというのが妙にリアリティがあって。
決壊ダムさんはその存在だけでワクワクしてしまう女優さんです。
存在感ありますよねぇ、どんな小さな役でも。
・・・それにしても監督、「ミツコ」にどれだけ思いいれがあるんだろうか。
(実はお母さんの名前だったりして?)
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-14 12:40
sabunori さん♪
ようやくですね。こちらではエクステより先の公開だったというのに。
お、DVD出るの早いですね。『紀子の食卓』も今年出たばかりだというのに・・・。あ、でも、本作のDVD発売は5月みたいです。ということでOK。
そうでなくても、この気球はスクリーンで観なくちゃという感じです。
そうそう、村上さんの死に別段ショックを受けないというのが実にリアルでしたよね。その反応と連絡の回し方、一つ一つに現実味があtって初っ端から引き込まれました。
決壊ダムさんはいいですよねー。すごく味があります。
『松ヶ根乱射事件』では体当たり演技を披露してくれました。素晴らしい。
私も監督にとっての「ミツコ」の存在が気になって仕方がないです。母かしら?
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