かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ゾディアック』
2007年 06月 26日 |
謎に引っ張られ、演出に魅せられる。シャープなのにぎとついている感触がいい。

1969年、ドライブ中のカップルが襲撃される。その1ヵ月後、新聞社に事件の犯人と思しき人物から犯行を告白する手紙と暗号文が届く。



デビッド・フィンチャーという名前には惹かれるんだけど、別段自分の好きな監督というわけでもない。『ゲーム』や『セブン』はどうも納得がいかなかったんだよな。でも、『ファイト・クラブ』はすごーくカッコいい映画だと思う。個人的には、そんなに熱狂したりはしなかったんだけど、自分が男だったら、ベストに挙げたいような作品。そう、たぶん、フィンチャーの映画は男の世界を描いた映画なんだよね。

今回も、女子は蚊帳の外に置かれて、ゾディアックに取り憑かれた男達の姿が映し出される。といっても、ジャンル、描かれているものはまるで違い、これはアメリカ犯罪史に残る現実に起こった未解決事件。その恐怖と緊迫感がリアルに再現されている。題材は違っても、語り口はやっぱりクールで乾いている感じで、張り詰めた空気の中、それぞれの立場の男たちの執念が渦巻いていく。実話ものでも、フィンチャーの演出はカッコいいよなーって思いながら、心はざわめき、主人公の彼らと共にゾディアックの謎にのめり込んでしまう2時間半なのだった。

得体の知れないもの、ジワジワと忍び寄る恐怖、ジリジリと焦燥感にかられる追い詰められた心境、そういったものを描き出すのがウマいよなって思う。過去の現実の事件を描いているというのに、ホラー映画なみの恐怖感を覚えてしまうからお見事。でも、ある種のホラーやスリラー映画は、恐怖感を煽るために仰々しい音楽を使って、逆にその緊迫感を台無しにしがちだけど、本作は抑え目の音楽がよかったな。そんな風に、ホラーテイストのドキドキ感と、不可解な謎に立ち向かっていく面白さに引っ張られ続けた。

未解決事件ものということで、やはり『殺人の追憶』を思い出したのだけれど、あちらはアジアの田舎ならではの泥臭さや湿度にユーモアが持ち味であり、本作は有機物的ではなくて、血生臭い事件を描いていても、シャープな切れ味と無機質な肌触りを感じた。と、タッチはそれぞれに個性があるのだけど、作品の位置づけは近いのかもしれない。事件捜査のシステムの問題点だとか、犯人探しの面白さの狭間に、炙り出されるもの、社会や人間模様の中に見え隠れするものが興味深かったり。

そして、着かず離れずという距離感でゾディアックの謎に翻弄された4人の男たちの物語も進んでいくのだけど、彼らの人間味とそれぞれの思いもまた心をとらえるのだった。何しろ、ジェイクに、ロバート・ダウニーJrに、マーク・ラファロなんていうキャスティングが絶妙。とりわけ、ロバート・ダウニーJrの狂気にとらわれていく様は実によかったな。経験上、落ちていく役どころは得意なんだろうかなんて思いながら、彼の表情と演技には釘付け。

颯爽と記者の仕事をしていたエイブリーは堕落していき、あんなにいいパパだったグレイスミスは、家庭を崩壊させてまで、執拗に事件の真相を追い続けた。刑事でもないグレイスミスが事件を追及する義務や責任はこれっぽっちもないのに、犠牲を払ってでものめり込んでしまう。そんな状況に到ることはなかなかないけれど、その昂ぶる気持ち、解き明かしたいという熱意は大いにわかるな。それが人間なんだよね。ある意味、利害で動くよりも人間らしいんじゃないかなって思ったり。

演出に見入りつつ、単なる事件モノとしてではなく多様に楽しめ、見ごたえあり。

ZODIAC 2006  公式サイト
監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:ロバート・グレイスミス脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
撮影:ハリス・サヴィデス  音楽:デヴィッド・シャイア
出演 ジェイク・ギレンホール(ロバート・グレイスミス)、マーク・ラファロ(デイブ・トースキー刑事)、ロバート・ダウニー・Jr(ポール・エイブリー)、アンソニー・エドワーズ(ウィリアム・アームストロング刑事)、ブライアン・コックス(ベルビン・ベリー)、イライアス・コティーズ(ジャック・マラナックス巡査部長)、クロエ・セヴィニー(メラニー)
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by CaeRu_noix | 2007-06-26 17:33 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(6)
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Commented by kazupon at 2007-06-27 21:43 x
かえるさん

自分もフィンチャー特にお気に入りじゃないんですけど、
これは大人な映画で気に入りました。
ラストあたりでジェイクが必死に真相解明ごっこに取り組んでるのに、
刑事やダウニーの方は、「他にも解決すべきことがたくさんある」
って言ってましたよね。正論だと思います。
ジャンルで言うと犯罪ものなんでしょうけど、なんでしょう?
捜査過程モノなのかなぁ。人にどんな映画か聞かれたら
「すごく時間かかるんだけど結局解決しないんだよ~」って
やっぱり言ってしまいそうですけど、そこがこの映画の魅力
なんですよね。ヘンですけど面白いです。^^^
Commented by 真紅 at 2007-06-28 08:51 x
かえるさま、こんにちは。私も『ファイト・クラブ』好きです。
音楽に詳しい方のレビューなど読むと、この映画の音楽は物凄くスタイリッシュな選曲らしいのですが、全く主張してなくてよかったです。
音楽で煽られると興醒めだったと思います。
主演三人はホントにハマリ役で、それぞれの演技が見応えありました。
フィンチャーってやっぱり凄い才能あるひとだなぁと思ってしまいます。

ケン・ローチ特集、いいですね~。またオススメありましたら教えて下さい!
ではでは。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-28 13:54

kazupon さん♪
フィンチャー監督作は面白いと思うんですけど、好き度が低いことが多いです。でも、そうなんですよ。これは楽しめたし、結構好きだなって思える作品です。そうそう、大人の映画でしたねー。ハリウッド映画で描かれる犯罪は、どうしたってエンタメ第1だから、サスペンス+謎のカラクリの面白さに重きがおかれるか、アクションものになっちゃうかなんですが、本作はそういうパターンにはまっていなくてよかったです。ブルース・ウィリスが刑事役な映画なんかより私にはハマりやすいタイプです。現実に未解決事件なんですから、映画としても解決しない物語であって当然だし。でも、人に説明したら、つまらないあらすじになってしまうかもしれませんね。ジャンルはなんでしょう?と、ちょっとカテゴライズしにくい雑多な感じが魅力だったかもしれません。
Commented by CaeRu_noix at 2007-06-28 13:55
真紅 さん♪
『ファイト・クラブ』はいいですよねー。
むしろ、絶賛しきれなかった自分がちょっと悔しかったほど。
そう、本作の音楽もよかったですよねー。音楽に詳しくなくても、センスいいじゃんーっていうのは思います。「物凄く」スタイリッシュな選曲なのですかー。こういう音楽の使い方をする映画が増えてくれると嬉しいです。
主演三人もすばらしかったですよねぇ。1人が主役という感じじゃなく、立場の違う男たちがそれぞれに翻弄されるというバランスがよかったです。そして、やっぱりナイスキャスティング。
フィンチャーはセンスよくて、やっぱりウマイと思いますー。
Commented by mar_cinema at 2007-07-02 06:08
かえるさん、おはよーございます。
犯人は誰だっていう推理小説的な観点では、
釈然としない箇所もあるのですが、未解決事件を追う人々が、
のめりこんでいく姿の物語としたら、非常に面白かったです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-02 17:31
mar さん♪
謎が解けなくちゃ面白くないという人も少なくはないようですけど、事件に翻弄される男達の物語として面白かったですよねぇ。釈然としないところはたくさんありましたが。受身なだけの単なる映画鑑賞においてでも、人は謎を解き明かしたい衝動にかられるんですよね。その渦中で関わっていたら、のめりこんでしまうのも当然。真相に近づけないくすぶった思いを主人公と共有できるところがポイントなのかもしれません。
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