かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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ジャ・ジャンクーの『世界』
2007年 01月 20日 |
新文芸坐の"アジア映画の輝き"にて、ジャ・ジャンクー作品を鑑賞。



『世界』 はおととしの公開時に観に行っているんだけど、レヴューを書いていなかったのでした。というのは、ちょっと寝てしまったこともあり・・・。それから、組み合わせがいけなかった。同日、先に 『ランド・オブ・プレンティ』を観て非常に感銘を受けてしまったために(2005年のベスト6)、『世界』のテーマにのりきれなかったのでした。

世界を見据えた『ランド・オブ・プレンティ』の視野(文字通り視界に広がる風景にしても、思考の対象にしても)の広さに浸りきってしまった私は、北京のテーマパークの閉塞感を少し嫌悪した。『ランド・オブ・プレンティ』のラナは二十歳やそこらで、紛争や貧困と向き合う各国の人たちとふれ合って、世界の平和を求めているのに、「世界公園」で働くタオたちは、単調な毎日を繰り返しながら、自分や恋人のことしか考えていないんだもん。それこそがリアルなんだけど、情けないよなぁという思いが心のどこかにあって、映画『世界』を堪能することができなかった2005年11月の私。

でも本当は、切実に共感できるのはむしろ北京のタオの心情の方なんだよね。理想や希望をもって感動した『ランド・オブ・プレンティ』とは別次元で、ジャ・ジャンクーが浮かび上がらせる等身大のリアルな感情の数々に心を掴まれた2007年1月の私。どちらかというと、VIDEOでしか観たことのなかった『青の稲妻』のスクリーン鑑賞が主目的だったのに、今回は1年ぶりに再見した『世界』に魅了されてしまいました。

北京市郊外に実在するテーマパーク 「世界公園」で働くタオは、ゴージャスなステージで華やかな衣装をまとってダンスを披露したり、インドのサリーやフライトアテンダントの制服や日本の着物を着たりと、一見なんだか面白そうな職場で働いているなって思うのだけど、そんな毎日を繰り返していたら、虚しさを感じてしまったりするものだよね。仕事も恋人との関係も先行き不透明で漠然とした不安感をもてあまし、名ばかりの世界の閉塞感にため息。そのどんよりと気持ちが淀んでしまう感じはとてもよくわかってしまうから困るなぁ・・・。飛行機に乗ったことがあったって、やるせないことは同じ。

そういえば、『フラガール』を観た時に不満だったのは、楽屋という重要な場所にほとんどスポットが当たっていなかったこと。本作は、楽屋がとても素晴らしいのだ。ジャ・ジャンクー映画は、バイク走行にしろ徒歩にしろ、"路"を移動する主人公を正面からとらえたシーンにグッとくることが多いのだけど、冒頭のバンドエイドを探して楽屋の廊下を歩いてくるタオを映し出した映像は最高。ステージに上がる直前の楽屋の賑やかな慌しさもいいし、ロシアからやってきたダンサーたちと鏡の前でコミュニケーションをするシークエンスもとても温かくて感動的なのだ。

一昨年銀座テアトルで観た時はこんなにも映像美にときめいた記憶はないんだけど(ランドの広がる砂漠の後では、曇り空の下の公園がつまらなく思えただけ?)、今回新文芸坐スクリーンにおいては完成度の高さにウットリ。なんて洗練された気持ちのいいショットの数々。ステージ・シーンのたびに響く音楽、その転調も見事だし、アニメーションで描かれる心の内もせつなくて効果的。(これは一昨年も思った。)
見直すことができてよかった素晴らしきジャ・ジャンクーの『世界』でした。

『プラットホーム』もハマれなくて寝ちゃったんだよね。いつかリトライ。
体調と組み合わせは大切ですね。
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世界 THE WORLD
2004 中国.日本.フランス  公式サイト
監督.脚本 ジャ・ジャンクー
撮影 ユー・リクウァイ 音楽 リン・チャン
出演 チャオ・タオ、チェン・タイシェン、ワン・ホンウェイ、ジン・ジュエ
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by CaeRu_noix | 2007-01-20 19:23 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(6)
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Commented by at 2007-01-21 12:18 x
ほんと体調と組み合わせは大切です。ジジイになるともひとつ年齢のせいというのもあって。昔、ゴダールで寝たときには自分を責めましたが、いまは寝てもいい映画はいい、と思えるようになりました。『プラットホーム』はジャンクーのなかでいちばん好きです。
Commented by マダムS at 2007-01-21 22:21 x
こんばんは♪ ニィハオ?
↑雄さんに同感です!>体調と組み合わせ
あんまり心を動かされなかった作品をもっかい観たら「あらいいじゃん」てのも沢山ありますし、その逆も・・。
デジタル撮影の妙にくっきりはっきりの映像もキレイだったですよね~
「ランド・オブ・プレンティ」は本当に何度観てもいいわ・・
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-22 10:48
雄 さん♪
組み合わせが評価に影響してしまうことは実感しつつも、合理的なスケージューリングに走ってしまいます。体調も万全で挑みたいと思いながら、やっぱり何本かは眠気によって映画を堪能しきれないものがでてしまいます。いけませんよね。でも、なるほど、寝てもいい映画はいいと思えるようになればいいんですよね。(笑) 私もレイトショーで観たゴダール作品などでは寝てしまったものがあります・・・。
『プラットホーム』が一番ですかー。是非とも再チャレンジしなくては。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-22 10:48
マダムS さん♪
そうなんですよー。再見してみたら、とってもいいじゃんっていうものは結構ありますよね。見覚えのないシーンがいくつもあったりして、初見時はそんなに寝入ったつもりじゃなかったのに、実は結構寝たんじゃん・・・ってことに気づくほど・・・。短期集中で少し寝た方がよかったと思うほど、始終朦朧とした状態で観たものは感動がないんですよね。いかん。
組み合わせ問題はよほどのものでなければ影響し合わないんですが、この時ばかりは『世界』が不利になりすぎました。『ランド~』の風景や映像のざらつき加減やカメラワークはとても好みなんですが、『世界』の映像もやっぱり素晴らしかったですー。
Commented by まてぃ at 2007-01-29 23:55 x
こんにちは。
ついついこの記事でパンフを見返し、自分のブログも読み返してしまいました。
私にはあのアニメーションの意図は全くわからなかったです。はい。なんかあのアニメーションで突然映画でなくなってしまうような感覚を味わったと思い出します。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-30 12:34
まてぃ さん♪
ありがとうございます。まてぃさんもご覧になっていたんですね。
アニメーションはですね。普段は姐さんと呼ばれ、しっかり者でいなくちゃいけない彼女が心の中ではまだまだ少女のようで乙女チックな感傷があるのよっていう感覚をファンタジックに表現していた気がします。ジャ・ジャンクー映画でこういうアニメが出るのは異色でしたよね。
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