かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ベル・トゥジュール』 Belle toujours (→ 『夜顔』)
2007年 03月 23日 |
永遠の美しさに乾杯。流れゆく時は美しい。

アンリ・ユッソンは偶然、38年ぶりに未亡人セヴリーヌと再会する。



フランス映画祭2007 にて鑑賞

『昼顔』(Belle de jour)の登場人物の38年後が描かれた本作は、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が、ルイス・ブニュエルと脚本家J=C・カリエールにオマージュを捧げるフィルムなのだそう。

カトリーヌ・ドヌーヴによる可憐な若き人妻セヴリーヌの目線で物語られた『昼顔』の中では、娼館を紹介する夫の友人アンリは、何となく好感のもてない胡散臭さを感じるような謎めいたキャタクターに思えた。それがこうやって主人公が入れ替わるだけで、あの男の38年後だと承知の上でも、年老いたミシェル・ピコリ扮するアンリに心寄り添ってしまうから不思議だ。『家路』のピコリじいさんには共感できなかった気がするのだけど、今作ではしっかりとジイさん気分に浸ってしまった。

冒頭のオーケストラのコンサートがとても素晴らしくて、もうそれだけで至福。前日に観た『不完全なふたり』はシネコンの劇場空間にそぐわない映画だと違和感をもったというのに、本作の冒頭に限ってはこの場所がしっくりときた。座席の傾斜の急な劇場の後ろの席からオーケストラが映し出されるスクリーンを自分が眺めている感覚が、音楽ホールの二階席からオーケストラのいるステージを臨むアンリの置かれている空間に重なるように感じられて。自分もそちら側にいるように、臨場感いっぱいでドヴォルザークの壮大な交響曲に感動を覚えたのだった。素晴らしい音楽によってアンリと共に豊かな気持ちになり、見事な演奏に対して感銘と賞賛を惜しみなく表現するアンリその人の豊かさをも感じてしまう。(交響曲第八番)

バーテン相手に話すアンリの言葉から、私はこないだ観たばかりの『昼顔』を正しく解釈していないのかなと感じた。でも、とりあえずそれはどちらでもよくて、オリヴェイラの描いたアンリを通して、別の視点から『昼顔』のエピソードを顧みるというのも面白いものだ。あの時はその思いが見えなかったのに、アンリという男はこんなにも人妻セヴリーヌに興味をもっていたのだなぁ。ダブルのウィスキーを飲みながら、38年前の出来事をバーテンに話す彼の姿がほほえましい。そうやって人は懐かしい思い出を38年の時を経てもなお愛でていくのだなぁ。いえ、ただの思い出ではなくて、それが彼女にとっての禁断の秘めごとだからこそ、甘美で芳香なものであり続けたのかな。

舞台劇のようにキッチリと区切られた場面がシンプルに展開するだけなのだけど、会話の一つ一つが興味深く、どの場面にも居心地のよさを感じて、その再会劇に見入ってしまう。キャンドルの炎に照らされた個室ディナーというのがまたステキ。ウキウキとその再会を楽しむアンリとは対照的に困惑しながら時に不快感を表すセヴリーヌ。2人のやり取りは睦まじさからはほど遠いのにそこに充満する空気はやわらかに2人を包み込んでいる。これが青二才の青年ならば、せっかくディナーに誘った愛しい女性のゴキゲンを損ねたら焦ってしまうに違いないのに、長い人生を生きてきた爺は、そんなことも大らかに受け止めて、そこに幸福感さえ感じることができるのもしれない。そして、お楽しみは引き延ばされる。永遠に美しく輝く。


映画祭の時に間近で見たビュル・オジエは確かに品のある美しい女優だったのだけど、スクリーンを眺めている時は、その人があのセヴリーヌだということに違和感があった。オリヴェイラがそうキャスティングした意図、理由はあるのだろうとは思うのだけど、私としてはちょっとイメージが違うのだよね。もちろん、元々ドヌーヴが演じた役だからといって、今回もドヌーヴが演じるのがふさわしいとは思わない。セヴリーヌはきっと風格女優ドヌーヴのように歳を重ねはしなかっただろう。ビュル・オジエの雰囲気の方が近いのかもしれない。でも、やはりしっくりこない部分はあったかな。そこがやや残念。

ルイス・ブニュエル作品も観なくては。

ベル・トゥジュール Belle toujours
2006 フランス
監督.脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:サビーヌ・ランスラン
出演 ビュル・オジエ、ミシェル・ピコリ、レオノール・バルダック
 (VIRGIN TOHO CINEMAS六本木ヒルズ)
.
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by CaeRu_noix | 2007-03-23 23:23 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(2)
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Commented by たかこ at 2008-01-10 20:37 x
わーい、こちらもやっと観てきたのですよ~♪
そうそう、舞台のような重厚な中でピコリじいさんが可笑しくて、
せっかく対面してディナーしててもお楽しみを引き延ばしてましたね!
ほんとうにもうしょうがない人です♪
クスクス笑って楽しんじゃいました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-11 01:04
たかこさん♪
私の新年1本目の映画は、「わが幼少時代のポルト」でしたー。
オリヴェイラってブルジョアジーなのね。
若い頃の彼の、女性への憧憬の思いが、そのままずっと女性観の基幹になっているのかなーってことを感じました。
コミットしつつも、見つめることに比重があるのかなぁって。
それにしても、意地悪爺さんでしたね。おかしかった。
爺ならではの余裕には感慨すらありましたし。
妙な映画だったけど、楽しさゆえ幸福な気持ちになってしまいましたー。
画も美しかったですー。
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