かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『マジシャンズ』
2007年 01月 30日 |
マジカルに魅惑的。

大晦日の夜、江原道(カンウォンド)の森。山荘のBAR"カフェ・マジシャンズ"で2人の男ジェソンとミョンスが酒を酌み交わしながら語り合っていた。



95分ワンカットのマジック。長回しをすればいいってもんじゃないけれど、映し出された世界が遮断されることなく続いていくのは何とも魅惑的。その手法がどうで、それを成し遂げた撮影時のスタッフの苦労や俳優の実力に思いを馳せる以前に、ただスクリーンに広がる空間に、そこに織り成されるドラマに魅了されてしまうのだ。それは演劇を撮るという試みであるらしく、ワンカットで途切れなく写されて幕が下りることはないけれど、演劇のように場面が移り変わり、会話劇が繰り広げられる。そして、カメラと共に空間移動をしながら、私たちは時間をも飛び越えてしまうんだ。演劇的な構成のものが、映画的に表現されることにワクワクしてしまう。

死者の登場というのも映画には欠かせない好きな表現の一つなんだけど、ワンカットの繋がりの中で、まるで幽霊のように存在を気づかれずに彷徨っている現在の彼女と、過去のシーンで生きて会話している彼女とを、交互に見るというのは何ともおもしろいものなのだ。かつては悲しみと激しさを抱えていた危なっかしい彼女が、この世の者ではない今はお茶目に振る舞っていて微笑ましいの。このカメラの動きは、彼女の魂の浮遊をそのまま表しているかのよう。夜に浮かぶ光がとても美しく、音楽も心地よくて、幻想的なその浮遊感がたまらない。
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舞台では実現できない雪化粧した山林と、山荘のBARという空間がとてもステキなんだよね。行ってみたいな、"カフェ・マジシャンズ"に。韓国映画だけど、韓国ならではのものは出てこなくて、飲むのは焼酎ではなくて、ギネスにテキーラ。彼女が好きだったのは抹茶フラペチーノ。『街の灯』を観ようという彼女。そう、こちらは山荘の灯のきらめきが美しかった。キャンドルの炎が部屋の飾りのぶら下がっているガラス玉に反射するキラキラが幻想的な回想シーンにときめいた。なんてことのないディテールの一つ一つがツボ。アジアを感じさせない小道具の中で、お坊さんの来訪がまた謎めいていておもしろいし。それもスノーボーダーだなんて。

過去と現在、闇と光の中を浮遊する心地よさは幻想的なんだけど、彼らの会話は明るくユーモラスに展開し、そこに見え隠れする恋愛模様や彼らの心配事はリアルでせつない。大切な友人/恋人を失った喪失感や、バンドの夢破れて煮え切らない生活を続けている彼らの迷いには共感してしまう。でも、湿っぽくはならずに、過去に折り合いをつけ、希望の光が見える。感動的な“Sylvia”の演奏。ファンタジックにつづられながらも、その味わいは青春映画のよう。ファンタジーと現実感の混在具合が程よく、その溶け合い方と演出スタイルはとても気に入ったかな。韓国NO1ヒットの『王の男』は私には合わない映画だったけど、本作はまさに私の求めていた映画。

マジシャンズ THE MAGICIANS
2005 韓国  公式サイト
監督.脚本: ソン・イルゴン
撮影: パク・ヨンジュン
出演:チョン・ウンイン、チャン・ヒョンソン、カン・ギョンホン、イ・スンビ、キム・ハクソン
 (渋谷 ライズX)
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by CaeRu_noix | 2007-01-30 12:31 | CINEMAレヴュー | Trackback(9) | Comments(10)
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タイトル : マジシャンズ
 韓国  ドラマ&青春&音楽  監督:ソン・イルゴン  出演:チョン・ウンイン      チャン・ヒョンソン      カン・ギョンホン      イ・スンビ 大晦日の夜、森の中にある山荘のカフェ。2人の男ジェソンとミョンスが酒を 酌み交わしながら思い出話...... more
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Commented by izuminz at 2007-01-30 20:42
こんばんは^^ コメントをいただき、お邪魔しにきました^^
私も以前はミニシアター系の作品をよく見に行っていましたが、最近はアジア映画ばかりで・・・。ベタなアジア映画もハマると面白くなるんですけど、ストーリー的に満足できる作品は年に1、2本しかないですね;;
そんな中で「マジシャンズ」は良いほうに入るんじゃないかと思いましたよ。本国でも小規模公開だったのですが、日本でもこういう韓国映画をもっと見れるようになればいいなーと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2007-01-30 23:36
izuminz さん♪
訪問ありがとうございまーす。
おお、満足できるものが年に1,2本というのは厳しいですね。(笑)
韓国映画はあまりにも流行り過ぎて全体の質が落ちてしまったようにも感じられたのですが、おもしろいアジア映画はたくさんありますよね。『マジシャンズ』は個人的にはとても気に入りましたよー。キム・ギドク作品なんかも好んで観ているんですが、面白さを感じる割に、気に入ったとは言い難いものが多く・・・。その点こちらは好きだなーと思える作品です。
韓国でも小規模公開ということですが、評判はどうだったのでしょう。とにかくこういう個性的な作品が日本でも観られてよかったですー。こういうのがもっと観られたらいいですね。
Commented by 栗本 東樹 at 2007-02-02 21:23 x
こんばんは。
ゴリッゴリのインディーズ映画かと構えていましたが、
フツーにドラマがよかったですね。
途中で切れ目がないことも忘れて見入りました。

俺もライズⅩはハッキリ言って嫌いですけど、
その日は10人程度でまぁよかったです。
あそこはチョット映画館という感じじゃないですよね。
観にくい以前に、いかにもな内装に拒否感覚えます。
もう少しまともな劇場で公開してほしいそんな逸品でした♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-03 13:58
栗本 東樹 さん♪
ゴリッゴリー。
95分ワンカットなんていうから、よほど奇をてらったカルトムービーなのかと思いましたよね。適度に工夫をこらしてはありましたが、フツーな感触のドラマでとっつきやすかったですね。そうそう、ワンカットじゃなかったとしても、たぶん気づきませんでした。
ライズⅩはイヤですよね。二階席の二列目以降はスクリーン見えないし。あんなんで普通の料金っていうのが納得いかないっす。大体、トイレがスクリーン際にあるなんて、新橋じゃあるまいしー。納得はいかないけど、劇場環境に二の足を踏んで見送ることがなくてよかったステキな作品でしたー。
Commented by 右手本 at 2007-02-07 01:36 x
コメント&トラックバックありがとうございました◎
アジア系のミニシアター系(なんか日本語変ですね)を観たのは
初めてだったんですけど、この『マジシャンズ』はとっても素敵な
映画で、観て良かったなぁ素直に思えました◎
ホント、こういう映画を今後も日本でたくさん上映してほしいですよね。
Commented by CINECHAN at 2007-02-08 00:01 x
こんばんは、初めまして。TB・コメントありがとうございました。
会話が中心となり、当然ながら派手な動きもあるわけではないですが、本当に惹きつけられた作品でした。うん、不思議というか穏やかな感覚。
最後の「Sylvia」は良かったなぁ・・・

私も隣の評論家さんのところで、よくかえるさんの名前はお見かけしました。初コメントです。これを機にちょくちょく寄らせてもらいます。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-08 11:16
右手本 さん♪
訪問ありがとうございます。
アジア映画のミニシアター系は初めてでしたかー。ミニシアター以外っていうと武侠ものだとかになるんでしょうか?わたし的には、ありとあらゆるミニシアター系がオススメです。韓国で大ヒットした作品も日本でもなかなか好評のようですが、こういう小品のステキさを感じていただけるのは嬉しいですー。そうなんですよ。韓流の人気者の出ているものばっかじゃなくて、こういう味のある個性派作品もたくさん公開してほしいですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-08 11:22
CINECHAN さん♪
限られた空間での会話がほとんどの一夜の出来事に過ぎないのに惹きつけられましたよね。大晦日の夜の山荘BARというのがとにかくステキだし、ワンカットならではのカメラワークが浮遊感を演出してくれました。「Sylvia」にはグッときましたよね。K-POPなんて全然知らないんですがよい曲でしたし。
こちらこそ、またよろしくお願いします。貴重な250越えナカマですもの。
前にも何度か、となひょーさんところのTBをたどって、レヴューを拝見したことはあったのですが、その時は、感想が正反対だったりして、トラコメするにはいたりませんでした。(笑) 
Commented by 風情♪ at 2007-02-18 01:18 x
こんばんは♪

眠くなるを覚悟で観に行ったのですが、目蓋を閉じてるヒマなんか
ないくらい惹き込まれてしまいました。
浮遊感のある展開&映像もさることながらラストの「シルヴィア」の
綺麗な歌詞&メロディラインなんか最高で【芸術】と言っても過言じゃ
ない素晴しい作品でした♪ (゚▽゚)v
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-19 12:33
風情 さん♪
引き込まれましたかー。それはよかったです。
眠くなるような雰囲気ではあるんだけど、会話の一つ一つやその展開に夢中になってしまうんですよね。
「シルヴィア」はとてもいい曲でしたよねー。新年、冬の夜、山荘のBARで、青春を共にした仲間たちが久しぶりに音楽を奏でるっていうシチュエーションにピッタリ。
芸術品でしたよねー。
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