かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『輝く夜明けに向かって』
2007年 02月 10日 |
大地に響く、「フリーダム・ソング」

1980年、アパルトヘイトの南アフリカ共和国。セクンダ石油精製工場で働くパトリック・チャムーソは爆破事件の容疑者として捕らえられた。



何がいいって、音楽が最高。以前に観たドキュメンタリー『アマンドラ!希望の歌』を思い出した。アパルトヘイトのもと、迫害されていた黒人たちは、こうやって歌いながら、抵抗運動を続けていたんだなー。美しくも力強い歌声が空と大地に響き渡るたびに胸が熱くなった。

このへんてこな邦題は『遠い夜明け』のイメージと関係させるためにつけられたのだろうけど、解放と自由を求めてのアパルトヘイト下の抵抗運動そのものを描いていた『遠い夜明け』とは違って、もう少し広義的で今日的なものをテーマにしているように感じられた。グアンタナモ鑑賞の後だったせいもあるのかもしれないけど、南アの人種差別と不当支配に的を絞っているわけではなく、911を通じて表面化したものや世界に蔓延る問題が関連づけられているように思えた。

人がテロリストと呼ばれるようになる過程ではこんな形で憎悪と復讐心が芽生えたりもするのだろうし、人種で差別をすること偏見をもつことはこんなにも不当なのだ。その不条理から、憎悪の悪循環が生まれてしまうのだ。そして人は、一度は道を踏み外しても、パトリック・チャムーソのように、やがて復讐からは何も生まれないと悟り、子ども達の笑顔に囲まれて人間らしい暮らしを取り戻すこともできるのだ。

ティム・ロビンス扮するテロ対策班のニック・フォスは最初はすごくやな奴なのかと思ったけど、実はそうでもなく。ただ、彼も自分の職務に一生懸命なだけなのだ。誰かが特別に非道なのではなくても、おかしなシステムの中では人は気づかずに誰かの人生を変えてしまったりもする。

ただ、平和な国で暮らす私個人としては、パトリックがANC(アフリカ民族会議)に加わってしまったのがどうもわからなかった。冤罪で捕らえられたことが原因で、例えば家族をなくしてしまったというのなら、もはや失うものは何もないと、過激な運動に身を投じることもあるだろうけど。結局は、無実で帰ることができたのだから、そのまま家族を守り続ければいいんじゃないかと思ってしまう。憎悪や復讐心はわかるけど、守るべきものを捨てて戦士になるという心情が手に取るようにはわからず・・・。『シリアナ』のように、ただ生きるため、暮らしを続けるため、目の前に差し出されたものを手にとっていたら、テロリストになってしまったという方が、説得力と不条理な思いを強く感じられたな。
とはいえ、実話ベースなので、そういうものなのかと納得。

ストーリーそのものはありがちなもののようにも感じられたので、不遇なパトリックにそれほどに感情を揺さぶられたわけではないけれど、映像の重ね方と音楽が好みだったせいか好感触。『裸足の1500マイル』、『愛の落日』とハリウッドを離れてからのフィリップ・ノイス作品はわりと好き。テーマ、方向性も一貫しているように思える。グッジョブ。

輝く夜明けに向かって CATCH A FIRE
2006 仏英.南アフリカ.米  公式サイト
監督: フィリップ・ノイス
音楽: フィリップ・ミラー
出演: デレク・ルーク、ティム・ロビンス、ボニー・ヘナ
 (日比谷 シャンテシネ)
.AMANDLA アマンドラ ! 希望の歌
.
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by CaeRu_noix | 2007-02-10 19:28 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(7)
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Tracked from flicks revie.. at 2007-02-13 00:57
タイトル : 『輝く夜明けに向かって』
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Tracked from きららのきらきら生活 at 2007-02-14 06:34
タイトル : 映画~輝く夜明けに向かって
 「輝く夜明けに向かって」公式サイト1980年代の南アフリカを舞台に、過酷なアパルトヘイトの現実を描き出した社会派ドラマ。セクンダ石油製油所で働くパトリック・チャームソ(デレク・ルーク)は、アフリカ民族会議の起こした爆破事件の犯人として無実の罪を着せられてしまう。アパルトヘイト状況下の黒人としては豊かな暮らしを送り、政治に関わることを避けていたパトリックだったが、愛する妻にまで拷問のてに及んだことを機に彼はアフリカ民族会議の工作員となる。アパルトヘイト-って学校で習ったような気がするけど、それってある...... more
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Commented at 2007-02-11 00:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mako at 2007-02-12 22:44 x
たしかに差別が悪いアパルトヘイトが悪い、ってことだけを扱った作品ではなかったですよね。怒りのままに行動しそれがまた思わぬ怒りを招くとかまさに悪循環。なんで南アでガンジーさんなのかと思っていたら、彼はかの地で弁護士をしていたんだそうですね。だから非暴力の精神が人々の間に受けいれられているんだなあとなんとなく納得。

そういえばうちの『ルムンバの叫び』の記事のところでかえるさんに作品ご紹介いただいた旨、記載させていただいちゃいました。事後報告になりもうしわけございませんでした。あちらもいろいろ勉強になりましたです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-13 23:41
mako さん♪
ひょっとして作り手は、本当にアパルトヘイトのことだけを描きたかったのかもしれないけれど、多くの戦争映画や社会派作品がそうであるように、多様なことにあてはめられるような気がしてしまいました。
ベン・キングズレーの『ガンジー』は何年か前に観ましたが、南アで暮らしたりもしていましたね。ガンジーさんは偉いですー。

『ルムンバの叫び』の紹介者になれて光栄ですー。私も一週間レンタルになったら、借りて参ります。その後に、記事をじっくり読ませていただきますねー。『輝くー』は全然人気がなかったみたいですが、アフリカものがいろいろ観られるのは嬉しいですー。
Commented by きらら at 2007-02-14 06:38 x
かえるさん、こんにちは!
パトリック、、、どうなんでしょうね?家族のため、アフリカ人のために立ち上がったのでしょうね~。
ラストのご本人にはビックリ!でした。
これ、、、人気ないのはタイトルのせいでしょうか??内容的にも惹かれないのかなぁ~。

Commented by CaeRu_noix at 2007-02-15 12:40
きらら さん♪
パトリックが戦士になろうと決意した心情が手に取るようにわからなかったのはザンネンでしたが、復讐心を民族の解放のための闘志に変化させたのかもしれませんねー。
そうそう、本人が登場するとは思ってもいなかったので、とても感動しましたよねー。
アフリカ舞台の社会派作品というのはもともと人気はないのでしょうけど、宣伝の仕方も失敗していたような気がします。ちらしが暑苦しかったし・・・。
Commented by margot2005 at 2007-08-03 21:45
こんばんは!
同じ南ア作品なら、これよりサミュエル&ジュリエットの「イン・マイ・カントリー」の方が良かったなと思いましたね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-04 12:27
margot さん♪
タイトルほどの輝きが感じられなかった作品だったかも。
「イン・マイ・カントリー」は未見です。おお、よかったんですね!
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