かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『ドレスデン、運命の日』
2007年 05月 21日 |
ロマンスはいらない・・・

1945年2月13日、連合軍はドイツ東部の都市、ドレスデンを空爆。
その直前の1月、看護師のアンナは、病院の地下に潜んでいた英国空軍の負傷兵に遭遇する。



『トンネル』と同じ監督の作品。戦時下を描いたドイツ映画はヨーロッパらしい落ち着きを感じさせる作品が多いのだけど、そんな中で『トンネル』は、手に汗握るアクションシーンも多いハリウッド風のエンタメ性が強い映画だった。そして本作は、主人公が看護師の女性なので、アクションシーンこそ見せ場ではなかったけれど、代わりにちょっと不自然な恋愛ドラマが主軸となっていた。ドレスデン空爆を描くことが本題ならば、そんな陳腐な物語をメインにしなくてもいいのになぁと私は思うのだけど、ハリウッド的というか韓流路線というかTVドラマチックというか、そういう方向で企画が進んでしまったのは残念。企画自体が悪いわけじゃないのかな?脚本や演出の問題?とにかく中心になっているアンナと英国の負傷兵ロバートが気持ちを通わせる展開は、まるでしっくり来ませんでした。婚約パーティの日にそんな行動をとるなんてサッパリわからん。ロミジュリLOVEを盛り込もうなんて発想は古めかしい気がするし、こういう状況下で本気で惚れ合ってしまったという男女の気持ちをちゃんと描ききれていなかったように感じたなぁ。

敵同士の2人の気持ちが盛り上がっていくことに関しては、まるで共感できずにしらけてしまう部分もあったけれど、それ以外はなかなか見ごたえがあったかな。お友達夫妻のドラマの方はよかった。それから、モルヒネのエピソードなどが興味深かった。負傷者の治療・看護するという病院の業務は機能させながらも、病院長は立場を利用してブツを入手し、自分達だけが逃げようと画策するなんて。そのことを知ったアンナがアレクサンダーを責めた際、激昂して言い返した彼の言葉も胸を打った。本来ならば医者にはなれない身分である職人の息子のアレクサンダーが、院長の娘として苦労せずに暮らして来た娘が一時の正義を振りかざすのに対して、「お前に何がわかる」と自分が苦労してきたことを滲ませるシーン。いや、そんな台詞に打たれている場合じゃないか、戦争は何もかもをも一瞬にして奪うのだもの。とにかく、病院長が不正をして逃亡を企むというようなエピソードこそが、戦争というものの酷さを顕著に表していて印象的だった。安全を手に入れられるのも結局は持てる者ということなのか?と一時は不条理な思いを抱いたのもつかの間、空爆の威力は凄まじいものだったのだ。

英空軍の基地や、空爆の任務を受けて空を飛ぶパイロット達の描写も興味深かった。それが戦争というのもなんだろうけど、彼らにとっては、街もそこに住む人々も標的でしかないんだよね。自分達と同じ命ある人間が暮らしているんだということは少しも意識されず、大悪人ヒトラーの国を負かすためにいざ進むのみなんだよね。巧いプロットではなかったけれど、あちら側の状況も描いたことはよかったと思う。

恋愛譚はともかく、重大なナチスの罪を背負い続けて、被害者としての側面を語ることのできなかったドイツが、ようやくその出来事に触れたというのは意義深いと思う。ヒトラーの国だから、その国の国民は酷い目にあっても仕方ないというわけじゃないもの。結局、戦争は統治する者の欲望によって行われるばかりで、どう転んでも被害を被るのは末端の人々だということ。

私がドレスデンを訪れた際はまだ修復中だった街のシンボルである聖母教会。長年の修復を終えて再建された教会とそれを祝うセレモニーに集った人々の姿が映し出されたのは感動的だった。60年以上の時を経て、その当時から生き延びた人なんてもう数少ないんだろうなぁということを思うと感慨深い。美しい街を廃墟にしてしまうようなことは二度とあってはならないとつくづく思う。平和への祈りをかみしめよう。

ドレスデン、運命の日 DRESDEN
2006 ドイツ 公式サイト
監督 ローランド・ズゾ・リヒター
脚本 シュテファン・コルディッツ
撮影 ホリー・フィンク
出演 フェリシタス・ヴォール(アンナ)、ジョン・ライト(ロバート)、ベンヤミン・サドラー(アレクサンダー)、ハイナー・ラウターバッハ(カール)
 (日比谷 シャンテシネ)
[PR]
by CaeRu_noix | 2007-05-21 19:48 | CINEMAレヴュー | Trackback(12) | Comments(8)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/5452700
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 映画雑記 at 2007-05-22 19:03
タイトル : ドレスデン、運命の日
第二次世界大戦時のドイツの都市ドレスデンの空襲が、 この作品の中軸を成しているのですが、 それにドイツ人のヒロイン、その婚約者、そして敵であるイギリス軍人、 エンターティメントとして盛り上げる要素もあったのでしょうが、 なんか無理して、三角関係という恋愛要素を入れている感じで、 個人的には、ちょっと中途半端な感じの作品でした。 それと空爆中のヒロイン逹の移動に伴って、 次から次へと順番に、悲劇要素が登場してくるのですが、 そんな感じで見せられると、重みって薄れるんだなって実感。 ...... more
Tracked from Wilderlandwa.. at 2007-05-22 19:39
タイトル : 「ドレスデン、運命の日」 映画 感想
第2次大戦下のドイツの都市、ドレスデンを舞台にした「ドレスデン、運命の日」(原... more
Tracked from カリスマ映画論 at 2007-05-23 03:01
タイトル : ドレスデン、運命の日(試写会)
【映画的カリスマ指数】★★★☆☆  美しき街を襲った悲劇の一日    ... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2007-05-27 15:00
タイトル : ドレスデン、運命の日
一夜にしてその美しい街が崩壊・・・ 戦後60年たった今、歴史の中に埋もれた悲劇をストレートに描いた作品... more
Tracked from ヨーロッパ映画を観よう! at 2007-05-27 17:32
タイトル : 「ドレスデン、運命の日」
「Dresden」2006 ドイツ 主演の3人、看護士アンナにドイツ人女優のフェリシタス・ヴォール、イギリス人パイロット ロバートにUK人のジョン・ライト、そしてアンナのフィアンセ アレキサンダーにカナダ人のベンヤミン・サドラーといったインターナショナルな俳優人。 監督はドイツ出身のローランド・ズゾ・リヒター。彼は「トンネル/2001」の監督だが、観てない「トンネル」... この映画は2005年にドイツでTVドラマとして製作された。 第二次世界大戦末期、ドレスデン爆撃の犠牲となった人々の愛と哀...... more
Tracked from とんとん亭 at 2007-09-02 01:16
タイトル : ドレスデン、運命の日
「ドレスデン、運命の日」 2007年 独 ★★★☆☆ 「みえない雲」で原発事故の恐怖を擬似体験したが、こちらは戦争での空襲の恐怖 を体験できる。 戦争下とはいえ、明るく真っ直ぐに生きる主人公アンナ(ヴォール)の日常や家族、 そして敵兵との恋を軸...... more
Tracked from パピ子と一緒にケ・セ・ラ.. at 2007-09-18 21:43
タイトル : ドレスデン、運命の日
美しいその街は、一夜で崩壊した。第二次大戦末期に連合軍による空襲で、破壊的な被害を受けた街・ドレスデン。引き裂かれた家族と恋人たちを描く真実の物語。第二次大戦中の1945年1月、連合軍の攻撃によって後退を余儀なくされるドイツ軍は、すでに敵に制空権を明け渡し....... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-03-12 02:18
タイトル : 映画『ドレスデン、運命の日』
原題:Dresden 第二次大戦中、日本では京都が爆撃機による空爆を免れたが、ドイツでも歴史的建造物に彩られた文化都市ドレスデンだけは空襲などないと思われていた・・ エルベ川流域の文化と芸術の美しい都ドレスデン、その病院でナースとして働くアンナ(フェリシタス・... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-03-12 02:19
タイトル : 映画『ドレスデン、運命の日』
原題:Dresden 第二次大戦中、日本では京都が爆撃機による空爆を免れたが、ドイツでも歴史的建造物に彩られた文化都市ドレスデンだけは空襲などないと思われていた・・ エルベ川流域の文化と芸術の美しい都ドレスデン、その病院でナースとして働くアンナ(フェリシタス・... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-03-12 02:21
タイトル : 映画『ドレスデン、運命の日』
原題:Dresden 第二次大戦中、日本では京都が爆撃機による空爆を免れたが、ドイツでも歴史的建造物に彩られた文化都市ドレスデンだけは空襲などないと思われていた・・ エルベ川流域の文化と芸術の美しい都ドレスデン、その病院でナースとして働くアンナ(フェリシタス・... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-03-12 02:22
タイトル : 映画『ドレスデン、運命の日』
原題:Dresden 第二次大戦中、日本では京都が爆撃機による空爆を免れたが、ドイツでも歴史的建造物に彩られた文化都市ドレスデンだけは空襲などないと思われていた・・ エルベ川流域の文化と芸術の美しい都ドレスデン、その病院でナースとして働くアンナ(フェリシタス・... more
Tracked from 茸茶の想い ∞ ~祇園精.. at 2008-03-12 02:23
タイトル : 映画『ドレスデン、運命の日』
原題:Dresden 第二次大戦中、日本では京都が爆撃機による空爆を免れたが、ドイツでも歴史的建造物に彩られた文化都市ドレスデンだけは空襲などないと思われていた・・ エルベ川流域の文化と芸術の美しい都ドレスデン、その病院でナースとして働くアンナ(フェリシタス・... more
Commented by mar_cinema at 2007-05-22 19:03
かえるさん、こんばんは。
鑑賞後、ロマンス無ければ・・・って第一に思った作品でした。
ロマンス入れるんだったら、もっと人物を深くして欲しかったです・・・

ドレスデン、機会があれば、聖母教会に行って、
平和の祈りを捧げたいです。


Commented by st at 2007-05-22 22:00 x
ロマンスはいらない

レ( ̄ー ̄)ナットク!!( ̄^ ̄/)

それを入れるなら
脚本とあんな舞台でやるな~
という感じです(かなりしらけました・・)

後半を生かすためには脚本をちゃんと考えろといいたい
あそこまでやったのにすべて無駄になったような

ドレスデンの空襲で印象的なのは
心の地図です
かなり好きなので機械が合ったら是非(ビデオしかでてないですが・・)

ではでは

Commented by 睦月 at 2007-05-23 03:06 x
かえるさん!こんばんわ。『スモーキン・エース』へのTB&コメントありがとうございました。旅行中だったため、管理が追いつかなくてウチにいただいていたコメントに返信が出来ておりません・・・お許しください(泣)。

さて。
私もね・・・この恋愛劇にはどうも移入できなかったんですよね。
描いていることは大変に有意義なことだと思うし、映像の作り方も凄まじかったけれど・・・あのロマンスはいらんなあ(苦)。いらんいらん!
なんでベットでヤルかなあ?なんで2人の男の間で心がユラユラしてるのかなあ?・・・などといろいろ考えていたらなんだか面倒臭くなってしまい、一番大事なテーマがぼやけてしまったように思いました。

なんかこれって、そもそもドラマだったらしいですね。
それを無理矢理編集して映画にしたって感じでしょうか?尺が長いのもうなずけます・・・(苦笑)。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-24 11:51
mar さん♪
せっかくの味わい深い貴重な題材を下手なロマンスが台無しにしてしまっていましたよね。彼女と彼が惹かれ合ったというのがかなり不自然でした。敵方をかくまう物語というのは秀逸なものが多いのに・・・。
ドレスデンの旧市街の雰囲気はとてもいい感じでした。私も聖母教会に足を踏み入れたかったですー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-24 11:51
st さん♪
レ( ̄ー ̄)!!( ̄^ ̄/)
メインをロマンスにしようという思いつきが浅はかだったとまず思いますが、そうするんなら、もうちっと脚本を説得力のあるものにすべきでしたよね。友人夫婦の物語の方がよかったけどな。まぁ、それはそれでありがちだけど・・・。とにかく、トリスタンとイゾルデな物語をここでやろうとするのは無理がありました。彼らが惹かれあうのがよくわからず・・・。

『心の地図』って、イヌイットとネイティヴ・アメリカンの血を引いた男女の物語ですよね。そういうのは好きなので、観ているんだけど、ドレスデン空爆のことは憶えておりませぬ。中古VIDEOがうちにあるかも・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-24 11:51
睦月 さん♪
お疲れさまでしたー。帰国するやいなや、300のレヴューがエントリされていてビックリしましたが、コメント返しも素早くいただけてオドロキカンゲキです。いや、遅くても問題なしなので、ご無理はなさらずにー。
やはりやはり、恋愛劇はいただけませんでしたよね。女子的に感情移入できないものでした。男性からも不評ですし。爆撃のシーンや廃墟は圧巻だっただけにもったいなかったですー。
婚約ぱーちーの日に他の男と逃亡をはかろうとする心理の動きはヘンでした。ああいう状況でベッドインもわからず。落ち着かないってば。あ、でも、一説によると、人間は命の危険が迫った時、種の保存本能により生殖行為に及んでしまうこともあるとか・・・。というこじつけもしっくりこないんだけど・・。
この監督の前作『トンネル』ももとはTVドラマだったということを最近知って、エンタメ風味が強いのも納得したんですが、あらあら、こちらも同じだったんですのね。納得。日本でいうところのNHK朝ドラ風ストーリーかも・・・。
Commented by シャーロット at 2007-05-27 14:59 x
こんにちは。
空爆シーンくらいしかあまり覚えてないんですが;後半の爆音で前半の記憶が吹っ飛んだかも。苦笑
ロマンスのあたりは傍観してた感じでした。音楽が嫌だったから耳が受け付けなかったですし。これこそ、余計な演出はいらない、と思ってしまいました。
かえるさんは聖母教会にも訪れた事もあるのですね。そうそう、最後のシーンはとても感動的でした。もう壊されることがない事を祈ります。かみしめてカミカミ・・・
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-27 18:16
シャーロット さん♪
ドイツ映画といえば、手ごたえのある秀作ぞろいなんですが、まぁこれはさほど記憶が残らないほどのものだったかもしれませんね。善き人のためのソナタなどに比べたら・・・。私は去年のドイツ映画祭で観た作品なんかもあんまり印象深いものはなかったですぅ。というわけで、ドイツ映画祭は私の分もがんばってくださーい。
音楽はたぶん私もあまり好みではありませんでした。ロマンスはもちろん傍観していましたが、それでもちょっと納得いかなかったカンジ・・・。
いえ、だから、修復中だったので、聖母教会は訪れていないんですよー。修復中のものの外観は眺めましたが。その地を旅していない人から見ると、そんなのどっちでもいいのかもしれないんですが、わたし的には、ドレスデンは訪れたけど、聖母教会は訪れたうちに入らないんです。(笑)

>もう壊されることがない事を祈ります
って、あえていわれるとドキッとしますね。当然の祈りなのだけど・・・。その可能性は0ではない含みがあるという感じで。二度と東京大空襲がないことを祈りますとか。空爆は全面的に禁止にしてほしい・・・。飛行機で突っ込むのも禁止。リングの上でたたかいなさい。
<< 『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』 PageTop 『スモーキン・エース/暗殺者が... >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon