かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『14歳』
2007年 05月 31日 |
リアルな痛みにがんじがらめ

中学教師の深津稜は、偶然に中学時代の同級生の杉野と12年ぶりに出会う。



リアルな学校の日常。淡々と映し出される14歳の日常と昔14歳だった26歳の2人の日常。始まるやいなや緊迫感に包まれて、心が釘付けになる。のめり込んだまま、息苦しさとヒリヒリと痛みを感じ続ける。『ある朝スウプは』 がそうだったのと同じように、観ていて楽しいものではないけれど、見ごたえを感じる痛烈な作品。

中学生の頃、思った。中学校の先生だけにはなりたくないって。そんなことを思い出した。中学生には戻りたくないし、中学校教師なんて無論ごめんだし、中学生の親にもなれないな。別に全ての人が問題を抱えているわけではないだろうし、健全な心で日々を送る14歳もきっといるに違いないけれど、ここに描かれている中学生の心の屈折の仕方はとてもリアルだと感じてやるせなくなる。そして、大人になり社会人になった者の心に鬱積する負の感情にも共感してしまう。主人公となっているのは、平均的な14歳やその親や先生ではないのかもしれないけれど、特別に病んでいるというんでもなくて、こういう人たちがたくさんいるんだろうなと感じられてため息をつく。

限定された具体的なことが問題だというのなら、それを解決することに努めればいいのだけれど。大人の判断でそうすべきだと思ってなされたことが、想像以上に思春期の中学生に弊害を与えてしまうこともある。家庭環境のささやかな問題が1人の中学生の級友への意地悪な行為を生み出したりする。他人からみたら些細なことが、負の連鎖を生み出してしまうんだ。学校が悪いとか親の育て方が悪いとかそもそもその中学生の人間性が問題だとか一概に言うことはできなくて、それぞれが何らかの悪影響を及ぼし合っていることが痛々しい。

渦中にいる人間は自分の立場からしか物事を見ることができなくなるに違いないのだろうけど、それが自身の問題ではない映画の観客である私は、今14歳である中学生の気持ちにも大人の気持ちにも寄り添えてしまい、各々の痛みと鬱憤を感じて、心ががんじがらめになる。だからこそ、痛烈で圧倒的。

14歳は14歳で辛いのだけど、14歳の痛みをなお背負い続けたまま、大人の苦しみにも囚われるという深津と杉野の置かれた状況は過酷。だけど、14歳の頃の苦悩を今なお蘇らせることのできる彼らだからこそ、本気で14歳と向き合うことが大事なんだと実感できたんだろうね。多くの大人は割り切って、或いは自身がそういう年代にあったことを過去に追いやってしまうものかもしれないけれど。14歳の思いに歩み寄って、真剣に彼らとぶつかり合えたなら、快方への糸口は見つかるかもしれないなと思える。閉塞感いっぱいの物語の中、最後にそんな本気を見せてくれたのは救い。

14歳 2006  公式サイト
監督 廣末哲万
脚本 高橋泉
出演 並木愛枝、廣末哲万、渡辺真起子、香川照之
 (渋谷 ユーロスペース)
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by CaeRu_noix | 2007-05-31 12:42 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(4)
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Tracked from ラムの大通り at 2007-06-02 00:36
タイトル : 『14歳』
----この映画「今年最大の問題作」と 書いてあったけど、そんなにスゴいの? 「チラシの言葉を借りれば <容赦なく>スゴいね」 ----どういうところが? 「日本の映画って戦後は民主主義の発達とともに、 ヒューマニズムが美徳として礼賛されてきた。 ところがこの映画は、前提として信じられてきたはずの ヒューマニズム=オールマイティに冷や水を浴びせる作品となっているんだ」 ----う〜ん。よく分からないニャあ。 「この映画は現在14歳でそれぞれの問題を抱える生徒たちと、 かつて14歳だったときのできごとを...... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2007-06-02 14:06
タイトル : 14豁ウ
かつて私も14歳だった・・・この時何を想い、いったいどうだったんだろう。 思い出せるようで思い出せない時の流れを疎ましく感じながらも、胸がヒリヒリと痛い・・・... more
Tracked from 映画通の部屋 at 2007-06-02 19:50
タイトル : 14豁ウ
「14歳」製作:2006年、日本 114分 監督、主演:廣末哲万 脚本:高橋泉 ... more
Tracked from 地球が回ればフィルムも回る at 2007-09-16 21:55
タイトル : 『14歳』
早稲田松竹で鑑賞。 これ、ヒロインの並木愛枝が演じる女教師は、どうして自分が生徒からいじめを受けるようになったのか、結局、自分で分かっていないのだろうか? あのひと言はまずいと見ているこちらも思ったが・・。この人は、担当の精神科医が言う通り、14歳の時の自分に向けて教師をしていたのであって、生徒たちひとりひとりのことをきちんと見れていなかったように思えてならない。自分のことで手いっぱいの状態で、教師になったのはやはり間違いだったのかも・・。 それにしても、最初はヒロインの女教師と対照的な強権的な教師像...... more
Commented by シャーロット at 2007-06-02 14:22 x
14歳の頃は・・・それまでの自分の殻を一生懸命剥ぎ取りたくてもがいていたかも。でも実はもっと先になってから自分自身と向き合うことになって辛かった私は、深津のような人を見るととっても共感してしまうのでした。だからその頃の自分と向き合いたいと思った気持ちはちょっとわかる気がします。
我が家にも中学生いますからどうもいろんな事が自分とシンクロしました。
なんだか思ったよりも力がある作品で私も圧倒されましたです
Commented by となひょう at 2007-06-02 19:14 x
わぁ、ご覧になりましたか!最初から予想はしていたのですが、この作品の記事に興味を示してくれる人が殆どおりません。なので、この作品で訪問して頂くのは本当に嬉しいです♪

痛くてヒリヒリする作品でしたね。重苦しいし息苦しいで、本当にがんじがらめになりました。でも、「そんなの嫌だわ」で終わらせたくないなとも思いました。この作品から救いを見出せなくても、何かしら考えることはある訳で。見た人は少ないですけど、私は観に行って良かったと思っています。
記事に書くのは忘れたんですけど、ちょっとだけ『リリイ・シュシュ』を思い浮かべてしまったのですがー。あれも中学生の話でしたよね?蒼井優ちゃんのシーンが鮮明に蘇りました。

どうやらTBが上手く送信できていないので、後でまた試してみまっす。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-04 13:56
シャーロット さん♪
私はむしろ今の方がもがいているかも・・・。14歳の頃は、もがくことさえせずに、ただ友達の輪からはずれないようにすることだとかで精一杯でした。大人になってから振り返ると実に視野の狭いくだらない価値観にとらわれていたなぁと思うんだけど、中学生の頃の学校や友人関係ってその当時は絶対的なものだったんですよね。深津さんの状況はかなり特異だとは思うんですが、だからといって他人事にはならなくて、彼女の中学時代の気持ちにも、それを踏まえての教師になってから直面した現在の彼女の気持ちにも、共感し心痛みました。自分が10代の頃は、大人にもそういう時代があったとは実感できなくて、自分が大人になる時は学校時代を切り離せるような感覚をもっていたかも。でも、実際は、いくつになっても、その延長線上に今の自分がいるんですよね。今でもたまに学校の夢を見ます・・・。
中学生の親というのも大変でしょうね。この映画に登場するような無自覚な母を反面教師としてがんばってくださいー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-04 13:56
となひょう さん♪
毎度のことですが、TV等で宣伝される話題作以外は世間の注目は低いですよね。となひょうさんはしきりとそういうことを気にされるようですが、私なんかは年中、ユーロスペースやシアターNやイメージフォーラムやらでひっそりかかっていて、観ている人が非常に少ない映画の記事を書くことが多いので、あんまりイチイチそういうのは気にしてないんですよ。でも、直接コメントがなくても、となひょうさんの記事を読んで、関心をもった人はいるかもしれません。とりあえず、よかった映画をよかったと地道にしたためていけばよいんじゃないかと思いますー。
おおお、私も『リリイ・シュシュ』のことを思い出しましたよ。あちらは技巧的な美しい映像と音楽で綴られていて、こちらは音楽なしと、演出方法は正反対なのに、中学生の痛みのリアルはどちらも同じように圧倒的でしたよね。
私は深津先生の雰囲気からリリイのハスミくんの担任のことも思い出しました。
ツダシオリちゃん大好きでっす。
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