かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
ソクーロフの『モレク神』、『静かなる一頁』、『ファザー、サン』
2007年 02月 05日 |
2本の新作を含めた6本のソクーロフ作品を鑑賞することができた昨年に引き続き、今年は4月に『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』(06)が、秋には 『牡牛座』(01) が公開予定だなんて嬉しい限り。そして、このたびは、『太陽』鑑賞時にとても興味をもった『モレク神』などを観ることができました。



『モレク神』 Molech 1999

脚本:ユーリー・アラボフ
出演:エレーナ・ルファーノヴァ、レオニード・モズゴヴォイ
ヒトラーを描いた本作は、権力者を描いた歴史4部作の1作目で、この後に、レーニンの『牡牛座』、昭和天皇の『太陽』 が作られた。
--1942年の春、ヒトラー総統は、腹心ゲッペルスらを連れて、愛人エヴァ・ブラウンの待つバイエルンの山荘を訪れる。

このヒトラーを観たら、『太陽』の人物描写はずいぶん温かな配慮があったんだなぁと思い起こされた。その人物を描き出す基本姿勢はそう変わらないのだけれど、何だか眼差しの温度が違う。それでいて、彼もただの1人の人間に過ぎないと思えてくるのは同じ。親しみを感じずにはいられなかった『太陽』の天皇に対し、こちらの総統は滑稽さを感じるのだけれど歩み寄りにくい。食事中のブラック・ユーモアは悪ふざけが過ぎていて不快だったな。こんなオヤジにひれ伏さなくちゃいけないなんてゴメンだな。ああ、だから、エヴァの振る舞いは面白くて爽快だった。『ヒトラー -最期の12日間-』 の頃には神妙な表情ばかりしていた2人が、こんなふうに子どものように走り回っているというのは何だか感動的ですらあった。


『静かなる一頁』 WHISPERING PAGES 1993

出演:アレクサンドル・チェレドニク、エリザヴェータ・コロリョーヴァ
撮影:アレクサンドル・ブーロフ
ドストエフスキーの「罪と罰」をはじめとする、19世紀ロシア文学の精神世界をモチーフに、孤独な青年と薄幸の少女との出会いを、世紀末的な雰囲気の漂う濃密な空間の中に描いた。マーラーの「亡き子をしのぶ歌」が響く。
霧に濡れそぼる水中都市のような街。老婆殺しのニュースに人々がざわめく中、若者が独りこの廃墟のような街を歩き回る…。

最初は 『モレク神』だけつもりだったのに、上記のような概説文を読んでしまったら、この映像世界をスクリーンで観る機会を逃すわけにはいかないと思いました。期待通りの、幻想的な廃墟の街に魅せられました。物語のようなものはないに等しいのだけど、この雰囲気に身を任せることがとても魅惑的。瞼も閉じがちだったけど・・・。その世界観がたまらない逸品。
d0029596_1974542.gif

『ファザー、サン』 FATHER AND SON 2003

出演:アンドレイ・シチェティーニン、アレクセイ・ネイミシェフ
撮影:アレクサンドル・ブーロフ
古びた建物の最上階に住む父と息子。妻を亡くした父親は若くして軍を退役し、息子は父を継ごうと軍人養成学校へ通う。強い愛情で結ばれた父子は、愛情ゆえに苦しむ。

去年鑑賞したのですが、ついでにまた観てしまったとても気に入っている作品。なのに結局レヴューを書いていなかった。映像にしびれたことがメインのものって、感想が書きにくいのです。去年観た時は、てっきり禁断の物語なのかと思って、ドキドキしっぱなしでした。それ以外は、感触はそんなには変わらない、美しくもせつない父と息子のドラマでした。この親子の触れ合い方や視線の絡ませ方は、普通の映画で見たら、かなり過剰で危ない感じなのだろうけど、この物語の中では、そこにある強い愛情の表現として不自然ではなくて、彼らの気持ちにすっかり寄り添ってしまうのでした。路面電車と屋根の上の戯れはやっぱりステキ。


甘美なる映像世界を堪能。
タルコフスキー作品を観たのは、その人が故人となってからであったけれど、アレクサンドル・ソクーロフ作品には監督の活躍中に出逢えたことが嬉しいです。
うっとり。
[PR]
by CaeRu_noix | 2007-02-05 19:07 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(8)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/4683028
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 狐の穴にて at 2007-02-11 11:55
タイトル : 『モレク神』
『太陽』で昭和天皇を描いたアレクサンドル・ソクーロフ監督が、ヒトラーを描いた作品。歴史4部作の第1作目。第2作目はレーニンを描いた『牡牛座』で、『太陽』は3作目。昨年『太陽』を見て以来、以前の2作品が... more
Tracked from 狐の穴にて at 2007-02-11 11:56
タイトル : 『ファザー、サン』
「父の愛は苦しめること息子の愛は苦しむこと」 息子の言葉が印象的だった。... more
Commented by シャーロット at 2007-02-05 21:23 x
うー。見たかった。気がついたのは4日の昼過ぎ。もう時間的に間に合わず。かなりショックだったです。涙
やはりかえるさんは見に行かれていたのですね~。
DVDはでてるんでしょうか。とても見たくなってきちゃいました。
Commented by beat+half at 2007-02-05 23:35 x
いや、うらやましいです。こんばんはロシアものに弱いbeat+halfです。
ソクーロフ、今年は「牡牛座」が公開されるらしいと噂で聞きましたが、三部作の一つ「モレク神」が観られるなんて、うらやましすぎです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-06 11:54
シャーロット さん♪
おお、シャーロットさんがこの手の特集上映に行かれるつもりだったとは意外でしたわ。だったら、もっと声を大にしてアナウンスしたのですが。場所が場所だけに行ける人は限られているだろうと、自分だけこっそり楽しみにしていました。ごめんなさいー。
、『ファーザー、サン』はDVD-BOXで出ていたような・・・。『モレク神』の入ったBOXも4月に発売されるもよう。でも、ソクーロフ作品はTVサイズの画面じゃあいけませんー。
『ロストロポーヴィチ』や『牡牛座』の公開時にまた旧作上映もプログラムしてくれることを期待!
あと、シャーロットさんには『エルミタージュ幻想』を観てほしいー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-06 11:54
beat+half さん♪
よかったですよー。ロシアの映像詩人世界は最高ですよねー。
そうなんです。『牡牛座』が秋に公開されるんです。これも、『太陽』効果なんでしょうか?『ファーザー、サン』はレイトショー公開だったんだけど、今度は昼間やってくれるといいです。念願のモレクでした。牡牛公開時にはついでにモレクの上映があるといいですねー。
Commented by いわい at 2007-02-11 11:54 x
こんにちは。やはり、かえるさんもいらしてたのですね。
多摩は遠かったですが、観られて本当に良かったです。
かえるさんは、翌日も行かれたのですね。
『牡牛座』も公開されるのですかー。昨日は、イメージフォーラムで『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』の予告編を観ました。『エルミタージュ幻想』系の映像雰囲気を感じました。小沢征爾もたくさん出ているみたいで、楽しみです。
その他の作品も特集されると良いなーと思います。スクリーンで観たいですよねー。
便乗して、『ファザー、サン』もトラックバックしちゃいますー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-13 12:31
いわい さん♪
もちろん、もちろん。
興味を持った全ての特集上映作品全部にアシは運べませんが、ソクーロフ作品をスクリーンで観られる機会ばかりは逃しませーん。
ええ、翌日も行ってしまいました。当初は『モレク神』だけのはずで、日曜は日仏に行こうかなと思っていたんですが、『静かなる一頁』の紹介文を読めば読むほどに観たくなってしまったのでした。オカゲでイメフォ行きも順延。『ロストロポーヴィチ』には小沢征爾が出ているんですかー。『エルミタージュ幻想』系な映像なんてステキ過ぎー。
『太陽』のヒットのオカゲかしらと思える、『牡牛座』公開です。
Commented by Puff at 2007-03-23 20:18 x
ドモドモ-♪
ひょっこりこちらにお邪魔致します。
「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」
これは是非とも観たいですよねー!
ワタクシも予告編を観ましたが、何やら「エルミタージュ幻想」の雰囲気を思い出しました。
「エルミタージュ幻想」は、旧ユーロスペースでしたね。
とにかく人手が多かったのでビックリした覚えがあるのですが。
「ロストロポーヴィチ」は来月イメージ・フォーラムで公開なんですよね。
こちらも激混みするんでしょうかね・・・・・ぬう

ところで、シネフィル・イマジカでは、今月、ショメの「老人と鳩」を放映していますね。
かえるさんは既にご覧になっていると思いますが、ワタクシも是非観てみたいと思います-♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-26 00:32
Puff さん♪
ひょうたん島ー。
アンジェリカで観ましたね。ロストロポーヴィチの予告。楽しみですねー。
『エルミタージュ幻想』はそんなに混んでおりましたかー。確かに、『太陽』のシネパトスは題材のために大盛況でしたけど、今度のはそんなでもないんじゃないかなぁ?? イメフォといえば、私が体験した中で一番混み合っていたのは、タルコフスキーの特集上映の時でした。外に並んだ記憶がありまするー。普段は、予告が始まる頃に到着しても平気なのに。

おお、シネフィル・イマジカっていいですねー。ベルヴィルとパリジュテ以外のショメ作品を観たことはないでござる。うらやましいです。
『岸辺のふたり』を観るのは5回目だっちゅーに。何度観てもいいんだけど、どうせなら他の短編アニメを見せてほしい気がしましたー。というわけで、『王と鳥』の時はビックリするほどに混んでいたアンジェリカも、今回はガラガラなかんじでしたー。
<< 『六ヶ所村ラプソディー』 PageTop 『ユメ十夜』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon