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『鰐 -ワニ-』
2007年 05月 13日 |
粗削りなデビュー作だけど、キム・ギドクの水使いはやっぱりお見事。

漢江に架かる橋の下に住む浮浪者の青年ヨンペの物語。



字幕に「ワニ兄」と出てましたが、これはどう読むの?
ワニニイ? 語呂わるー
ワニアニでも語呂わるいけど。いっそのことワニキでも・・・

鰐っていうタイトルはどういう比喩なんだろうと思っていたら、主人公の呼び名そのまんまだった。いえ、鰐のような男だから、そう呼ばれているということなのかもしれないけれど、厳ついどう猛な鰐のイメージとはちょっと違う短絡的なちんぴら鰐男の物語。私が初めて観たギドク作品は『悪い男』だったので、この主人公鰐男は他でもない"悪い男"のチョ・ジェヒョン。先日観た『ワイルド・アニマル』にも主演していたし、他の作品にも出ていたようで、あまり同じ俳優を何度も使わないギドクが、チョ・ジェヒョンのことはとても買っていたんだなぁということを知る。2作連続ちんぴら系主人公というのは、近い時期続けて観てしまうと苦笑してしまうところもあるのだけど、こういう短気男キャラが非常にハマる実にいい俳優だと思った。とてもいい表情をするんだよね。そのキャラクター設定はほとんどギャグじゃないかと思えるところを、チョ・ジェヒョンの持ち味によって引っ張られていく感じ。

その男は鰐的な存在感ではなかったけれど、鰐と呼ばれるだけあって川辺に住んでいるというのがポイント。アマゾン川やミシシッピ川ではもちろんなくて、そこは漢江。グエムルが出てきそうでドキドキしたけれど、まだこの頃はヤツはいなかったのかな。ワニ兄とグエムルの対決もちょっと見てみたかった気もするけど、それはそれ。鰐男がいわば漢江の怪物なのかも。これがキム・ギドクなのだね。デビュー作からセックス&バイオレンスが炸裂。クールさは微塵もなくて、ひたすらお下劣で野蛮。圧倒されるというよりは苦笑いしてしまう感じ。音楽の使い方はあまりにも陳腐だったり、展開の強引さはお馴染みなんだけど、演出が洗練されていないからか、物語にはハマりきれないところがあったかな。

その強烈さは毎度興味深くもあるけれど、全体的には好きな作品にはほど遠かったかな。だけど、そんなふうに、もうこれは私はダメ・・・って思っていたところで、素晴らしきラストシークエンスにググッと心を動かされた。私はやっぱり懲りもせずに、映画の中の水映像に魅せられてしまうのだけど。『ピアノ・レッスン』に勝るとも劣らない見事な映像じゃない。途中映し出される川面の輝きの美しさにも何度も目を奪われたけれど、最後の最後にこう来るなんて感激。これって、そういえばフライヤーの写真に使われていたんだけど、気づかなかったな。よかった。水中から水面を映すっていうのも絶妙だし。2人が腰掛けたソファーも上に向かって泳ぐ青い亀の姿もあまりにもステキだ。

--
『ワイルド・アニマル』にドニ・ラヴァンが出ていたつながりで、鰐が橋の下に住む浮浪者という設定は、『ポンヌフの恋人』にヒントを得たのかな。
『ワイルド・アニマル』も私はちょっとダメでした。劇的過ぎて・・・。

鰐~ワニ~ ALLIGATOR CROCODILE 1996 韓国
監督.脚本 キム・ギドク撮影イ・ドンサム
出演 チョ・ジェヒョン、ウ・ユンギョン、チョン・ムソン、アン・ジェホン
 (渋谷 ユーロスペース)

ギドク作品全制覇のはずが、『リアル・フィクション』は観られないもよう・・・。

というわけで、12作観たところのmyベスト5 (鑑賞順)

・春夏秋冬そして春 (03)
・サマリア (04)
・うつせみ (04)
・受取人不明 (01)
・魚と寝る女 (00)

今回のマンダラの収穫は『魚と寝る女』でした。
家族ぐるみな『悪い女』もおもしろかった。

ごちそうさまでした。サッパリしたものが食べたーい
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by CaeRu_noix | 2007-05-13 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(10)
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Commented by とらねこ at 2007-05-17 01:18 x
かえるさん、こんばんは~^^
かえるさんもたくさんご覧になっていらっしゃる♪
もう、リアルフィクションはいいかも、と思います(小声)
この作品、ギドクの長編処女作だったにしては、ギドク印があちこちに刻印されていて、興味深かったですね。水を描かせたら世界一だなあ、なんて、勝手に思っています♪
ギドクの重さ、激しさ、性と生と死、こんな世界を知ってしまうと、最早他の作品ではちと物足りなくなってしまいます。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-17 12:54
とらねこ さん♪
何とかがんばりました。
そうですね、リアルフィクションは必見でもないかなぁと思えてしまいました。
公開の流れでDVD化したりしたら、観てみたいと思いますー
私は「悪い男」、「春夏秋冬」の封切の頃から、ギドク作品を観てきたから、マンダラで12本クリアとなりましたが、ほんの去年からスタートして、コンプリートしたとらねこさんの熱意はすごいわって思いましたよー。素晴らしい。
処女作から、思いきりギドク印でしたよねー。これほどに描きたいものの的が絞られ徹底しているのはすごいなーって思いました。そして徐々に演出は洗練されてきているからカッコイイです。
ギドクワールドの味をしめるとそこらの凡庸な映画が物足りなく感じてしまうかもというのは納得です。
でも、とりあえず、来月は終わりには、性と生と死を鮮やかに描く、アルモドヴァル作品がやってきますねー。
Commented by at 2007-05-21 21:50 x
以前にかえるさんに教えていただいたギドクの再映、見てきました。やはり「鰐」はすごいですね。ちなみに私のmyベスト5は、(1)「悪い男」、(2)「悪い女」、(3)「魚と寝る女」、(4)「サマリア」、(5)「受取人不明」です。どうも初期のほうが好きみたいですね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-22 17:32
雄 さん♪
劇場鑑賞できてよかったですね。
私も前回1作、今回3作観ることができました。
作品そのものの評価でいうと、ギドク・マンダラの収穫は「悪い女」、「魚と寝る女」だったんですけど、「鰐」もやっぱりギドク作品を探究するうえで外せない、力強い処女作でした。
ベスト5の発表ありがとうございます。はい、初期作品の方がいいっていう感覚はわかります。
Commented by いわい at 2007-05-24 11:06 x
こんにちは。
処女作らしい荒削りさでしたよね。
わたしも、“チョ・ジェヒョン”がいなかったらツラかったと思います。
あまりの強引さと、音楽の唐突さにびっくり。
でもでも、ラストで全てが許せちゃうのですよねー。
短期間に全制覇して、ワタクシ的には『悪い男』がピークかな、と思っております。いずれ、ギドク作品については、ベストも含めてまとめたいっす。

訪問が遅れてすみませぬ。
本日これから台湾旅行を前にして、体調が今ひとつで療養モードだったのです。
帰国しましたら、またバンバンお邪魔しますー。


Commented by CaeRu_noix at 2007-05-24 17:48
いわい さん♪
台湾に行かれるのですねっ!
それも明日からじゃなくて本日これからってことはもう空の上?それとももうあちらで美味いものを召し上がっているのかしらー?桃まんの季節ではないかな。旅のレポートを楽しみにしていまーす。体調は大丈夫でしたでしょうか?
中華圏には行ったことのない私。あ、去年、20分程香港に入国したけど・・・。キムギドク映画よりも、ツァイ・ミンリャン映画の舞台に興味がありますぅ。

中盤はややウンザリ感のあった私ですが、チョ・ジェヒョンはとにかく最初から存在感たっぷりだったのを知ることができてよかったです。でも、ホント、ラストにはやられましたー。いわいさんのベストはどんなかんじでしょうー?
Commented by 狗山椀太郎 at 2007-06-08 00:22 x
こんばんは
遅まきながら「ギドク強化週間」に入っている狗山です。
チョ・ジェヒョンのイメージは、確かに『悪い男』と被っていますね。個人的には鰐男のほうが好きですけれど(悪男は最後まで理解不能でした)。
>『ピアノ・レッスン』に勝るとも劣らない見事な映像
なるほど、その連想は思いもよりませんでした。でも、あの映画も、ラスト近くでの水面下の描写がきれいだったし、無骨な男性に女性が何故か惹かれていくストーリーでしたね。
本作だけではないけれど、ギドクの作品はどうも音楽が冴えないですね。音楽が印象に残っているのは『春夏秋冬』のラストと『弓』くらいでしょうか。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-08 12:52
狗山椀太郎 さん♪
ギドク強化週間ですね。
『悪い男』のチョ・ジェヒョンは、確かにちょっと掴みづらいキャラでしたね。鰐男とワイルド・アニマルのちんぴら加減はかなりかなり似通っていた印象でしたが。私は、作品としては、『悪い男』の方がいいですけど、チョ・ジェヒョンのキャラでいったら、こっちの方がらしくっていいかな。
『悪い男』については、私は皆さんほどに評価は高くないんですけど、理解はできるし、感動もしました。でも、ありえねーよとも思ってしまうんですー。
おお、そういわれると、水中映像のイメージ以外にも、ピアノレッスンとの共通点が見出せますね。物言わぬ主人公というのは映画的にステキです。でも、ピアノレッスンの音楽は最高に美しかったのに比べ、本作の音楽づかいはダサダサでしたよね・・・。最近はゆったりとキレイ目に音楽をつかうようになってくれてよかったです。
Commented by 真紅 at 2008-03-10 10:52 x
かえるさま、こんにちは。
韓国映画の古い記事にまたまたお邪魔です。
これ、おっしゃる通りものすごく粗削りで瑕もあるんですが、ラストの水中場面で帳消しでしたね。
↑コメントの中で、皆さんがベスト作を挙げていらっしゃったりして興味深いです。
みなさんギドクがお好きで、観てらっしゃるんだなぁとシミジミしてしまいます。
音楽は、『サマリア』のサティも印象的でした。
ではでは、またです~。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-12 07:05
真紅 さん♪
熱いデビュー作でありました。
正直いって、本作やワイルド・アニマルは、どうも好きになれないんですが、とにかくラストシーン映像はめちゃめちゃ幻想的で美しくて、観てよかったーと思えるものでした。
皆さんのベスト、興味深いですよねー。
皆が好きでたくさん見ている監督っていうのはあれこれあるはずなんだけど、ギドク人気×マンダラのおかげでこういうふうに皆が一気にCompleteに近づけたということがって、同時期に盛り上がることができた感じです。
真紅さんのベストはどのあたりなんでしょう。
サマリアの音楽もよかったですよね。
音楽づかいは近年の方が断然よいですねー。
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