かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『マリアの受難』
2007年 04月 15日 |
トム・ティクヴァの長編処女作。ひと味違う作風ながらこれも好み。

寝たきりの父と夫の3人暮らしの鬱屈とした毎日を過ごすマリアの物語。



フライヤーの写真から、マリアは若い女性なんだと思っていたのだけど、冒頭に登場したのは中年の主婦マリアだった。どんな受難に見舞われているのかと思ったら、寝たきりの父さんの世話がまずキッツイ。でかい図体の父さんをよっこらしょっとベッドから車椅子に移動させ、トイレに連れて行き、またよっこらしょっと持ち上げて便座に座らせる。そして、父さんが用を足すのを待って、またよっこらしょ・・・。もうそれだけの描写で、ああ、マリアったら不憫と同情してしまう。受難ー。

可哀想なんだけど、ジメジメ惨めったらしい感じじゃなくて、ちょっとユーモラスなブラックでシュールな感触。それでいて、何だかメルヘンしている感じ。トム・ティクヴァ作品のイメージって、『ラン・ローラ・ラン』の印象が強いせいか、どちらかというと現代的にポップでテクノなものだったんだけど、本作はノスタルジックに童話の世界を思わせる。グリム童話風味なのかも。とにかくそんな肌触りがとても気に入ってしまった。トム・ティクヴァの映像、演出センスはやっぱり好みだな。時計の音にドキドキ。

マリアは中年の主婦だけど、少女の頃からずっとこの不遇の中にいたということが徐々に紐解かれていく。現実的な不幸を背負った平凡な主婦なのに、童話に出てくる幽閉されたお姫様のような悲しみを帯びている。マリアの過去を知って、彼女が再出発できるチャンスを願うのだ。気分は幽閉されている姫だから、家庭内の些細な出来事もやけにドラマチックに感じてハラハラしたり。ブラックな顛末にもほくそえんでしまう。そして、ダークファンタジーも炸裂という感じで、シュヴァンクマイエル風の映像もお目見えしてのはじけるシュールが楽しかったな。虫コレクションも気持ち悪くてよし。そんなディテール、演出がおもしろくって、エンディングにもハッピー気分でマリア物語を堪能。

マリアの受難 DIE TODLICHE MARIA /DEADLY MARIA
1993 ドイツ
監督.脚本トム・ティクヴァ
脚本 クリスティアーヌ・ヴォス
撮影 フランク・グリーベ
音楽 クラウス・ガーターニヒ、トム・ティクヴァ
出演 ニナ・ペトリ、カーチャ・シュトゥット、ヨーゼフ・ビアビヒラー、ペーター・フランケ、ヨアヒム・クロール
 (渋谷 シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2007-04-15 01:02 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(4)
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Tracked from Mani_Mani at 2007-04-20 02:11
タイトル : トム・ティクヴァ「マリアの受難」
マリアの受難 1993ドイツ 監督・脚本・製作・音楽:トム・ティクヴァ 脚本:クリスティアーヌ・ヴォス 撮影:フランク・グリーベ 音楽:クラウス・ガーターニヒ 出演:ニナ・ペトリ(マリア)カティヤ・シュトゥット(16のマリア)ジュリアン・ハイネマン(10のマリア)ヨーゼフ・ビアビヒラー(父)ペーター・フランケ(夫)ヨアヒム・クロル(ディーター) 大上段に振りかぶってみたり細部に拘泥してみたりあることないこといじくって理屈をこねたり誤読に意訳を重ねてあらぬ方向へ妄想を駆り立ててみるのが映画...... more
Tracked from アロハ坊主の日がな一日 at 2007-05-03 19:54
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[ マリアの受難 ]をイメージフォーラムで鑑賞。 鬼才トム・ティクヴァ監督の長編デビュー作。トム・ティ クヴァ監督といえば[ ラン・ローラ・ラン ](98)。アップ テンポな高揚感や疾走感のある[ ラン・ローラ・ラン ]と 比べると、本作はトーンこそ異なるが、抑圧と罪悪に苦し みを感じながらも、最後には運命を破壊するほどの秘めた パワーにより、現実を塗りかえるという主人公たちの姿は 近しいものがある。それは、たぶん最新作[ パフューム あ る人殺しの物語 ]にも共通するところだろう...... more
Tracked from DVDジャンル別リアルタ.. at 2007-05-24 07:46
タイトル : マリアの受難
「パフューム ある人殺しの物語」の鬼才トム・ティクヴァ監督の幻の長編デビュー作「マリアの受難」がDVD化!穴蔵のような風通しの悪い部屋で夫と寝たきりの父と暮らすマリア。この暗闇から抜け出したいマリアの元に、ある日向かいの住人から電話が掛かってくる。二人は恋に落ち、マリアは封印していた過去を取り戻そうとするが…。... more
Commented by manimani at 2007-04-20 02:15 x
こんにちは。TBさせていただきました。
全体凄惨なくせにユーモラスでメルヘンな感じというのがすごいですよね。
そうそう、わたしもシュヴァンクマイエルを思い出しました。

では失礼しますm(__)m
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-20 13:10
manimani さん♪
コメントありがとうございます。
そうなんですよ。ブラックブラックな内容なのに、メルヘンを感じさせてくれるところが気に入っています。ブラックユーモアというのはよくあるのですが、ありがちな傍観目線じゃなく、シュールながらも主人公マリアに寄り添っている語り口なのがポイントでした。おおお、やはり、シュヴァンクマイエルを思い出されましたか。
イメフォのレイト作品なんてなかなかご覧になっている方がいなかったので嬉しいです。
Commented by Puff at 2007-04-21 10:58 x
あうーーーっ、この映画、とっても観たかったんですけどねぇ、、
レイトでなければっ、くっ
きっとワタクシ好みの映画だと思うので、機会があれば逃さずチェックしたいと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-22 12:16
Puff さん♪
レイト上映だったのが残念でしたよね。
これはきっとPuff さんも気に入られると思いますー。
何しろシュヴァンクマイエルを髣髴とさせる演出もありますから。
何かの機会にご覧になれることを願っていますー。
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