かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『あるスキャンダルの覚え書き』
2007年 06月 30日 |
観客は彼女を、嫌悪して軽蔑すればいいの?

ロンドン郊外の中学校のベテラン教師バーバラは、新任の美術教師シーバに目をつける。



ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットの競演なんてパーフェクトなキャスティング。出演作があまりにも多い俳優って、演技がうまくても、役柄ごとの個性が見えにくくなってしまうこともあるのだけれど、この2人に関しては、しっかりといつも別人だからスゴイ。アカデミー賞女優のデンチとブランシェットではなくて、教師のバーバラとシーバがそこにいるのだった。とにかく見事な2人の役作り、演技力によって、スリリングで見ごたえ満点のドラマが展開。

主人公に感情移入するんじゃなくて、傍らから好奇心をもって眺めて楽しむタイプかな。部分的には、どちらの気持ちにも共感できる場面はあるのだけど、人間性全体やその行動に心寄り添いきれない主人公という感じだから、興味本位で客観視というスタンス。ただ、あまりにもバーバラが恐ろしい女なので、シーバの立場でハラハラドキドキしちゃうことは多かったかな。

でも、シーバも好感度の高いケイトが演じている割には、理解しきれない困ったちゃんだよね。そんな弱さは人にはあるものだとは思うけど、家庭不和でも何でもない新任教師が教え子の15歳の少年とア・イ・ビ・キを繰り返しちゃうっていうのは、ちょっとあり得ない気がしてしまって・・・。ケイトはどうしても知的でしっかり者のイメージがあるからか、そんなバカ女には見えないの。一度の過ちはあり得るとしても、校内や自宅の敷地内や野外で幾度もなんて、ねぇ・・・。

シーバの行動を不自然に感じている場合ではない。バーバラのような女は、いかにしてつくられるのだろうか。ここまで貫ける恐ろしい女はなかなかいないとは思うけれど、彼女の独白によって吐き出される孤独感や愛憎の思いはとてもリアリティがあって、極端ではあるけれど、見事な人物造形だと感じられた。バーバラの屈折したシーバへの気持ちって、いかにも女子的で、小中学生の友人関係にそういう独占欲の軽度なものが見え隠れしていた気がするな。他者を欺いてまで、自分を慕ってもらうことに何の意味があるのかと思うけれど、それで満ち足りるものなんだろうか?

怖いけれど興味深いバーバラという女。でも、結局この物語は、バーバラを手に負えない悪者として描ききってしまったようなところがちょっと残念。バーバラはモンスターのような存在でしかなく、サイコスリラー、ホラー映画的に味わう映画というんなら、それでいいのかもしれないけれど。人間ドラマだと思っていた私は、少し拍子抜け。躊躇せずに人を陥れることのできる怖ろしい女だから、ホラー度が高まるのだろうけれど、私は彼女が葛藤するところを見たかったかな。例えば、『ピアニスト』のエリカのように、病的な変な女だと思いながらも、突き放すことのできない存在である方が私好みだったかも。

2003年度のブッカー賞最終候補になった小説が原作。バーバラのモノローグが一番興味を誘うフレーズが多かったから、小説もかなり面白そう。

そして、この小説は、女教師が教え子の少年と関係し、児童レイプの罪で実刑判決を受けたというアメリカで起きた事件をモデルにしているそう。映画では少年は15歳だったけど、アメリカの事件のお相手は13歳の少年だったらしい。その少年の子どもを妊娠してやがて結婚もしたというから、元ネタの方が衝撃的。

あるスキャンダルの覚え書き NOTES ON A SCANDAL
2006 イギリス  公式サイト
監督:リチャード・エアー
脚本:パトリック・マーバー  原作:ゾーイ・ヘラー
音楽:フィリップ・グラス
出演:ジュディ・デンチ(バーバラ・コヴェット)、ケイト・ブランシェット(シーバ・ハート)、ビル・ナイ(リチャード・ハート)、アンドリュー・シンプソンスディーヴン・コナリー)
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by CaeRu_noix | 2007-06-30 19:01 | CINEMAレヴュー | Trackback(8) | Comments(6)
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Commented by galarina at 2007-06-30 21:29
こんにちは。
この作品、何でバーバラがこんな性格になってしまったのか、その背景がほとんど語られていなかったですが、非常に緊張感のある作品だったせいか、見ている時はふたりの関係がどうなるのかにのみ集中してしまいました。私はバーバラが哀れに思えてしょうがなかったです。
Commented by ななな at 2007-06-30 22:28 x
かえるさん、こんばんわ。
傍から見てるからこそ、なるほどなーと興味を持って見れるんですよね。
コレがもし似たような中の中心にいたら、参っちゃうどころの話じゃないですよね。
それこそ、壊れちゃいます~。
小中学生みたいなバーバラおばちゃんは、たぶん満足していたんでしょうね。ホント小中学生って自分のグループから抜けそうになると「はぁ、何やってんの?」的に攻めてきますからね。
それで何回もおんなじことやって・・・それが板についちゃってるおばちゃんですから、彼女は一生直らないだろうなって思いました。
現実にありえそうで、彼女たちもなりたくてなったわけじゃないからこそ、怖かったりでした。
Commented by 真紅 at 2007-07-01 00:54 x
かえるさま、こんにちは~。元ネタってそんな衝撃モノだったんですね!新聞で読んだような気もするのですが驚きです。
確かに、人間ドラマというよりかなりスリラーに傾いていましたね、音楽含め。
シーバの行動は軽すぎるのでは・・と私も思いました。線路脇はイヤだ~。
それにしても二大女優のガチンコ勝負は凄みがありましたね!
ではでは~。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-02 11:49
galarina さん♪
緊張感いっぱいでしたよねー。そうなんです。被害者?シーバがいちいちその人の人間形成の事情を考察しないのと同様に、観客の私たちもただただその成り行きに息をのみ、ハラハラしてゾッとしたという感じでした。といいつつ、私は時々背景が気になってしまったんですけどね。徐々にエスカレートしていったのか、ずっと前からこんなんだったのか・・・。バーバラは哀れでしたよね。結局、そんな同情をはねつけるような終わり方だったので、作者にそう描かれたその虚構の孤独な人物が余計不憫に思えてしまったというか・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-02 11:49
ななな さん♪
ヒューマンドラマやラブストーリーは共感することがポイントなんだけど、これは外側から眺めてゆえの面白さがありました。人によっては、もっとシーバに寄り添って、当事者の立場で思いきりスリルと恐怖を味わえるのかもしれないけれど、バーバラの視線から物語が始まるという構成上、私は客観的に見た部分が多かったですー。でも、もちろん、シーバの立場になりつつ、ドキドキもしましたわ。自分がその当事者だったら、もうどうしたらいいかわかりませんよねー。新しい職場で、親切にしてくれる頼りになる先輩がいたら、普通はその厚意を真っ当に受けますもんね。こういう人に目を付けられないことを願うのみなのかしら。バーバラの屈折した策略も理解はできるんだけど、賢い人であるはずなのに、自身の行為に不安を抱いたりする瞬間がないというのはどうなんでしょう。こんな人は実際多いのか。カウンセラーにかかるべき特異な例なのか。・・と考えても仕方がないので、とりあえず私たちはこんなことにならないように注意しましょー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-02 11:49
真紅 さん♪
元ネタはアメリカっぽい事件でした。リアリティのあるお話でしたが、実話としてはやや違和感があったので、調べてみたところ、事実だったのは、女教師が教え子少年と関係しちゃうという部分だけでした。バーバラのような女は小説家が生み出したものだったんですね。
ヒューマンものというよりはサイコスリラーな味わいでした。格調高いスリラー。そうそう、音楽はフィリップ・グラスだということをすっかり忘れていて、後でビックリしたほどに激しく重々しいものでした。途中、オペラを観ているような感覚に襲われましたよ。
シーバは過ちを繰り返すような女に見えなかったんですよね。それほどに、あの少年が魅力的にも見えなかったし。個人的には、線路脇の情事に蜜の味は感じられないんですけど、そういう刺激に興奮しちゃうタイプ?
と人物像に対する謎は残りつつ、女優競演は見ごたえありでした。
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