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ジャック・ドゥミの 『ローラ』、『想い出のマルセイユ』 など
2007年 03月 25日 |
フランス映画祭の特別上映イベント「ジャック・ドゥミ特集 結晶(クリスタル)の罠」 会期1-ユーロスペースで観たモノ。



私がジャック・ドゥミ監督作品を知ったのは、やはり最も有名な 『シェルブールの雨傘』(63)からだった。その音楽や美術に感心はしたけれど、しっとり歌い続けるミュージカルよりもノーテンキに突然踊り出すミュージカルが好きな私はそれほどにその映画にハマりはしなかった。その後、映画のメーリングリストで『ロシュフォールの恋人たち』(66)のことを教えてもらいチェックしていて、4年前の『シカゴ』公開記念の特集上映でそれをスクリーンで観ることができた。そのストリートで踊り出す楽しいミュージカルの方は最高に気に入ってしまった。そして、一昨年の終わりに観た『ロバと王女』(70)の世界観にも大いに魅せられた。魅力的なジャック・ドゥミ作品をまとめて観られる機会を逃すわけにはいかないのだ。


『ローラ』 LOLA 1960
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撮影:ラウール・クタール
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:ジャック・アルダン、アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、コリンヌ・マルシャン
“ヌーヴェル・ヴァーグの真珠”と呼ばれるドゥミ長編処女作。舞台はドゥミの故郷の港町ナント。キャバレーの踊り子のローラ、再会した幼なじみのローラン。2人のセシルは水兵に出逢い。

『シェルブールの雨傘』に登場する宝石商はこのローランで、彼が「昔ローラという女に恋をして・・・」と歌うローラとはこの踊り子のローラなんだということを教えてもらい、興味をもった。それで以前、本作のVIDEOを貸してもらって鑑賞済みだったので、初めは今回は観なくていいやと思っていた。ところが直前にたまたま、フリーペーパーに書かれていた本作にまつわる文章を読み、どうしてもスクリーンで観たくなってしまったのだった。
その文章とは、Suburbia Favorite Shopの橋本徹氏の書かれたもの
"~鏡に向かってシルクハットをかぶったり、水平のセーラー服を着てみせる彼女のクローズアップ、ルネサンスの建築を思わせるパサージュの階段を降りてくる彼女の輝くばかりの麗しさを観れば、「美しい世界を描きたかった」というドゥミの願いがかなえられたことは誰の目にも明らかだ。 シネマスコープ・サイズいっぱいに撮られたその魅惑的なパサージュのシーンに象徴されるように、モノクロームなのに色彩を感じさせる、自然光に充たされ白く輝くラウール・クタールの映像の素晴らしさは特筆に値する。~"
映像の魅力を鮮やかに表現したこの文章を読んで、スクリーンいっぱいに広がるその美しい世界を自分の目で見なくてはと思わせられた。ああ、そして、流れるようなカメラワークで映し出されるキラキラと輝くモノクロの世界を劇場体験。初見時以上にそのきらめきに魅せられてしまった。キャバレーのダンスもメリーゴーランドもあまりにもステキ。水兵、じゅてーむ。


『天使の入江』 LA BAIE DES ANGES 1962
  ・・(モノクロ)
撮影:ジャン・ラビエ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール、アンナ・ナシエ

銀行員のジャックは、ギャンブルに手を染め、カジノで出会ったジャッキーにも惹かれ、ルーレットにハマっていく。
ドゥミがこの映画で最も描きたかったのは"情熱のメカニズム"

カジノや南仏の雰囲気がステキ。でも、このジャンヌ・モローはそんなに魅力的に見えなくて、青年ジャックが恋してしまう気持ちがあまりわからなかったかも。


『ベルサイユのばら』 LADY OSCAR 1978

原作: 池田理代子
脚本: パトリシア・ノップ
撮影: ジャン・パンゼ
音楽: ミシェル・ルグラン
出演: カトリオーナ・マッコール、バリー・ストークス、クリスティーナ・ボーム

言わずと知れた池田理代子原作の同名コミックの映画化。

私はベルばらファンではないので、マンガに対するこだわりはなく、1月に観たソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』を思い出しながら、その違いや個性を楽しんだ。マリーでは描かれていない部分、 民衆の姿などが興味深かった。
個人的には、馬に乗ったオスカルが厩舎に入り、アンドレが話をしながらもちゃんと馬の鞍をはずしたりブラシをかけたりするところが撮られているところに感心。こういう王宮モノで、馬小屋内の作業をちゃんと映すものって少ないもの。
舞台設定が壮大でドラマチックであるわりにそのダイナミズムは感じられなかったし、ソフィア世界とは違ってシリアストーンだったのが寂しかったりもしたけど、やっぱりベルばら物語の実写映画化というのは魅力的で、美術を満喫。
でも、てっきりおフランス映画なんだと思っていた。英語版で、フランスでは未公開だったとは。


『パーキング』 Parking 1985

出演:フランシス・ハスター、ケイコ・イトウ、ジャン・マレー

ジャン・コクトーの『オルフェ』を80年代を舞台にしたら?オルフェウスの神話を翻案した主人公はロック・シンガーというロック・ミュージカル。

恋人が日本人なのは、ジョン・レノンのイメージなのかな。本当は、デビッド・ボウイなどに主演してほしかったらしい。70年よりも前に持ち上がった企画が、ようやく実現したのは85年で、キャスティングなどもまるで思い通りにはいかなかったそう。ロックな世界はやっぱりドゥミには似合わないし、ビミョウな肌触り。


『想い出のマルセイユ』 TROIS PLACES POUR LE 26
1988
撮影:ジャン・パンゼ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:イヴ・モンタン、マチルダ・メイ、フランソワーズ・ファビアン

故郷マルセイユにミュージカル公演のために帰るイヴ・モンタン。彼はその公演の中で、自身の人生を歌と踊りで振り返っていく。

後期のドゥミの映画は、ロシュフォールの頃のような明るさがなくなっているようなのだけど、遺作であるこちらは久しぶりにカラフルで陽気なミュージカル映画となっていて、心躍る楽しさを味わうことができた。
屋外でイヴ・モンタンを取材しているインタヴュアー、記者達が踊り出しちゃうんだから、序盤からもう嬉しくて。部屋や職場のショップでのダンスも楽しく。
そして、イヴ・モンタンの人生が綴られる劇中劇であるミュージカル・ステージも見ごたえ満点。造船所の男たちのダンスっていうのがいいなー。
私はモンタンのことなんて全然知らなかったのだけど、マルセイユ出身で、ムーランルージュで歌ったりもして、ピアフと出逢い、シニョレと愛を育み、マリリン・モンローともつき合ったという真実のモンタン物語がそのまま劇になっているのが面白くて、モンタンの人生そのものにも思いを馳せてしまった。ドゥミ夫妻とモンタン夫妻が一緒に映画を作ろうと思い立ったのはもうずっと前のことで、それもようやく実現にこぎつけたそうだ。90年にドゥミが他界し、91年にモンタンが亡くなったことを思うと、最期にこの映画が作られたことは感慨深い。
88年の作品としては洗練されたミュージカルではないのかもしれないけれど、ドゥミ・カラーが鮮やかで楽しい、私にとってはお気に入りの一作となった。


『ローラ』の帰りに、marionさんに遭遇。
『想い出のマルセイユ』鑑賞後には、ロビーでなんなさんに遭遇。
なんなさんは、以前『ローラ』のVIDEOを貸してくださった人であり、ジャック・ドゥミ&ミシェル・ルグランの魅力を伝授してくれた人なので、同時にそのドゥミの遺作を観ていたことが嬉しかった。
そして、『天使の入江』の終了後は、西島ひを発見。うーん、こういうQ&A付の上映を彼はちゃんと見に来ているんだなぁ。勉強熱心だー。

そう、『天使の入江』上映後の、プログラム・ディレクターであるジャン=マルク・ラランヌ氏のお話もとても興味深いものだった。ドゥミは実に多くの素晴らしい構想をもっていた人なのだけど、理想的なカタチで映画化にこぎつけるのはなかなか難しかったのだという。後年はそんなジレンマと苦悩が多くあったのだそう。だから、パッとしない映画もあったのも事実。それでもこうやって今、ジャック・ドゥミという監督の作品のステキさを日本に伝えてくれる人がいることが嬉しいじゃない。ラランヌ氏に感謝。

第二弾は、3月27日から日仏学院で。
『ローラ』を観てしまったら、続編の『モデル・ショップ』も観たくなるのだけど、字幕はなしか・・・。
それから、ロマン・デュリスの『パリの中で』も観たいー。

来年2008年には、『シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』のリバイバル上映予定!
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by CaeRu_noix | 2007-03-25 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(6)
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Commented by umikarahajimaru at 2007-03-26 22:17 x
こんばんは。
フランス映画祭からみで(普通の感覚では)尋常ではない本数の映画をご覧になってるんですね。凄い!
ジャック・ドゥミは1991年に東京国際ファンタスティック映画祭で追悼特集があって、あの時に何を観たのか、記憶が定かではないんですが、あれからもう15年以上も経ってるんですねえ(今、調べたら上映されたのはたった4作品でした)。都合があえば、私も一度くらいは日仏に行こうかと思ってします。
ところで、アニエス・ヴァルダはご覧になってますか? 『ジャック・ドゥミの少年期』とかは?
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-27 17:32
umikarahajimaru さん♪
そうなんです。フランス映画祭本体としては6本なので去年より少ない鑑賞数なんですけど、ユーロスペースに入り浸ってしまったので結果的には)尋常ではない本数を観ていますー。おお、91年に追悼特集があったのですね。その時にプラグラムディレクターかなんかをやっていた方が来場していて、今回のようにたくさん上映されたのは初めてだとおっしゃっていました。もう15年以上たつのですね。
私も日仏へは3回くらい行きたいなーと思っています。がんばりましょう。
『ジャック・ドゥミの少年期』は未見ですー。今回はヴァルダ作品は観ていないんですよ。ヴァルダ作品はドゥミのものよりレンタルDVDなどは出回っているので、DVD/VIDEOではいくらか観ていますが。歌う女、歌わない女が好きですー。クレオも。
Commented by シャーロット at 2007-03-31 00:59 x
おおぅ、たくさんご覧になってましたね。
上の画像、なんかとても素敵です。ご覧になれて羨ましいです。やはり劇場鑑賞がよろしい作品なんでしょうね~。、『シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』も公開が待ち遠しいです。
べるばらは・・・私的にはすごく良かったな。ソフィアとも比べながら見てましたけれども、そうそう、実際の民衆の生活もきちんと描いてありましたよね。マンガはどの人物もとってもストイックな恋愛をしてるところが日本人ウケしてるんだと思っていたのですが、フランスでは未公開でしたか・・・なるほどー。
でも、自分の思うとおりに映画化するって大変なんでしょうね。
あ、あとオゾンの「8人の女たち」も見ましたよ。レビュー書いてないのですけど; ああ、なんか、ドゥミからの流れ?って思いました。楽しくって歌も上手いし凄く気に入ったんです。でも感想が書けなくて。うー
私は、日仏は・・・土日狙いですが、英語字幕と無字幕ばっかりだなあ~困った~んー、情けない。。。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-31 12:51
シャーロット さん♪
特集上映される作品には、比較的よくされるものとそうでないものがあり、ドゥミは後者なので、この機会に欲張りましたよー。そうそう、『ローラ』のこの衣装のアヌーク・エーメ、すごいステキですよね。ベルばらもよかったですよー。今回観た中では、ローラとマルセイユが感動的だったので、ベルばらはちとパンチにかけた感はあるけど、その美術世界は大いに楽しめました。私はマンガに思い入れもないので、オスカルにも違和感はなかったし。その当時の日本での評判も私は知らないが。イギリスなどでは公開されたのでしょうかね?
映画製作は大変らしいです。ギドクのようにアイディア1本で低予算で撮るというのもアリですが、ドゥミのファンタジー世界はお金がかかるものだったようで。
『8人の女たち』 楽しまれたようでよかったです。レヴューがなかったので、イマイチだったのかと思ってました。w それから、『クロッシングザブリッジ』も!公開映画覚書記事では、必見マークがついていなかったから、クラシック音楽派のシャーロットさんはこういうのには興味ないのかと思ってましたわ。よかったです。
日仏の日本語字幕なしはつらいけど、観たいものは観たいなと。
Commented by mchouette at 2009-04-22 14:05
かえるさん 4周年なんですね。凄いな。
やっぱり精力的に映画観て記事アップのかえるさんのブログ。
私はやっと2周年。
重なる映画も多いけどマイナー作品にTBしますね。
さてずいぶん前の記事ジャック・ドゥミ監督の「天使の入江」にTBもってきました。
若いジャンと夢の残骸のようなジャンヌ・モロー。
なんで惹かれるの?って私も思ったけれど、ドゥミ監督のお得意の別の物語を隠し持っているんでは?って思うの。ジャンの母の物語を思い浮かべてしまった。
いつも精力的に英が観られて記事アップ
「彼女の名はサビーヌ」は単館劇場で頑張って長く上映してくうれているので今週末にでも観にいく予定。またお邪魔しますね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-22 21:44
シュエット さん♪
ありがとうございます。
そうそう、シュエットさんとは年は違うけど、始めた時期が近いんですよねー。
最新話題作もいいですが、シュエットさんとは名作フランス映画を共有できるのが嬉しいです。
「フランス映画の秘宝」では私も結構観ましたよー。

『天使の入り江』はこの時観た中ではお気に入り度は低かったので、映画の詳細はほとんど覚えていないのですが、この上映の時に西島ひでっちにお会いしたなーなんてことが思い出されます。(笑)
ドゥミ作品に関しては、シェルブールとロシュフォールがリバイバル公開された際にまた特集がありまして、私は今回未見だった『モン・パリ』を観たのですよ。
これまた楽しい映画でありました。
アニエス・ヴァルタのドキュメンタリー新作も日本公開されるようで楽しみです。
セザール賞は確かヴァルタが取ったのだけど、ノミネートされていた『彼女の名はサビーヌ』も心揺さぶるものでした。
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