かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『クィーン』
2007年 05月 18日 |
上質で気品あふれるブリティッシュ・スタイル。

1997年8月、パリでダイアナが交通事故死し、その時、英国王室は・・・。



おほほほほほ、女王様とお呼び~
イギリスでは女王様ごっこは成り立つ?
キャベツちゃんとお呼び~

公開されて1ヶ月経過したというのにレディースデーのシャンテシネはまだまだ大盛況。時間によっては2館上映されているのに、満席、満席。どうして、ご婦人方は皆そんなにこの映画に関心があるんでしょうか?
①ダイアナ元皇太子妃、ダイアナの死に興味がある
②王室、皇室というものに興味がある
③アカデミー賞受賞のヘレン・ミレンの演技に興味がある
その他の要因もあるのだろうか?さてはて。

ちなみに私の興味は、オスカー女優ヘレン・ミレンの女王ぶりが見たいというのもあったし、フリアーズ監督作だし、作品賞ノミネートやGG賞・批評家協会賞などの脚本賞の多くを受賞した作品そのものの完成度への一般的な期待もあった。でも、一番の興味は、現在も即位し続けている女王を主人公にして、ダイアナ元皇太子妃の死というショッキングな世界規模の現実の出来事をも描くなんていう、タブーとされてもおかしくはないデリケートな題材を、一体どのような映画に仕上げたのか?ということかな。

そして、期待通りの良質、エクセレントな作品でした。現実の出来事がベースのフィクションなのに、緊迫感いっぱいにハラハラ楽しめました。チャングムなんかに慣れ親しんでいたマダムズにはもしかしたら物足りないつくりだったのじゃないかと思ったのだけど(とかいって、チャングム観たことないけどね)、私にはとても面白かった。由緒正しき英国調、ウィットに富んだユーモアと、これが英国たる英国なのかもって思わせる、笑いを盛り込みつつもカッチリと礼儀正しい映画でした。

王室って、こんなところなんだーと大変興味深かった。家族の朝食の席でもネックレスにイヤリングは必須なのね。それでいて、女王自ら運転をしちゃうなんて知らなかった。そして、やっぱり気になるのは、一体どこまでが真実でどこからが虚構なのかということ。脚本家は取材に取材を重ねて、リアルなものを盛り込んだらしいけれど、もちろん全てが真実ではないし、ちょっとしたさじ加減で、人物や出来事に対する印象はかわってくるでしょう。それを意識してしまうと、映画を観て直接的に感じたことさえも煙にまかれてしまうような・・・。

真実度はとにかく、女王エリザベス2世の葛藤が描かれていることが素晴らしいと思った。人間なんだから葛藤するのは当然なんだけど、遠い外国からメディアを通じてその人の噂を聞くことしかなかった私は、女王の心が揺らぐことなんてイメージさえしたことはなかったもの。大衆の思いなんぞ、いちいち気にしてられないわよっていう高飛車一辺倒じゃなく、女王の任務を遂行する上で、厳格であり続けるのだけれども、心の中にはザワザワと波風がたっているんだな。そんなことをこれ見よがしでなく、丁寧に描写してくれるのがいい。前半には、ダイアナさんの悲劇の運命にウルウルしたりしていたというのに、女王様様に感情移入しちゃったりする場面があって、やがて胸がいっぱいになるのだった。

観る前は、よくぞこんなに難しい題材を映画化するもんだなぁと思ったけれど、鑑賞後は、なんだ、こういう内容ならば冒険でも何でもない、問題なしじゃないかという印象をもった。周囲の人たちの言動や行動によって、ちょっと不謹慎な笑いは散りばめられてはいるけれど、女王の描写にはしっかり敬意が払われていて、どちらかといえば持ち上げているように感じられた。といっても、それがあざとく見えるのではなくて、ごく自然に、女王も大変なのねぇと心に響くのだ。巧いなぁ。途中までは、ブレア夫人の主張を面白がっていた私なのに、やはり英国は伝統的な王室あってこそのものかもなーって思ったりした。単純・・・。

女王の人物像は大体思った通りの印象だったけど、新鮮な驚きがあったのはブレア首相のキャラクター。真実味のある人物造形なんだとしたら、かなり好印象。ブレアといったら、近年のブッシュにしっぽをふるイメージが強かったので、こーんなに支持されていた現代的な首相だったことに今さら注目。退陣表明が発表されたばかりなので感慨深いなぁ。首相は6月27日に女王に辞表を提出するそうだけど、その様子がクッキリと想像できますね。この映画はひょっとして、女王物語である以上に、ブレア首相の前半期の栄光を回顧するためのものなのかも。トニぃぃぃ~

女王も首相も好意的に描かれていた印象で、ささやかに問題提起されているように感じられたのは、このメディア社会について。ダイアナを直接死に追いやったタブロイドはもちろんのこと、大衆の支持や関心を集めるために必死になって記事やニュースを放つ一般の新聞もTVも。大衆とマスコミとが互いに煽られ踊らされているゆゆしき状態が、この一連の騒動を通して伝えられるのだった。本当のテーマはそこなのかなぁとも思えた。マスコミも人々も常にもっと冷静に堅実に世の中の出来事に向き合う必要があるよなーってことをしみじみと感じた。と多角的に味わい深い作品であった。

-cast-
エリザベス女王・・・ヘレン・ミレン
トニー・ブレア・・・マイケル・シーン
フィリップ殿下・・・ジェームズ・クロムウェル
クィーン・マザー(皇太后)・・・シルヴィア・シムズ
チャールズ皇太子・・・アレックス・ジェニングス
シェリー・ブレア・・・ヘレン・マックロリー
サー・ロビン・ジャンヴリン・・・ロジャー・アラム
スティーヴン・ランポート・・・ティム・マクマラン

クィーン THE QUEEN
2006 イギリス  公式サイト
監督 スティーヴン・フリアーズ
脚本 ピーター・モーガン
撮影 アフォンソ・ビアト
プロダクションデザインアラン・マクドナルド
音楽 アレクサンドル・デプラ
 (日比谷 シャンテシネ)
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by CaeRu_noix | 2007-05-18 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(11) | Comments(8)
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タイトル : 一世一代〜『クィーン』
 THE QUEEN  1997年8月31日。あの夏の最後の日、ダイアナ元英国皇太子妃がパリで客死した。 チャールズ皇太子との離婚後も、英国国民の絶大な人気を誇っていたプリンセスの 死。エリザベス女王は哀悼の意を公にせず、... more
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タイトル : 「クィーン」
「The Queen」2006 UK/フランス/イタリア パリでパパラッチに追いかけられた末、自動車事故で亡くなったプリンセス・オブ・ウエールズ。彼女の突然の死に苦悩す女王一家と、就任したばかりのトニー・ブレア首相の姿を描いたヒューマン・ドラマ。 エリザベス二世を演じるのは英国女優ヘレン・ミレン「カレンダー・ガールズ/2003」「二重誘拐/2004」。英国首相トニー・ブレアにマイケル・シーン「ブラッド・ダイヤモンド/2006」 エジンバラ公フイリップにジェームズ・クロムウェル「ベイブ/1995」...... more
Tracked from ラムの大通り at 2007-05-19 22:38
タイトル : 『クィーン』
----ヘレン・ミレン、よかったニャあ。 さすがにアカデミー主演女優賞を取っただけあるや。 「そうだね。 どこまでリアルなのかは分からないけど、 人間エリザベスの苦悩が シンパシーを持って感じられたものね」 ----それとは逆にあのダイアナが もう、それほど魅力的には写らなくなっちゃった。 「うん。この映画のオモシロさはそこにある気がする。 ここで描かれているのは、 すでに王室を離れていると言う理由から、 交通事故で亡くなったダイアナの葬儀を内輪で済ませようとし、 公式声明を出さない王室に対して、 自...... more
Tracked from JUNeK-CINEMA.. at 2007-05-20 06:10
タイトル : The Queen (邦題;クイーン)
間があきましたが、NZで見た映画の第7弾。(まだやっていた・・・) 日本のマスコミでも、ウイリアム王子とケイトさんの破局が報じられたりして、相変わらずのイギリス王室人気ですね。 去年の暮れですが、オークランドでローカルの新聞の映画欄を読んでいて『The Queen..... more
Tracked from 映画のメモ帳+α at 2007-05-20 14:02
タイトル : クイーン
クイーン(2006 イギリス・フランス・イタリア) 原題   THE QUEEN 監督   スティーヴン・フリアーズ 脚本   ピーター・モーガン 撮影   アフォンソ・ビアト                 音楽   アレクサンドル・デプラ         出演   ヘレン・ミレン マイケル・シーン        ジェームズ・クロムウェル 1997年8月31日。ダイアナ元皇太子妃(プリンセス・オブ・ウェールズ。以下ダイアナ妃と記す)がお亡くなりになってからもうすぐ10年を...... more
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タイトル : クィーン・・・・・評価額1550円
「ゲゲゲの鬼太郎」が日本のコスプレショーなら、「クイーン」は由緒正しい大英帝国的コスプレショー。 ダイアナ妃の突然の事故死から一週間の英国王室と政府の混乱と葛藤を、エリザベス女王と当時就任したばかりのブレア首相を... more
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タイトル : クイーン
注! 同じ記事がわたしの別ブログLeidende Fruchtにも載っています。クイーン(2006年/英・仏・伊/スティーヴン・フリアーズ監督/公式サイト)ダイアナ元皇太子妃が亡くなったあの日の英国王室。... more
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タイトル : 『クィーン』
10年の月日が流れ、 本物のブレア首相は6月の辞任を表明した。 映画では新進気鋭の労働党党首・ブレアが首相に就任する。 若き首相と女王の関係も面白かった。 嫁いできた若く美しい嫁との嫁姑問題。 息子... more
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タイトル : クィーン
 『1997年8月31日、ダイアナ元妃の突然の死。 その時、王室に何が起こったのか。 世界中が泣いたその日、 たった一人涙を見せなかった人がいた』  コチラの「クィーン」は、ダイアナ元皇太子妃の事故直後の7日間のイギリス王室とブレア政権を描いた4/14公開になった....... more
Commented by 真紅 at 2007-05-19 12:11 x
かえるさま、こんにちは。コメントとTBありがとうございました。
夜、TVの前に座っているときもスーツ姿で「王室の方々はジャージやスゥエットは着たことあるのかな~」などと思ってしまいました。
この映画もある意味では政治的なプロパガンダとも言え、冷静で多角的な視点は常に必要だと思わされますね。
ブレア首相、就任当時は本当に素敵でしたね。
ではでは、また来ます~。
Commented by jester at 2007-05-20 06:06 x
ふ~ん、まだそんなに混んでいるんですか~
私も別の映画を見に行ったとき、長打の列にぎょっとしたら、ほとんどの人がクイーンを見に行く人だったですけど、まだそんなに人気があるなんてビックリ。
どちらかというと地味な映画で、日本で公開されるかな?
と思ったんですけどね。

私は不謹慎なことに、見たときは「似てる~~」とかって大笑いばっかりしてましたけれど、真紅さんの書いてらっしゃるみたいに「政治的プロパガンダ」の匂いもした気がします。

>ブレア首相の前半期の栄光を回顧するためのものなのかも。トニぃぃぃ~

あ、確かに!(実はトニーファン。←政治的意味はまったくないです)
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-20 12:12
真紅 さん♪
TVをご覧になる時もちゃんとしていましたよねぇ。寝ころんで見るなんてことはもちろんないんでしょうねー。何らかの運動をした時ジャージを着た経験はあったかもしれませんが、部屋着としてそれらが着られることは皆無でしょうね。くつろげないー
ある意味では、政治的なプロパガンダになっているといえますよね。どっちかといえば、ダイアナさん可哀想と思っていた私が、女王様も大変だったのねぇと思ってしまったわけですから。でも、そういう構造を観客が意識できるつくりになっているわけだから、プロパガンダじゃなくてそれに警鐘を鳴らす作品ってことになっていると思います。が、みんながみんな、そういう見方をするわけじゃないと思うので、やはりプロパガンダ的に機能している部分もあるといえるんでしょうか・・・。観客次第ですね。気をつけなくちゃ。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-20 12:13
jester さん♪
まだまだ混んでいましたよ。他の日はそうじゃないかもしれないけど、レディースデーでしたので。私も先月、最終週に『ユアン少年と小さな英雄』を観た際、クィーン目当ての人たちの長蛇の列にウンザリでした。ユアンはすいていたのにー。
本作は、賞レースを賑わせて、日本公開日が前倒しになったカンジでしたよね。そうそう、当初は地味に単館公開だろうっていう雰囲気でしたが、結局はシネコンなどでもかかるほどの話題作になっていましたよね。
お堅い世界だからこそ、散りばめられたユーモアが効いていましたよねー。
うーん、フリアーズ監督作品ですから、そっち方向の「政治的プロパガンダ」というわけではないとは思うんですよね。観る前は、逆方向のプロパガンダの要素があるのかと思っていましたが・・・。なので、そのへんの意図についてはとても気になっています。プロパガンダ臭を感じさせることによって、問題提起をしている作品だから、評価されたのだと、私は一応結論づけましたが。
おお、トニーファンでしたか。庶民派なのって、いいですよね。私はラブアクのヒュー・グラント扮するトニー風味な首相が好きでした。
Commented by moviepad at 2007-05-20 14:01 x
かえるさん、こんにちわ

シャンテシネ、まだ混んでるんですか!
ひえ~、おそろしや、おばちゃまパワー(笑9

>大衆とマスコミとが互いに煽られ踊らされているゆゆしき状態が、
この一連の騒動を通して伝えられるのだった。本当のテーマはそこなのかなぁとも思えた。

ほんとにそうですね。
女王の当初の判断は"極めてまっとう"だと思うのですが。
それを覆さなければいけないほど、マスコミに扇情された"国民の声"は強いんですね(^^;

ダイアナ妃とはマスコミによって作られた「人々のプリンセス」だったのでしょうか?ダイアナ妃のニュースが流れるたびに「こんなこと興味ねえよ」と思ってましたが(笑) もうあれから10年もたつんですね。

ダイアナ妃は地雷廃止運動のため、自ら地雷原を歩く姿を写真にとらせたといいます。また、ダイアナ妃の、弱い立場の人への思いやりは"パフォーマンス"などと揶揄する人は誰もいないほど純粋なものだったそうです。スキャンダルばかりではなく、そういった部分も語りついてほしいなと思います。
Commented by ノラネコ at 2007-05-21 01:07 x
こんばんは。
女王にシンパシーを抱かせるこの作品の作りも、じつは逆説的なロジックなんじゃないかと深読みしてしまいます。
つまり劇中のマスコミに踊らされる大衆と同じように、この映画を観て女王に感情移入した我々もまた、事実だか判らない事に心動かされている訳ですよね。
おそらくは観客にそこまで気づいてもらう事を狙いにしてるような気がします。
なかなかに深い映画です・・・
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-21 12:51
moviepad さん♪
まだまだ混んでました。おばちゃまぱわー衰えず。
どうしてこればかりがそんなに人気があるのか私にはとても謎。
私はダイアナさんが亡くなった直後に、王室がコメントをしなかったことなどを気に留めた記憶はないんですが、こうやってその時のことを描写されると、女王の対応は全くもって真っ当だったと感じました。それなのに、大衆というやつは勝手なもので、感情だけで無責任に批判しちゃうんですよね。国民の意見が上に伝わることは大切だと思うけれど、マスコミにのせられて無遠慮に暴走するっていうのはヤレヤレという感じです。日本もそうだけど、マスコミに叩かれないこと、人々に反感をもたれないことを最重要視して行動するようになってしまう状況には疑問をもちます。

もう10年も経ったなんて驚きですよね。ダイアナさんはやはり人気者なのも納得の素晴らしい人だったんでしょうね。私も正直いって、悲劇とスキャンダルの方ばかりが記憶にあります。下世話な芸能ニュースネタばかりが前面に出る社会をどうにかしなくちゃなのかなと思いつつ、一人ひとりがメディアに踊らされずに本質的な部分、重要な部分に目を向けられるようにしなくちゃですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-21 12:51
ノラネコ さん♪
そうなんですよ。俄かにそのへんを悟りました。
この映画を通して、女王にシンパシーを感じる自分を認識し、虚構の物語でそう影響されるのは何だか間違っているよなーと気づきました。それじゃー、TVや新聞が伝えるものを真に受けて、思いが揺れ動くのと同じじゃないか・・・。ああ、この映画はそういう問題をテーマにしているんだなぁと。私自身では俄かに気づいたのみですが、えいさんやノラネコさんの記事を読んで、ハッキリ確認できた次第です。そういう映画だったからこそ、堂々と作られ、評価をされたわけなんですよね。女王にそっくり、首相にそっくりっていうところに注目するばかりじゃもったいない深いテーマの映画でした!
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