かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『鉄コン筋クリート』
2007年 01月 18日 |
映像と世界観全体のおもしろさに惹かれ、それよりも2人の思いにハマる。

義理と人情とヤクザの町、宝町には2人の少年、クロとシロが住みついていた。



ジャパニメーションはキャラクターの絵柄が好みじゃないのが問題なんだけど、広がる町の風景や躍動感に期待して、映像の醍醐味を求めて観に行ってしまった。
トータル的に心をわしづかみにされるアニメーションといったら 『ベルヴィル・ランデブー』みたいなテイストのものが筆頭。で、ベルヴィルとは画のタッチはまるで違うけれど、街が舞台となっているというのはよかったな。宝町の佇まい、景色を眺めるのが楽しくて。昭和の頃のなつかしい看板もあれば、アジアの国々の文字が混じっていたりして、現実っぽさといかにも虚構なファンタジー感が混在。和洋折衷で古くて新しい。どこかで見たことのある下町の風景であるような、夢の世界のような。なんじゃタウン的というか。身近なようで正体不明。そんな感じのレトロなトーンで描かれた宝町がとにかくよかった。

そんな昔ながらの味わい深い宝町の危機。原作漫画の方向性は知らないけれど、意外とリアルなエピソードをもってくるところは好きかな。開発という名が掲げられ、昔なじみの商店や住居が立ち退きをさせられて、そこにはチェーン店で埋めつくされた無機質な駅ビルやらショッピングセンターができていく現実社会。そんなふうに、宝町の情緒ある瓦屋根の家屋が失われ、鉄筋コンクリートの冷たい建築物がそびえ立つのだ。ところで結局、鉄コン筋クリートって、どういう意味?

エンタメものとしては、『パプリカ』の方が高揚感をもって、全般的に楽しめた印象。でもこちらは、単なる楽しさではなく、心の奥底がざわついてしまうような複雑な感情をもたらしてくれたのがポイント。漫画が原作だというから、てっきり底抜けに明るいスッキリ爽快アクションものなのかと思っていたので、スッキリしないところにむしろグッときてしまった。とことん勧善懲悪だったら、もっと気楽に見ていたと思うんだけど、主人公の2人は不遇でどこか病んでいるし、超人的とはいえ、大の大人の放った刺客に命を狙われるなんて居たたまれなくて、常にハラハラ。クロの強さはもちろん漫画的なものなんだけど、こういうふうに荒んで暴力的になるストリート・チルドレンというのは、ただの虚構のものではないと無意識的に感じるからか、エンタメと割り切れない何かが私の胸の奥にあったような・・・。

思えば、「空が黒くなると悲しい気持ちになる」というシロの台詞から、うんうん、わかるわかるーと共感しちゃい、シロの感受性に寄り添ってしまった。可愛くって夢いっぱいのクレヨン画を描いていたシロっちが、離ればなれになったクロの危機には、取り憑かれたように不吉にクレヨンを走らせていた姿は苦しかった。「クロの足りないネジ、シロが持ってる」という名台詞もたまらない。これは彼らに限ったことでない真理だよね。クロとシロが補い合ってちょうどよいバランスをつくるのだ。そんなふうに時折テーマに深みを感じつつ、クロシロのラブストーリー?に何だかハマってせつなさを噛みしめちゃった。二宮和也&蒼井優の素晴らしさもあってのことでしょう。

ただ、町が変わってしまったからって、思いきりリゾートな海で締めるというのはどうなんでしょう。海には万物の真理があるから?木村の夢を引き継いだ?海が楽園という発想はリゾートを知っている豊かな大人的な感じがしてちょっと違和感があったんだけど、そういうレベルじゃなくて、超越的な空間ということ?

鉄コン筋クリート 2006 公式サイト
監督 マイケル・アリアス 
原作 松本大洋
声の出演 二宮和也、蒼井優、伊勢谷友介、本木雅弘
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by CaeRu_noix | 2007-01-18 01:51 | CINEMAレヴュー | Trackback(9) | Comments(10)
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まずは公式サイトへ。 http://www.tekkon.net/ いや~「パプリカ」も大概 右脳で理解できても、左脳で変換できない映画でしたが、 (要は心で感じたこと、受け止めたことを どう言葉にしていいかわからんってことで) ただ、年内にコレが見れてよかった。 それはもう十分満..... more
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Commented by kazupon at 2007-01-18 21:02 x
かえるさん
珍しく、映画を観て原作マンガを買ってしまいました(笑)
ストーリーはほぼ原作通りでセリフまで同じだったので、
コアなファンが結構いるこのアニメがそういう方にどう思われているのか
ちょっと興味ありますが、自分はなんとなく大阪の下町にシンクロして
観ていたのでとっても楽しめた気がします。
そぅそぅ、下町の銭湯ってヤクザ者もじいちゃんも、近所のガキも
みんな顔見知りだったりするんですよね(笑)
なんだか異次元のようなのに懐かしい思わせる
風景が沢山出てくる映画でした。
Commented by ノラネコ at 2007-01-19 00:21 x
宝町という世界の圧倒的な存在感が印象的でした。
世界観が強固なので、ちょっとくらいぶっとんだ展開になっても吸収してしまうのですよね。
あのラストは、現実の海じゃないのではないかと解釈しました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-19 11:37
kazupon さん♪
おお、原作漫画を買うほどに気に入られたのですねー。
私は、映画を観た後で、原作小説を読むということはよくあるんですが、原作コミックを読んでみたことはいまだかつてないかも・・・。そういえば、先日深夜に『ピンポン』が放映されていたのをチラッと観て、松本大洋マンガに思いを馳せたりはしたのですが。
ストーリーもセリフまでも原作に忠実なんですかー。下手にアレンジするよりは賢明かもしれませんね。映像表現だけでも映画化の醍醐味は伝わりますからね。
下町情緒がよかったですよねぇ。エスニックなんだけど他でもない日本の昭和の下町でした。非現実的な世界観なのに、懐かしさを感じさせてくれたのはポイント。しみじみ。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-19 11:43
ノラネコ さん♪
宝町を眺めているだけで楽しかったです。
そうですね。さすがアニメだなーという感じの突飛な展開が多数ありましたけど、スッと受け入れられました。おもしろかったです。
もちろんもちろん、ラストの海はいわゆる現実ではないと思います。にしても、内なる世界、観念的なもののイメージ映像化にしても、宝町育ちの境遇のクロとシロが行き着いたところが海辺というのは、ちょっと私にはしっくりこなかったんですよ。クロシロ個人的なものではなく、人類共通の概念の海という感じ?
Commented by kenko at 2007-01-19 14:25 x
こんにちは!以前TBさせて頂きましたCnoteのkenkoです。
原作もとても好きな作品なのですが、
今回の映像化はホントに素晴らしかったです!

”鉄コン筋クリート”というタイトルの由来ですが
「フリースタイル」という雑誌の松本大洋インタビュー記事によれば、
松本さん本人が子供の頃、ヘリコプターのことをペリポクターと言ったり、鉄筋コンクリートのことを鉄コン筋クリートと言ったりしていたそうで、
物語の主人公が子供であることと、鉄骨の町のお話であるという点から
感覚的にそのタイトルを付けられたみたいです。
なーんて、ちょっぴり知ったかぶりをしてみました☆
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-19 17:40
kenko さん♪
おお、そうなんですか。
原作ファンからみても、満足のいくものだったんですね。
雑誌サイズだった光景がスクリーンいっぱいに広がって展開するっていうのは感動的なものかもしれませんね。

タイトルの由来の解説をありがとうございます。
子どもが主人公の物語だから、子どもコトバなのかなとは思っていましたが、松本さん本人が昔実際にそういう言い方をしていたんですねー。
原作を知らなかった私は、初めこの映画のタイトルは普通にてっきんこんくりーとなのかと思ってました。そうじゃないということに気づいてからも、なかなか滑らかに発音できず・・・。これを観に行って、チケットを買う時もちょっとドモリさん状態でした。(笑
Commented by のりぞう at 2007-01-23 00:49 x
どうもお久しぶりです!今年もよろしくお願いします(遅)
『鉄コン筋クリート』、素晴らしかったですね。原作にかなり忠実だったと思います。スタッフは『ベルヴィル・ランデブー(あの色彩感覚に納得!)』や『シティオブゴット』を参考にしたようですね。声優陣も良かったなあー蒼井優とクドカンが特に。私は海はあったかい所の象徴なのかなあ?と思いました。「ここは寒すぎる」という台詞ありましたよね、あれとリンクするのかなあ、とか。分らないんですけど^^;
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-23 19:15
のりぞう さん♪
生きててよかった。今年もよろしくお願いしまーす。
やっぱりこれはご覧になったのね。そうそう、建物のデザインは全然違うのに、街のノスタルジックな雰囲気は『ベルヴィル』を髣髴とさせるものがありました。なるほど、しっかり参考にしていたのですねー。『シティ・オブ・ゴット』っていうのにも納得。日本の下町の悪ガキの闘争らしからぬ躍動感がありましたもん。声優さんたちも素晴らしかったですよね。クドカンったら活躍しすぎ。
なるほど。のりちゃん的には海はあったかいのですね。銭湯じゃダメ?
Commented by とらねこ at 2007-02-03 14:25 x
こんにちは☆
>町が変わってしまったからって、思いきりリゾートな海で締めるというのはどうなんでしょう。
>海には万物の真理があるから?木村の夢を引き継いだ?
木村の夢を引き継いだ形なんでしょうね。
でも、そこだったら、暴力とは無縁で暮らせるんじゃないでしょうか。
鉄筋コンクリートの上で遊ぶでなく、自然の中で。
な~んて。子供の頃は、自然の中で大きくなるのが理想だな~と思ったり。そういうのって、町に住む子供には分からないのかもしれませんよね。
でも何より、暴力と無縁でいられるのがいいなあ、なんて思いますよね~^^
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-04 00:52
とらねこ さん♪
なるほど。とらねこさんは、木村の夢を引き継いだという解釈なんですね。
うん、確かに、それが一番スッキリ納得できるかなぁ。彼が無念にいってしまったことをも思うと。町を闊歩して、空を舞ったりもしていたクロとシロがいきなり誰もいないビーチで遊んでいるという光景にちょいと違和感があったのだけど、理想郷にはなり得ると思うので、きっと望ましい着地点なんですねー。
ずっと子どもではいられないのだろうけど、子どものうちは危険のない場所で、無邪気に遊ばせてあげたいですもんねー。
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