かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『情痴 アヴァンチュール』
2007年 04月 16日 |
彷徨う心がせつない。

恋人セシルと一緒に住むためにパリのアパルトマンに引っ越して来てまもなく、ジュリアンはある夜、裸足で街をさまよう女性ガブリエルに出くわす。



「Une aventure」 アヴァンチュールって、英語でいうところのアドベンチャーのことだから、冒険、不意の出来事という意味合いのはずなのに、日本ではどうして、恋愛ごとを指す言葉として定着したの??そんな外来語に慣れてしまっている(といってもその言葉を口語で直接聞いたことはない)私にとっても、火遊び恋愛をイメージさせる言葉。いやしかし、危険な情事をイメージさせる言葉じゃあないけどなぁ。情痴はあんまりだ・・・。エロシーン目当てのオヤジを集客したいというそれだけの理由で、アートの香りを損なう邦題をつけるのはやめてほしい。作品へのボウトクだー。

フランス映画祭で生身の姿を目にしたリュディヴィーヌ・サニエはとびっきりチャーミングだったし、それまでは別段ファンでもなかったのにステキだったブリュノ・トデスキーニも急上昇で、2人の名前でキャスト的に期待値はもともと高かったんだけど。加えて、この共演を通じて実生活でサニエと一児をもうけたというニコラ・デュヴォシェルくんが、サニエのような魅力的な女優が惹かれるのも納得するほどにカッコよくって更にポイントアップ。『さよならS』の頃は、まだ少年っぽかったのに。お似合いのカップルだわ。

そんな魅力的な3人をカメラにおさめたのはオゾン作品でおなじみのヨリック・ル・ソー。美しくて絵になる主人公たちと共に切り取られた謎めいた空気の冷たさが印象的。ビデオテーク内で仕事するジュリアンを包む青白い光や、夜の喧騒のクラブで頬を照らす赤いライトの点滅が、美しくも空虚な寂しさを浮き上がらせる。そんな映像にグッときてしまった。かなり好みの演出。

映像表現で心躍らせてくれたものの一つは大好きな映像内映像。主人公ジュリアンの仕事場がビデオテークなんだもの。彼がガブリエルへの興味を強くしたのは、夜裸足で徘徊していた抜け殻のような危なげな姿とは全く違う、ビデオに映し出された家族とレジャーを楽しむ幸せそうな笑顔にも惹きつけられてしまったからだろう。そんなプライベートな素顔をのぞき見してしまったら、赤の他人が特別なものに見えて、彼女に何が起こっているのかが気になってしまうんだろうな。古いモノクロ映画、ムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』の中の夢遊病の女性の姿に確信をしたのかな。彼女も病んでいるけれど、毎日孤独に延々と映像と向き合っているばかりのジュリアンも、本当は彼女を助けられるような心の状態ではなかったかもしれない。吸い取られてしまう・・・。

彼女は、夢遊病らしい。あれ?一緒に住んでいるルイがいるのにどうして?と思ったら、彼は朝まで一緒にいてはくれない男だということがわかって悲しくなる。夢遊病というのは結局、精神的な問題によって起こるもの。裕福な大人の恋人をもち、美しく魅力的で満ち足りているかのように見えた女性がそれほどの苦悩を抱えているなんて。初めは、ジュリアンと共にガブリエルの謎に好奇心をもって引かれていったのだけど、やがて私は、ガブリエルの不安定なやるせない気持ちに比重を置いてしまった。ミステリアスな展開の中で、肝になったのは愛を渇望する女の苦しみ。ジュリアンに好意を寄せたように見えても、彼女が欲しているのは、あくまでもルイの心だったのが痛々しい。いくらでも男を弄ぶことができそうな小悪魔ルックスの彼女だから余計にそのギャップがせつない。これが終われば彼は部屋を出て行くんだなと思いながらする愛の行為に陶酔感なんてあるはずはないし。割り切ってつき合っているつもりでも、充たされない心はひたすら彷徨い続ける。そして、どこかに辿り着くしかない。

キャストの魅力と演出センスに引き込まれ、サスペンスフルな空気感と彷徨い行き違う思いの悲痛を堪能。なかなか気に入りました。

情痴 アヴァンチュール UNE AVENTURE
2005  フランス  公式サイト
監督.脚本グザヴィエ・ジャノリ
脚本ジャック・フィエスキ
撮影ヨリック・ル・ソー
音楽アレクサンドル・デスプラ
-cast-
ガブリエル・・・リュディヴィーヌ・サニエ
ジュリアン・・・ニコラ・デュヴォシェル
ルイ・・・ブリュノ・トデスキーニ
セシル・・・フロランス・ロワレ=カイユ
 (シネマスクエアとうきゅう)
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by CaeRu_noix | 2007-04-16 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(8)
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Commented by 睦月 at 2007-04-18 09:51 x
こんにちわ!TB&コメント感謝です!

アヴァンチュールって、英語でいうところのアドベンチャーって・・・初めて知りました。なんだかエロティックな印象ばっかり持ってた(恥)。

≫エロシーン目当てのオヤジを集客したいというそれだけの理由で、アートの香りを損なう邦題をつけるのはやめてほしい。作品へのボウトクだー。

そうそう・・・かえるさん、ごもっともだと思いますよ。
なぜこの作品をエロス路線で売ろうとしたのか?なぜ、ターゲットを歌舞伎町にしたのか・・・この作品の宣伝を担当したやつのセンスを疑います。
たしかにサニエちゃんのヌードはあるけれど・・・同じように彼女がヌードを披露した『スイミングプール』とかって、もっと品がよくてミステリアスな印象が強かったですよね?
宣伝とか、もっと考えてほしいなあ・・・マジで(苦)。

サニエとニコラカップル、ステキですよね。
美男美女・・・あーあ!羨ましいですう。
Commented by シャーロット at 2007-04-19 01:25 x
こんばんは。
なんか私がイメージする邦題の意味するところと内容は全然違ったなと思ってました。やっぱり火遊び的なものを連想してましたよ。汗
ガブリエルの悲痛なまでの愛の渇望には、なんともいたたまれず苦しかったです。夢遊病とか不眠症とか、眠りに関する病は身体も精神も破壊しちゃうくらい辛いものです。こんなデリケートな内容なのにやはり邦題名は受け入れがたいですよ。
そうそう、ジュリアンの役どころも面白い仕事だと思ってました。
こういうビデオテークで仕事っていうとトリノ24時からの恋人達を思い出しつつ、ちょっとオタクで影のある青年って実は大好きなタイプだと確信しました。笑
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-19 12:48
睦月 さん♪
そーなんですよ、アヴァンチュールって、物心ついたときから、色恋沙汰を指す単語でしたよね。皆そうだと思います。だから、フランス語原題をそのまま邦題にしても、えらく意味合いが変わっちゃうのでした。その上、情痴までつけちゃうなんてー
宣伝の方向性は、まずエロス路線で売ろうとしたのなら見当違いですよね。それとも公開劇場が決まったのが先で、ここでならエロ映画として売るしかないという判断だったのか・・?
ホントにエロおやじを満足させられるような描写がたくさんある映画だったら、それをウリにして宣伝するのもありだとは思うけれど、そこは全然大したことないですもんね。(ブラックブックの方が見ごたえあった。)
『スイミングプール』はエロさも際立っていましたよね。それでいて、カンヌ映画祭での話題作だったりしたから、下品な路線で宣伝されてはいなかったですよね。
宣伝担当というのは別会社の人なのか知らないですが、例えば配給会社の人は作品に愛情はないのかしらん?っていうのが疑問ですぅ。作品の本質を蔑ろにしてでも、売れれば何でもいいやの単なる商品なんでしょかぁ・・。変態村にしても。
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-19 12:49
シャーロット さん♪
アヴァンチュールといったら、火遊びですよねー。でも、火遊びなんだけど、痛恨を伴うような危ない雰囲気の言葉じゃなくてわりと明るい響きがありません?だから、本作のフライヤーのミステリアスで冷たいイメージとは、かみ合わないような感じがしていて・・・。案の定。
観る前は、謎めいた魅惑のサニエたんが、内向的なニコラ青年を手玉にとっちゃうのかなぁなんて思っていたりしたんですが、彼女自身が愛に苦しんでいるというのは想定外で、なかなかハマってしまいました。本当はとっくに知っているのに、ジュリアンに尾行をさせちゃうっていうのも痛々しかったし・・・。
情痴という言葉の本質はよくわかんない私ですけど、いい言葉だとは思えません・・・。エロねたトラックバックもいつもよりたくさん送られてきたしー。
こういう、ちょっと陰のある青年には惹かれますよね♪でも、たぶん、ただの暗いオタクじゃダメで、繊細な雰囲気の美青年だからいいんだろうなぁぁ。(苦笑)
Commented by Puff at 2007-04-21 10:46 x
ドモドモ-♪
プチご無沙汰しておりますー

この映画、皆さんと同じく邦題にはガッカリしましたですよ。
案の定、シネマスクエアではそれ目当て?とおぼしき中年男性一人者が多かったですし・・・・・汗
中には期待外れだったのか途中で帰る人も居たりして。
安易にネーミングしないでもっと考えて欲しいものですね。

映画全体に流れているひんやりとした空気感。
ガブリエルの心情を上手く表していましたよね。
ジュリアンと彼女、ルイと奥さんの間も何処かひんやりとしたものを感じたり。。。
Commented by CaeRu_noix at 2007-04-22 12:13
Puff さん♪
どもどもどもどもどもー。
そうそう。私が観に行ったのはレディースデーだったのにもかかわらず、フランス映画ファンにはまるで見えないオヤジィの姿もちらほらありました。その日にも途中退場していった人はいましたよー。やはりですね・・・。そりゃー期待はずれでしょうね。
結局、あまりにも不人気だったようで、3週間ポッキリでうち切りになったようですね。とうきゅうシネマスクエアでは『さくらん』が上映されておりますです・・・。
確かに、そんなに一般ウケするタイプではないけど、まっとうにフランス映画ファン向けに宣伝したら、もうちょっとましな興行成績になったと思いますけどねぇ。センスのいい映画だったと思いますもん。
例えば、出版社が翻訳小説に日本語タイトルをつける際は、著書にちゃんと敬意をはらって訳すと思うんですけど、映画はどうしてこんなに蔑ろにされるんでしょう・・・。

ひんやりとした空気感がよかったですよね。
そうそう、ステディの関係の方にもひんやり倦怠感があるから、浮気な関係には突き放せないせつなさがありました。それぞれの関係性の緊張感みたいなものがおもしろかったですー
Commented by mar_cinema at 2007-04-26 20:45
かえるさん、こんばんは~
あまりのネットの悪評に、突然、終了間際に観にいってきましたが・・・
確かに、男1名っていう観客多かったですね。
まぁ、自分も、そういう目当てって思われてるんでしょう(笑)
サニエ+この映画の質だと、こんなタイトルつけない方が、
絶対に良いと思うのですが、配給会社が馬鹿なんでしょう。

冒頭で主人公が痛い奴だなって思いつつも、
最後にはその心情も理解できた気になっているので、
レンタルかセルがでたら、もう一度、頭から観なおそうと思ってます。

Commented by CaeRu_noix at 2007-04-27 14:12
mar さん♪
観るつもりではなかったのに、悪評だったから、急遽観に行ったんですか?(笑)
普通なら、一ヶ月は上映するはずなのに、3週間で終わっちゃいましたから、よほど入りが悪かったんでしょうねぇぇ。タイトルに惹かれた男性お一人様はそれほどに多くはなかったのかな?
私もこのキャスト、スタッフ、この作品のテイストなら、絶対にこんなタイトル、そういう方向での宣伝じゃない方がいいと思います。配給会社のことはよくわかりませんが、これはあまりにも・・・ですよね。
既にDVDで再見予定なんてすばらしいー。
私はニコラくんの気持ちにも結構寄り添って見ることができました。
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