かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『インビジブル・ウェーブ』
2007年 06月 15日 |
ドイルのカメラが映し出すアジアの雰囲気はとてもイイ。

キョウジが情事を重ねる女セイコはボスの妻。
キョウジはボスの依頼でセイコを殺し、ボスに休暇を取れと言われ、船でプーケットへ向かう。



これは贖罪の物語なんだって。いつもは映画鑑賞前に内容に関する情報を入れない私なんだけど、観終わった後に時間をとれない状況だったので、始まる前にロビーに貼ってあった映画の記事を読んじゃいました。といっても、事前にキーワードをインプットしてもなお、何が描きたかったのか掴みきれない作品でした。もとの脚本はフィルム・ノワールだったらしい。そういわれてみれば、そうだったのかもしれない。でも、これが贖罪というのはよくわかんないな。

と、物語展開やテーマにはしっくりこない部分があったし、そもそも面白い映画ではないと思うので人にはオススメしませんが、それでも私には結構好きなタイプでした。何が好きって、結局のところ、私はやっぱりクリストファー・ドイルのカメラが大好きなんだな。『レディ・イン・ザ・ウォーター』ではそんなに映像に魅入ったわけではなかったから、やっぱりアジアを舞台にしている時が格段に冴えているのかなと思う。監督や主演の浅野忠信ともすっかり信頼関係が築かれているということで、彼の思うような仕事ができたに違いない。何てことのない場面の一つ一つがとても素晴らしい構図で絵になる美しさでスクリーンに映し出されることにため息。

キョウジの住む建物の佇まいがすごくいい感じ。周りの植物の葉の茂り方いかにもアジアンな湿度を感じさせてくれる。そこはマカオで、勤めていたのは香港のレストラン。石段もとてもステキだった。ドイルのカメラでそんなロケーションの魅力をロードームービーならではの旅気分を満喫。といっても、当事者キョウジにとっては気分爽快の旅ではなくて、トホホな出来事ばかり。謎めいたムードの中にコミカルさが同居するところがよいのです。得体は知れないのだけれどその不思議感が心地よさを醸し出す感じ。アジアに行きたくなりました。

謎めいていて多くが明らかにならないというのは別にかまわないんだけど、起因となった殺人がどうもわからない。何故殺したのかなんてことはあまり気にしなかったのに、結局後にボスと再会してしまったら、やっぱりそこがしっくりこないと話にならなくなってしまうじゃないか。ボスはなんでセイコを殺したかったの?キョウジは何故殺したの?後になって、キョウジの命を狙おうとするなんて酷い。結局、キョウジがそういう末路をたどるなら、リザードがセイコをやればよかったのにねぇぇ。キョウジったら、真面目に考えるとあまりにも救われないんだけどなぁ。刹那的にとらえたら、そのエンディングそのものはいいと思うんだけど、起点から見つめると、やっぱり何だかよくわからんー。ノイのその繋がりもちょっとなぁ・・・。

と、考えると納得がいかない物語なのだけど、感覚的には好きな作品でした。

インビジブル・ウェーブ INVISIBLE WAVES
2006 タイ  公式サイト
監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
脚本:プラープダー・ユン
撮影:クリストファー・ドイル
美術:サクシー・ジャンランシー
音楽:フアラムポーン・リッディム
出演:浅野忠信(キョウジ)、カン・ヘジョン(ノイ)、エリック・ツァン(僧侶)、光石研(リザード)
 (シネマート新宿)
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by CaeRu_noix | 2007-06-15 12:57 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(6)
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Tracked from 地球が回ればフィルムも回る at 2007-06-15 13:05
タイトル : 『インビジブル・ウェーブ』
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Tracked from 龍眼日記 Longan.. at 2007-06-29 22:40
タイトル : インビジブル・ウェーブ
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Commented by kusukusu at 2007-06-15 13:54 x
これは、難しい話でした(笑)。
キョウジがああいう結論に至るのは、贖罪の意識からなのか、それとも別の彼自身がかかえる内発的なことからなのかがよく分からなかったですね。まあ、本人もはっきり分かっていなくて、ごっちゃになっているのかもしれないけれども・・。
ちょっと仏教の思想が根底にあるのかなと思いましたが・・。
この作品の死生観、死を常に意識して生きている感覚みたいなものは、なぜか、クリント・イーストウッドの映画の死生観を連想したんですが、後でラッタナルアーン監督のインタビューを読んだら、イーストウッドの作品を意識していたと語っていて、この連想は外れていなかったのかなと思いました。
考えてみると、イーストウッドが『硫黄島からの手紙』のような日本兵の話をきちんと描けたのは、もともとイーストウッドの作品の死生観には東洋の思想、哲学に通じるところがあるからなのかもしれません。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-15 18:49
kusukusu さん♪
うーん。お話が難しいんでしょか?
キョウジは、最後は流されつつも観念しちゃったという感じで、考えた上でそういう選択をしたというんでもないかなと思えました。無頓着に受け入れてしまったのかなと・・。にしても納得がいかないです。別の物語展開であれば、最後に死を受け入れるというのは嫌いじゃないんですが。罪悪の原因をつくった人に、命を奪われるというのが贖罪だというのはよくわかんないです。銃殺されることが贖罪なんてー。結局のところ、殺人よりも何よりも罪深いことだったのはボスの女に手を出すことだったかのような顛末。私の頭では、この物語に仏教思想の死生観を感じなかったです。贖罪という言葉を気にせずに、ただの不憫な男の流浪物語というんならOK。
イーストウッド作品を意識したというのは思想的なものじゃなく、トリックに凝った作品じゃなく、ストレートなものを撮ろうとしたということみたいですが。でも、イーストウッド作品はもっと地に足がついている印象。この監督のはゆらゆらふわふわ感があります。でも、イーストウッドの死生観は東洋思想が感じられるというのはあるかもしれません。
Commented by sabunori at 2007-06-29 22:48
かえるさん、にいはお。
プーケットまでの船内でのちょっと不思議でB級ギャグ的なエピソードも
C.ドイルのカメラのフィルターを通すとなんともいえない味わいのある
映像となってしまうのが不思議です。
ストーリーをキッチリと追っていくタイプの映画と考えてしまうと
ちょっとキツいかも・・・ですね。
私は亜熱帯特有のゆるーい空気、浮遊感あふれる映像を楽しんでしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-30 09:56
sabunori さん♪
ドイルのカメラはやっぱり味わいがありましたよねー。アジアの湿度をとてもみずみずしく美しくとらえてくれますね。そうそう、船内のエピソードなんかもトホホ感のある笑えるものなのに、軽薄に感じられない趣がありました。この監督とは組むのは二度目というだけあって、映像は申し分なしでした。
ストーリーというものはですね、私は基本的には気にしません。キッチリ追おうなんてこれっぽっちも思いませんです。いや、しかし、その設定や要所要所のエピソードの意味合いやちょっとしたテーマ性など、あまりにも掴めなかったので、それじゃあまずいのじゃないかしらと戸惑ったのも事実でした。それを気にしなければ、私もとにかくその雰囲気を満喫しましたよー。浮遊感が心地よかったですよねー。あねったーい。
Commented by BC at 2007-07-16 00:38 x
かえるさん、こんばんは☆

私は宗教や哲学的な知識がないので
この監督が見つめる具体的な死生観はわからなかったのですが、
  海のさざ波、プールの緩やかな波・・・
なんとなく原題のinvisible waves(目に見えない波)がポイントになっているのかな?
という気がしました。

それと
「何故、吉田拓郎の曲なんだろう?」
と不思議に思っちゃいました。。。
その曲も重要ポイントなのかしら?
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-17 11:52
BC さん♪
宗教のことはよくわかんないですけど、仏教思想的なものが感じられた気はします。同じ仏教でも日本のものとタイのものは違うみたいですね。で、タイの人々の信仰心は日本とは大違いで厚いようなので、意識せずともそういうのが反映されるのかもしれません。というカンジで雰囲気的には伝わってくるものがあったのだけど、主人公の辿った運命、物語の筋を追うと、作り手の死生観って一体、何?とわからなくなったのでした。でも、理屈ではなく感覚的には、確かに"波"がポイントだったなぁっていうのは納得です。
「たどり着いたらいつも雨降り」は、たまたま、監督が音楽を気に入って選んだらしいです。そしたら、詞の内容もピッタリだったそう。
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