かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『低開発の記憶-メモリアス-』 (1968)
2007年 06月 24日 |
記憶は美しい。

1961年、ハバナ。カストロが社会主義を宣言したことにより、キューバ人資産家多くが、次々とアメリカに亡命していった。妻や両親が当たり前のように出国するなか、ブルジョア階級のセルヒオは、小説を書くためにハバナにひとり残る。



トマス・グティエレス・アレア監督の『苺とチョコレート』は大好きな作品。その監督が68年にこういうタッチの映画を撮っていたのだなぁ。『苺~』は社会派作品でありつつ、人間ドラマとしても大いに感動的で、イチゴとチョコレートのアイスクリームが溶けてしまいそうなほど熱くて温かい作品だった。

それに比べ、本作は主人公のキャラクターのせいか冷めた空気が漂っている。でも、そこがいい。美しいモノクロ映像と気取った主人公に印象的なヒロインの姿、ヌーヴェルヴァーグ風の味わいが魅力的で好感触。カストロ議長の演説シーンなどドキュメンタリー映像が挟み込まれ、キューバの社会は慌ただしく混沌としている様相なのに、主人公セルヒオの暮らす空間は別世界みたいで、世の中を冷めた目で傍観しつつ、妻の悪口をつぶやいたり、昔の彼女との素晴らしい思い出を回想したり、また別の女の子を口説いてはやっぱりすぐ愛想を尽かしたりなんて姿が描かれる。

キューバの周りの人たちを"低開発"だと見下げるセルヒオ自身が、最も成長しないトホホ男なんじゃないのかって思えるんだけど、そこがコミカルでもあってなんだか憎めない主人公。理性的に見たら愚かな男なんだけれど、彼の感傷や心境には共感もしてしまう。彼と共に記憶を反芻して、やるせない気分に浸ってみる。世の中の動乱の最中でだって、ウダウダと物思いに耽ってしまうものでしょう。それが低開発でしかないのだとしても、彷徨っているだけなのだとしても、心の旅が描かれた映画っていうのはとても好きなんだよな。

この映画に込められた政治的な意味合いなどは私にはよくわからなかった。それでも、時代を切り取ったドキュメンタリー映像の挿入は重要な要素であると思うし、その一つ一つの意図がわからなくても、この手法がこの映画を味わいのあるものにしていると感覚的にとらえることはできる。主旨を説明するのが難しいタイプの作品。特別に感動するわけでもおもしろ可笑しいわけでも深く考えさせられるわけでもないのだけれど、とても好きだなーと感じるきらめきのある映画。

MARYSOL のキューバ映画修行;メモリアス

低開発の記憶-メモリアス- MEMORIAS DEL SUBDESARROLLO
MEMORIES OF UNDERDEVELOPMENT
1968 キューバ 公式サイト
監督.脚本 トマス・グティエレス・アレア
原作.脚本 エドムンド・デスノエス(「Memorias del subdesarrollo」いやし難い記憶)
出演 セルヒオ・コリエッリ(セルヒオ・カモーナ・メンドーヨ)、デイジー・グラナドス(エレーナ)、エスリンダ・ヌニェス
 (渋谷 ユーロスペース)
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by CaeRu_noix | 2007-06-24 14:05 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(1)
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Commented at 2007-06-26 13:41
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