かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『魚と寝る女』
2007年 03月 27日 |
極上のギドクワールド!究極のエログロ美に囚われる。



身体的に痛い描写のある映画だとずいぶん前から小耳に挟んでいて、生理的に受け付けないかもしれないと鑑賞を見送っていた。でも、痛そうだと思いながらも心惹かれてしまうのがギドクワールド。おととしの年間ベストに 『受取人不明』をあげているブロガーさんがいて、それは観なければと去年DVD鑑賞をし、痛さも含めてその力強さにうなった。これは『魚と寝る女』も観るべきだろうと思っていた。そして今年、満を持してのギドク・マンダラの到来。その存在を意識し続けながらも近づくことのできなかった魚と寝る女に会いに行く時が来た。

特集上映ギドク・マンダラは大盛況で、 『鰐』の上映とともに、4/28~5/18にも引き続く。なんだ、早く言ってよ。当初は『魚と寝る女』はレイトショーで2回きりの上映のみだったから、ちょっと無理してでかけたというのにー。まぁ、でもそんなことはいい。だって、劇場体験してよかったとつくづく思ったもの。この映画は夜に観るのにふさわしかったかもかもしれない。真っ暗な満員の劇場では、息をのんでスクリーンを見つめる観客達がひしめき合っていて、スクリーンの向こうでは水上で悠然と女が暮らしていた。痛い映画ならVIDEO鑑賞すればちょうどいいのじゃないかという思いが過ぎった時期もあったけど、この詩的な水の世界はやはりスクリーンで堪能すべきものだった。

それは湖なのだろうか、入江なのだろうか。美しい自然の雄大な風景。水面は静かに美しくきらめく。水上には小屋舟が浮かんでいる。風光明媚な世界に酔いしれていると、途端にその思いは裏切られる。私たちが目にして美しいと思っているものは表面的なものに過ぎなくて、見かけがどんなにグロテスクでも本質的に美しいものが他にはあるのだということを訴えかけてくるようだ。水は静かに全てを飲み込んでいく。流れ落ちた血も排泄物も廃棄物も死体も憎悪も罪も。人間が放出する汚物をただ黙って飲み込んでいく。水面は変わらずに静かにきらめいている。

伝説の女がいた。その女の姿を見て、下半身が蛇の妖女メリュジーヌのことを思い出した。言葉を話さずに孤独に水辺で暮らし、まっすぐに愛を希求するその女の存在は神話性に満ちている。女は人間の姿をしているのだけど、夜になると人魚の姿に変身して水の中を泳ぐのじゃないかと思ってしまう。男に愛されることで、呪いがとかれて人間の姿に戻ることができるかのように、一心不乱に求愛する女の情念に圧倒される。なんて力強いんだろう。好きな男を独占したい、つなぎ止めたいための常軌を逸脱した女の激しい行為にも、嫌悪の余地なく心を鷲づかみされる。そのまっすぐさと強さに感動すらしてしまう。猛烈に変態的でさえあるのに、またしてもギドクワールドに飲み込まれ、その説得力にあっけなく屈してしまう。その釣り針からは逃れられない。

ギドクの魅力が凝縮している本作は、ギドク作品myベスト3に入れたし。
そして、『鰐』、『ワイルド・アニマル』、『リアル・フィクション』、『悪い女』を次回のマンダラで観たいな。

魚と寝る女 THE ISLE
2000 韓国
監督.脚本.美術  キム・ギドク
撮影 ファン・ソシク
出演 ソ・ジョン、キム・ユソク、パク・ソンヒ、チョ・ジェヒョン
 (渋谷 ユーロスペース)
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by CaeRu_noix | 2007-03-27 07:18 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(6)
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Tracked from レザボアCATs at 2007-03-27 23:59
タイトル : #47.魚と寝る女
 どこか、この世界にありそうでないような場所。湖の上に、様々な色の小屋が点在する。ここでは、間借りのようにしばらく借りて棲む人もいれば、ひと時の情事を楽しみ、去ってゆくカップルも居る。ネタバレしています::::::::::::... more
Tracked from 真紅のthinkingd.. at 2007-09-10 12:29
タイトル : 奇妙な小島〜『魚と寝る女』
 THE ISLE  湖に浮かぶ小屋舟、桟橋で管理人をする一人の女。朝霧が立つ頃、一人の男が やってくる。死に場所を求めて逃れてきた男と、口を閉ざし、世間から孤立した 女。出会い、求め、拒み、傷つけ、互い... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-12-29 20:24
タイトル : 魚と寝る女
 『おいで、私の中へ』  3/4に公開になった「うつせみ」(公式サイト)もとっても気になるキム・ギドク監督の映画です。  セリフが極端に少なくって倒錯した愛情を官能的に描いているって感じなんですね。あまりに倒錯しているので果たして愛と言っちゃってよいものな...... more
Commented by とらねこ at 2007-03-28 00:11 x
かえるさん、こんばんは☆
かえるさんはこの作品、かえるさんのギドクのベストに入れられますか!
確かに、ギドクのベスト3に入る屈指の作品だったような気がします。
でも、“個人的な好み”というと、私はこれは入らなかったです・・。
『悪い男』の方が好きでした。まあ、好き嫌いってことで、ワガママを言うと・・って感じですが♪

>水は静かに全てを飲み込んでいく。
>流れ落ちた血も排泄物も廃棄物も死体も憎悪も罪も。
>人間が放出する汚物をただ黙って飲み込んでいく。
この一節好きです・・・。その通りでした。そして、素敵な表現♪
実は自分は、このラストがそんなに好きじゃないんですよ。かえるさんはいかがでしたでしょうか?
ラスト、女性が殺されてしまいますでしょ?この死をのみ望む、そんな心境の男にとっては、女性は錘(おもり)でしか、重荷でしかなかったのかな?なんて思います。
一人で死に場所を求めるラスト。恥毛を水草で覆うのは美しくて変わった表現でしたけど。
哀しいラストでしたよね・・。
Commented by CaeRu_noix at 2007-03-29 17:15
とらねこ さん♪
そうですかー。これはそれほど、とらねこさん好みではなかったのね。
『春夏秋冬』の高評価は一致したけど、それ以外の作品の好みは違うかもしれませんね。好きっていうか、私はとにかく本作を観て、強く心を掴まれてしまったのですよ。映画的感銘が押し寄せてきました。
片や、『悪い男』というのは、実は私にとっての初ギドク作品なのですよ。なので、監督のことをよく知らずに観たために、なんじゃこりゃーと思って乗り切れなかった部分もあり。斬新な面白さを感じ、強引さに笑いながらも、感動したりしてしまったのも事実だけど、総合的には、悪男はかえるベストの中では下の方なのでした。観る順番が違っていたら、また評価も変わったのかもしれませんけどね。
えええ?ラストって、そんなんでしたっけ?それは知らなかったです。いや寝てないですよ。何しろ席がなかったんですから。でもその画が明瞭に浮かびません・・・。たぶん私はそんなに具体的な結果というとらえ方はしなかったと思います。寓話的に抽象的に水にかえったのねーという感じ??映画の終わりには、その作品のすごさに感動した思いが強くて、悲しいラストだなぁとかはあえて思わなかったかも・・・?
Commented by 真紅 at 2007-09-10 12:48 x
かえるさま、こんにちは。
この作品、今年になって劇場鑑賞されたのですね。
同じくちょっとビビって未見だったのですが、VIDEO鑑賞しました。
これは大きなスクリーンで観たかったです。あの湖の幻想的な風景、素晴らしかったですね。
私も初ギドクが『悪い女』なんですよ。そして今でもmyベストギドクです。
好みって人それぞれで面白いですね。同じ映画から同じような事を感じても、心の動かされ方は異なるんですから。
ではでは、また来ます!
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-11 07:38
真紅 さん♪
そうなんですよ。ずっとずっと保留にしていたんですが、どうせならスクリーンでと思い切りました。痛い描写は小さい画面の方がいいかなと思いつつ、この美しいロケーションでの幻想世界をスクリーンで見られてよかったです。本当に圧倒されるすばらしさでした。
真紅さんの初ギドクは『悪い男』ではなくて、『悪い女』?初で気に入られたとは素晴らしい。
『悪い女』の方も今年初劇場鑑賞しましたがよかったですー。
『悪い男』の方は皆さんの評判はよいのですが、私にとっては初作品だったからか、個人的にはあんまり順位が高くなかったのでした。
皆さん、それぞれの心の動かされ方が興味深いですよね。
Commented by 真紅 at 2007-09-11 09:18 x
かえるさん、ごめんなさい、
↑『悪い男』の間違いです。どうして間違ったのかな~自分。。
『悪い女』も好きですが、やっぱBad Guyがベストです。
失礼しました!どうかレスもなしで、流して下さい~。
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-12 00:45
真紅 さん♪
やはりそうでしたかー。
"私も初ギドクが"と書かれていたので、悪い男の方かなと思いましたです。
まぎらわしい邦題がいけません。悪い女って、本当はそういう原題じゃないのに、悪い男にならってつけられたんですよね。
わかりやすいインパクトはあるけれど、まぎらわしいー
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