かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』
2007年 05月 24日 |
ご冥福をお祈りします。

2007年4月27日に亡くなった世界的チェリストのムスティラフ・ロストロポーヴィチ氏。氏とその妻、オペラ界のソプラノ歌手であるガリーナ・ヴィシネフスカヤの夫婦の半生を追ったドキュメンタリー。



アレクサンドル・ソクーロフの作品ということで興味をもった。そうでなければ、ロストロポーヴィチのことは知らなかった。それだけの関心に過ぎなかったのに、映画が東京で公開されてほどなく、その訃報をきくことになったのだから感慨深い。その人に自分が関心をもった時には、もうその人は生涯を終えてしまったというのは残念だけど、最期のその姿を見つめることができたのはやっぱり貴重。

その姿は、80歳近いというのは信じられないほどに元気で快活なのだ。才能があって、表現したいものがあって、情熱を燃えたぎらせている人は、いくつになってもこんなふうに活き活きとしているのかな。世界の国々の王室の人たちなどとも気さくに交流するフレンドリーな人柄が微笑ましく。夫婦が陽気にダンスする姿には胸をうたれた。天才音楽家というと気難しそうなイメージなのに、ロストロポーヴィチ氏は気取らないとても愉快な人だった。ニコニコしながら彼の後ろを着いていく小澤征璽氏の姿も何だか嬉しい。

演奏家は音楽の娼婦。なるほど。素人の私は、音楽家というものを全て同じように括っていたかもしれない。演奏家は、作曲家とはまるで違った音楽との向き合い方をするんだな。娼婦たる演奏家のテクニックによって、聴き手は作曲家の生み出した音楽を生きた状態で感じることができるんだよね。インタビューを通して、そんな印象的な言葉をいくつも遺してくれたのだった。

ソクーロフの劇映画はクラクラするほどに芸術的なのに対し、ドキュメンタリー映画の今作は奇をてらってはいなかった。ごくごくシンプルな構成の記録映画であった。演奏シーンも思ったより少なかったし。そんな感じで、ソクーロフ印のアート作品の味わいは足りなかったかな。

だけど、いつもは芸術家として劇映画を創作するその映像作家も、ドキュメンタリーを手がける今回は、作曲家的にではなく、演奏家的に、対象と向き合ったのかもしれないなと思った。監督自身の作家性は抑えて、素晴らしき天才チェリスト、ロストロポーヴィチの姿を忠実に記録することに努めたのかもしれない。そんな敬愛の気持ちがむしろステキだなぁと思えた。

ロストロポーヴィチ 人生の祭典
ELEGIYA ZHIZNI. ROSTROPOVICH. VISHNEVSKAYA.
ELEGY OF LIFE: ROSTROPOVICH, VISHNEVSKAYA
2006 ロシア 公式サイト
監督 アレクサンドル・ソクーロフ
 (渋谷 シアターイメージフォーラム)
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by CaeRu_noix | 2007-05-24 19:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(6)
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Tracked from Mani_Mani at 2007-05-24 21:02
タイトル : アレクサンドル・ソクーロフ「ロストロポーヴィチ人生の祭典」
ロストロポーヴィチ人生の祭典 2006ロシア 監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤ ソクーロフ監督による二人の著名な音楽家のドキュメンタリー。 原題はELEGY OF LIFE Rostropovich.Vishnevskaya. なので、邦題から想像される祝祭的高揚とは逆に、 音楽によるカタルシスすら回避した、静謐な記録。 ことさら人物像や業績を強調する演出はないが、それでも見事に二人の人格がうかびあがっていたと思う。 ...... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2007-05-25 15:53
タイトル : ロストロポーヴィチ 人生の祭典
現役のロシア人音楽家夫婦が歩んだ波乱の半生と、人生最後の初演に挑んだ音楽と、表現の喜び・・・... more
Tracked from 分太郎の映画日記 at 2007-06-08 14:59
タイトル : 『ロストロポーヴィチ人生の祭典』
 ロストロポーヴィチという名前が(普通の)映画ファンの間でどのくらいの知名度を持つのか分からないが、クラシック音楽ファンにとっては、世界的なチェロ奏者であり、彼と並ぶのはパブロ・カザルスくらいであろう。指揮者としても活躍し、数々の名盤を残している。 今...... more
Commented by シャーロット at 2007-05-25 15:49 x
私もさほどロストロポーヴィチのチェロを聴いていたわけでもなく(チェロ弾きのお気に入りの方が他にいるので)、CDの音しか知らない感じだったのですが、やはりソクーロフ監督が撮ったというところに反応して見に言った感じです。見られて良かった。
演奏家的に対象と向き合う・・・ホントですね。ロストロポーヴィチの色んな素顔が見ることができて大変貴重な映画でした。
演奏家は作曲家の音を忠実に再現する類まれな才能の持ち主達ですが、そこにはきっと世間の知らない苦労とか葛藤とか厳しい面がたくさんあるんだと思うんですね。でもそれさえも感じさせない色艶のある音には感銘を受けてしまいますし、でも音楽に対しては忠実なのにそういう味わい深い音が不思議と演奏家の人生を感じさせてくれるような気もしてきました。今見る事ができて本当に良かったです。
Commented by manimani at 2007-05-25 23:47 x
こんばんは。TBさせていただきました。おくればせながらコメントを・・・
演奏家的にこの映画を撮ったというのに共感です。なるほどね〜確かにそうですね。夫妻の人となりを、その人の有り様によりそって抽出するような作りでした。
そういう点では「太陽」も同じようなスタンスなのかもしれませんね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-26 10:07
シャーロット さん♪
はい、世界的な演奏家とはいっても全然知りませんでした。
世界的なチェリストなんていったら、ヨー・ヨー・マくらいしか思い浮かびません。あと、故ジャクリーヌ・デュプレとか・・・。正直言って、たぶん私には、プロの演奏家それぞれの個性、違いなんて、聴いてもわかりません。シャーロットさんのおっしゃるところの"色艶のある音"というのもよくわかんないです。概してチェロの音色はいいよなーっていう大雑把なとらえ方。だから、その演奏を聴いたところで、プレイヤーとしての才能を実感はできないんだけれど、こんなに激動の時代を生きながらもエネルギッシュに音楽を愛し続けてきた、その人間性の魅力は大いに感じました。ソクーロフ監督が注目し、その姿をフィルムにおさめようと思ったのも納得でっす。
というわけで、音楽ものでありながら、私は今回は音楽そのものからはそんなに感銘は受けなかったんですよね。音からは彼の人生も感じられませんでした。(笑) でも、熱い語りはとても興味深くて、氏の充実した人生が透けて見えました。観られてよかったですねー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-05-26 10:07
manimani さん♪
いや、実は正直言って、ソクーロフ作品としてはやや物足りない感があったんです。構成や編集の仕方が巧みだとは思わなかったし、カメラづかいも普通だった印象。ソークーロフならではのものが見えないなーやや残念に思い、やがて気づきました。映像作家が主人公を単なる題材として素材として使っているんじゃなくて、ロストロポーヴィチ氏に敬意を表し、ありのままの彼らを映し出すことに徹していたのかもしれないなぁと。物足りなさがあったゆえの解釈なのでした。
『太陽』も主人公に対する敬意と忠実な描写姿勢は感じられましたが、映像作品としては思い切りソクーロフ印のつくりこまれたものでしたよね。
Commented by ぺりーと at 2009-06-22 18:18 x
こんにちはー。今ごろになっての反応ですみません(^^;
>演奏家は音楽の娼婦
昔見た別の演奏家のドキュメンタリー番組で、「演奏家はその曲の世界を演じる俳優のようなものです」と語っていたのが印象的だったのですが、それと通じる言葉ですね。自分の個人的な感情などが表に表れているうちは、まだまだ未熟ってことなんだろうなあと思いました。
それはそうと、少し前にベルイマン監督の「サラバンド」を見ました(ここに書くのもヘンですが、チェロつながりってことで^^;)
それぞれの登場人物の心模様が繊細に描かれていてよかったです。
あ、「路上のソリスト」は見に行こうか迷い中です(とか言っているうちに終わっちゃいそうですが^^;)
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-22 21:59
ぺりーと さん♪
チェロはいいですよねぇー。
ほぉ、なるほど。演奏家は俳優なんですね。納得。
感情をこめて演奏をしなさいっていう指導も一般的なものと思っていたのですが、それはあくまでもその曲について忠実に表現をするということで、演奏者の個人的な感情を表すっていうことじゃないんですよね。そうか。
理屈はわかるし、演奏に表れる感情というのも確かにあるなぁと思いつつ、自分はとても聴きわけることはできない気もして。
音楽というやつは奥が深いですー。

ベルイマンの遺作『サラバンド』、よかったですよねぇ。
チェロの演奏シーンも素晴らしかったし、人間模様もひやりんゾゾっとする面白さがありましたよね。
この刺々しい繊細さに比べると、『路上のソリスト』のヒューマン・ドラマ模様は、そんなにツボではなかったんですが、オーケストラの演奏シーンなどは聴きごたえがありましたよー。
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