かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『エクステ』
2007年 02月 24日 |
髪の毛ホラーも園監督の手にかかりゃ、おもしろさエクステンション!

エクステとは、ヘア・エクステンション(つけ毛)のこと。
スタイリストを目指して美容院で働く優子を取り巻く物語。
ある日、横浜港の巨大コンテナから膨大な量の髪の毛が発見される。



ホラー映画慣れしていない私は、すっごい怖かったらどうしようとドキドキしながら挑んだのだけど、それは杞憂でした。いえ、怖くないということではなくて、恐怖の場面が笑いと紙一重だったり、ホラー映画ならではのオバケ的な物体よりも人間の方が怖かったり、ホラーパートとは別の部分のドラマが印象的だったりして、予想を裏切る風変わりにエンタメなホラーでした。やっぱり園監督って鬼才。

超人的なエキセントリックな役柄のイメージが強い栗山千明にあえて、将来の夢に向かって健気にがんばる普通の女の子をやらせるところがおもしろい。「今日も1日がんばるぞー」なんて声に出しちゃうような気恥ずかしいピュアピュアキャラ。最初はそのくささに引きそうになったんだけど、終わってみたら、主人公優子の心は、彼女の髪とまったく同じように傷んだり汚れたりしていない、まっすぐ美しいものであることが肝要だったのだと実感。ひたむきな頑張り屋さんは極限状況でも、恐怖にうち負かされずに踏ん張れるのだ。ゴーゴーボールがなくったって凛と輝くのだ。

初っぱなから、優子が勤める美容院の活気に満ちた日常を映し出すさわやかシークエンスにグッときてしまったり、終盤には、可哀想な姪っ子マミちゃんを優しく包み込む優子おばちゃんの愛情に心うたれた。結局、私はそういう描写に気持ちを掴まれてしまいがち。そんなふうに心温まったり、感覚的にときめいたりする場面があるからこそ、肝である恐怖シーンには激しいギャップがあって思いきり衝撃的なのだ。でも、一番本気で怖かったのは、襲ってくる毛髪よりも何よりも、つぐみママの虐待と脅し。その迫力ったら素晴らしくて、緊張感いっぱいで血も凍るほど。さすがだ。

つぐみママへの恐怖心で心臓が締め付けられたものだから、その後の笑いと紙一重の髪の大暴れシーンでもそのまま恐怖感が持続。ビジュアル的にはかなり笑えるんだけど、自分自身が当事者だったらめちゃめちゃ怖いよなーと思って、気持ちが緩むことなく釘付け。別人格のオバケが襲ってくることよりも、自分の体の中から生えてきた毛が大暴れすることの方が格段に怖いってば。つけ毛をエクステンションと呼び始めたのはどこの誰か知らないけど、それは正しいニュアンスの英語じゃない気がした。でも、この映画の中では、まさにヘアーがエクステンション!!部屋いっぱいに拡張、延長しちゃうんだから、おもしろーい。毛をなめんなよ。

支離滅裂はちゃめちゃストーリーと思いきや、怪奇現象につながる恨みを生んだ悲劇がちゃんと描かれ、筋が通っているのも気持ちよい。テイストの多様さは新感覚だけど、わりと堅実でもあったりして。髪フェチ山崎のキャラも強烈でコミカルでおかしいんだけど、行き過ぎたフェティシズムっていうのは案外とリアルで、笑い飛ばしきれない怖さもあった。虚構ならではの暴走シーンもふんだんにありながら、現代社会のリアルが盛り込まれているのがポイント。

そして、筋書きよりも場面の重ね方やちょっとしたショット、演出に惹かれてしまう園作品。ありがちな小道具ながら、ベルの音の入れ方は恐怖ともの悲しさが相まって絶妙。『奇妙なサーカス』で妖しくも美しい徹底した世界観を見せつけてくれたのを引き継ぎ、山崎の部屋の怪しさは格別に印象的だったり美術面でも魅せてくれました。多様に楽しめる盛りだくさんな映画。髪は女の命って、決して死語じゃないかも。

エクステ 公式サイト
監督.脚本 園子温
撮影 柳田裕男  美術福沢勝広
出演  栗山千明、大杉漣、つぐみ、町本絵里、山本末來、夏生ゆうな、光石 研、山本浩司、田中哲司
.
[PR]
by CaeRu_noix | 2007-02-24 07:07 | CINEMAレヴュー | Trackback(11) | Comments(10)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/4819080
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from カリスマ映画論 at 2007-02-25 02:43
タイトル : エクステ
【映画的カリスマ指数】★★★★☆  毛烈な毛髪地獄  ... more
Tracked from 映画雑記 at 2007-02-26 08:50
タイトル : エクステ
栗山千明主演だし、「HAZARD」で気になった園子温監督作品なので、 初日、オールナイトで22キロ先の映画館へ・・・。 オールナイトで、ホラーは観るもんじゃないなって思いつつも、 怖いだけの映画では無く、大杉漣の怪演や、髪の毛が襲い掛かるシーン等、 とっても好きなB級映画要素たっぷりの映画で、非常に満足(笑) 鑑賞後も、大杉漣の歌う歌が耳から離れないし・・・。 そして、劇中に幼児虐待がでてくるのですが、 演じた母親役のつぐみと、子役の佐藤未来の演技力には脱帽物でした。 単なるホ...... more
Tracked from 映画通の部屋 at 2007-02-28 21:41
タイトル : エクステ
「エクステ」 製作:2007年、日本 107分 監督、原案、脚本:園子温 出演:... more
Tracked from (´-`).。oO(蚊取.. at 2007-03-01 21:13
タイトル : エクステ 85点(100点満点中)
イヤだー 髪の毛 引っぱり回されたらー♪ 公式サイト 挑戦的でショッキングな意欲作を作り続けている、園子温監督の最新作。 警察の遺体安置所で働く、髪の毛に異様な執着を抱く髪フェチ男・山崎(大杉漣)は、ある日運ばれてきた、体内に髪の毛が詰まった謎の死体を....... more
Tracked from 龍眼日記 Longan.. at 2007-03-01 23:11
タイトル : エクステ
優子(栗山千明)は一流のスタイリストを目指す美容師の卵。 あるとき横浜港に大量の髪の毛で埋まったコンテナが到着する。 そのコンテナには海外で誘拐され臓器売買のために殺された少女の遺体が。 一方警察の死体安置所で働く山崎(大杉漣)は極度の髪の毛フェチ。 コンテナから発見された遺体の髪の毛のあまりの美しさに遺体を持ち帰ってしまう。 不思議なことに髪の毛が伸び続ける遺体。 それをエクステにして美容院に売りにまわる山崎。 ところがこのエクステをつけた女性が次々と謎の死をとげる。 「ヘア...... more
Tracked from 5125年映画の旅 at 2007-03-04 06:46
タイトル : エクステ
ヘアー♪ヘアー♪MYヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪MYヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪MYヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪MYヘアー♪ヘアー♪時々君は僕を不安させるよね♪時々君は僕につれなくするよね♪ヘアー♪ヘアー♪MYヘアー♪ヘアー♪ヘアー♪ヘアー...... more
Tracked from ExteCountdown at 2007-03-04 15:06
タイトル : 二回目観てきました!!
映画「エクステ」二回目観て来ちゃいました。 前回よく判らなかったところも今回観て一緒に行ったみのるさんの話を聞くことで氷塊。なぜ同居人の由紀(佐藤めぐみ)は殺されなくちゃいけなかったの? 髪が暴走する前に由紀が真美(佐藤未来)の足下でコロコロころがしながら..... more
Tracked from 犬儒学派的牧歌 at 2007-03-05 01:07
タイトル : エクステ:呪縛からの解放・自分の再発見
★監督:園子温(2007年 日本作品) MOVIX京都にて鑑賞。 私にしては珍しく、先週末からシネコ...... more
Tracked from 駒吉の日記 at 2007-03-05 13:36
タイトル : 映画:エクステ 試写会
エクステ 試写会(東映本社試写室) 「生えてきたー」「♪ヘア~ヘア~マイヘア~♪」 ・・・発毛実感!とか、植毛のヨロコビの声ではありません。 怖いというよりも気色悪い映画でした。お菊人形+侵略エイリアンっぽいなあ。 ホラー映画への耐性はかなり低い&あん... more
Tracked from エクステ専門情報日記 at 2007-04-02 14:15
タイトル : エクステとは
エクステの情報を日記形式でお伝えしてます♪... more
Tracked from プロフェッサー・オカピー.. at 2008-04-30 20:31
タイトル : 映画評「エクステ」
☆☆☆(6点/10点満点中) 2007年日本映画 監督・園子温 ネタバレあり... more
Commented by 睦月 at 2007-02-25 02:45 x
こんばんわ。
大杉さんのぶっ飛び演技ありきな作品とも言っても過言じゃないなあと思いました。
「ヘア~ヘア~」の歌はいまだに頭にこびりついています。

初日特典でこの歌のPVが入ったDVDをいただいたのですが、
もしかしたら本編よりも面白いかも!?って感じで最高でありました。
Commented by mar_cinema at 2007-02-26 08:54
おはようございます。
園子温監督の2本目ですが、すっかり気になる監督となりました。
まぁ、栗山千明が鑑賞する第一理由だったりしますが、
印象に残ったのは、大杉漣で・・・睦月さんと同じく、
「ヘア~ヘア~」っていう歌、頭から消えません(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-27 19:00
睦月 さん♪
大杉さんのぶっとび方はすんばらしかったですよねー。
最初からあやしい奴でしたが、まさかあんなに徹底しているとは恐れ入りました。フツーのホラーだったら、誰もが怖がる側の人間になりそうなものですが、伸びてるーって喜ぶ姿はサイコーでしたよね。
きゃー、いいなぁ。初日特典うらやましいでっす。本編よりおもしろいなんて気になるます。すんごい魅力的な特典だー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-02-27 22:49
mar さん♪
その独創性が気になる監督ですよねー。
栗山千明の今までのイメージと違う役柄もなかなかよかったですしね。
大杉漣はくどすぎて、印象に残らない人はいないと思いますが(笑)、そのくどさにうんざりするのではなく、どこまでも行っちゃうところがまた面白かったです。あの歌もステキすぎ。マイヘアー
Commented by 隣の評論家 at 2007-02-28 21:45 x
こむばむわー
TB&コメントありがとうございました。
本作で一番怖かったのは、つぐみちゃんでしたね。本作を見て彼女に注目してくれる人が増えると嬉しい♪ でも、あんまりメジャーになり過ぎちゃうと、ちょっと悲しい。複雑な乙女心です(乙女?????)

ところで。3月に観たい作品として『約束の旅路』を挙げているのですが。そのキッカケとして、かえるさんにおススメされたという事を書かせて頂きました。事後報告ですけど、ヨロシクどうぞ~
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-01 14:20
隣の評論家 さん♪
つぐみちゃん、本気で怖かったですよねー。キャラ的にはちょっと古いタイプだったのに、あまりに怖くて、そういうのにツッコむ余地なしでした。
インディペンデント系日本映画界では、今まででも充分につぐみちゃんは注目されていたんじゃないかと思うんですが、栗山さん目当てで観た人の関心をかったりして、人気の波及があるかもしれませんね。でも、同じく、メジャーになりすぎないでほしいー。乙女ー。

ああ、『約束の旅路』もまもなく公開ですね。記事内紹介ありがとうございまーす。
Commented by sabunori at 2007-03-01 23:20
かえるさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございましたー。
まったくもってこの作品、私の心をギュッとわしづかみです。
山崎の発する「ボクちん」「セニョリータ」等々昭和フレーズの嵐に
クラクラしました。
それにしてもところどころではっとさせられるほど美しいショットがあって・・・
やっぱりいいですよね、園ワールド。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-02 23:23
sabunori さん♪
心は鷲づかみされましたよねー。
そして、髪の毛は引っ張られる感じ。
山崎さんのマイペースなしゃべりもステキすぎでした。昭和フレーズ、ばんざい。一人称ぼくちんって、確かに平成の世では使われなくなったのでしょか・・。園作品ってスタイリッシュにイマドキアイテムも多用しながら、常に古めかしいレトロなものも混入させている印象がありますよねぇ。それがたまらなく個性的でよいですよねー。
知れば知るほどにハマる園ワールド!
Commented by roko at 2007-03-02 23:55 x
へぇ~~「エクステ」観てきたのですね~~(笑)
ウール100%の時に予告篇観ましたよ(目から髪がどぅおおおおおおって出てきてね、ウメズ カズオの漫画の世界みた~~いと思った)
かえるさん、これ系結構・・・お好きなのね(^З^)ぷぷ・目が釘ずけで点になったわ・・・わだすは・・・…(・∀・;)
>毛をなめんなよ
これが、一番受けた♪(爆)
ちなみに母はやっぱり「リング」の貞子に似ています( ̄◇ ̄;)
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-03 11:56
roko さん♪
怖い映画はほとんど観ないし、B級ホラーもめったに観ないんですけど、注目の監督作品ゆえ、観に行ってしまいましたわ。これ系も嫌いじゃないんだけど、優先順位は低めかな。普段は、ウール100%なビジュアルの方が好きですわ。でもね、エクステを観ていたら、ウールのことを思い出しちゃった。毛糸がびよーんて広がっていく光景と髪の毛がびよーんと暴れる様子が何か似てました。どちらも生物の毛なんだもん。
「毛をなめんなよ」ってのは大杉さんの台詞にあるんですよ。でも、ホント、毛をなめちゃーいけません。舌から生えてきたら、なめざるを得ないんだけど・・・
あら、rokoさんのお母様は貞子似でもあるんですね・・・。
<< 2月24日の公開映画ちぇーっくなど PageTop 『モーツァルトとクジラ』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon