かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『サイドカーに犬』
2007年 07月 12日 |
コーラの泡のように、弾ける爽やかな潤い。
★★★★

なつかしの80年代、小4の夏に一緒に過ごしたヨーコさんとの思い出の物語。



「猛スピードで母は」の長嶋有の短編小説が原作。小説を映画化するなら、短編に限ると思っている。物語の展開なんかじゃなくて、大切なのは空気感なんだもの。うん、これもたぶん原作の空気をうまく切り取ったんじゃないかなぁと思える繊細でみずみずしい作品。こういうのは大好き。

小学4年生の少女薫の目線で語られる世界。すぐさまそこに同化できるから不思議。そんな時代は自分にとっても、遠い昔の思い出で、具体的なことの多くは忘れちゃっているのに、例えば夏休みの朝のラジオ体操帰りの清々しい空気の心地よさなんかは今でも憶えているもの。薫の置かれている状況が身近ではなくても、小4の彼女の思いに逐一寄り添って、心揺らめくなつかしい夏体験を共有。

母が出て行って、ご飯を作りにヨウコという名の謎の女性が突然家にやって来る。内気な小4女子が、家族や親戚以外の大人の女性と親しく付き合う機会なんてめったにないわけで、緊張しつつも、めちゃめちゃ嬉しい出来事だったと思うわけで。麦チョコ、どっちにしようかと迷ったら両方買っちゃえばいいさーな大人買いからしてもう感激しちゃうよねー。躾に厳しいらしいキッチリした母とは大違いの、サバサバとした気風のいい女ヨーコさんの振る舞いはそりゃーもう新鮮だよね。かっこよすぎなあこがれのお姐さんですよ。恋愛関係、家族愛、友情、そういう典型的なヒューマンドラマのテーマとはちょっと違った不思議なゆるーい関係性っていうのが、なんか興味深くって、くすぐったいよな心地よさがあるんだなぁ。

薫っちでは、商売やっている関係で、子ども達に話し声が聴こえる部屋で、集まった父さんの友人達が麻雀やりながら下品な話をしているような状態。聴こえないふりをしながらも、すごーく居心地悪いと思うのだよね。そんな日常だったから、ヨーコさんの存在には元気づけられたのじゃないかな。夏の夜の百恵ちゃんち探しに行こうよ作戦のおでかけはなんて楽しいイベントだったんだろうって思う。真面目な薫が、破天荒なヨーコの行動に面食らいつつも、こういうのもアリなんだってことを心にインプット。おまけにサイドカーでのお出迎えまで手配してくれるなんて粋な計らい。さすがのヨーコさん。そして、自転車に乗れるようにもなったし、水入らずで海にも旅行した。いつもの夏休みにはなかったかけがえのない体験のあったその夏。人生を決定づけるような出来事じゃないのだけれど、密かにキラキラ輝き続ける特別な宝物なのだ。

薫目線では全てOKなんだけど、個人的に大人の観客目線で謎だったのは、ヨーコさんのようなキレイでサッパリしっかり者のいい女が、何故に、薫ちゃんちのパパみたいな男と付き合っていたのかということ。パパは見た目も、人間性も、男としてはどこも魅力的に見えなかったので、ましてやこれで妻子持ちなんて、ありえなーいって思うことしきり。現実生活で男の趣味がよろしくなかった竹内さんだからーっていうんじゃないよね。原作でもそういう父さんだったのかな?

サイドカーに犬ショットもよかったなぁ。これは短編小説ならではのセンスのよいタイトル。洋画につけられた過剰なお節介邦題とは大違いのさりげなさ。タイトルの意味するものがちょっとしたエピソードに過ぎないところがいい。些細なことなんだけど、自分にはとても印象深いことってあるよね。

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by CaeRu_noix | 2007-07-12 19:56 | CINEMAレヴュー | Trackback(18) | Comments(5)
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タイトル : 「サイドカーに犬」 DVD
なかなかいい映画でした。竹内結子が主演とのことのみの予備知識で本編を見たら、出だしから戸惑ったが物語を見て納得。ざっくりとした行動と人を虜にしそうな雰囲気を併せ持った女性を演じ、愛一筋かという本線は寧ろ濃厚に描いていないので、古田新太に惹かれているのは違和感以前に、そういうものだという風に見れる。この映画の場合、主人公はこの女に接する事になる当時の小学生の女の子であり、幾つか出会いで成長するがその部分よりも、30になった彼女が良き想い出として残る「記憶」としての部分が大きく、少女役の松本花奈は、子供が...... more
Commented by シャーロット at 2007-07-12 21:56 x
こばは。
ヨーコさんのようにサドル取られて、立ちこぎして帰った事があるんですよっ。以来、サドルにも取られないように鍵つけてますー。

携帯から覗いてるんでまた出直します…
Commented by 八ちゃん at 2007-07-12 22:34 x
どうもお騒がせしております。

>タイトルの意味するものがちょっとしたエピソードに過ぎないところがいい

おいらもそう思った。予告編みてそれらしきものが出てこないので、そう絡んでくるのかなぁ~と楽しみにしておりました。

何か昔の片岡義男の小説のようなタイトルだなぁ~、
なんて思ったり。
Commented by シャーロット at 2007-07-13 00:10 x
再び。
夏休みは必ず海派です。フジツボは傷跡から体内に入って繁殖して・・・の話も、コーラは歯を溶かす話も、石油はあと30年位でなくなる話も、皆私も親から聞かされたなあと思って苦笑い;
実はサイドカーにも憧れていたのでした。キレンジャーのおかげで。笑
ヨーコさんみたいな姐さん、男らしくてとってもよいですよね。
娼婦だったりして、なんて思ったりもしたのですが、どうもそんな感じでもないし、謎めいた女性でますます興味がわいちゃうのでした。
そうそう、題名もぐっど!
それに希林婆ちゃんにはおもわず声をあげて笑ってしまったのでした;
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-13 13:01
八ちゃん♪
どうもっ。騒いでましたっ
ですよねー。タイトルからしてかなり好みだったんですが、ところで、サイドカーに犬って、一体どういうふうに物語にからんでくるんだろうと・・・。そしたら、主人公が犬を飼っているわけでもなく、ささやかな挿話だったのがグーでした。観る前は、サイドカーに犬なんて、平凡!サイドカーにシロクマくらい載せてほしいわとか、キレンジャーの屈辱をはらして、ミドレンジャーをサイドカーに乗せるべしとか思っていたんですが、これならOKなサイドカーに犬でした♪
片岡よしお小説のタイトルはおしゃれ風味のすかした?ものが多かったですよね。ジャケ買い?を何度かしてしまいました。なつかすぃ
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-13 13:02
シャーロット さん♪
サドル取られた経験があるんですね。サドルにも鍵をつけているのかー。私は今は自転車さえももっていません。何年か前(ずいぶん前かも)に盗まれて以来買ってなくて、もう乗れないかも・・・。ペーパードライバーでチャリもなし。あこがれは馬通勤でっす。(妄言) おお、海派ですか。ってか、他に何派があるんですか?オカ派?山派?川派?オタク?プール派?私は日本海派でした。派っていうか、そっち側に住んでいただけだけど。で、クラゲにさされ派でした。コーラは骨が解ける説はありましたよね。石油は30年だったかな??私もサイドカーにはあこがれましたよ。ももれんじゃー。馬車にもあこがれたし。筋斗雲にも乗りたかったし。
ヨーコさんのサバサバ気質はよかったですよねー。ぶよぶよのまこっちゃんにはもったいないっす。賄いさん娼婦?椎名きっぺいとか友人承認の存在だったんですよね。オミズ系のおねえさんとかだったのかしらん?謎。
希林婆ちゃん名演でしたー。
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