かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『孔雀 我が家の風景』
2007年 03月 08日 |
羽を広げていない孔雀のようにとりたてて見向きもされないささやかな日常。そこに垣間見える美しさがある。

中国、文化大革命後の1977年、地方都市で暮らす家族の物語。



最初はただ"ベルリン映画祭銀熊賞"というものに惹かれたのだけど、その後に、この監督が 『さらば、わが愛/覇王別姫』や『紅いコーリャンの』 撮影監督だった人だと知って期待は高まった。チャン・イーモウも初めは、チェン・カイコー作品の撮影監督だったんだもんね。そして、やはりヨーロッパの映画祭で評価されるアジア映画だけあって、リアルな描写の中に時折詩的な映像表現が織り込まれる芸術性の感じられる作品だった。文革後の家族の物語としては、同じような題材で描かれた『胡同(フートン)のひまわり』 の方がドラマ展開の面白みが多くあったと思うのだけど、作風が好みなのこちらの方かな。

でも、物語描写の筋はつかみにくい。予備知識もなく、映し出されるものだけを眺めていたら、中国国民が文革で摩耗してしまっている状況にあったことを意識しなかったかもしれない。社会的なものは前面には見えず、家族についての物語も次第にようやく見えてくるという感じ。初めはただ、物語を掴むこともなく、少女を取り巻く日常に見いだされた詩的なショットに断片的に心惹かれるのだった。三つ編みおさげ姿のウェイホンはチャン・ツィイーのように見える。まさにポストチャン・ツィイーでもあるらしい。少女のあどけなさと多感さを体現するウェイホンに心寄り添って、殺風景な景色の中に浮かび上がる詩情を楽しむ。空から舞い降りてくる落下傘が大好き。そして、それをつけて自転車を走らせるウェイホンの姿にも胸ときめく。
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少女ウェイホンが主人公の物語として進むのかと思ったら、その後に兄を中心においての物語、弟の物語が、時間を前後しながら展開する。同じ一つの家族を描きながらも、兄弟それぞれを交互に中心に描写することによって、同じ出来事や状況が異なった見え方をするのがおもしろい。初めの方では不在だった兄の姿が現れて、家族達はこんなふうにそれぞれに苦労したり、不満を感じていたりしたんだということがわかってきて心が痛む。対外的には兄のことは不憫なのだけど、妹や弟の鬱憤もわかるし、そんな不協和音の中で兄を護っていかなければならない母親の思いは計り知れない。兄を疎ましく思っていた弟に、彼が企んだことの恐ろしさを思い知らせるべく、大切な家鴨の命を奪うことまでした母の姿にはただ圧倒された。

家族の間にあるものは温かい感情や強い絆ばかりでもないし、人生はままならず上手くいかないことだらけ。だけど、離れて暮らした後も戻ることができて、同じように食卓を囲める家族の存在は、かけがえのないもの。
孔雀が羽を広げる姿のように美しく華々しいものではなくても、人は地道に生きていくものなのだ。孔雀にとってはそれは見世物ではないのだから、めったに羽を広げてはくれない。人の人生も同じようなものかもしれない。羽の閉じられた姿は賞賛に値しないけれど、皆それぞれに美しい羽を持っているんじゃないかなって。

孔雀 PEACOCK 
2005  中国   公式サイト
監督 : クー・チャンウェイ(顧長衛)
脚本: リー・チャン
撮影: ヤン・シュー
出演 : チャン・チンチュー 、 ファン・リー 、 ルゥ・ユウライ
(渋谷Q-AX)
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by CaeRu_noix | 2007-03-08 12:57 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(12)
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タイトル : 孔雀 我が家の風景(DVD)
落下傘部隊の将校に恋した姉、知的障害がある気のいい兄、小さな町を飛び出した気弱な弟――。待ち望んでも開かない孔雀の羽の様に、皮肉な運命に家族は揺れ、そしてまた寄り添っていく。 1977年、人々は手にした事のない自由を持て余し、迷いながら、歩きはじめた。文化....... more
Commented by シャーロット at 2007-03-09 01:14 x
こんばんは。
孔雀ってやはり羽を広げてくれるのを期待しちゃいますが、私もめったに見たことがない(なかった)かも。ラストシーンはかなりねばって撮ったのかしら?と、ご苦労が見えてきちゃいました。
動物と子供は撮影が大変とききます。
あのがちょう(?)さんが喘ぐ様子はCGなのでしょうかね。
特撮スタッフの名前が異様に多かったなと覚えてますけど。かなりインパクトがありました。
それと母の強い姿ばかり印象的でしたが、あの落下傘をつけて自転車に乗るシーンには胸ときめいちゃいましたー。ペダルをこぐのが大変そうな気がしますけど。笑
普通の家族ですけどそれぞれはとても個性的でした。まとまるとすごくパワーありそうな家族です。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-09 13:00
シャーロット さん♪
孔雀が羽を広げている姿って私は見たことがあったかなぁ??
子どもの頃に徒歩圏内に神社と隣接した公園に孔雀と猿の檻があって、そこで見たような気もするのだけど・・。
私は、そのテーマで映画を撮る動機とか、ロケーションとかには興味があるんだけど、どんなふうにその場面を撮影したのかってあんまり気にしないかもしれません。その状態をカメラに収めるのはもしかしたら大変だったのかもしれませんね。
こういうタイプの作品に特撮スタッフが多かったとは意外。えええ?CGだとか特撮があるなんて思ってもみませんでした。そうだったの?
私もチャリンコ落下傘にはときめきました。そういうシーンがツボですわ。でも、そうそう、ちゃんと進むのが不思議なほど危なっかしくもありました。強い風が吹いたら、もっていかれそうでしたよね。穴が開いてたから、ちょうどよかったのかな。ときめきつつも、ハラハラしちゃった私ー。w
Commented by まてぃ at 2007-03-11 00:21 x
こんにちは。
文革直後の市井の一家族の物語って感じで詩情が感じられてよかったですよね。孔雀はなんの暗喩なんでしょう?今でももやもやしています。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-12 00:04
まてぃさん♪
以前は文革まっただ中を描いた中国映画の方が多かったような気がするんですが、近頃は本作や『胡同(フートン)のひまわり』のようにその後がよく描かれるようになったんでしょうかね。
孔雀は観た人それぞれの解釈でいいんのじゃないでしょうか。タイトルにするほどだから、監督の意図はもちろんあるのでしょうけどね。監督の意図がどうであれ、私はラストの孔雀の羽の広がりに、家族の姿と重なる感動があったのでモヤモヤはしませんでしたー。^^
Commented by kimion20002000 at 2007-03-25 09:04 x
TBありがとう。
家鴨や孔雀の使い方が、とってもうまいですね。いた、感心しました。
Commented by ラクサナ at 2007-03-26 01:29 x
長女が失恋の後の落下傘で飛翔ならずのシーン。
ラストに、家族の前ではなかなか羽を広げない孔雀。
人生はままならず・・・。
見事な大作の撮影監督として名のあるチャンウェイが、こういった地味ながら心に残るシーンの積み重ねを軸にした作品を作ったことに、ちょっとした驚きと、やはり大きな満足を感じましたよね。
私はオンライン試写会という小さなPCの画面で観た事が悔やまれる作品でした。
あの家鴨のシーンなどは私も胸ドキものでした。(爆)
それはそうと、未だトラックバック成らず。(^^;
TBをお返しすることもできませんが、お許しくださいね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-26 17:40
kimion さん♪
鳥づかいが見事でしたね。タイトルになっている孔雀はいつ登場するのかと思ったら、そうきたかという感じでした。そして、アヒルの使い方にもうなってしまいました。飛べない鳥に対して、空を舞い降りてきた落下傘もまた素晴らしく。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-27 12:47
ラクサナ さん♪
この家族には人生のままならなさを噛みしめるばかりでしたね。あ、でも、羽を広げない孔雀については、見に行った時に羽を広げてくれないから、アンラッキーな皮肉な気持ちになるっていうよりは、見ていなくても優雅に羽を広げるその姿の絶対的な美しさに感銘を受けたので、わたし的には「人生のままならなさ」はそこへはつながってきませんでしたわ。落下傘もポジティブにとらえましたです。
撮影監督のとる映画というと半信半疑の部分もあったのですが、本作はベルリン映画祭などで受賞しているだけあって、味わい深いものでしたよねー。初期の頃のチャン・イーモウなんかは鮮やかで激しくインパクトのあるドラマをつくっていたのとは違って、地味な語り口ながら、堅実で美しく。印象的なシーンの積み重ねが素晴らしかったですね。
オンライン試写会とやらをよく利用されていますよね。お手軽に早く見られるのはいいですね。でも、やはり、この美しい映像はスクリーンで観ていただきたかったですぅ。
うううう。未だにトラックバックは全滅ですか・・・。すみません。悲しいです。
Commented by JT at 2007-09-26 00:06 x
TBありがとうございます。

>羽を広げていない孔雀のようにとりたてて見向きもされないささやかな日常。そこに垣間見える美しさがある。

そういうことだったんですかー、ちょっと読み方が足りなくて・・・孔雀のシーンはあったのですが、なぜ題名にまでしたのか不可思議な感じがしてました(汗)
なかなか哲学的ですよね。
青春時代に開いていた羽がどんどん閉じられて、いつの間にか羽があったことさえ忘れてしまったという感じなんでしょうか。なっとくです♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-28 00:35
JTさん♪
こちらにもコメントありがとうございます。
いやいや、受け止め方、解釈は人それぞれなので、私の感じ方は別に正解などではないと思うんですよ。別の意味づけをしていた方もいましたし。ただ、私はそんなふうな感じ方をして、心に沁みるものがあったので、それでいいやって思っています。監督の意図を聞いてみたい気もするんですが、謎なのもおもしろいですよね。でも、とにかく哲学的な香りはしますよね。(笑)
おお、言うなれば、青春時代に開いていた羽みたいなものかもしれませんね。文学的だー。
Commented by latifa at 2007-10-29 15:56 x
かえるさん~ウズベキスタンに行かれてたんですねーヾ(≧∇≦)〃
実は、今年の夏に、両親連れて真剣に計画練ってたんです。
そうなんですよねー!ああいう不思議系の国なのに、ちゃんと直行便が飛んでいるのがエライ!!それが行きたい度を増してくれたんです。
実は、サマルカンドとか、あの辺りは、ソ連の一部だった頃からずっと憧れていて行きたいな~とは思ってたんです。 しかしながら、まさか最近は、あそこに直行便が飛ぶ様になってたとは知らなくて、おおお~これは行くしかない!(しかも結構ツアーのお値段も10万台で行けるのも・・)と、思ったんです。結局なんだかんだで行けなかったんですけどね・・・
かえるさんの旅行記など、すごーーーーく楽しみにしてます。
あ、でもお忙しいだろうし・・・もし書けたら・・って事で・・・。

この映画、この前、見ました。残念ながら、あまり、私の好みの映画ではなかったものの、記事書いちゃいました。TBさせて頂きました☆
Commented by CaeRu_noix at 2007-10-30 00:41
latifa さん♪
ウズベキスタンに行ってきましたー。
おおお、latifa さんも狙っていたのですねー。
そんなにずっと前から注目されていたんですね。私は、サマルカンドという名前は知っていても、具体的に興味をもったのは近年なんですよ。
直行便があるなんて嬉しいですよね。便数が少ないのは何ですが、ひとっ飛びですよ。そうそう、近いだけあって、ツアー価格もなかなかお安いですよね。お手頃な観光スポットだと思います。ご両親とご一緒の旅行が実現できたら素晴らしいですねー。ツアーは年配の方が多かったですよ。ミナレットに昇るのはちょっと厳しいかもしれないけど、そういうのをのぞけばお年寄り向けともいえる場所かもしれません。
旅行記は軽めに書きたいと思っておりますー。

本作はスクリーンで鑑賞した私はかなり味わい深かったんですが、latifa さんにはあんまりでしたか・・・。
中国という国もまだ行ったことないので行きたいですー
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