かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『不完全なふたり』 un couple parfait
2007年 03月 22日 |
男と女はどうしたって不完全なふたり

マリーとニコラの夫婦は友人の結婚式のためにリスボンからパリへやってくる。
離婚の話が出ていた2人が久しぶりに友人達のいる懐かしいパリで過ごす。



フランス映画祭2007 にて鑑賞

初夏に新宿武蔵野館にて公開予定の本作をあえて、映画祭で鑑賞しようと思ったのは、来日する俳優ゲスト目当てだったこともあるし、去年から諏訪ファン指数が上がっていた私なので、監督のお話を直に聞いてみたいというのもあった。それから、新宿武蔵野館という前の人の頭が邪魔になることの多い劇場で観るよりは、シネコンの設備で観る方が満喫できるかもというのも理由の一つだった。

ところが、結果的にはその3点目は私の間違いであった。いえ、武蔵野館はイマイチだなぁという気持ちは変わらない。だけど、本作は明らかに明らかにシネコンで観るような映画じゃあなかったのだった。六本木のTOHOシネマズはなんであんなに傾斜が急なんだ。大きなスクリーンを見下ろしながら、会場全体の広がりを意識せずにはいられない。ディズニーランドのトゥモローランドの中にあるアトラクションに挑むような感覚に襲われる・・・。これはまったくもってフランス映画と向き合うような場所じゃなーい。

おまけに六本木で開催される賑やかな映画祭。近くに座っていた外国人の女性2人が鑑賞中にやたらに笑うんだよね。これって、日本人感覚では、ひたすらしんみりせつない気持ちで見つめてしまう映画なんだけどな。フランス語で台詞を聞くとそんなに笑える箇所があるのだろうか。それとも彼女たち固有の笑いどころなんだろうか。そんなことは知らないけど、とにかくその笑い声によっていちいち気が散ってしまった。こじんまりとしたいかにもミニシアター空間で静かにどっぷりとその映画の世界に浸りたかったなぁ。そんな繊細な作品なのだ。

途中何度も気が散りそうになったけれど、作品そのものはフランス映画らしい私好みの肌触りのものだった。主演の2人のあまりにも自然な姿に、初っぱなから引き込まれてしまう。空港から街へ向かう車内で、電話をかけながら話す2人。一つの空間に2人でいることがごくごく自然に映り、それはきっと何度となく繰り返されてきた光景なんだということ、2人が長いつき合いなのだということが染み渡るように感じられてくる。

ヴァレリア・ブルーニ=テデスキとブリュノ・トデスキーニはパトリス・シェローが芸術監督を務めていたアマンディエ演劇学校の同窓生であるそうだ。台本のない即興演出が定番の諏訪監督作品において、2人が15年連れ添った夫婦役を自然に演じることができるのも、プロフェッショナルな演技を学んできた昔からの仲間だからなのだ。フランス語をわからない諏訪監督は、出演俳優の彼らがどんな台詞を話しているのかを理解しない状況で撮影をしたのだという。事前に綿密な打ち合わせをして、撮影現場では細部は俳優にまかせてしまうらしい。脚本家が想像して机上で書いた台詞を、俳優が記憶して口に出すのではなく、現場で俳優がその役になりきって思うままに言葉を発するのだ。そうやって、そこに絶対的なアクチュアリティが生み出される。

だから、その現実感に釘付けになって、2人の揺れ動く心情に寄り添ってしまう。マリーの気持ちになってせつない感傷と迷いに心囚われる。その自然なリアリティが心を締め付け、離婚話にいたった原因理由や2人の具体的な思考が描写されないことで、観客は思い思いの男女のストーリーを重ねて彼らの心情にグッと寄り添うことができる。2人きりの時の意地の張り合いも、友人と共にいる時の取り繕いも、すべてはリアルで、切実に胸に響いてくる。

せつなさにはとらわれ続けるのだけど、『2/デュオ』、『M/OTHER』みたいなカサブタはがされたようなヒリヒリ感はなくて、心がすれ違ってもまだ2人はやわらかなものに包まれているような感触。離婚話が持ち出されるにいたった自宅での2人にはもっと不調和があったのかもしれないけれど。日常から離れたパリで自分たちの関係を別の角度から見つめ直し、忘れていた昔の思い出に浸ったりして、感情に変化が起こるということってあるよねーって思える。ロダン美術館で流れた時間がとてもステキだった。映し出された手と手がにぎられた彫刻が象徴的に訴えかけてくる。ロダンとカミーユ・クローデルの激しい愛のことを思い出してみたり。

そして、迎えたエンディングにはただ嬉しくなるばかり。思い人が乗った電車が発車し、それを走って追う別れの図というのはドラマの王道だけど、乗れなかったというのがステキじゃないか。離婚するテデスキといったら、『ふたりの5つの分かれ路』 を思い出してしまったのだけど、あんなふうに取り返しのつかない荒んだ関係に陥ったわけではなくて、初々しい恋人同士のように抱き合える2人が可愛らしいほどに微笑ましいな。

仏題「un couple parfait」って、邦題と正反対の意味じゃないか。またしても、「愛されるために、ここにいるわけじゃない」を 『愛されるために、ここにいる』 にしてしまったような強引さなのかと思った。 でも、今回のものは意味的には納得できるかな。監督もおっしゃっていたように、完全さと不完全さなんて紙一重、表裏一体のものだもんね。パーフェクトなカップルなんてものはありえないはずであり、見方によっては全てがパーフェクトなカップルたり得ると思う。完成形なんてないのだろうけど、不完全さを補おうとすることは時々必要なのかな。

不完全なふたり Un Couple Parfait
2005 フランス・日本 公式サイト
監督:諏訪敦彦
撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ
出演:ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ/ブリュノ・トデスキーニ/ナタリー・ブトゥフ/ルイ=ドー・デ・ランクサン/ジョアナ・プレイス /ジャック・ドワイヨン/アレックス・デスカス/レア・ヴィアゼムスキー/マルク・シッティ/デルフィーヌ・シュイロット
(VIRGIN TOHO CINEMAS六本木ヒルズ)
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by CaeRu_noix | 2007-03-22 02:00 | CINEMAレヴュー | Trackback(9) | Comments(10)
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あらすじマリーとニコラは結婚15年になる夫婦。彼らは友人の結婚式に出席するために、パリへやって来た。友人達からは、“理想のカップル”として見られる二人だったが実は彼らは離婚することを決めているのだった。感想ロカルノ映画祭で、審査員特別賞を受賞した作品。...... more
Commented by peridot at 2007-03-22 23:09 x
かえるさん、こんばんは。
シネコンとまったく合わない作品に同意しまーす。
日本が舞台じゃ出来ないのと同じくらい、シネコンで上映はNGなのにね。映画祭だからしかたないか…。ヴァレリアも来なかったんですかー。ものすごく素敵でしたよね、2人とも、オトナ。
確かにね、2人のセリフもさることながら、バーやパーティの周囲の会話とか、監督わかってないだろうなと思ってたんですよ。確認してたとは思うけど、そんなに笑うほどの内容だったとは…。でも、それちょっと優越感に浸った笑いに聞こえてイヤですね。うるさいだけでもイヤなのに。
グチついでに、シネコンのポップコーンや飲みものの氷が鳴る音も、ものすごく気になって、席移動しちゃいます。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-23 11:31
peridot さん♪
まったくもってシネコン上映にそぐわない作品ですよねー。
映画祭だから仕方ないんだけど、今回はそんな不満を顕著に感じてしまいました。ヴァレリアは欠席でした。ザンネンですー。去年はヴァレリアをスクリーンで4度も見て、彼女の魅力に改めて気づいたので是非ともお会いしたかった。最近はユーロで94年作品『私を忘れて』も観てしまいました。役柄によってガラリと表情を変えることができるから素晴らしいです。
外国人の方って映画見ながら大きな声で笑いますよねぇ。コメディならそれでいいんだけど、今回の場合はちょっと不思議だったし、かなり迷惑でした。字幕で伝えきれないニュアンスでさりげなく面白いことを言っていたのかしら??
そうそう、シネコンでのクラッシュアイスやポップコーンのがらがらっていう音は非常に気になります。そういうものが販売されているのが間違っていると思います。ポップコーンじゃなくて団子や饅頭を売れー
Commented by シャーロット at 2007-07-04 00:31 x
こちらにもお邪魔します。
武蔵野館、私が見た日は変な人が多かったです;泣
足を投げ出しオジサンとか。電話オジサンとか;;

あ、確かにヒルズで見る作品ではないかもですね~
というか、フランス映画祭がヒルズというのも一長一短なのかしら。
ゲストさんも、ろぽんぎだと遊びの誘惑も多いしね。笑
ところで。
この作品、とっても音が印象的でした。そういうところにはいつも耳がダンボです。笑
台詞とかよりもいろんな脇の音が聴こえてきた感じです。武蔵野館だからかなあ?誰の台詞だか雑音だかよくわからなくて最初はとてもとまどったのですが、すごく細かいというか繊細に音を拾ってるんだなと返って感動しちゃって。表情もすごくアップだったり、全く存在自体を見せなかったりで、その見せ方は私には多種多様に映りました。
それとドキュメンタリーのようなリアルさ。
引きの長い間の取り方とかとても日常的な感じがして、すごく好きでした。
ヴァレリア、いつか生を拝みたいw
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-04 22:15
シャーロット さん♪
武蔵野館の一番大きいホールは前列3列ほどの椅子が取っ払われていましたね。これで一番前がベストポジションになりました。
この作品を早々に観に来ていた人にはオジサンが結構いたのですかー。意外。シネフィル高齢化?
フランス映画はまったくもってシネコンには似合いませんー。でもTIFFも六本木会場があったし、もはや国際的なビッグイベントはみんな六本木の会場が使われるのでしょうかね。日本の芸能人だの業界人だのは六本木で遊ぶってことを今も定番にしているのかは知らないけど、フランスからやって来た映画俳優たちが六本木遊びを楽しむもの?ブノワだけかと思った・・。w
本作は映像も素敵でしたし、音もいい感じでしたよね。日常の臨場感が素晴らしいです。そんなに、いろんな音が入っていましたかー。
声の主を同時に撮らないなんてのはおもしろいです。ワンカットも気持ちいいし。諏訪監督は結構実験的なものが好きなのだと思われますー。ありきたりじゃないのはいいですよねー。
ヴァレリアは前にゲストで来ているんですよね。もう人気者になりすぎちゃったからなー。
Commented by Cartouche at 2007-07-12 09:01 x
うわ~そうなんですか。即興の部分があるとは聞いていましたがそこまでとは!何しろ不思議な監督さんですよね~。
実はこの設定は私にぴったりハマるので、こわいくらいでした。
あ。別に離婚の危機には直面してないのですが、なんとなく内面すべてを暴露されているようで・・
あ。わかります。シネコンて快適だけど、こういう作品には合わないって。
でも武蔵野館も・・・ですね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-12 12:36
Cartouche さん♪
そうなんですよ。台本なっしんぐです。事前の話し合いで、その設定などを説明するのみで、撮影時は俳優たちが思うままに振る舞って台詞を言うのだそうです。諏訪監督はフランス語が聴き取れるわけじゃないらしく、撮影現場で俳優達が何を言っているかわからない状態で立ち会ってたらしい。2人の主演俳優がとにかく素晴らしいということであり、信頼関係あってのものですよね。
そうなんですよ。離婚の危機に直面している人に限らず共感できる、とってもリアルな心情が表現されていましたよねー。暴露っていう感じだったかもしれません。
シネコンはふさわしくないけど、武蔵野館もあんまりですよね・・・。
Commented by きょろ at 2008-02-12 09:39 x
お久しぶりです~。

「不完全なふたり」私もとても気に入りました!
諏訪監督が脚本なしで映画を撮るというのは、どこかで読んで知っていたんですが、フランス語がお分かりなのだろうと思っていましたので、驚きました。

だって、とても自然で、実際に自分も言ってしまいそうな台詞の数々でしたから。

美術館でのシーンも良かったですねー。
あの、手と手が絡み合っている彫刻。

ラストは、「男と女」みたいになるのかなーと思ったら、違いましたね。でも、このラストも大好き~。
テデスキの衣装も、とても好みでした。










Commented by CaeRu_noix at 2008-02-12 23:08
きょろ さん♪
お久しぶりにコメントありがとうございます。
おお、気に入っていただけて嬉しいですー。
そうそう、フランス人俳優だけで映画を撮るなんていったら、監督はフランス語がわかるんだろうって思いますよねー。
だから、真の演出家は通訳さんなのかもしれませんー。
監督が日本語で伝えたイメージを、通訳の人が訳して伝え、それをテデスキ&トデスキーニが実践していくという感じなんでしょうか。そうやって、生み出された台詞が思いきりナチュラルでリアルなんですよね。
監督のやり方もすごいし、やっぱりテデスキ・トデスキーニは素晴らしい俳優だなーって思いますよねー。
日本の男女と、アムールの国おフランスの恋愛状況って、結構違うものなのかなと思ったりもしたのですが、本作を観ると、日本人もフランス人も同じなんだなーって思ったりしますよね。
美術館というのはフランス人らしいって感じかな。
Commented by maman at 2008-09-23 16:47 x
はじめまして、Cartoucheさまのブログから来ました。
タイトルが日仏で違う意味がよくわからなかったのですが、完全も不完全も表裏一体という意味とのこと・・説得力がありますね。
映画館のスケールと映画の相性というのも興味深く拝見させていただきました♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-24 14:52
maman さん♪
はじめまして。いらっしゃいませ。訪問ありがとうございます。
邦題には、センスのない酷いものが多いのも事実なんですが、コレに関しては、正反対なのが逆に面白いなぁと思えてしまったのでした。
そう思えるほどに味わいのある作品でした。
そちらにもまたゆっくり遊びに行かせていただきますねー。フランス大好きなので。
サルコジ夫人がテデスキの妹だなんて知らなかったですー。
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