かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『キムチを売る女』
2007年 02月 21日 |
その女の生に釘付けになるヒリヒリと鮮烈なアートフィルム。

中国籍韓国人である朝鮮族朝鮮族のスンヒは、中国北部の片田舎に息子と2人で暮らし、キムチを売ることで生計をたてていた。



スクリーンに映し出された家屋が絶妙の構図でとても美しくて、アジアの風景なのにエドワード・ホッパーの絵みたいだ。その語り口や映像、そのタッチや空気感は、キム・ギドクっぽかったり、ツァイ・ミンリャンっぽかったりするんだけど、やっぱりジャ・ジャンクーっぽいかな。大陸の情景がそう感じさせるのかな。このドライさの湿度を上げて、もっとユーモラスにアレンジしたら、この主人公は、カウリスマキ映画のカティ・オウティネン的な女になるかもしれないなぁなんて思いながら。そして、歌いたくなるのはあくまでも中島みゆき。

貧しくて、何の楽しみがあるようにも見えない単調な暮らしの中、親切に近寄ってくる男たちは結局、下心をもったロクデナシ。経済力のない弱い立場の女なら、モノにできると思っている浅はかな男。その情けなさを容赦なく映し出す、たたずむ全裸の中年オヤジのショットは圧倒的。弱き女を口説き落としたつもりでいたはずの男が少しも優勢ではないんだということをまざまざと見せつける。そんな奇妙な絵面と辛辣さにこの監督の才覚を感じてしまうのだ。

土ぼこりにむせそうになるような閉塞感。その乾きに心が痛くなる。生きることは何だかしんどい。でも、決して感傷的にはならない。同情なんて寄せ付けない。やさぐれて、うらぶれても強い女。強い女なんじゃない。強い母親なんだ。その女には感情移入はできない。その行動には共感はできない。だけど、その鮮烈さから目が離せない。興味本位で殺風景なその暮らしを見つめているうちに、その毅然とした姿を見守らずにいられなくなる。何度も居心地の悪さを感じながらも、その世界に浸りきってしまう。

台詞が少なく説明的でないからこそ、食い入るように彼女の生を見つめてしまうから、多くの場面が印象深く心に突き刺さる。スンヒがタバコを吸う姿、三輪車を引く姿、露店でたたずむ姿、舞踊を踊ってみせる姿、ネズミをかたづける姿、スカートをはいて足早に歩く姿、キムチを売る女の生が忘れられないのだ。

d0029596_1295221.jpgキムチを売る女 GRAIN IN EAR 芒種
2005  韓国/中国  公式サイト
監督.脚本 チャン・リュル Zhang LU
撮影 ユ・ヨンホン
出演  リュ・ヨンヒ、キム・パク、ジュ・グァンヒョン、ワン・トンフィ
 (渋谷 シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2007-02-21 07:14 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(10)
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Commented by 現象 at 2007-02-22 22:13 x
中島みゆきかぁ。適格だと思います。
濡れ場ですらカッサカサに乾いているかのようでしたね。

>情けなさを容赦なく映し出す、たたずむ全裸の中年オヤジのショットは圧倒的。弱き女を口説き落としたつもりでいたはずの男が少しも優勢ではないんだということ

ここ!なるほどなぁと思いました。漠然とただ何となくすげぇシーンだなと感じるだけだった僕の代弁をしてもらった感じですわ。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-23 12:06
現象 さん♪
賛同ありがとうございますー。
中島みゆきソングのあれやこれやが頭の中を駆け巡りました。
そうなんです。カッサカサでした。そんな質感がすばらしかったですよねー。
湿っているのはキムチだけ。

あのシーンは私も観ている時は漠然ととらえた感じです。ただただ視覚的に圧倒されたという感じ。で、後でふと思い出して、そんな場面だったなぁと感じた次第でっす。代弁者になれて光栄ですー。
Commented by シャーロット at 2007-02-23 13:25 x
こんにちは。
キムチヒリヒリ辛口・・・あの男達に分けていたキムチって激辛だったりするのかなとか考えてました。笑 でもねずみのいる場所で漬けているのを見てしまうとおいしそうに見えなくて。
強い女ではなく、強い母親・・・ホントそうでしたね。唯一そんな彼女が見せた可愛らしい面がお風呂のシーンでしょうか。踊る姿も素敵でした。
あーでも乾いてましたよね。こういう乾いた映像はとても好みでしたが、中島みゆき!は思いつかず・・・ぴったりです~。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-27 12:44
シャーロット さん♪
きっと、きっと激辛です。でも、この映画の雰囲気の中では、それほどにキムチが辛さが意識されなかったかも。もちろんあんなふうな作っている姿、売っている姿を見た限りでは、ちいともおいしそうには見えなかったですよね・・・。
私はどっちかというと一女性の物語として眺めていた感じなんですが、息子視点の母の物語というのが本質なのかもしれませぬ。インタビュー記事で監督が自分の母の強さについてを語っていたので。
廊下?を舞いながら進んでいく姿を正面からとらえる映像にはとてもしびれましたわ。(その時もカメラは動いてなかったんですっけ? >いわいさん)
やさぐれ加減がもろ中島みゆきワールド的でしたよね?
Commented by kobugimori at 2007-03-09 21:46
こんにちは。はじめまして。キムチを売る女、おもしろかったです。同じKAFSの、「許されざるもの」を来週あたり見に行こうと思ってます。楽しみ!
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-11 19:26
kobugimori さん♪
はじめまして。いらっしゃいませ。力強く印象的な作品でしたよねー。
あ、私も「許されざるもの」は観に行こうと思っています。これまた強烈そうですが、おもしろそうですよね。
Commented by いわい at 2007-03-11 23:22 x
こんばんは。訪問がもの凄く遅れちゃって、失礼しました。
朝鮮舞踊の場面でも動いていなかったのじゃないかなー、と。あの場面で初めて主人公の顔をハッキリと映したことは鮮明な記憶なのですが。そう言われると自信ないです。(弱気)
キメキメだよなー、と物語よりも映像にこめた作家の意図を気にしつつ観てしまいました。
深読みし過ぎなのかもしれません。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-12 11:53
いわい さん♪
のーぷろぶれむです。ちょっとご無沙汰でしたー。
私はカメラの動きを全然意識していなかったんで、ずっとフィックスだったとかちょっと動いたとかどちらの主張もできないんですが、ただ、あの彼女達が踊る場面には、他のシーンにはないイキイキとした惹きつけられるものがあったんですよ。で、ひょっとしてあのシーンだけはカメラが動いていたかもって思ってみた次第。
物語輪郭はわかりにくかったし、でも私は、映像からその意図を読み取ろうという姿勢だったわけでもなく、ただただ感覚で受け止めていたカンジです。
いわいさんはどんな深読みをされたんでしょか。全ての場面の解釈を聞きたいです。(笑)
Commented by 真紅 at 2008-03-05 10:06 x
かえるさま、こんにちは。古い記事にお邪魔させて下さい。
音楽を排したことで、絵画的な印象が深まっているように思いました。
悲惨な物語ですが、ドライで透明感すらある映画でした。
腕を組んで露天に立つスンヒ、強い女でしたね。
中島みゆきか~、確かにあの唯一のアップ場面で ♪恨~み~ま~す~って大音量でかかったらすごい迫力ですよね(笑)。
ではでは、また来ます。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-06 22:39
真紅 さん♪
おお、キムチ。DVDが出ていたんですねー。
フィックスな画が印象的な本作でした。
そして、その静けさも合わせて、心に残っています。
居たたまれないお話でしたけど、ホント、ウェットじゃないところが魅力。
本作は去年観たアジアな映画の中で5本の指に入るかも。
この女優さんって、ちょっとマギー・チャン似じゃないですかね?
で、みゆきSONGはそこまで究極の選曲じゃなくてよいと思いますがー。(笑)
去年、本作がかかった「韓国アートフィルムショーケース」という特集上映がまた今年もあるのですよー。
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