かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『明日、君がいない』 2:37
2007年 05月 09日 |
せつない青春ものなのに、そのオチどうよって思ってしまったのってどうよ・・・

午後2時37分、1人の高校生が校内で自殺をはかる。



オーストラリアに住むムラーリ・K・タルリが、友人の自殺をきっかけに19歳の時に書き始めた脚本。若き監督によって、等身大の高校生の日常と、それぞれが胸に抱えた悩み事を告白する様が映し出される。興味深くもせつないのは、彼らが苦しい胸の内を包み隠して学校生活を送っていること。友人達に対する態度や言葉と、カメラに向かって吐露する本音とにギャップがあるということが、浮き彫りになる。カメラに向かって証言するという形をとっていなかったら、観客は彼らの悩み事に耳を傾けることなんてない。自殺という最悪の結果が提示されて初めて、他人はその問題に関心を持つに過ぎないのだ。彼らの気持ちに寄り添えばこの上なく悲痛であり、外側から大人目線で見つめてもやるせないばかりの、青春の閉塞感がリアルに描かれる。

その事件が起こるまでの学校生活を当事者だけに限らず複数の生徒にスポットをあて、時には同じ場面を複数の生徒の視点からとらえたりと時間を前後させて描き出す。その構成や学校の日常の切り取り方はやはり『エレファント』を思い起こさせる。やがて明らかになる悩み事の本当の部分など謎解きのおもしろさに焦点をあてるなら、『エレファント』よりも、そのプロットは巧くできているといえる部分もあると思うのだけど、全般的な印象としては斬新さのない二番煎じのものに見えてしまった。『エレファント』と同様に、誰もがその事件を起こしうる状況だったという描き方そのものはリアルでおもしろいと思うのだけど。

本当に自殺を試みることは滅多にないのだろうけど、多くの者達が死んでしまいたいという思いに行き着いてもおかしくないほどの悩み・苦しみを抱えている。多感でデリケートな青春期、誰もがその瀬戸際にいる。誰が自殺者になってもおかしくない状況を描いていることこそがリアル。それにより、一体自殺をしたのは誰なのだろうという興味によって観客はこの映画を見つめることになる。そんなふうにサスペンスとしても楽しめてしまうことに不謹慎さを覚えて複雑な気持ちにもなる。最終的には、それが誰かを捜すサスペンスにおいては完全に肩透かしをくらったことになるのだけど、そんなふうにとらえることは筋違いであり・・・。狙いはそんなことじゃないのはわかるけれど、その存在を途中にまるで認識できなかったものだから、フェアじゃないよなーなんて思ってしまい・・・。煮え切らない気持ちが残ったのだった。映画の主旨は違うのだけどね・・・。

明日、君がいない 2:37
2006 オーストラリア  公式サイト
監督.脚本 ムラーリ・K・タルリ
出演 テレサ・パルマー(メロディ)、ジョエル・マッケンジー(ショーン)、クレメンティーヌ・メラー(ケリー)、チャールズ・ベアード(スティーヴン)、サム・ハリス(ルーク)、フランク・スウィート(マーカス)、マルニ・スパイレイン(サラ)
 (渋谷 アミューズCQN)
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by CaeRu_noix | 2007-05-09 23:08 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(4)
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Commented by ルールー at 2007-05-14 00:52 x
かえるさん、おひさしぶりです~
最近激忙しくて映画観る時間もあんまりないんですが、その中でこれを選んで、わたしは観てよかったと思っているんですよね。
とても衝撃的でした。
でもって、わたしも最初はミステリーとして謎解きに一生懸命になっちゃってましたよ。(^^;;;
でもそのおかげで、逆に彼女の名前がどうにも思い出せなくて、だんだんと気になってきました。
わたし自身は、年齢がいくにつれて、そういう孤独に敏感にならないよう、いわゆる例の渡辺淳一センセーがおっしゃっている「鈍感力」を図らずも実践していることに愕然。(-_-;)
幸いわたしの周りには、今までこんなアクションを起こした人はいなかったけれど、みんなそれぞれに抱えているのだろうと思うと、明るい人こそ気にしてあげたいなと思ったり。
いずれにしても、知り合いが亡くなってしまう時には、きちんとお別れがしたいと思いましたわ。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-14 12:42
ルールー さん♪
お久しぶりです。お忙しかったんですね。
そんな中、選ばれた本作に手ごたえあってよかったです。
私は彼女の存在に最後まで気づかなかったダメな見方をしてしまいました。学校生活描写での登場人物は、序盤から証言していた6人だけだと思い込んでました。彼女の登場シーンもメロディだと思っていたかも。なので、最後にあなた誰?と目が点になりました・・
そういう肩透かしを抜きにしたら、見ごたえのある構成だったと思うんですが・・。
彼女の場合、衝動的な行動だった気がして、一般論的に予防策を探しにくく。でも、実話ベースゆえ、ヴァージンスーザイズ的に受け止めては不謹慎だし。
私も友人をこういう形で失った経験はとりあえずないんですよね。なので、友人目線で見るのではなく、悩める少年少女たちの立場で共感しつつ観てしまった感じです。だから、皆さんの感想を読み、「気づいてあげなくちゃ」と周囲の人の立場で観ている人が多いことを知り、人を救おうという側に回っていない、悩める側気分の甘ったれな自分にドッキリ。むしろそういう意味で愕然・・。
Commented by シャーロット at 2007-05-14 15:04 x
こんにちはー。遅くなりました。
そうですね、やはりあの妹ちゃんとケリーって顔が似てますよねっ!
いや似てないかもですが、パッと見と、それ以降のケリー登場シーンがあまりないので、混同しやすいですよね~
それと、私自身は結構彼女達当事者に入り込んで見ていたのですよ。
ケリータイプの影の薄い少女でしたし、周りには未遂の子がたくさんいたので(友達ではないですが;)、なんとなくケリーの気持ちがわからなくもないというか。手首を切っちゃう人って自分の存在を周囲に示してるようなもので結構衝動的なものなんですよね。しんじゃおうーなんて多分思ってないというか。わかりませんけど。
結局周りが気がついてあげても、きっとそれだけでは前向きにはなれない気もします。本当なら当事者が自分自身で自分の存在価値を認める事以外には自殺という選択肢はなくならないかもしれないなと思ったりもしてるところです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-15 11:08
シャーロット さん♪
似てないかもしれないんだけど、第3の女子の存在をこれっぽっちも認識できなかった私。ありゃりゃって感じでした。彼女がそれほどに悩んでいる風でもなかった目立たないコではあっても、監督の立場ではその友人の存在は当然認識しているわけだから、観客もそれに近い印象をもたなくちゃ意味はないと思うので、私はその件に関しては完全に置いてきぼりでした。
ケリーのケースはどうしたらいいかわかんないですよね。衝動は止められない・・。事前にSOSを発しているならば、周りが気づいてあげようぜって言えるのだけど。エレファントだと、銃が気軽に買えちゃう環境もイカンと思ったりするわけですが、こちらについては原因の断片も見出しにくいです。
明日君がいなくなったら、周りが悲しむというのはわかるけど、だから死ぬなよというのは当事者にとっては説得力はないと思うんですよね。本人の心持ち次第。衝動的なものに過ぎないなら、ちょっとしたキッカケで踏みとどまれただろうとは思いますが、だからって偶発的なことの予防は難しいかなと・・。何にせよ、これはほんの一事例に過ぎないから、この映画だけで、青少年の自殺全般について語るのは無理がありますね・・
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